11年後のレッドリスト|コガシラネズミイルカ:波間に溶けた未来を、誰も拾えぬまま【IUCNレッドリスト比較】

11年後のレッドリスト|コガシラネズミイルカ:波間に溶けた未来を、誰も拾えぬまま【IUCNレッドリスト比較】 11年後のレッドリスト
※このページは、[IUCNレッドリスト]世界の絶滅危惧生物図鑑(2014年版)に基づいて制作した個人ブログです。
※画像はすべてAI生成(
DALL·E)によるイメージであり、実際の生物写真ではありません。

こんにちは、鶏人|Keijin です。

コガシラネズミイルカ(Phocoena sinus)は、

2014年、図鑑に【CR:深刻な危機】として分類されていました。

2022年、IUCNレッドリストで、【CR:深刻な危機】と評価されました。

つまり、2014年から2022年にかけて、コガシラネズミイルカは

「波間に溶けた未来を、誰も拾えぬまま」状態なのです。

※2025年時点で、IUCNレッドリストにおけるコガシラネズミイルカの最新評価は2022年版です。それ以降の更新は行われていません。

この記事は、とても短く5分で読めるので、どうぞ最後まで読んでいただけると嬉しいです。

※本記事は専門家による学術的な評価ではなく、公開された資料に基づく個人の調査・見解を含んでいます。
最新かつ正確な分類や保全状況については、IUCN公式サイトなどをご確認ください。
参考:https://www.iucnredlist.org/species/17028/214541137

保護活動の成果と残された課題

⬇︎コガシラネズミイルカの生態です。必要に応じてご覧ください。⬇︎

基本情報|コガシラネズミイルカ(Vaquita)
項目情報
和名コガシラネズミイルカ(小頭鼠海豚)
英名Vaquita / Gulf of California Porpoise
学名Phocoena sinus
分類哺乳類・クジラ目・ネズミイルカ科
分布メキシコ・カリフォルニア湾北部のごく限られた海域のみ
主な生息地カリフォルニア湾北端(デルタ地域の浅瀬)
体長約120〜150cm
体重約40〜55kg
寿命推定約20年

特徴

  • 世界で最も希少なクジラ類:生息数は極めて少なく、数十頭しか確認されていない。
  • 外見:小型でずんぐりとした体型。目の周囲と口の周囲に黒い斑点があり、独特の顔立ちを持つ。
  • 名前の由来:「Vaquita(バキータ)」はスペイン語で「小さな雌牛」を意味し、かわいらしい外見からそう呼ばれる。
  • 泳ぎ:あまりジャンプせず、海面でひっそりと息継ぎをする。

生態と行動

  • 生息域の限定性:世界で唯一、メキシコのカリフォルニア湾北部にしか生息していない。
  • 食性:魚類やイカ、エビなどの小型の底生生物を捕食する。
  • 繁殖:1回の出産で1頭の仔を産む。繁殖力は低く、個体数回復が困難。
  • 脅威:最大の脅威は違法漁業による混獲。特に「トトアバ」という大型魚を狙った違法漁の刺し網に絡まって命を落とすことが多い。
  • 現状:IUCNレッドリストでは【CR:深刻な危機】に分類され、絶滅寸前の状況にある。

2014年絶滅危惧種:コガシラネズミイルカ【CR:深刻な危機】

2008年以来メキシコ政府は、網の使用を禁止したコガシラネズミイルカの保護区域を設け、その他の区域では経済政策を併用することで漁獲レベルを下げている。漁業許可資格者がその資格を返上したり、コガシラネズミイルカにとって安全な漁業手段に移行したりした場合に補償金を与えたため、刺し網漁は3分の1ほども減少した。

出典:訳者 岩槻邦男,太田英利 / 発行者 池田和博 / タイトル「IUCNレッドリスト世界の絶滅危惧生物図鑑」/発行所 丸善出版株式会社 / 発行 2014/01/31 ©️Kunio Iwatsuki, Hidetoshi Ota, 2014

推定個体数IUCNレッドリスト評価備考
1997年約600頭当時は急減少が始まった段階
2014年不明(減少傾向)CR:深刻な危機『世界の絶滅危惧生物図鑑』に記載
2016年約60頭CR:深刻な危機個体数が10年間で激減
2018年30頭未満CR:深刻な危機混獲による被害が深刻化
2022年数十頭未満CR:深刻な危機最新のIUCN評価(Rojas-Brachoら, 2022)
2024年6〜8頭確認CR:深刻な危機繁殖個体の存在が唯一の希望

