11年後のレッドリスト|シャンハイハナスッポン(Rafetus swinhoei):姿は見えず、命の痕跡だけが水に残る【IUCNレッドリスト比較】

11年後のレッドリスト|シャンハイハナスッポン(Rafetus swinhoei):姿は見えず、命の痕跡だけが水に残る【IUCNレッドリスト比較】 11年後のレッドリスト
※このページは、[IUCNレッドリスト]世界の絶滅危惧生物図鑑(2014年版)に基づいて制作した個人ブログです。

Hi, it’s 鶏人|Keijin.

In the 2014 field guide, the Yangtze giant softshell turtle (Rafetus swinhoei) was assessed as “CR: Critically Endangered.” Their numbers had completely crashed due to overharvesting for food, the destruction of wetlands and nesting grounds, dam construction, and water pollution. At the time, there were only four confirmed individuals left in the entire world.

Fast forward to 2026, and a check of the IUCN Red List shows that their status hasn’t changed at all since 2014—they are still stuck at “CR: Critically Endangered.”

Recently, things have advanced. A portable eDNA test was developed that can detect DNA left behind in lake water right on the spot. Armed with this technology, drones, stationary cameras, and local interviews, the search is still going strong in northern Vietnam.

Tragically, though, a captive female in China passed away in 2019, and another confirmed female in Vietnam’s Dong Mo Lake died in 2023.

As of right now, there are absolutely no confirmed living individuals in the wild. But there is strong evidence suggesting a few might still survive in Vietnam, so tracking down a turtle that can actually breed has become the absolute core of the conservation mission.

I honestly feel like the Yangtze giant softshell turtle is living out a reality where “they remain a phantom—unseen, leaving nothing but traces of life fading in the water.”

I’ve packed the more detailed stuff into the dropdown sections below.
But even if you just read this main text, I’d be thrilled if you stick with it to the very end.

こんにちは、鶏人|Keijinです。

シャンハイハナスッポン(Rafetus swinhoei)は、2014年の図鑑では、食材としての乱獲、湿地や産卵場所の破壊、ダム建設、水質汚染などによって個体数が激減し、世界でわずか4個体しか確認されていなかったことなどから「CR:深刻な危機」と評価されていました。

そして、2026年時点で確認できるIUCNレッドリストの評価も、2014年と変わらず、「CR:深刻な危機」のままでした。

近年は、湖水に残されたDNAを現地で検出できる携帯型eDNA検査が開発され、ドローン、定点カメラ、聞き取り調査などを組み合わせた探索がベトナム北部で続けられています。しかし、2019年には中国で飼育されていたメスが、2023年にはベトナムのドンモ湖で確認されていたメスが死亡しました。現在、野生で生存が確定した個体はいませんが、ベトナムに複数個体が残っていることを示す強い証拠があり、繁殖可能な個体を見つけ出すこと自体が保全活動の核心になっています。

シャンハイハナスッポンは今も、「姿は見えず、命の痕跡だけが水に残る」という状態なのだと思います。

少し詳しい内容は折りたたみの中にまとめています。
まずは本文だけでも、最後まで読んでもらえたらうれしいです。

※2026年時点で、IUCNレッドリストにおける最新評価は2018年評価(2021年公開)です(以降の更新は、現時点では確認できていません)。
※本記事は専門家による学術的な評価ではなく、公開された資料に基づく個人の調査・見解を含みます。
※IUCN評価は「世界全体」と「地域・個体群」で分かれる場合があります。地域によって状況は異なります。
最新かつ正確な分類や保全状況については、IUCN公式サイトなどをご確認ください。
参考:IUCN Red List(学名:Rafetus swinhoei

シャンハイハナスッポンの現在|2014年の4個体から何が起きたのか

⬇︎シャンハイハナスッポンの生態(基本情報)です。必要なら開いてください。

基本情報|シャンハイハナスッポン(英名:Yangtze Giant Softshell Turtle)

シャンハイハナスッポン Rafetus swinhoei は、中国とベトナムに歴史的分布を持つ巨大な淡水性スッポンです。日本語では「シャンハイハナスッポン」の名称がWWFジャパンの資料などで用いられています。学名は1873年に Oscaria swinhoei として記載され、現在は Rafetus 属に分類されています。現代の分類では、ベトナムで別種として提唱された Rafetus leloii や Rafetus vietnamensis も本種の異名として扱われるのが一般的です。

IUCNレッドリストではCR:深刻な危機です。2026年現在の生存個体数については資料間で扱いが異なります。WCSは2025年1月の記事で「2024年時点で中国・蘇州動物園の雄1個体と、ベトナム・スアンカイン湖の性別不明1個体」の2個体を既知個体としていました。一方、Turtle Survival Allianceの現在の種ページは「野生で確認済みの個体はいない。ただしベトナムに複数個体が存在することを示す強い証拠がある」としています。2026年1月更新のTurtle Sanctuaryも、確実に生存が確認されている飼育個体として蘇州動物園の雄1個体を挙げています。

