11年後のレッドリスト|アビシニアジャッカル:草原の果て、残された影がゆれる【IUCNレッドリスト比較】

11年後のレッドリスト|アビシニアジャッカル:草原の果て、残された影がゆれる【IUCNレッドリスト比較】 11年後のレッドリスト
※このページは、[IUCNレッドリスト]世界の絶滅危惧生物図鑑(2014年版)に基づいて制作した個人ブログです。
※画像はすべてAI生成(
DALL·E)によるイメージであり、実際の生物写真ではありません。
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こんにちは、fukumomo3_photo です。

アビシニアジャッカル(Canis simensis)は、

2014年、図鑑に【EN:危機】と記載されていました。

2011年、IUCNレッドリストで【EN:危機】と評価されました。

つまり、2011年の評価を最後に、2014年から2021年にかけて、アビシニアジャッカルは

「草原の果て、残された影がゆれる」状態なのです。

※2025年時点で、IUCNレッドリストにおけるアビシニアジャッカルの最新評価は2011年版です。それ以降の更新は行われていません。

この記事は、とても短く5分で読めるので、どうぞ最後まで読んでくれると嬉しいです。

※本記事は専門家による学術的な評価ではなく、公開された資料に基づく個人の調査・見解を含んでいます。
最新かつ正確な分類や保全状況については、IUCN公式サイトなどをご確認ください。
参考:https://www.iucnredlist.org/species/3748/10051312

“知ること”から始まる予防の一歩|ジステンパーの過去とこれから

⬇︎アビシニアジャッカルの生態です。必要に応じてご覧ください。⬇︎

基本情報|アビシニアジャッカル(Ethiopian Wolf)
項目情報
和名アビシニアジャッカル
英名Ethiopian Wolf
学名Canis simensis
分類哺乳類・食肉目・イヌ科・イヌ属
分布エチオピア高地(標高3,000m以上の限られた山岳草原)
主な生息環境高山草原(アフロアルパイン地帯)、湿った草原や岩場
体長約84〜100cm(尾を除く)
体重約11〜19kg(オスの方がやや大型)
寿命野生で約8〜10年、飼育下で最大13年程度

特徴

  • 名前の由来:「アビシニア」は古代エチオピアの地名に由来し、この動物の分布が限定されていることから「アビシニアジャッカル」と呼ばれます。
    ただし、**実際はジャッカルではなく“最もオオカミに近いアフリカ固有のイヌ科”**です。
  • 外見:赤茶色の体に、白い顔・喉・脚部が特徴的で、キツネのような細面と長い脚を持ちます。
  • 音声:高音の鳴き声でコミュニケーションを取ることがあり、遠吠えもします。
  • 社会性:小規模な群れ(家族群)で行動し、協力して縄張りを守ります。

生態と行動

  • 極めて限定された分布:世界でもエチオピア高地にのみ分布し、最も希少なイヌ科動物とされています。
  • 主な獲物:主に穴に潜むげっ歯類(モグラネズミなど)を狩る。忍耐強く静かに獲物を待ち伏せて捕まえる。
  • 繁殖:1年に1回繁殖し、リーダーのメスだけが出産することが多く、群れで子育てを行う。
  • 脅威:人間による土地開発、野犬との交雑や感染症(狂犬病など)が深刻な脅威。
  • 保全状況:IUCNレッドリストでは【EN:絶滅危惧ⅠB類(Endangered)】。
    生息地破壊と遺伝的撹乱により、現存数は500頭前後とされます(2023年推定)。

2014年絶滅危惧種:アビシニアジャッカル【EN:危機】

…家畜やイスをオオカミの生息域に持ち込んでいる牧畜業は、狂犬病の流行や、局所的な死滅をもたらす伝染病であるジステンパーの原因となることがある。保全対策として、オオカミの生息域内と周辺で、病気の伝染を防ぐためのイヌ集団予防接種キャンペーンが重点的に展開されている。

出典:訳者 岩槻邦男,太田英利 / 発行者 池田和博 / タイトル「IUCNレッドリスト世界の絶滅危惧生物図鑑」/発行所 丸善出版株式会社 / 発行 2014/01/31 / ページ 1 / ©️Kunio Iwatsuki, Hidetoshi Ota, 2014