現在、コガシラネズミイルカは絶滅寸前の危機に瀕しており、その個体数は推定で10頭を下回るという極めて憂慮すべき事態にある。

一方で、少数ながらも繁殖活動は続いていることが確認されており、幼い個体の姿も観察されている。

これが唯一の希望の光となるが、状況が極めて厳しいことに変わりはない。
出典:地球上で最も絶滅の危機に瀕している海洋哺乳類

⬇︎コガシラネズミイルカの主な保護活動の種類です。必要に応じてご覧ください。⬇︎

保護活動の種類内容の概要
混獲の防止主な脅威である違法な刺し網(特にトトアバ漁の網)を禁止・撤去し、監視を強化
法的保護メキシコ政府がVaquita専用の禁漁区を設置し、漁業規制を徹底
国際協力CITES附属書Ⅰや国際NGOとの連携で取引禁止・保護活動を推進
保護区の設定カリフォルニア湾北部に「Vaquita保護区」を設定し、全ての刺し網漁を禁止
技術的代替手段漁業者に環境に優しい代替漁具(刺し網を使わない漁法)の導入を奨励
市民・地域参加地元漁師への補償制度や代替生計の提供により、地域の理解と協力を促進
研究とモニタリング音響モニタリングや調査航海で生息数を把握し、絶滅回避策を検討

主な取り組み

  • 混獲防止:違法な刺し網(特にトトアバ漁)を撤去・禁止
  • 禁漁区設定:カリフォルニア湾北部で刺し網漁を全面禁止
  • 国際協力:CITESやNGOと連携して国際取引を規制
  • 代替漁具導入:漁師に刺し網以外の漁法を普及
  • 地域協力:漁師への補償や代替収入源の提供
  • 法的保護:メキシコ政府による厳格な漁業規制
  • モニタリング:音響調査で残存個体数を把握

最後に

これを読んでみて、どのように感じましたか?

「イルカなんて他にもいるじゃん」

と、人類の責任は?

「これ漁だけが原因とは思えない」

と、気候変動も視野に入れますか?

感じ方は、十人十色です。


メキシコ政府が2008年頃から実施したコガシラネズミイルカ保護のための経済政策は、主に以下の2つの柱で構成されていた。

項目内容目的補償・仕組み効果と課題
1. 漁業許可の「買い上げ」プログラム(Buyout Program)政府が漁業者から許可証・船・刺し網を買い上げる漁業からの引退を促し、刺し網漁そのものを恒久的に減らす許可や船の規模に応じた一時金を支給当初は刺し網漁を減らす効果あり。しかしトトアバ密漁の莫大な利益が補償金を上回り、裏で違法漁が横行
2. 収入補償と代替漁具への転換支援(Gear-Switching & Compensation)刺し網漁を一時停止・廃止した漁業者に補償を提供し、代替漁具(小型トロール網など)への転換を支援コガシラネズミイルカを混獲しない漁法へ移行させ、収入減を補填毎月または定期的に漁業者や加工業者など広い範囲に補償金を支給代替漁具の効率が悪く普及せず。監視体制も不十分で、違法操業が続いた

メキシコ政府は漁業コミュニティの生活を支えるための重要な経済政策を実施しましたが、それを上回る強力な「違法経済圏」(トトアバの密猟と密輸)の存在によって、コガシラネズミイルカを絶滅の危機から救うという本来の目的を達成するには至らなかった。

さらに、気候変動は地球上のあらゆる生態系に影響を与えており、コガシラネズミイルカの生息域も例外ではない。

しかし、コガシラネズミイルカの減少に関しては、科学者や保護団体の間で「気候変動の影響は、刺し網による混獲という直接的な脅威に比べれば、はるかに小さい」というのが一致した見解である。

観点刺し網による混獲気候変動の影響
脅威の速度・規模毎年のように残存個体数を急激に減少させる、即時的で致命的数十年単位で進行する比較的緩やかな変化
科学的証拠死亡個体の多くが網に絡まって溺死していたことが確認済み餌の分布変化や生息環境の変化は「可能性」として指摘段階
保護活動の焦点「刺し網をなくす」ことに研究・政策の労力が集中潜在的影響は調査対象だが、優先度は低い
結論個体数激減の主因長期的に影響を及ぼす可能性はあるが、現時点では主要因ではない

気候変動による潜在的影響(指摘されている要素)

分野潜在的影響リスク
餌資源の分布変化海水温や海流の変化により、魚・イカ・甲殻類の分布が変動餌不足による栄養不良
生息地の環境変化コロラド川流量の減少 → 塩分濃度・水温・栄養塩循環の変化湾全体の生態系バランス崩壊
生理的ストレス海水温上昇が直接的なストレスに繁殖力や免疫力の低下につながる可能性

まとめると、気候変動がコガシラネズミイルカの生息環境に長期的なリスクをもたらすことは疑いはない。

しかし、この種が絶滅の淵に立たされている直接的かつ最大の原因は、人間活動である「刺し網漁」であるというのが、これまでの調査からの結論である。


ここまで読んで、『あなた』は、どのように感じましたか?

コメントで意見を聞かせてくれると、とても嬉しいです。

あなたの貴重な命である5分間を、本当にありがとうございました。

コガシラネズミイルカに、あなたの5分が届くことを祈ります。

鶏人|Keijin

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