区分項目内容
名称和名シャンハイハナスッポン
名称和名の使用WWFジャパンなどの日本語資料で「シャンハイハナスッポン」が用いられている
名称英名Yangtze Giant Softshell Turtle
名称別英名Swinhoe’s Giant Softshell Turtle
名称別英名Swinhoe’s Softshell Turtle
名称別英名Red River Giant Softshell Turtle
名称別英名Shanghai Softshell Turtle
名称中国名斑鳖
名称ベトナムでの呼称Rùa Hồ Gươm、Rùa Hoàn Kiếmなど。「還剣湖のカメ」を意味する名称が文化的に使われる
名称学名Rafetus swinhoei
名称学名表記Rafetus swinhoei (Gray, 1873)
名称原記載名Oscaria swinhoei Gray, 1873
名称記載者John Edward Gray
名称記載年1873年
名称タイプ産地中国・上海
名称ホロタイプBMNH 1946.1.22.9。頭骨は別番号BMNH 1947.3.6.13として登録されている
名称種小名の由来イギリスの外交官・博物学者Robert Swinhoeへの献名
名称Robert Swinhoe1836~1877年。中国など東アジアの動物相の研究・標本収集に大きく貢献した博物学者
分類Animalia、動物界
分類Chordata、脊索動物門
分類Reptilia、爬虫綱
分類Testudines、カメ目
分類Trionychidae、スッポン科
分類亜科Trionychinae
分類Rafetus、ハナスッポン属
分類現生の同属種ユーフラテススッポン Rafetus euphraticus
分類亜種現在、一般に亜種は認められていない
分類現在の分類上の扱い独立した有効種
分類Rafetus leloiiベトナムのホアンキエム湖個体を別種として扱うため提唱された名称だが、現在の主要分類ではR. swinhoeiの異名とされる
分類Rafetus vietnamensis2010年にベトナム個体群へ提唱された名称だが、現在の主要分類ではR. swinhoeiの異名とされる
分類遺伝研究2014年のミトコンドリアDNA・核DNA解析では、中国産とベトナム産を別種へ分けるほどの遺伝的分化は支持されなかった
分類その他の異名Trionyx swinhonis、Pelochelys taihuensis、Yuen maculatusなど多数の歴史的名称がある
分布自然分布国中国、ベトナム
分布歴史的分布の中心中国の長江下流域と太湖周辺、中国・ベトナムを流れる紅河水系
分布中国東部上海周辺、黄浦江、太湖、長江下流氾濫原などから歴史的記録がある
分布中国南西部雲南省の紅河上流域から歴史的記録がある
分布ベトナム北部の紅河・ダー川水系と周辺湖沼から歴史的記録がある
分布ホアンキエム湖ハノイ中心部。長期間1個体が生存していたが、2016年に死亡した
分布ドンモー湖ハノイ西方。長期間本種の生存地として監視されてきた
分布スアンカイン湖eDNA調査で本種のDNAが検出され、野生個体探索の重要地点となった
分布ダー川紅河最大級の支流。聞き取り調査で近年までの目撃情報が比較的多く得られている
分布潜在的生存地2022年の研究では、ベトナム北部で少なくとも13地点が調査・保全上重要な候補地として抽出された
分布近年の探索範囲ベトナム北部の紅河・ダー川流域の湖、ダム湖、河川など
分布ラオス近年は過去の大型スッポン情報を基に、一部地域で生存可能性を調べる調査も行われている
分布現在の中国野生個体確実な現存野生個体は確認されていない
分布現在のベトナム野生個体生存を示唆する証拠や候補地はあるが、Turtle Survival Allianceは現在「確認済み野生個体なし」としている
生息環境基本環境大規模な淡水河川、湖沼
生息環境TSAによる説明大きく濁った湖や河川
生息環境水深深い水域を利用し、水中で長時間過ごす
生息環境河川本来は大河川とその支流・氾濫原を利用していたと考えられる
生息環境太湖などの天然湖や、現在のベトナムにある大型湖を利用する
生息環境ダム湖河川のダム化によって形成された湖に取り残された個体も知られる
生息環境岸辺産卵には陸上の適切な営巣場所が必要
生息環境水質水質悪化や汚染が健康と餌生物へ影響する
生息環境大規模水系の重要性餌場、繁殖地、個体間の移動を維持するため、河川と湖沼の連結性が重要
形態大きさ世界最大級の淡水ガメの一つ
形態甲長1mを超えることがある
形態体重大型個体では100kgを大きく超える
形態雄の大型記録160kgを超える雄が記録されている
形態最大級の体重約170kgに達した標本・個体記録がある
形態全体の形非常に扁平で幅広く、水中抵抗の少ない体型
形態背甲一般的なカメのような硬い角質の甲板を持たず、革状の皮膚に覆われる
形態背甲の基本色オリーブ色、暗緑色、褐緑色
形態背甲の模様黄色い斑点、小さな点、線状模様が散在する
形態幼体・若齢個体黄色の斑紋が成体より鮮明に見えることがある
形態腹甲灰白色から灰色
形態頭部非常に大きく、幅広く、厚みがある
形態前方へ細長く突き出した管状の鼻を持つ
形態鼻孔吻の先端に位置し、水面から鼻先だけを出して呼吸できる
形態頭部上側に位置する
形態眼の位置の利点体の大部分を水中へ隠したまま水面付近を確認できる
形態頭・首の色オリーブ色から黒褐色で、黄色の斑点や網目模様を持つ
形態長く伸ばすことができる
形態大型で強力
形態歯はなく、鋭い角質の嘴で餌を切断する
形態四肢太く大型で、水中生活に適応する
形態指の間に発達した水かきを持つ
形態前後肢に爪を持つ
形態尾・雄雄は長く太い尾を持つ
形態尾・雌雌は雄より短い尾を持つ
形態総排泄孔・雄尾の先端に近い位置にあるため、雌雄判別の手掛かりになる
生態生活場所ほぼ完全な水生生活
生態活動水中へ長時間潜り、ときどき水面へ浮上して呼吸する
生態行動の観察極端に希少で警戒心が強いため、自然状態の行動について直接観察できた資料は少ない
生態観察の難しさ濁った大型湖や河川に生息し、水面へ出る時間が短いため発見が非常に難しい
生態単独性確認された個体が少なすぎるため、野生下の社会構造に関する資料はほとんどない
生態季節活動ベトナムでの元猟師への聞き取り研究では、冬季に活動が低下し、暖かい季節に活発になる傾向が報告されている
生態呼吸肺呼吸を行い、定期的に水面へ浮上する
生態潜水能力深い水中に長時間とどまることができる
生態砂泥への潜伏スッポン類に共通して底質へ体を潜らせる行動を行う可能性があるが、本種固有の定量的研究は少ない
食性食性雑食性
食性歴史的な野生食物軟体動物、昆虫、甲殻類、湿地植物の種子などが報告されている
食性動物質貝類、甲殻類、水生昆虫など
食性植物質湿地・水生植物の種子など
食性飼育個体の餌エビ、ザリガニ、魚、淡水巻貝、カエルなどが与えられてきた
食性飼育下の補助食飼育施設では鳥肉などを含むさまざまな動物質も与えられた例がある
食性野生食性の情報量野生個体の直接的な胃内容物・採食行動研究は非常に少ない
生態系捕食者としての役割大型の淡水性雑食・捕食動物として、魚類・無脊椎動物などの食物網に関わっていたと考えられる
生態系植物との関係植物の種子も摂取するため、湿地植物との相互作用もあった可能性がある
繁殖繁殖方法卵生
繁殖受精体内受精
繁殖産卵場所水中ではなく陸上へ上がって産卵する
繁殖産卵期暖かい季節に繁殖・産卵すると考えられる
繁殖一腹卵数IGBの整理では50個を超える卵を産むことができる
繁殖歴史標本の卵ベルリンの博物館に残る雌標本から、直径20mmを超える卵130個が確認された記録がある
繁殖130卵の意味1回の産卵で130個を産んだことを直接確認した記録ではなく、雌の体内に存在した卵の標本記録
繁殖性成熟正確な野生下の成熟年齢は不明
繁殖高齢での繁殖能力蘇州動物園の雌は90歳を超えると考えられる高齢でも産卵を続けた
繁殖長寿100年以上生きることが可能と考えられている
繁殖野生寿命正確な最大寿命は不明
繁殖2008年の繁殖計画長沙動物園の雌を蘇州動物園へ移し、飼育雄との繁殖が試みられた
繁殖蘇州の雌2008年以降、長年にわたって数百個の卵を産んだ
繁殖孵化結果卵は多数産まれたが、繁殖計画で子ガメの孵化には成功しなかった
繁殖雄の問題飼育雄の生殖器に過去の損傷があり、自然交尾による有効な受精が難しいことが繁殖失敗の一因と考えられた
繁殖人工授精2015年から人工授精が試みられた
繁殖人工授精の結果孵化可能な子孫を得ることはできなかった
繁殖蘇州の雌の死亡2019年4月13日、人工授精に関連した処置後の回復中に死亡した
繁殖ドンモー湖の雌2020年に捕獲・DNA検査によって雌であることが確認され、大きな繁殖希望となった
繁殖ドンモー湖の雌の死亡2023年4月に死亡が確認された
繁殖現在の繁殖上の問題現時点で繁殖可能な雌の生存が確実には確認されていない
個体数歴史的状況長江下流域やベトナム北部で、かつては漁師に知られた大型淡水ガメだった
個体数主な減少時期1980年代から急速な減少が進み、1990年代には非常に希少になった
個体数減少率Turtle Survival Allianceは野生個体群が99%以上減少したとしている
個体数2000年代中国とベトナムを合わせても数個体しか確認できない状態になった
個体数2016年ホアンキエム湖の有名な個体が死亡した
個体数2019年蘇州動物園の最後の既知の飼育雌が死亡した
個体数2020年ドンモー湖で野生雌1個体が遺伝的に確認された
個体数2023年ドンモー湖の確認済み雌が死亡した
個体数WCS・2024年基準蘇州動物園の雄1個体とスアンカイン湖の性別不明個体1個体を「既知の2個体」としている
個体数TSA・現在野生で確認済みの個体は0とし、ベトナムに複数個体が存在することを示す強い証拠があるとしている
個体数2026年に確実な飼育個体中国・蘇州動物園の雄1個体
個体数野生個体の可能性ベトナム北部の複数の水域で生存可能性があり、探索が続けられている
個体数Minh Quan Lake浮遊式カメラトラップによって本種の可能性がある大型スッポンが撮影されたと2026年のTurtle Sanctuaryが報告している (タートルサンクチュアリ)
個体数性比生存個体そのものが十分に確認できていないため、現在の野生性比は不明
個体数個体数傾向減少
保全状況IUCNレッドリストCR:深刻な危機
保全状況IUCN評価2021年版の評価が現行評価として参照されている
保全状況IUCN個体数傾向減少
保全状況TSAの表現「Functionally extinct in the wild」と評価している
保全状況Functionally extinctIUCNの正式カテゴリーではなく、野生で自立して繁殖を維持できる個体群が確認されていない現状を示す保全上の表現
保全状況CITES附属書II
保全状況CITESの意味国際取引は規制され、輸出などには条約に基づく許可が必要
脅威歴史的な捕獲食用を目的とした成体の大量捕獲
脅威卵の採取人間による卵の採取
脅威漁業網、釣り針などへの混獲
脅威過剰漁業餌資源を減少させるとともに、カメ自身が漁具へ捕獲される危険を高める
脅威河川改変ダム、堤防、河川工事などによる自然河川環境の変化
脅威ダム個体群を分断し、移動を阻害する
脅威ダムと繁殖水位・流量・岸辺環境を変化させ、営巣環境へ影響する可能性がある
脅威ダム湖への孤立河川個体が人工湖へ孤立し、他個体と出会えなくなる可能性がある
脅威生息地破壊河岸・湿地・湖岸の開発
脅威水質汚染工業排水、生活排水、農業由来汚染など
脅威湖沼の劣化富栄養化、ゴミ、底質変化などによって生息環境が悪化する
脅威個体群の孤立仮に複数個体が残っていても、別々の巨大水域に孤立すると繁殖相手に出会えない
脅威アリー効果個体密度が極端に低いことで雌雄が出会えず、個体が生きていても繁殖が成立しない状態に陥る
脅威遺伝的問題生存個体が極端に少ないため、遺伝的多様性の消失と近親交配が将来の重大な問題となる
遺伝ゲノム研究2022年のゲノム研究では、調べられたカメ類の中でも非常に低いヘテロ接合度が報告された
遺伝長期的個体群縮小ゲノム解析では、長い進化史の中でも有効個体群サイズが減少してきたことが示された
保全活動野生個体探索河川・湖沼での目視調査
保全活動ドローン広大な湖面・湖岸を効率よく確認するため利用される
保全活動カメラトラップ岸辺だけでなく、水面を監視する浮遊式カメラも試みられている
保全活動eDNA水中へ放出された皮膚細胞などに由来するDNAを検出し、本種が水域にいる可能性を調べる
保全活動eDNAの利点巨大で濁った湖を直接捕獲調査するより、少ない攪乱で生存可能性を調査できる
保全活動ポータブルeDNAWCSなどが現場で短時間に検査できる携帯型eDNA法を開発した
保全活動捕獲・DNA確認候補個体を安全に捕獲できる場合、DNA試料を採取して種と性別を確認し、再放流する
保全活動聞き取り調査漁師や元猟師から過去・現在の大型スッポン目撃情報を体系的に収集する
保全活動聞き取り件数Turtle Sanctuaryは2019年以降、ベトナム北部とラオスで800件を超える構造化インタビューを実施している
保全活動潜在生息地の絞り込み聞き取り、環境条件、漁業圧などを組み合わせ、探索優先地域を決定する
保全活動湖の監視生存可能性の高い湖で長期間の監視を行う
保全活動漁業との協力漁師へ本種の識別法や発見時の通報方法を伝える
保全活動地域教育学校や地域社会で保護の必要性を伝える活動が行われる
保全活動混獲防止本種が生息する可能性のある水域で危険な漁具や捕獲圧を減らす
保全活動生息地保全湖・河川だけでなく産卵可能な岸辺と周辺湿地を保護する
保全活動飼育繁殖の経験蘇州動物園で長期間の自然繁殖・人工授精が試みられたが、子孫を残すことはできなかった
保全活動今後の最重要課題生存している野生個体、とくに雌を発見し、DNAで確実に同定すること
保全活動複数個体発見の意味雌雄が確認されれば、自然繁殖地の保護、個体移動、繁殖支援など新たな救済策を検討できる
文化ベトナムでの重要性ホアンキエム湖の巨大なカメは、ベトナムの歴史・伝説と強く結びついている
文化還剣伝説15世紀の黎利が明朝軍を破った後、神聖なカメへ剣を返したという伝説がある
文化Hoàn Kiếmベトナム語で「剣を返す」の意味
文化保全への影響生物学的希少性だけでなく、ベトナムの文化的象徴としても保全価値が高い
研究生態研究の不足極端な希少性のため、繁殖、成長、行動圏、野生食性、寿命などには大きな情報不足が残る
研究個体数調査の難しさ湖面を目視しただけでは個体を識別できず、eDNAも個体数そのものを直接数える方法ではない
研究eDNAの限界DNA陽性は本種由来DNAの存在を示すが、それだけでは個体数・性別・繁殖状態までは判断できない
研究現在の核心「何頭いるか」以前に、「どの水域に生存しているか」「雌が残っているか」を確実に確認することが最優先となっている
現在の位置づけ希少性世界で最も絶滅に近いカメ類の一つ
現在の位置づけ生物学的状態確実に確認されている繁殖可能な雌がいないため、自然繁殖による回復の見通しは極めて厳しい
現在の位置づけ残された可能性ベトナム北部には未確認個体が残る可能性があり、eDNA・カメラ・聞き取り・現地調査による探索が継続されている