項目内容
対象種アビシニアジャッカル(エチオピアオオカミ、Canis simensis
保全活動の概要イヌへの集団予防接種キャンペーンは現在も非常に重要な活動として継続・展開されている。2014年当時よりもこの活動の重要性はさらに増しており、現在では保全戦略の中核となっている。
主な脅威(2024〜2025年)狂犬病(Rabies)と犬ジステンパー(Canine Distemper Virus:CDV)の2つの感染症である。これらは生息域内や周辺に住む人々が飼っているワクチン未接種のイヌから伝染する。
保全主体エチオピアオオカミ保全プログラム(EWCP)
基本方針「ワンヘルス(One Health)」アプローチを重視している。これは、野生動物・家畜・人間の健康はすべて繋がっているという考え方である。
主な活動①飼いイヌへの大規模な予防接種(継続・拡大)
EWCPは、アビシニアジャッカルの主要な生息地(特にバレ山地など)の周辺集落において、年間3,000〜4,000頭の飼いイヌを対象に、狂犬病とジステンパーのワクチン接種を定期的(routinely)に実施している。
これは、病気のリザーバー(病原巣)となるイヌの集団免疫を高め、アビシニアジャッカルへの感染リスクを根本から減らすための最も効果的な戦略である。
主な活動②オオカミへの直接的な予防接種(進化)
かつては、オオカミの間で病気が発生した後に緊急的にワクチンを接種する「反応的(Reactive)」な対策が中心であった。
現在は、イヌへの対策と並行して、病気が発生する前にオオカミ自体に経口ワクチン(餌に混ぜた予防的ワクチン)を投与する「予防的(Preventive)」手法が試みられており、対策はより積極的になっている。
この活動の重要性アビシニアジャッカルは非常に個体数が少なく(総個体数は500頭以下と推定される)、小さな群れ(パック)で生活している。一度病気が侵入すると感染が急速に広がり、群れが全滅に近い壊滅的な被害を受けるおそれがある。
過去の発生例1990年代、2000年代、そして近年(2019年など)にも病気の大流行(Epizootic)が発生し、多くの個体群が深刻なダメージを受けた。

イヌへの集団予防接種は、このような悲劇的な大流行を防ぎ、世界で最も希少なイヌ科動物であるアビシニアジャッカルを絶滅から守るための、まさに「最前線」の活動である。

⬇︎アビシニアジャッカルの主な保護活動の種類です。必要に応じてご覧ください。⬇︎

保護活動の種類内容の概要
生息地の保護エチオピア高地の草原・高山生態系を保全し、農地拡大や過放牧による生息地破壊を防止
疾病管理家畜や野犬からの狂犬病・ジステンパー感染を防ぐためのワクチンプログラム実施
保護区の設定生息域を含む国立公園・自然保護区(ベイル山国立公園など)での保護体制強化
地域コミュニティとの協働家畜管理方法の改善や持続可能な牧畜支援により、人間との衝突を減らす
市民・地域参加地元住民・学校・観光客を巻き込んだ野生動物保護教育やエコツーリズム推進
研究とモニタリング個体数・遺伝的多様性・行動範囲の調査とGPS首輪による追跡調査

主な取り組み

  • 生息地保全:エチオピア高地の草原や湿原を守る
  • 疾病対策:狂犬病やジステンパーの予防接種を実施
  • 保護区整備:国立公園や自然保護区で保護体制を強化
  • 地域協働:牧畜支援や家畜管理改善で人との衝突を軽減
  • 環境教育:地域住民や観光客への保護啓発活動
  • 生態調査:GPS追跡や個体数・遺伝情報の記録

最後に

これを読んで、あなたはどう感じましたか?

