11年後のレッドリスト|スティーブンズウェタ:静かな忘却の森で、名を呼ぶ者を待ち続けて【IUCNレッドリスト比較】

11年後のレッドリスト|スティーブンズウェタ:静かな忘却の森で、名を呼ぶ者を待ち続けて【IUCNレッドリスト比較】 11年後のレッドリスト
※このページは、[IUCNレッドリスト]世界の絶滅危惧生物図鑑(2014年版)に基づいて制作した個人ブログです。
※画像はすべてAI生成(
DALL·E)によるイメージであり、実際の生物写真ではありません。

こんにちは、鶏人|Keijin です。

スティーブンズウェタ(Deinacrida rugosa)は、

2014年、図鑑に【VU:危急】として分類されていました。

1996年、IUCNレッドリストで、【VU:危急】と評価されました。

つまり、1996年から、スティーブンズウェタは

「静かな忘却の森で、名を呼ぶ者を待ち続けて」状態なのです。

※2025年時点で、IUCNレッドリストにおけるスティーブンズウェタの最新評価は1996年版です。それ以降の更新は行われていません。

この記事は、とても短く5分で読めるので、どうぞ最後まで読んでいただけると嬉しいです。

※本記事は専門家による学術的な評価ではなく、公開された資料に基づく個人の調査・見解を含んでいます。
最新かつ正確な分類や保全状況については、IUCN公式サイトなどをご確認ください。
参考:https://www.iucnredlist.org/species/6306/12602415

スティーブンズウェタをめぐる、守るための「毒」という選択

⬇︎スティーブンズウェタの生態です。必要に応じてご覧ください。⬇︎

基本情報|スティーブンズウェタ(Stephen’s Island Wētā)
項目情報
和名スティーブンズウェタ
英名Stephen’s Island Wētā
学名Deinacrida rugosa
分類昆虫類・バッタ目(直翅目)・ウェタ科(Anostostomatidae)
分布ニュージーランド(主にスティーブンズ島および周辺の小島)
主な生息地海岸林・低木林・岩場・草地などの湿潤環境
体長約40〜75mm(大型個体は8cmに達することも)
体重最大25g程度(メスの方が大型)
寿命約2〜3年
IUCN評価【VU:危急(Vulnerable)】(1996年評価、以降更新なし)

特徴

  • 外見と体構造:ニュージーランド特有の大型昆虫「ウェタ」の一種。強靭な後脚と頑丈な体を持つ。体色は茶褐色で、保護色として環境に溶け込みやすい。
  • 性差:メスはオスより大きく、産卵管が発達している。
  • 夜行性:夜に活動し、昼間は岩の隙間や倒木の下などに潜む。
  • 飛べない昆虫:翅を持たないため飛翔できず、歩行・跳躍で移動する。
  • 防御行動:敵に対して後脚を振り上げて威嚇するほか、「擦過音」を発して防御することもある。

生態と行動

  • 食性:雑食性で、落ち葉・果実・昆虫の死骸などを食べる。植物質を主に摂るが、機会的に他の小動物を捕食することもある。
  • 繁殖:主に晩春から夏にかけて繁殖期を迎える。メスは土壌や朽木中に数十個の卵を産む。孵化した幼虫は成虫と同じ形で、小型のまま成長を繰り返す「不完全変態」を行う。
  • 生息環境の制約:スティーブンズ島では外来捕食者(特にネズミ類)が絶滅しており、この島が安全な避難地となっている。
  • 保全の課題:他地域では、ネズミ・イタチ・ネコなどの侵入により絶滅した個体群も存在。
  • 保全活動:ニュージーランド自然保護局(DOC)が人工繁殖と個体移送(トランスロケーション)を行い、他の無人島への再導入プロジェクトも進行している。

2014年絶滅危惧種:スティーブンズウェタ【VU:危急】

北島では100年以上絶滅状態だったが、近年、ネズミ以外の捕食者になりうるすべての哺乳類の一掃に成功した保護区域に一部の個体が移される形で、この種が北島にもどってきた。

出典:訳者 岩槻邦男,太田英利 / 発行者 池田和博 / タイトル「IUCNレッドリスト世界の絶滅危惧生物図鑑」/発行所 丸善出版株式会社 / 発行 2014/01/31 ©️Kunio Iwatsuki, Hidetoshi Ota, 2014