2026年時点の個体数について

この種は、資料を読む年代によって「4頭」「3頭」「2頭」「1頭」と数字が変わるため、特に注意が必要です。2020年にドンモー湖の個体が雌と確認されたことで一度は繁殖への希望が生まれましたが、その雌は2023年に死亡しました。WCSは2025年1月時点で、蘇州動物園の雄とスアンカイン湖の個体の「2個体」を既知個体としていました。

しかし、現在のTurtle Survival Allianceは野生について「確認済み個体なし」としつつ、「ベトナムに複数個体が存在することを示す強い証拠」があるとしています。2026年のTurtle Sanctuaryも、確実に生きている飼育個体として蘇州動物園の雄1個体を挙げる一方、Minh Quan Lakeで本種の可能性がある個体を撮影したと報告しています。つまり、シャンハイハナスッポンは「確実な生存確認個体がほぼ1個体まで追い詰められている一方、未確認の野生個体を探し続けている」というのが、2026年時点の実態に最も近い状況です。

基本情報:出典

最終評価2018年:シャンハイハナスッポン「CR:深刻な危機」

生息域の一部ではあがめられていたものの、食材としての利用のための捕獲、湿地帯の破壊や水の汚染によりこの種の生息状況に大きな影響がもたらされた。 ベトナムの2つの湖にはそれぞれ野生の2個体が生息し、またオス個体が蘇州の動物園に、メス個体が長沙の動物園に生き残っている。 過去2年で、蘇州と長沙の個体は同じ場所に集められ何度か産卵に至っている。そのいずれも孵化してはいないものの飼育下での繁殖のための努力はつづけられている。 一方、野生の2個体は注意深く監視されている。

出典:訳者 岩槻邦男、太田英利 / 発行者 池田和博 / タイトル『IUCNレッドリスト世界の絶滅危惧生物図鑑』/ 発行所 丸善出版株式会社 / 発行 2014/01/31 / © Kunio Iwatsuki, Hidetoshi Ota, 2014

シャンハイハナスッポン(Rafetus swinhoei)|2026年時点の現状まとめ
出典:IUCNレッドリスト|シャンハイハナスッポン(Rafetus swinhoei

「野生個体が存在しない」のではなく、「2026年現在、生存が確定した野生個体はいない」という状態です。過去の環境DNAや目撃情報から、ベトナムに複数個体が残っている可能性は強く示されています。