「そもそも、狂犬病とか犬ジステンパーって、いったいどこから始まったんだろう?」

やっぱり、原点に戻って“その病気がどこから来たのか”を知りたくなりますよね。

ちょっと調べてみましょう。


項目狂犬病(Rabies)犬ジステンパー(Canine Distemper)
起源・由来非常に古い歴史をもつ、人類最古級の感染症の一つ。狂犬病よりも新しく認識されたが、影響は非常に大きい感染症。
起源となった動物・ウイルス起源は「コウモリ」の可能性が高い。
原因ウイルスは「リッサウイルス属」に属し、コウモリの間で数千年以上存在してきたと考えられる。
起源は「麻疹(はしか)」のウイルス
犬ジステンパーウイルス(CDV)は「モルビリウイルス属」に属し、人間の麻疹ウイルスや牛の牛疫ウイルスと近縁。
歴史的記録紀元前2300年のメソポタミア文明(エシュヌンナ法典)に記録があり、「イヌが人を噛んで狂わせた場合の罰則」が定められていた。
古代ギリシャやローマにも同様の記述がある。
遺伝子解析から、人間の麻疹ウイルスから分岐して誕生したとされる。
分岐時期は数百〜数千年前で、18世紀頃にヨーロッパでイヌの病気として明確に認識された。
感染の広がり方コウモリなどの野生動物から、イヌ・キツネ・アライグマ・スカンクなど他の哺乳類へ感染が拡大。
特にイヌは人間の生活圏に近く、「人間への主要な感染源」として恐れられてきた。
人間の麻疹や牛の牛疫が家畜化の過程で広がる中、ウイルスが変異してイヌに感染するようになったと考えられる。
つまり「人間(あるいは家畜)」の活動がイヌの新たな病気を生んだ可能性がある。
なぜ問題が続くのか・神経系を侵すよう進化しており、感染動物の行動を変化させ(攻撃的になるなど)、唾液による「噛みつき」で効率的に感染を拡大する。
・「野生動物(コウモリなど)→家畜(イヌ)→野生動物(アビシニアジャッカル)」という感染の連鎖が起きている。
・感染力が非常に強く、イヌ科(オオカミ・キツネなど)だけでなく、イタチ科・アライグマ科・大型ネコ科(ライオン・トラ)・アザラシなど多くの食肉目動物に感染する。
・「人間(の活動)→家畜(イヌ)→多様な野生動物(アビシニアジャッカルを含む)」という感染環が続いている。

狂犬病と犬ジステンパーの起源をたどると、どちらも「イヌ」を介して人間と野生動物の世界をつなぐ構造が見えてくる。

人間の活動と野生の生態系が交わることで感染が広がるため、イヌへの集団予防接種こそが、その連鎖を断ち切る最も効果的な方法である。


「歴史を見ていると、“犬ジステンパーは人間の麻疹ウイルスから分かれて生まれた”って聞いて、最近の温暖化でまた新しいウイルスが出てきそうで怖いですよね。」

たしかに、その感覚はすごくわかります。

そのあたりのことも、もう少し詳しく調べてみますね。


主な理由概要具体例影響・リスク
①「出会うはずのないもの」が出会ってしまう温暖化により地球全体の生態系が乱れ、動物と人間の距離が近づいている。・野生動物が干ばつや洪水で移動し、人間の生活圏や家畜に接近する。
・コウモリやネズミなど、ウイルスの宿主となる動物との接触が増える。
・ウイルスが種を超えて感染(スピルオーバー)する機会が増加。
動物から人間、または家畜への感染が起きやすくなり、新しい感染症が発生するリスクが高まる。
② 病気を運ぶ「媒介動物」の生息域拡大温暖化によりウイルスを運ぶ蚊やダニなどの活動範囲が広がっている。・デング熱、ジカ熱、マラリアを媒介する蚊や、SFTSを媒介するダニが北上。
・日本、ヨーロッパ、北米などの温帯地域でも越冬・定着が可能に。
熱帯病や風土病がこれまで発生しなかった地域で常在化し、「感染症の日常化」が進む。
③ 「パンドラの箱」が開く:永久凍土の融解気候変動が最も急速に進む北極圏で永久凍土が融け、古代の病原体が放出されるおそれがある。・永久凍土には数万年前のウイルスや細菌が凍結保存されている。
・マンモスなどの死骸から未知のウイルスが放出される可能性もある。
現代の生物や人間が免疫を持たない「未知のウイルス」に感染するリスクがある。最悪の場合、新たなパンデミックを引き起こす可能性がある。

「犬ジステンパーと麻疹」の例は、人間と動物の生態系が交わったときに何が起こるかを示す歴史的な教訓である。

そして、地球温暖化は、まさにその「生態系の境界線を破壊し、強制的に交わらせる」現象を引き起こしている。


「このままだと、ほんとうに何が起こってもおかしくない感じですよね。」

そうですね。

これまで出会うはずのなかった生きものたちが、急速に環境の変化で交わっていく。そのときに起こる変異なんて、きっと誰にも想像できないと思います。

じゃあ、そんな中で“自分”にできることは何だろうって考えてみると、正直、ひとりでは大きなことはできないんですよね。

でも、“わたしたち”が少しずつ動いて、暮らし方を変えていけば、まだ間に合うかもしれない。

だからこそ、まずは「知ること」からはじめて、そこから小さくても行動を重ねていくことが大切なんだと思います。


ここまで読んで、『あなた』は、どのように感じましたか?

コメントで意見を聞かせてくれると嬉しいです。

あなたの貴重な命である5分間を、本当にありがとうございました。

アビシニアジャッカルに、あなたの5分が届くことを祈ります。

fukumomo3_photo


インスタでは、アビシニアジャッカルたちの姿を“図鑑みたいに”並べて見られます。
ビジュアルで伝える命の物語、よかったらのぞいてみてください。

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