11年後のレッドリスト|アフリカトタテグモ:飛べない糸が、世界を狭めた【IUCNレッドリスト比較】

11年後のレッドリスト|アフリカトタテグモ:飛べない糸が、世界を狭めた【IUCNレッドリスト比較】 11年後のレッドリスト
※このページは、[IUCNレッドリスト]世界の絶滅危惧生物図鑑(2014年版)に基づいて制作した個人ブログです。
※画像はすべてAI生成(
DALL·E)によるイメージであり、実際の生物写真ではありません。

こんにちは、鶏人|Keijin です。

今回は、アフリカトタテグモ(学名:Stasimopus robertsi)の「低移動性」の話です。

このクモは、2014年の図鑑では Stasimopus robertsi の名前で「EN:危機」として紹介されていました。
ところが今は、IUCNのレッドリストだと「評価が付いていない」扱いになっていたんです。(未評価で検索に出にくい)

さらに少しややこしいことが起きているみたいなので、アフリカトタテグモは今も、
「飛べない糸が、世界を狭めた」状態なのだと思います。

この記事は短く、5分で読めます。
よかったら最後まで読んでください。

※2026年時点で、IUCNレッドリストにおける最新評価は未評価です(以降の更新は確認されていません)。
※本記事は専門家による学術的な評価ではなく、公開された資料に基づく個人の調査・見解を含みます。
※IUCN評価は「世界全体」と「地域・個体群」で分かれる場合があります。地域によって状況は異なります。
最新かつ正確な分類や保全状況については、IUCN公式サイトなどをご確認ください。
参考:Cryptic Diversity of South African Trapdoor Spiders: Three New Species of Stasimopus Simon, 1892 (Mygalomorphae, Ctenizidae), and Redescription of Stasimopus robertsi Hewitt, 1910(学名:Stasimopus robertsi

飛べない・動けない・長い時間──“隣の庭”が別世界になるクモの話

⬇︎アフリカトタテグモの生態(基本情報)です。必要なら開いてください。

基本情報|アフリカトタテグモ(Trapdoor Spider)
項目情報
和名アフリカトタテグモ(アフリカ戸蓋蜘蛛)
英名African Trapdoor Spider
学名Stasimopus robertsi
分類節足動物・クモ綱・真正クモ目・トタテグモ科(現在:アフリカトタテグモ科)
分布南アフリカ(特にハウテン州周辺の限られた地域)
主な生息環境乾燥した草原、サバンナ、森林周辺の地中
体長約3〜5cm(メスはオスより大きい)
体重数グラム程度
寿命メス:約10〜15年、オス:1〜2年程度(繁殖後に死ぬ)

特徴

  • 名前の由来:「トタテグモ(戸蓋蜘蛛)」は、地中に巣穴を掘り、“戸”のようなふたで入り口を隠す性質に由来します。
  • ふたつきの巣:地中に円形の巣穴を掘り、蓋には土や枯葉を混ぜてカモフラージュされている。
  • 頑丈な体:がっしりとした体と短い脚をもち、光沢のある黒褐色の外見。
  • 毒の強さ:毒はあるが、人間には基本的に無害とされています。

生態と行動

  • 待ち伏せ型捕食者:巣穴のふたの内側に脚をかけて待機し、獲物の振動を感知して一瞬で飛びかかる。
  • 食性:主に昆虫や小型節足動物などの無脊椎動物を捕食。
  • 繁殖:交尾後、メスは巣の中に卵のうを産み、ふ化した子グモはある程度まで巣内で過ごす。
  • 分布が極めて限定的Stasimopus robertsi は南アフリカの一部のみに生息し、局所固有種として知られています。

2014年絶滅危惧種:アフリカトタテグモ【EN:危機】

ここ数年の間は、発見地は庭のみではあるが、変異の著しいおそらく別種と思われるものも確認されている。

出典:訳者 岩槻邦男,太田英利 / 発行者 池田和博 / タイトル「IUCNレッドリスト世界の絶滅危惧生物図鑑」/発行所 丸善出版株式会社 / 発行 2014/01/31 ©️Kunio Iwatsuki, Hidetoshi Ota, 2014