項目2014年の図鑑現在(2026年確認)
種名シャンハイハナスッポン。学名はRafetus swinhoei。英名はYangtze Giant Softshell。学名に変更はない。Yangtze Giant Softshell Turtle、Swinhoe’s Giant Softshell Turtle、Red River Giant Softshell Turtle、Hoan Kiem Turtleなどの英名が使われる。
IUCNカテゴリー絶滅危惧IA類に相当するCR。CRのまま。評価基準はA2acdおよびD、個体群動向は減少とされる。IUCN上の野生絶滅EWや絶滅EXには分類されていない。
IUCN評価の時点図鑑では、世界で4個体の生存が確認されていると説明されていた。IUCNサイトに掲載されている評価日は2018年3月12日である。「成熟個体3」という表示は2018年評価時の数字であり、2019年と2023年のメスの死亡を反映した2026年現在の個体数ではない。
2014年の確認個体数中国の飼育個体2個体と、ベトナムの2つの湖に各1個体の合計4個体。2014年に数えられた4個体のうち、少なくとも3個体が死亡した。現在、個体として確実に生存が確認されているのは、蘇州動物園の飼育オス1個体である。
2024年論文との違い該当なし。2024年の査読論文では、蘇州動物園のオスとスアンカイン湖の個体を「生存が確認された2個体」とした。しかし、スアンカイン湖の根拠には過去の写真と2018年の環境DNAが含まれ、2026年現在の生存が改めて確認されたわけではない。
2026年の野生個体数ベトナムで2個体が確認されているとされた。Turtle Survival Allianceは、現状を「野生で確認済みの個体はいない」「ベトナムに複数個体が存在することを示す強い証拠がある」と整理している。正確な野生個体数は不明である。
野生個体が確認されていないという意味2つの湖で各1個体が監視されていた。過去に本種が確認された湖はあるが、その個体が現在も生きていることを証明する最近の捕獲、鮮明な映像、個体由来のDNA確認が得られていないという意味である。野生から完全に消えたことを意味しない。
ホアンキエム湖の個体ベトナムの伝説と結びつき、神聖な存在として崇敬されていた野生個体。2016年1月に死亡した。同湖では、それ以降、本種の生存は確認されていない。
ドンモー湖の個体洪水でダムが損傷した際に下流へ流出し、捕獲後に湖へ戻された個体が監視されていた。2020年10月、体重86キログラム、甲長約1メートルの個体が捕獲され、遺伝子検査と超音波検査によって本種のメスと確認された。このメスは放流されたが、2023年4月に死骸で発見された。死因は確定していない。
ドンモー湖の別個体の可能性湖内には1個体がいると考えられていた。2020年の調査では、確認されたメスとは別に推定130キログラムの大型個体がいる可能性が示された。しかし、捕獲や遺伝子検査による種の確定には至っておらず、現在の生死も分からない。
スアンカイン湖図鑑では具体的に取り上げられていなかった。2012年と2017年に大型スッポンが撮影され、2018年に湖水の環境DNAから本種の存在が確認された。ただし、環境DNAは採水時点で本種が湖にいたことを示すもので、同じ個体が2026年現在も生存していることや、個体数、性別までは証明できない。
ベトナムの複数個体を示す証拠フィールド調査が継続されているとされた。ベトナム北部では、環境DNA、写真、地域住民や漁業者からの最近の目撃情報、浮遊式カメラによる大型スッポンの撮影などが得られている。これらは複数個体が残る可能性を強く示すが、本種と確定されていない情報も含まれる。
中国の飼育オス蘇州動物園で飼育され、長沙動物園から移されたメスとの繁殖が試みられていた。現在も蘇州動物園で飼育されているとされる、唯一の確実な生存個体。100歳を超える高齢個体と考えられている。確認されている繁殖相手はいない。
中国の飼育メス長沙動物園から蘇州動物園へ移され、オスと同居。産卵したが孵化には至らなかった。自然交尾と人工授精が繰り返されたが、生存可能な胚は得られなかった。2019年4月、5回目の人工授精で全身麻酔を受けた後、麻酔からの回復中に死亡した。人工授精が直接の死因だったとは確定していない。
2020年に確認されたメス存在は知られていなかった。中国の飼育メスが死亡した翌年、ドンモー湖で新たなメスが確認された。しかし、このメスも2023年に死亡したため、現在、確実に生存が確認されているメスはいない。
繁殖状態蘇州動物園のペアが何度か産卵していたため、飼育下繁殖への希望が残されていた。確実に確認されている繁殖可能な雌雄の組み合わせは存在しない。野生に複数個体が残っていても、広大な湖や別々の水域に隔離されていれば、自然に出会って繁殖できる可能性は極めて低い。
機能的絶滅存続の危機にあるものの、飼育ペアによる繁殖が試みられていた。Turtle Survival Allianceは「野生では機能的絶滅」としている。これは個体が完全に消滅したという意味ではなく、個体数や密度が低すぎて、自然状態で次世代を残せない状態を指す。
分布かつて中国の長江下流域、太湖、雲南省の紅河水系、ベトナム北部の河川・湖沼などに分布していた。中国では野生個体が確認されていない。ベトナム北部のドンモー湖、スアンカイン湖、ダー川水系、紅河水系などで探索が続けられているが、現在生存する野生個体の場所は確定していない。
食用捕獲食材として利用するための捕獲が、個体数減少の主要因とされた。1970~1990年代の過剰捕獲が個体群崩壊の中心的原因だった。成体だけでなく卵も食用に採取された。現在も漁網や釣り具による偶発的な捕獲が残存個体への脅威となる。
文化的な崇敬一部の生息域では神聖な存在として崇敬されていた。ホアンキエム湖の個体は現在もベトナムの歴史と伝説を象徴する存在である。しかし、特定個体への崇敬だけでは、分布域全体で進んだ捕獲、生息地破壊、水質汚染を止められなかった。
湿地・産卵地の破壊湿地帯の破壊が生息状況に大きな影響を与えた。2024年の脅威分析では、ベトナムにおける最上位の脅威として、産卵場所の消失と住宅・都市開発による土地改変が挙げられた。成体が残っていても、河岸の砂地や安全な産卵場所がなければ次世代は生まれない。
ダムと河川分断洪水で損傷したダムと、個体の流出が紹介されていた。ダム建設と河川改変により、連続していた河川環境が孤立した貯水池へ変わった。個体の移動と出会いが妨げられ、産卵場所が水没する。残存個体が別々の水域に取り残されている可能性がある。
水質汚染水の汚染が主要な減少原因とされた。水質汚染は現在も主要な脅威である。2024年の脅威分析では、中国側で漁業者による捕獲と水質汚染が特に大きな脅威と評価された。生活排水、産業排水、農業由来の栄養塩などが水質や餌生物に影響する。
その他の脅威詳しい記載は限られていた。砂採取、船舶による攪乱、漁網や釣り具への混獲、河岸開発、小規模・大規模ダム、外来種、生息地間の孤立が挙げられる。個体数が極端に少ないため、1個体の事故死でも種全体に重大な影響を与える。
現在の保全活動野生個体の監視と、蘇州動物園での繁殖努力が中心だった。目視、ドローン、浮遊式カメラ、環境DNA、漁業者への聞き取り、個体群監視、地域住民への啓発が行われている。個体を発見できた場合には、捕獲してDNA、性別、健康状態を確認し、繁殖計画につなげることが目標となっている。
携帯型環境DNA検査利用されていなかった。約1時間で現地判定できる携帯型環境DNA検査が開発された。湖や貯水池で本種が残っている可能性を絞り込める一方、環境DNAだけでは個体数、性別、健康状態、現在も生きている個体の姿までは確認できない。
気候変動の直接的証拠地球温暖化や気候変動との関係は記載されていなかった。本種の個体数減少や死亡を気候変動に直接帰属させた研究は確認されていない。過去の減少を引き起こした中心的要因は、捕獲、生息地破壊、ダム建設、水質汚染である。
気温・水温上昇記載なし。ベトナムの平均気温は、1986~2005年を基準として2080~2099年に約1.0~3.4℃上昇すると予測されている。水温上昇は蒸発量、水中の酸素量、餌生物、藻類や病原体の増殖を変化させる可能性があるが、本種の耐熱限界は分かっていない。
干ばつと水位低下記載なし。高温と長い乾燥期間によって湖や貯水池の水位が低下すれば、浅瀬や水生植物の多い場所が縮小する。水温上昇や汚染物質の濃縮も起こり得る。ダムによる水位調節と干ばつが重なると、産卵に適した河岸が失われる可能性がある。
豪雨・洪水洪水でダムが損傷し、ドンモー湖の個体が下流へ流出した事例が紹介されていた。ベトナムを含むアジアでは、気温上昇に伴って短時間の極端な降雨が強まる可能性が示されている。洪水は個体の流出、産卵岸の侵食、卵の冠水、濁水や汚染物質の流入を引き起こす。
洪水と気候変動の関係洪水による個体流出は記載されたが、地球温暖化との関係は示されていなかった。過去のドンモー湖の流出事故は、本種が洪水とダム損傷に弱いことを示す。ただし、その洪水自体が人為的な気候変動によって発生したとは確認されていない。
産卵と卵への影響飼育メスの卵が孵化しないことが課題だった。野生下では河岸や湖岸の砂地が産卵場所となる。高温や乾燥は卵の発生や孵化率を低下させ、豪雨や洪水は巣を冠水・流失させる可能性がある。本種について影響を直接測定した研究はない。
気温と性比記載なし。本種で、温暖化によって孵化個体の性比が偏る現象は確認されていない。ウミガメで知られる温度依存的な性決定をそのまま当てはめることはできない。より明確な懸念は、産卵場所の消失と卵の高温・乾燥・冠水である。
海面上昇記載なし。歴史的な分布域には長江下流域や紅河デルタが含まれるため、長期的には海面上昇、塩水遡上、河岸侵食による淡水湿地の変化が起こり得る。ただし、現在探索されているベトナム北部の内陸湖で直接的な影響が確認されたわけではない。
気候変動を含めた総合評価捕獲、湿地破壊、水質汚染によって危機にあるものの、4個体と飼育繁殖への希望が残されていた。2014年より状況はさらに悪化した。確実な生存メスも、現在生存が確認された野生個体もいない。気候変動は過去の減少の主因ではないが、洪水、干ばつ、水温上昇、産卵地の変化を通じ、わずかに残る可能性がある個体と生息地をさらに不安定にする危険の増幅要因となる。