区分目的内容・方法対象種・補足
1. 防御:特殊なフェンスの建設移入哺乳類の侵入を完全に防ぐ・全長8.6kmの捕食者除外フェンスで225ヘクタール(東京ドーム約48個分)の谷全体を囲う
登る動物対策フェンス上部にステンレス製フード(庇)を設置し、ネコ・ポッサムが登っても越えられない構造ネコ、ポッサムなど
穴を掘る動物対策フェンス金網を地中深く埋設し、地下で「スカート状」に広げることで掘削防止ウサギ、ハリネズミなど
飛び越える動物対策高さ約2メートル以上のフェンスで飛越を防止
区分目的内容・方法対象種・補足
2. 駆除:フェンス内部の一掃作業(1999年〜)フェンス内に残存する外来哺乳類を根絶13種以上の哺乳類が対象(ネズミを除く)主な対象:オコジョ、イタチ、フェレット、ネコ、ポッサム、クマネズミ、ドブネズミ、ハリネズミ、ウサギ、ノウサギ、シカ、ブタ、ヤギなど
① 集中的な罠(トラッピング)50km以上の作業道を整備し、無数の罠を設置。特にポッサム対策では8週間で1,000匹以上(約3トン)を捕獲ポッサム、ネコ、オコジョなどに発信機を装着し行動追跡
② 毒餌(ベイトステーション)地上にベイトステーションを多数設置し、ブロディファクム(Brodifacoum)入り毒餌を配置ネズミ類、ハリネズミ、オコジョなど
③ 毒餌(空中散布)ヘリコプターによる空中散布(本土初)で、地上から届かない区域へシリアルベイトを均一散布ネズミ類、ハリネズミ、ポッサムなどを包括的に根絶

この「フェンスの建設」と、その内部での「罠、地上の毒餌、空からの毒餌散布」という徹底的な組み合わせにより、Zealandiaは2000年までに、ネズミ(マウス)を除くすべての移入哺乳類の根絶に成功した。

この安全な環境が確立された結果、2007年からスティーブンズウェタの再導入が開始され、100年以上ぶりに北島本土で彼らが繁殖できるようになったのである。
出典:He tuatahitanga-A world-first sanctuary

⬇︎スティーブンズウェタの主な保護活動の種類です。必要に応じてご覧ください。⬇︎

保護活動の種類内容の概要
生息地の保全ニュージーランド・ウェリントン沖のマナ島やカプティ島などに残る原生林・低木林を保護し、外来捕食者の侵入を防止。
外来捕食者の排除ネズミ・イタチ・ハリネズミなどの捕食動物を駆除し、島嶼における安全な生息環境を維持。
移植・再導入外来種が駆除された島(例:マナ島、ケカ島、マナ島北部保護区)への再導入を実施。生息地を分散させ、個体群の遺伝的多様性を確保。
繁殖と個体群管理繁殖状況のモニタリングを行い、密度が過密にならないよう分散管理を実施。
保護区・保護島の指定マナ島・ケカ島などを「Predator-free Reserve(捕食者フリー保護区)」として法的に管理。
市民・地域参加地元住民・学生・ボランティアが外来種駆除や夜間調査に参加し、ウェタ保全教育を推進。
研究とモニタリング定期的な個体数調査、夜行性行動・繁殖期・気候変動の影響を長期モニタリング。研究機関・大学・保護団体が連携してデータを収集。

主な取り組み

  • 生息地保全:島嶼部の原生林・低木林環境を保護し、外来捕食者の侵入を防止
  • 捕食者駆除:ネズミ・イタチ・ハリネズミなどの外来種を排除し、捕食圧を軽減
  • 再導入事業:捕食者がいない保護島にウェタを移植し、複数の個体群を確立
  • 繁殖管理:個体密度や繁殖期を把握し、遺伝的多様性を維持
  • 保護区指定:マナ島・カプティ島などを「捕食者フリー保護区」として法的に保護
  • 市民参加:学校・地域ボランティアによる夜間観察・モニタリング活動
  • 研究活動:気候変動が生息分布や活動周期に与える影響を長期的に研究

最後に

これを読んで、どう感じましたか?

