※本記事は、専門家による学術的評価ではなく、公開情報や文献をもとにした筆者個人の調査・見解を含みます。
※本記事は、革新的なエネルギー研究に取り組む企業や研究者の努力を尊重し、未来への可能性を考える目的で制作しています。
※Clean Planet の「量子水素エネルギー(QHe)」は、研究文脈上で「LENR(低エネルギー核反応/凝縮系核反応)」と関連づけて紹介されることがありますが、学術的に確立された技術ではありません。
最新かつ正確な技術情報・研究状況については、国際熱核融合実験炉(ITER公式サイト)および
クリーンプラネット株式会社(Clean Planet公式サイト)など、公式発表をご確認ください。
「エネルギーを巡る旅」古舘恒介(著)の第2章『目指すべき未来』──
“未来の社会を駆動する中心的エネルギー”という章を読み、胸の奥で何かがはじけた。
「核融合反応の最大の課題は、なんといっても核融合炉の設計が非常に難しいことです。
核融合反応は太陽で行われている反応ですので、核融合炉とはある意味、地上に太陽を再現する試みになります。
そう考えただけでも実用化に向け、技術的に乗り越えなければならない課題が多いであろうことは容易に想像がつくでしょう。」
──想像はついた。
けれど、私の中の何かが反応してしまった。
その瞬間、心の奥で「ワクワク」と「ドキドキ」の火種が同時に灯ったのだ。
そして私は、本を閉じ、AIに問いかけ、ネットの奥をさまよった。
たどり着いたのは──QHe(量子水素エネルギー)という、もうひとつの“太陽”だった。
QHeはクリーンプラネットが用いる呼称で、研究の文脈ではLENR(低エネルギー核反応)/凝縮系核反応とも重なる領域として語られている。
けれど、それは私が思い描いていた“太陽”とはまるで違った。
「なぜ中性子が出ないと言えるのか?」「なぜ1億度が不要だと語られるのか?」
疑問の数だけ、ワクワクの火が消えかけた。
それでも、火を絶やしたくなくて。
私はもう一冊の本を手に取った──
「核融合炉入門 ― フュージョンエネルギーへの道 ―」岡野邦彦(著)。
そこで、私はひとつの分岐点にぶつかる。
「ITERとQHe/LENRは、同じ夢を見ているのに、まったく違う方向を向いている」と。
それが、この記事を書こうと思った理由である。
今から、素人の私なりに、その“二つの太陽”を紐解いてみたい。
国が創る太陽 ― ITER(イーター)とは何か
ITER(イーター)は、フランス南部カダラッシュに建設中の巨大プロジェクトで、人類が「太陽と同じ原理」を地上で再現しようとしている。
つまり、太陽の中で起きている“核融合反応”を、人工的に起こすという試みである。
人類が地上に創ろうとしている、もう一つの太陽
太陽の内部では、水素の原子核(陽子どうし)が融合してヘリウムを作り、その過程で膨大なエネルギーを放出している。この反応を「核融合」と呼ぶ。
地上でこれを再現するには、1億度以上という超高温のプラズマ状態を作り、その中で水素の同位体(重水素・三重水素)を融合させなければならない。
ITERはこの“太陽の中心”を地上に閉じ込めるために、巨大な磁場(トカマク型装置)でプラズマをぐるぐると回し、接触せずに安定させる設計になっている。
民が育てる太陽 ― QHe / LENR とは何か
QHe(量子水素エネルギー)は、クリーンプラネットが用いる技術名だ。
研究の文脈ではLENR(低エネルギー核反応)/凝縮系核反応/固体核融合と重ねて語られることが多い。
QHeの説明では、ニッケル系などのナノ構造材料に少量の水素を吸蔵させ、加熱などの刺激によって量子拡散が起こり、その過程で高密度の熱が得られるとされる。
巨大な炉ではなく、静かな実験室の片隅から始まった“もう一つの太陽”の物語である。
開発を進めているのは、日本のベンチャー企業クリーンプラネット。
愛媛の三浦工業や三菱グループの技術者たちが協力し、CO₂を排出しない熱源の実用化を目指している。
自然と共鳴しながら灯る、内なる太陽
QHe / LENRが目指すのは、1億度の世界ではなく、より低い温度帯(常温近傍〜数百度)での高密度発熱。
金属内部のナノ構造(極微細な空間)に水素が入り込み、量子レベルの現象が関わると説明されることが多い。
公開情報の範囲では、金属表面で通常の化学反応では説明しにくい過剰な発熱が報告される一方、その反応機構は検証の途上にある。
また「中性子が大量に出ない」「高レベルの放射性廃棄物を伴わない」といった目標・主張もあるが、最終的な合意には第三者検証が必要だ。
すなわちQHe / LENRは、国際的な巨額プロジェクトではない。
それでも、小さな研究室から「地球を冷やす熱」を生み出そうとしている。
制御(Control)ではなく、調和(Harmony)で動く。
それが、“民が育てる太陽”の姿である。
二つの太陽 ― 制御と調和の分岐点
ITERは制御の象徴であり、QHe / LENRは調和の象徴ともいえる。
人類はこれまで、自然を制御(Control)することで進化してきた。
風を帆に受けて、川を堰き止め、火を囲い、太陽の光を電気に変えてきた。
その延長線上に、国家が創る太陽──ITERがある。
一方でQHe / LENRは、自然の中にある調和(Harmony)を見出そうとしている。
人の手で“燃やす”のではなく、物質の奥にある法則と“響き合う”エネルギー。
それは、まるで森の中で静かに光る蛍のような存在だ。
しかしこれは、どちらが正しいかではない。
どちらも「地球を生かす方法」を探しているのだ。
私の結論 ― 信じたいのは、光の行方
科学がまだ答えを見つけていない今、私たちは“信じる”ことの重さを試されている。
そして私は、光を追いかける者たちに思いを馳せた。
巨大な火を灯す者たちへ
ITERに集う人々は、国家の力を束ねて“太陽を地上に創る”という前人未到の夢を追っている。
1億度の炎を制御し、地球の未来をその手で照らそうとする者たち。
その姿は、制御(Control)の極致でありながら、同時に“人類の希望”そのものでもある。
膨大な費用、長い年月、数えきれない失敗。
それでも彼らは、燃え尽きることのない情熱で、地球の新しい火を灯そうとしている。
彼らの炎は、QHe / LENRの静かな光と同じ方向──「生命を生かす」という一点を見つめている。
小さな火を守る者たちへ
QHe / LENRがもし本物なら、世界のエネルギー地図は根底から変わるだろう。
だがそれでも、私はまだ完全には信じきれない。
核融合の構造を知れば知るほど、「そんな簡単にいくはずがない」と思う。
けれど、心のどこかで願ってしまう。
“もしそれが本当なら、地球はもう一度、呼吸を取り戻すかもしれない”と。
二つの太陽が照らす未来
国家の巨大な炉が放つ光も、小さな実験室の中に灯る光も、どちらも「地球を生かそう」とする意志のかたちだ。
制御と調和。
炎と量子。
国家と個人。
それは対立ではなく、補い合う光だと感じている。
信じるという選択
私はまだQHe / LENRを完全には信じていない。
だが、信じられないからこそ追いかけたいと思う。
信じることは、盲信ではなく、希望の行為なのだから。
太陽を閉じ込めようとする者と、太陽を宿そうとする者。
そのどちらの手のひらにも──地球という生命を想う心が宿っている。
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