現状まとめ:出典

2014年に確認されていた4個体のうち、少なくとも3個体が死亡し、現在、確実に生存が確認されているのは蘇州動物園のオス1個体です。野生では現在生存が確定した個体はいませんが、環境DNAや写真、目撃情報などから、ベトナム北部に複数個体が残っている可能性が強く示されています。ただし、生存メスは確認されておらず、自然繁殖は事実上停止した状態です。過去の食用捕獲に加え、産卵地の消失、ダムによる河川分断、水質汚染が現在も脅威となっています。気候変動は減少の直接原因ではありませんが、水温上昇、干ばつ、豪雨、洪水を通じて、残された生息地と未確認個体の存続をさらに不安定にする可能性があります。

⬇︎シャンハイハナスッポンの保護活動の種類です。必要なら開いてください。

Yangtze Giant Softshell Turtle(Rafetus swinhoei)はIUCNでCR(深刻な危機)に分類されています。2025年1月時点で確実に生存が確認されているのは、中国・蘇州動物園の雄1個体と、ベトナム・Xuân Khanh湖の野生個体1個体の計2個体で、後者の性別は未確定とされています。したがって現在の保全では、既知個体を守ることと同時に、「まだ発見されていない個体、とりわけ繁殖可能な雌を見つけること」が最優先課題になっています。