「罠や地上の毒餌、さらに空からの毒餌散布って、ちょっとやりすぎじゃない?」

そう思いますよね。

たしかに、人間が招いた結果であって、ネズミに悪意があるわけではありません。

この点は、もう少し詳しく調べてみます。


区分主な論点概要
1. 動物愛護・倫理的な懸念毒による苦痛1080やブロディファクムなどの毒は即死ではなく、動物に強い苦痛を与えるためSPCAなどが「非人道的」と批判。
「害獣」というレッテルポッサムやネズミ、オコジョに悪意はなく、人間の導入による結果であるにもかかわらず「害獣」とされる倫理的問題。
無差別な殺害空中散布は対象を問わずエリア内の動物を殺害する手法で、「空から死を撒くようだ」と嫌悪感を持つ人も多い。
2. 非対象種(在来種)へのリスク在来種の誤食鳥や昆虫が誤って毒餌を食べる危険。緑色の着色や匂い付けで対策しているが、リスクは残る。
二次被害(食物連鎖)毒で死んだ動物を食べた猛禽類や犬などが中毒死する可能性。ブロディファクムは残留性が高く、1080よりリスクが大きい。
3. 環境と人間への懸念水質汚染空中散布による河川・飲料水汚染への不安。政府は安全基準内と説明するが、住民の懸念は根強い。
ペット・家畜の被害散歩中の犬などが毒餌や死骸を食べる事故が発生。飼い主や農家から強い反対。
狩猟への影響鹿などの移入種が毒で死亡し、狩猟者コミュニティからも反発がある。
4. それでも実行する理由絶滅の危機他に現実的な方法がなく、在来種を守るための苦渋の選択。
進化の特異性ニュージーランドの生態系は哺乳類がほぼ存在しない環境で進化したため、在来種は捕食者への防御手段を持たない。
圧倒的な絶滅速度捕食者導入後、鳥類の約4分の1が絶滅。罠だけでは繁殖スピードに追いつかず、キウイのヒナの95%が捕食される。

保全の現場は、「毒による非人道的な死」と「捕食者による在来種の絶滅」という二つの倫理的問題のどちらかを選ばねばならないという、究極のジレンマに直面している。

Zealandiaの空中散布は、「フェンス内の在来種を守るために、一度だけ外来種を徹底的に排除する」という苦渋の決断だった。この問題は、今もなおニュージーランド社会を二分する重い議論である。
出典:How pest-fenced ecosanctuaries and Predator Free 2050 can work together better


「これって、世論の圧力やほかの産業の影響があったのでは?」

そう疑いたくなりますよね。わかります。

この点は、もう少し踏み込んで調べてみます。


区分主な要因・圧力内容の概要
1. 最大の要因:産業(特に農業)からの圧力経済的な理由「やりすぎ」とも思える大規模駆除の背景には、環境保全と並ぶ強力な経済的動機がある。
🐄 牛結核(Bovine Tuberculosis)ニュージーランドの主要産業である酪農・畜産業において、牛結核(TB)が最大の脅威。ポッサムが病原菌を媒介する。
経済的脅威牛結核が蔓延すると、家畜の殺処分や輸出停止が起こり、国際市場での信頼を失う。国家的な経済危機に直結。
駆除の推進力環境保全省(DOC)に加え、家畜衛生を管轄する一次産業機関 OSPRI が、牛結核撲滅を目的に1080空中散布を強力に推進。
結論空中散布の多くは「キウイを守るため」であると同時に、「牛と酪農産業を守るため」の経済的動機によって支えられている。

区分主な要因・圧力内容の概要
2. 世論の「二重の圧力」二重の板挟み政府やDOCは「毒を使うな」と「在来種を救え」という相反する世論の板挟みになっている。
【反対の圧力】「毒を撒くな」動物愛護や環境保全の観点から、1080使用に反対する運動(アンチ1080運動)が継続。「残酷」「危険」「水が汚染される」と批判。
【賛成の圧力】「在来種を救え」国鳥キウイやカカポなど在来種を守るため、捕食者根絶を求める世論が強い。国家目標「Predator Free 2050」もこの支持が背景。
政治的な板挟み政府の対応「毒を使わずに在来種を守る」方法が存在しないため、政府や科学者は苦しい立場にある。

区分主な要因・圧力内容の概要
3. その他の産業の影響観光業「鳥の声が聞こえる森」は観光資源。外来捕食者により鳥がいない森になると観光価値が失われるため、業界は駆除を支持。
林業ポッサムが商業林の若木を食害するため、林業界も害獣駆除を支持している。

「基幹産業である酪農を牛結核から守る」という強い経済的要請が、保全活動と利害を一致させ、動物愛護の批判や反対世論を押し切ってでも手法を継続させる原動力となっている。

この問題は、国家経済、在来種保護、動物倫理が正面から衝突する、ニュージーランド最大のジレンマである。


「もし人間が“化学”という名の魔法を持ち込まなければ、生態系に毒なんて必要なかったんでしょうね。」

本当にそう感じます。

毎日いろんな種を調べていて思うのは、結局どの問題も「人のエゴが招いた結果」なんですよね。

そして、そのエゴをまた別のエゴで解決しようとしている。

そこに、どうしようもない悲しさを感じます。


ここまで読んで、『あなた』は、どのように感じましたか?

コメントで意見を聞かせてくれると、とても嬉しいです。

あなたの貴重な5分間を、本当にありがとうございました。

スティーブンズウェタに、あなたの5分が届くことを祈ります。

鶏人|Keijin

コメント