保全活動の種類具体的な内容実施状況・成果保全上の意義・課題
ベトナム国内法による保護捕獲、殺傷、所持、取引などを規制し、国家レベルで保護するDecree 160/2013/ND-CPと、その改正法令などによる保護対象となっている 個体数が極端に少ないため、1個体の捕獲や死亡でも種全体に重大な影響を与える
CITESによる国際取引規制生体や標本などの国際取引を規制するRafetus swinhoei はCITES附属書IIに掲載されている歴史的に食用・採取の影響を受けてきた大型淡水ガメを国際取引から守る
Rafetus専門保全プロジェクトAsian Turtle Programが本種専用の長期保全事業を実施するĐồng Mô湖を中心に、調査、個体監視、生息地管理、地域活動を継続している個体数が極端に少ないため、一般的なカメ類保全とは別の専属チームが必要となる
Đồng Mô湖への常駐監視体制保全スタッフを現地に配置し、湖と個体の状態を継続的に確認する野生個体発見後、ATPが現地に常勤体制を設けてきた数か月に一度の調査ではなく、異常や事故を早期発見できる
Xuân Khanh湖の継続監視eDNAや目視調査などによって、確認個体の生存と分布を追跡する同湖ではR. swinhoei の存在がeDNAで確認され、現在も重要な保全対象となっている現在確認されている唯一の野生個体を守るうえで最重要地点の一つとなる
未発見個体の探索ベトナム国内の湖、貯水池、河川などを調査し、残存個体を探す既知地点以外でも探索が続いている新たな個体、特に雌が見つからなければ自然繁殖または保全繁殖の可能性が極めて限られる
中国での残存個体探索雲南省の紅河水系や貯水池など、過去の分布域を調査する聞き取りや現地調査が実施されてきたが、新たな生存個体は確実には確認されていない中国側で雌または若い個体が発見されれば、繁殖計画を大きく変えられる可能性がある
地域住民・漁業者への聞き取り調査大型のスッポン類を見た経験、捕獲歴、産卵地点などについて住民から情報を集める中国・ベトナム双方の探索で利用されてきた 広大な水域を研究者だけで調べることは困難であり、過去の分布や未確認地点を絞り込む手掛かりとなる
環境DNAによる探索湖水を採取し、水中に放出された皮膚細胞、排泄物などのDNAから本種の存在を検出する2013年からATPが利用を始め、Xuân Khanh湖で本種を確認する重要な成果を挙げた姿を見ることが極めて難しい大型水生カメを捕獲せずに探索できる
携帯型eDNA検査の開発現地でqPCR検査を実施できる携帯型システムを開発するWCS、ATP、WCS Vietnam、CRESなどが共同開発し、2024年の研究で実用性を検証、2025年に成果が公表された試料を海外研究室へ送る時間を減らし、探索現場で迅速に候補地点を絞れる
eDNA試料の大量・広域採取大きな湖の複数地点から水を採取し、複数試料をまとめて検査するĐồng Mô湖で大規模水域への適用方法が研究された1,000ヘクタールを超える湖でも、限られた費用と人員で探索範囲を広げられる
eDNA陽性地点の現地確認DNA反応が得られた場所へ目視、船舶、写真撮影などの調査を集中するeDNAを従来調査の代替ではなく、探索範囲を絞り込む手段として利用している誤検出を避け、実際に生きた個体が存在するかを確認する必要がある
ドローンによる水面調査上空から湖面を撮影し、大型のカメが浮上する瞬間を探索するベトナムでドローンを利用した探索が行われ、巨大なスッポン類とみられる映像も得られている広大な湖を船だけで探すより効率的で、人間が近づくことによる攪乱も減らせる
目視観察湖岸や船上から浮上、呼吸、日光浴などの行動を観察するĐồng Mô湖では長期的な観察が続けられてきた生存確認、活動場所、季節変化、捕獲計画の基礎情報となる
観察用高床施設の設置湖内の島に観察用の高床小屋を設け、人の姿を目立たせず監視するĐồng Mô湖に観察施設が設置された警戒心の強い個体へ頻繁に船で接近する必要を減らせる
浮体観察施設の設置湖上に浮きいかだを設置し、個体の行動や利用状況を観察する2019年以降、Đồng Mô湖で利用されている日光浴や休息など、水面近くでの行動を確認しやすくする
生息地改善用浮きいかだ水面上で休息や日光浴ができる場所を追加するĐồng Mô湖で人工いかだの設置・改善が実施された人工湖・貯水池化された環境でも利用可能な休息場所を増やす
人工産卵場の造成砂地などを整備し、雌が産卵できる場所を確保するĐồng Mô湖では人工的な産卵場所が長期間維持されてきたが、確認された産卵実績はない雌が存在する場合に、岸辺開発や水位変動で失われた産卵場所を補える
餌資源調査個体が好む魚類などを調べ、食物環境を把握するĐồng Mô湖では餌を使った選好試験が実施された個体を捕獲・保護する際の誘引方法や、生息地の餌資源管理に利用できる
在来魚類の放流湖内の生態系・餌資源を改善するため在来魚を放流するĐồng Mô湖、Xuân Khanh湖で地域と協力した活動が行われている大型スッポンを支える水域全体の生態系を維持する
水位変動への対策豪雨やダム操作によって個体が湖外へ流出する危険を監視するĐồng Mô湖では過去の増水・ダム放流を受けて対策が強化された 極端に少ない個体が下流へ流出すると、発見不能・捕獲・死亡につながる
流出防止ネットダム開放時にカメが湖外へ流されないよう大型ネットを設置するĐồng Mô湖では長さ約150m、高さ約20mのネットを設置し、損傷時には交換している洪水や放水という人工湖特有の危険から個体を守る直接的な対策となる
流出防止ネットの点検・補修漁業活動や堆積物で損傷したネットを継続的に点検する2013年設置のネットが損傷したため、2016年に交換された設置しただけでは機能を維持できないため、恒常的な管理が必要となる
有害な漁法の抑制電気漁法、大型網、危険な漁具などによる混獲・負傷を防止するĐồng Mô湖では有害漁法が本種への脅威として認識され、地域への働きかけが行われている一度の混獲事故でも種の存続可能性を大きく低下させる
漁業者との協力漁業者に個体を捕獲・目撃した場合の通報と保護への協力を求める地域住民とATP、行政による協力体制が構築されている漁業者は湖に最も長時間いる人々であり、異常や新個体を最初に発見する可能性が高い
偶発捕獲時の救護網などにかかった個体を殺傷・販売せず、専門家と行政へ引き渡して安全に戻す過去のĐồng Mô個体でも地域住民、行政、保全団体の連携による救護が行われてきた偶発的な捕獲を、個体死亡ではなく研究・保護の機会へ変える
Species Habitat Conservation Areaの設定Đồng Mô湖を本種の重要生息地として正式に保全する制度を進めるATPは同湖でR. swinhoeiを対象とするSpecies Habitat Conservation Areaの指定を進めている個体だけでなく、水域、岸辺、産卵地、周辺土地利用を一体的に管理できる
水質・生息環境の監視湖の水質、水位、岸辺環境、漁業活動などを長期的に確認するĐồng Mô湖では専任チームによる生息地監視が継続されている汚染や急激な環境変化による死亡リスクを早期に発見する
水質汚染対策生活排水、工業排水、廃棄物などによる淡水環境の劣化を抑える生息地劣化と汚染は本種の主要な脅威として認識されている長寿命の水生動物では慢性的な汚染が健康・繁殖に影響する可能性がある
河川・湖沼開発の管理ダム、堤防、河川改変、岸辺開発などによる生息地消失・分断を抑える過去の分布域では大規模な水環境改変が進んでおり、生息地保全がIUCNの必要行動に含まれる深水域、浅瀬、産卵岸、移動経路を一体として維持する必要がある
捕獲による個体確認野生個体を安全に捕獲し、種、性別、体格、健康状態を調査する2020年にĐồng Mô湖の個体を捕獲し、遺伝検査によって雌であることが確認された繁殖計画を立てるには、単に「大型カメがいる」だけでなく性別の確認が不可欠となる
捕獲技術の研究巨大で警戒心の強い個体を安全に捕獲するため、網、囲い込み、潜水調査などを検討する2020年のĐồng Mô捕獲に向け、潜水調査や湖内の捕獲区域設定が準備された捕獲そのものが個体に危険を与えるため、安全性の高い方法が必要となる
遺伝子による種判定捕獲個体やeDNAから得たDNAを解析し、R. swinhoeiかどうかを確認するXuân Khanh湖やĐồng Mô湖の個体確認に遺伝解析が利用された巨大スッポン類は遠距離写真だけで種を断定しにくいため重要となる
遺伝子による性判定DNA解析によって雌雄を判定する2020年に捕獲されたĐồng Mô個体が雌と確定した繁殖可能な組み合わせを探す本種では、性別情報そのものが最重要データとなる
健康診断捕獲個体について体重、外傷、身体状態などを調査する2020年の捕獲時などに個体調査が実施されている数少ない個体を移送・繁殖へ利用できる健康状態か判断する
中国での飼育下繁殖計画蘇州動物園の雄と雌を同じ施設で飼育して自然交配を試みる2008年に長沙動物園の雌を蘇州へ移し、雄と繁殖ペアを形成した 当時確認されていた唯一の雌雄ペアを繁殖させる、絶滅回避の中心的試みだった
自然交配の観察求愛・交尾行動を観察し、自然受精を期待するペアは求愛行動を示し、雌は産卵したが、卵は受精していなかった雄の生殖器損傷が自然繁殖を妨げていることが明らかになった
雄の生殖能力検査精液採取と精子検査を行い、生殖能力を評価する雄から精子が採取され、運動性を持つ精子が確認された自然交尾が不可能でも人工授精を利用できる可能性が示された
電気刺激による精液採取麻酔下で電気刺激を利用して雄から精液を採取する高齢個体へのリスクを考慮しながら実施された本種では前例のない繁殖技術を確立する試みとなった
人工授精採取した精子を雌へ人工的に注入し、受精卵を得る2015年以降複数回実施されたが、繁殖成功には至らなかった自然交尾が困難な個体でも繁殖を可能にする最後の手段の一つだった
爬虫類生殖技術の開発麻酔、精液採取、精子評価、人工授精などの手法を専門家が共同開発する中国、米国、オーストラリアなどの専門家が国際チームを形成した 将来別の雌が発見された場合にも、蓄積した技術を利用できる
死亡個体の生殖組織保存死亡した雌から卵巣組織などを採取し、液体窒素で凍結保存する2019年に蘇州動物園の雌が死亡した際、卵巣組織が保存された将来、生殖細胞技術が進歩した場合に遺伝資源を利用できる可能性を残す
組織・DNAの保存死亡個体の組織を保存し、遺伝研究や将来の生殖技術に備えるベトナムの死亡個体についても組織保存が行われている生存個体が失われても、その個体固有の遺伝情報を完全には失わずに済む
新たな雌発見時の繁殖計画雌が発見された場合、既知の雄との交配、人工授精、移送などを検討するWCSは新たな個体発見を長期存続のための最重要課題としている現在知られている個体だけでは繁殖可能性が極めて限定されている
複数個体発見時の保全繁殖新たに雄雌が確認された場合、自然繁殖または管理下繁殖につなげる将来の保全目標として探索活動と一体化している「個体を発見する」こと自体ではなく、次世代を誕生させることが最終目的となる
地域住民への普及啓発本種の希少性、法的保護、捕獲時の対応などを学校・住民へ伝えるĐồng Mô湖・Xuân Khanh湖周辺で継続して実施されている地域住民が個体を捕獲対象ではなく保護対象として認識することが直接的な生存につながる
学校での環境教育子どもたちに本種と淡水ガメ保全について教育する湖周辺地域を対象とする啓発活動が実施されている長期的に地域の捕獲・消費文化を変えていく効果が期待される
地域イベントによる啓発サッカー大会など地域住民が参加しやすい行事と保全啓発を組み合わせるYen Bai communeでは毎年の地域イベントが開催され、2023年にも多数の住民が参加した保全活動を研究者だけのものにせず、地域社会全体へ定着させる
行政との共同管理ハノイ市、地方行政、漁業当局、研究機関、保全団体が共同で調査・捕獲・保護を進める2020年の捕獲やeDNA研究でも複数機関が協力した巨大な湖や複数行政区にまたがる保全をNGOだけで実施することはできない
中国・ベトナム間の国際協力両国に残る個体・遺伝情報・繁殖技術を共有する中国の動物園、WCS、TSAなどとベトナム側研究者・保全団体の協力が長年進められてきた残存個体が国境を隔てて存在するため、一国だけの保全では繁殖可能性を最大化できない
動物園・NGO・大学の国際連携WCS、Asian Turtle Program、Turtle Survival Alliance、動物園、大学・研究機関などが専門技術を共有するeDNA、繁殖、獣医学、現地調査などで国際協力が続いている世界でも前例がほとんどない「残り数個体」の種を救うには多分野の技術が必要となる
長期的な探索継続一度の調査で個体が見つからなくても、季節や水域を変えて繰り返し調べる2025年時点でもWCSとパートナーは未調査・調査不足の湖でeDNA探索を続けている極端に低密度で水中生活中心のため、「見つからない」ことをそのまま不在と判断できない
生息地そのものの保全湖、河川、岸辺、産卵砂地、水質、餌生物を一体的に保護するIUCNは本種について陸水域の保護と管理を必要な保全行動として挙げている新しい個体を発見しても、生息地が失われれば個体群再建につながらない

2023年には、2020年に雌と確認されていたĐồng Mô湖の個体が死亡しました。その後の最新のWCS情報では、確実に知られている生存個体は2個体で、蘇州動物園の高齢の雄と、Xuân Khanh湖の性別未確定個体です。2025年からは携帯型eDNA検査を使って、これまで十分に調査されていない湖や貯水池まで探索範囲を広げています。つまり現在のRafetus swinhoei保全は、「残された個体を守る」段階と同時に、「繁殖可能な個体をもう一度見つけ出す」こと自体が保全活動の核心になっています。

保全活動の種類:出典

野生個体は残っている?シャンハイハナスッポンの捜索と気候変動

Questioner: So there are only two confirmed ones left, huh?

Me: Yeah, it seems that way. But I also found reports saying, “While there are no confirmed living individuals in the wild right now, there’s strong evidence suggesting several might still survive in northern Vietnam. They’re still actively searching using eDNA, cameras, and local interviews.”

Questioner: Oh, well then! Sounds like they might still be okay.

Me: Sadly, it’s not quite that simple—their survival in 2026 hasn’t actually been confirmed yet. During a 2025 survey on the Da River, they apparently interviewed 90 people and gathered 7 highly credible, recent sightings. But they still haven’t managed to capture one or get hard DNA proof.

Questioner: Gotcha. They might be getting worshipped even more now, almost like a mythical phantom turtle. By the way, something just crossed my mind… these turtles live in wetlands, right? It’s the same old story, but with the climate change we’ve brought on, couldn’t we see places that used to get dumped on with rain suddenly drying up completely?

Me: Exactly. Climate change completely wrecks the balance of rainfall and the seasons. Places that were traditionally dry might get slammed with heavy floods, while other areas might face brutal droughts right when they need rain the most. I’m going to dig deeper into what exactly is happening with the climate in the Yangtze giant softshell turtle’s habitat.

質問者:確認されているのは2個体だけなんだね。

私:はい、そのようですが、「野生では現在生存が確定した個体はいないが、ベトナム北部に複数個体が残っていることを示す強い証拠があり、環境DNA、カメラ、聞き取り調査による探索が続けられている」といった情報もあります。

質問者:え〜じゃまだ大丈夫そうだね。

私:残念ながら、2026年現在の生存が改めて確定したわけではないようで、2025年のダー川調査でも90人への聞き取りから信頼性の高い最近の目撃情報が7件得られているようです。しかし、個体の捕獲やDNAによる確定には至っていません。

質問者:じゃあ、なんか幻のカメみたいな感じでさらに崇められているのかもしれないね。ところでちょっと気になったんだけど、このカメさん湿地で暮らしているんだよね。毎度のことだけど僕たちが招いた地球温暖化による気候変動で今まで雨がたくさん降った地域にまるっきり雨が降らなくなるなんてことも今後あり得るんだよね。

私:そうですね。気候変動では、いままで雨が降らなかった地域で大雨が降ったり、降るはずの時期にまったく降らずに深刻な干ばつになるといったように、雨の降り方や季節のバランスが大きく崩れることがありますからね。そのあたりシャンハイハナスッポンの生息する地域のことを詳しく調べてみます。


干ばつと洪水が、最後の命を追いつめる|シャンハイハナスッポンと気候変動

湖は干上がり、降る時には洪水となって岸辺をのみ込む。

確実に確認された野生個体がいなくなったシャンハイハナスッポンにとって、水位、水温、水質、産卵場所のわずかな変化さえ、種の未来を左右します。人類によって壊されてきた生息環境へ、気候変動という新たな脅威が重なり始めています。

1. 長江流域(中国)における「極端化」の脅威

かつてシャンハイハナスッポンが分布していた長江流域では、近年、深刻な干ばつと大規模な洪水が繰り返されています。干ばつから洪水、洪水から干ばつへと短期間で転じる現象も報告されており、水辺の環境は不安定さを増しています。

歴史的干ばつによる水域の縮小

2022年夏、中国南部では記録的な熱波と干ばつが発生しました。世界気象機関(WMO)によると、7月以降、長江沿いの多くの地域で少雨と高温が続き、場所によっては降水量が平年より80%以上少なくなりました。これは長江流域全体の年間降水量が80%減ったという意味ではなく、特定の時期・地域で観測された極端な少雨です。

中国最大の淡水湖である鄱陽湖も急速に縮小し、2022年8月には水面の広さが数か月前の約5分の1にまで減少しました。同年9月には主要観測地点の水位が7.1メートルまで低下し、1951年の観測開始以来の最低記録となりました。

鄱陽湖は現在のシャンハイハナスッポンの生息地として確認されている湖ではありません。しかし、長江流域を代表する巨大湿地が短期間でここまで縮小した事実は、この流域の水生生態系全体が直面する危険の大きさを示しています。

大洪水による環境の急変

長江流域では、干ばつとは反対に、長期間の豪雨による大洪水も発生しています。2016年夏には、季節風による雨が激しさを増し、長江流域で歴史的規模の洪水が起きました。広い範囲で住宅や農地が浸水し、多くの人命と生活基盤が失われています。

この洪水の際には、三峡ダムを含む上流の21か所の貯水池が共同で運用され、洪水の水を一時的に貯留しました。公表された分析では、三峡ダムの操作によって最大流入量のピークが38%削減されたとされています。少なくとも2016年の洪水では、貯水池からの放流が災害を拡大させたというより、豪雨で発生した洪水を抑えるための運用が行われていました。

ただし、ダムは自然の水位変動、土砂の移動、生物の移動経路を大きく変えます。洪水を抑える役割がある一方で、長期的には砂州や浅瀬、産卵場所を失わせるため、シャンハイハナスッポンにとっては別の深刻な脅威になります。

2. 紅河流域とベトナム北部における「水枯れ」と人為的影響の連鎖

シャンハイハナスッポンは、歴史的には中国南部からベトナム北部へ流れる紅河とその支流にも分布していました。現在、個体が残っている可能性が調査されているドンモ湖やスアンカイン湖なども、ベトナム北部のこの広い水系・湿地環境に位置しています。

極端な渇水と高温

ベトナムは高温多湿のモンスーン気候ですが、年間降水量の約80~90%が雨季に集中します。そのため、雨季には洪水が起こる一方、乾季には深刻な水不足が発生するという大きな季節差があります。

2010年には、高温と少雨によりベトナム各地で深刻な干ばつが発生し、ハノイを流れる紅河の水位が0.68メートルまで低下しました。これは1902年の観測開始以来、当時の最低記録でした。この干ばつにはエルニーニョに伴う高温で乾燥した冬も影響しており、気候変動だけを単独の原因とすることはできません。しかし、気温の上昇は蒸発を増やし、もともと大きかった雨季と乾季の落差をさらに危険なものにします。

ダム開発による流れの変化

紅河の上流部やベトナム国内には、水力発電、灌漑、洪水防止などを目的としたダムが建設されています。ダムは乾季に水を補給する役割を果たす場合もありますが、放流量と時期が人為的に決められることで、自然の増水と減水、土砂の運搬、砂州の形成、生物の移動が変化します。

2010年の干ばつ時には、ベトナム北部の貯水池から農業用水が放流されました。しかし、貯水量の低下と電力需要の増加により、それ以上の放流が難しくなったことも報告されています。水が不足するほど、発電、農業、都市生活、生態系の間で限られた水を奪い合う構図が強まります。

人間の暮らしを守るための水管理であっても、生態系に必要な流量や季節変化が後回しになれば、湿地を生息地とする動物は静かに追い詰められていきます。

3. シャンハイハナスッポンへの致命的な影響

こうした気候と水環境の変化は、すでに絶滅寸前まで減少したシャンハイハナスッポンに、複数の方向から重なってきます。

避難場所の喪失と水質悪化

シャンハイハナスッポンは、成長すると体重が100キログラムを超えることもある巨大な淡水性のスッポンです。水位が低下すれば、巨体を隠せる深場や泥底、水草のある場所が縮小し、人間や漁具に発見される危険も高まります。

水量が少なくなると日射によって水温が上がりやすくなり、水中に溶け込める酸素も減少します。さらに、農業排水や生活排水などを薄める水が減ることで、汚染物質の濃度が高くなる可能性があります。米国地質調査所も、著しい流量低下は汚染物質の濃縮、生息地の消失、水温上昇、溶存酸素低下を通じて水生生物を脅かすと説明しています。

わずかな個体しか残っていない種にとって、生息水域の一部が一時的に悪化するだけでも、世界に残された個体そのものを失う事態につながります。

産卵サイクルの破壊

シャンハイハナスッポンは、河岸や湖岸に形成された砂州などを休息や産卵に利用してきたと考えられています。紅河上流部を対象にした研究では、計画されていたダムによって、潜在的な産卵環境の約73%が水没する可能性が示されました。

豪雨やダム操作によって産卵後に水位が急上昇すれば、巣が水没し、卵の孵化率が低下する危険があります。反対に干ばつが長引けば、水辺から産卵場所までの距離が広がり、土壌が乾燥して硬くなるため、メスが巣穴を掘りにくくなります。淡水性カメ類では、干ばつの年に産卵行動が確認されなくなった事例や、巣の水没が個体群の世代交代を妨げる事例も報告されています。

洪水と干ばつは正反対の現象に見えます。しかし、どちらも産卵場所と卵を奪い、次の世代へつながる道を断ち切ります。

性比の偏りではなく、卵の発生そのものへの熱リスク

カメ類のすべてが、卵の温度によって性別が決まるわけではありません。シャンハイハナスッポンのゲノム研究では、メスがZW、オスがZZとなる遺伝的な性決定機構が示されています。近縁のスッポン科でも、同じZZ/ZW型の性染色体が広く保たれていることが確認されています。

そのため、温暖化によってシャンハイハナスッポンの子どもの性別が一方へ偏るとは考えにくく、温度依存性決定による性比の偏りを本種の脅威として扱うことはできません。

ただし、卵の温度と水分は、胚の発育速度、孵化率、幼体の健康状態に影響します。極端な高温や乾燥、長時間の水没は、性別を変えるのではなく、卵を孵化前に死なせる危険を高めます。

シャンハイハナスッポンに残された時間は、すでにほとんどありません。気候変動がもたらす最大の危険は性比の偏りではなく、ようやく生まれるかもしれない次の命が、孵化する前に失われることです。

出典


Questioner: It feels like it’s not just the Yangtze giant softshell turtle, you know? With the climate change we’ve brought on, I get the feeling we’re going to see more and more species unable to live the way they always have.

Me: I couldn’t agree more. And I really feel this isn’t just a wildlife issue—it’s a mirror reflecting our own future.

Questioner: I mean, there’s no guarantee that massive droughts or floods won’t hit my own town. It’s funny… we always conveniently tell ourselves that if disaster strikes, someone else will fix it, or that it’s just a passing phase. But I honestly think this turtle is sending us a message: the time has come to finally wake up and take this seriously.

Me: Exactly. We just blindly assume that the life we had yesterday will naturally be there waiting for us tomorrow. But the Yangtze giant softshell turtle is proving, with its very existence, that when our “everyday normal” shatters, living things can’t just pack up, easily move somewhere else, and adapt to a new environment.

And that applies to us humans, too. When droughts dry up our water, when floods wash away our homes and fields, when the heat gets so intense we can’t even step outside… there’s no guarantee someone will just swoop in and magically restore our old lives.

What we’re looking at with this turtle isn’t just the tragic extinction of some species in a faraway country. It’s a massive question of how we are going to survive on a rapidly changing Earth. I really think it’s trying to tell us, “Don’t wait until you’re down to the very last one to start panicking.”


Thank you so much for taking your valuable time to read this.

I truly hope our thoughts and prayers find their way to the Yangtze giant softshell turtle.

鶏人|Keijin

質問者:シャンハイハナスッポンに限らず僕たちの招いた地球温暖化による気候変動で、いままで通りの生活ができない種が増えてくるような気がするね。

私:そうですね。そして、それは決して野生動物だけの話ではなく、私たち人類の未来を映す鏡でもあると感じています。

質問者:もしかしたら、僕が暮らしている地域でも干ばつや洪水が起こらないとも限らないもんね。不思議と僕たちは、何かあれば誰かがなんとかしてくれるとか、こんなの一時的なものだろうとか、都合のいいように考えてしまうけど、本当はもっとちゃんと考えないといけない時期が来ているって、シャンハイハナスッポンが伝えてくれているって思うよ。

私:そうなんですよね。私たちは、昨日まで続いていた暮らしが、明日も当たり前に続くと思ってしまいます。でも、シャンハイハナスッポンは、その「日々の当たり前」が壊れたとき、生き物は簡単に別の場所へ逃げたり、新しい環境に合わせたりできるわけではないことを、身をもって伝えているように感じます。

そして、それは私たち人類も同じです。干ばつで水がなくなり、洪水で家や畑が流され、暑さで外に出ることさえ難しくなったとき、誰かがすぐに元の暮らしへ戻してくれるとは限りません。

シャンハイハナスッポンから見えることは、遠い国に暮らす一種の絶滅の危機ではなく、変わり始めた地球の上で、私たちがこれからどのように生きていくのかという問題なのだと思います。もしかしたら、「最後の一頭になってから慌てないで」と、シャンハイハナスッポンは伝えてくれているのだと思います。


貴重な時間を、ありがとうございました。

シャンハイハナスッポンに、その想いが届くことを祈ります。

鶏人|Keijin


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