論点要点(事実関係は根拠がある範囲で修正済み)根拠(出典)
「レッドリストにヒットしない」理由IUCN(世界)では未評価/評価情報が揃っていない扱いで語られることがあり、検索しても出てこない(=“評価が無い/不足している”側の理由が大きい)。日本の環境省レッドリストは当然ながら国内種中心のため、南ア固有種は原則ヒットしない。IUCN評価が揃っていない旨の整理(総説)
出典:Springer Nature Link
現在のステータスStasimopus robertsi(Roberts’ Cork-Lid Trapdoor Spider)は、南ア国内ステータス:NT(Near Threatened)として明記されている。加えて、“都市化による生息地喪失”が脅威で、追加調査(特に♂)が必要とされる。「NATIONAL STATUS: NT」および脅威・調査必要性
出典:ResearchGate
「生息地の83%喪失」「庭だけが最後の砦」 “83%”“庭が最後の砦”は、こちらで一次ソース確認できる形では裏取りできなかったため、表現を安全側に修正:分布が限られる固有種で、都市化による生息地喪失が継続し、現存地点は10〜15程度と見積もられている「10–15 extant localities」「Pretoria(Mayville)由来」「脅威=urbanization」
出典:ResearchGate
「変異」の正体=隠蔽種(2012で明確化)2012年の整理で、S. robertsi と混同され得る近縁群の区別が進み、S. filmeri / S. griswoldi / S. hewitti が新種として扱われる3新種の提示・キー
出典:Plazi TreatmentBank
「見た目が似ていて区別が難しい」の根拠S. robertsi の♀・幼体は、S. hewitti / S. griswoldi などと形態的に区別困難と明記される。さらに古い文献の♀同定には不確実性があり、誤同定を含み得る、と整理されている。「Females and immature stages… indistinguishable」「female identifications uncertain」
出典:Plazi TreatmentBank
「科の変更」:Ctenizidae → StasimopidaeStasimopidae(Bond, Opatova & Hedin, 2020)として扱われ、Stasimopus を含む独立科として整理されている(少なくとも“現在の標準的カタログ”ではこの扱い)。WSC(Stasimopidae / Stasimopus)
出典:Nature
SANSAガイドの「FAMILY STASIMOPIDAE…2020」
出典:ResearchGate
研究が進むほど“種数が増える”構図(データ不足×局地性)SANSA系資料では、採集困難でサンプリング不足タイプ産地だけで知られる種が多いDD(情報不足)が非常に多いことが明記されている。これが「研究が進むほど多様性が解像度を上げて見えてくる」背景になる。「not well sampled」「type localityのみが多い」「data deficientが多い」
出典:ResearchGate
2023年の新展開(“9新種”)2023年のZootaxaで Stasimopus から9新種が記載されている(= 近年も“増え続ける”タイプの群であることを裏付ける)。Zootaxa(2023)
出典:Magnolia Press
生態(コルク状の蓋/オスが徘徊)コルク状の厚いトラップドア(Cork-lid trapdoor)を作るグループで、成熟オスは交尾相手を探して徘徊しやすい(= 目撃・採集されやすい局面が偏る)。「COMMON NAME: Cork-lid Trapdoor spiders」「adult males… wander around」
出典:ResearchGate
まとめS. robertsi をめぐる状況は「都市化で局地的な生息地が削られ、国内NTとして懸念される面」と「同定が難しく、研究で隠蔽種がほどけて“種の粒度”が増えていく面」が同居している——までは根拠付きで言える。上記の統合:国内NT+都市化脅威
出典:ResearchGate
隠蔽種・同定困難
出典:Plazi TreatmentBank
2023の新種追加
出典:Magnolia Press
南アフリカ固有のコルク蓋型トタテグモ Stasimopus robertsi は、国際的には未評価として検索に出にくい一方、国内では準絶滅危惧(NT)とされ、都市化による局地的生息地の喪失が主要脅威である。現存地点は限られ、追加調査(特に成熟オス)が求められる。2012年以降、遺伝・形態解析により隠蔽種が分離され、2020年にはStasimopidaeとして再定義、2023年には新種追加も報告され、低移動性と調査不足が多様性把握を難しくしている。

⬇︎アフリカトタテグモの保護活動の種類です。必要なら開いてください。

保護活動の種類内容の概要
生息地の保全草原やサバンナの土壌環境を保護し、開発・農地化・放牧圧からの劣化を防ぐ取り組みを実施。
生息地破壊の規制採掘、道路建設、都市拡大による地表撹乱を制限する土地利用計画を推進。
国際的な取引規制ペット目的の乱獲に対して流通・輸出管理を強化。必要に応じて CITES 登録検討段階の議論が進行。
保護区の設定固有分布域(特に南アフリカの局所地域)において保護区・自然保全区の整備を促進。
市民・地域参加地元住民が巣穴が多い区域を地図化し、開発計画との調整に協力する「市民科学」活動を支援。
研究とモニタリング巣穴密度、生息範囲、繁殖成功率、遺伝的多様性を調査し、再評価と保護方針に反映。
教育・普及啓発ペット取引や誤解(「危険な毒グモ」など)を正し、地域での認識向上を行う教育プログラムを展開。

主な取り組み

  • 生息地保全:草地・低木地帯の自然状態を維持し土壌攪乱を抑える
  • 土地利用管理:採掘・農地化・道路開発による生息環境の破壊を制御
  • 取引規制の強化:ペット市場向けの採集を制限・監視
  • 保護区整備:局所的な分布域を優先地域として保全対象に設定
  • 市民科学の参加:住民による巣穴調査・地図化
  • モニタリング研究:生息密度変化と遺伝的多様性の追跡
  • 教育活動:学校や地域団体向けの環境教育・認識改善活動

最後に

読んでみて、どんなふうに感じましたか?

なんだか難しいことがいっぱい書いてあったけど、要するに都市化で生息地がかなり減ったから、今は人が暮らす場所――たとえば庭みたいな環境にも残っている、ってことなんだね。
しかも見た目が似すぎてて、自分の庭にいる個体と隣の庭にいる個体が、もしかしたら別の種かもしれない。そういう“隠れた多様性”があるから、調べても調べても追いつかないくらい新種が増えていく、ってややこしい話なんだよね。
でもさ、低移動性って言っても、隣の庭くらいは移動できそうじゃない? なのに、なんでそんなに地域ごとに分かれちゃうんだろう。

たしかに、「低移動性」って具体的にどれくらいの距離のことなんだろうって気になりますね。

調べてみます。


大きな理由何が起きているかどうして「低移動性」になるか
1) 「バルーニング」をほとんどしない(空を飛ばない)ジョロウグモなど多くのクモは、糸を風に乗せて移動する“バルーニング”で、広い範囲へ拡散できる。一方でトタテグモ類(= いわゆる原始的なクモのグループ)は、全体として分散能力が低いとされ、バルーニングは稀生まれた子グモが“空ルート”を使えない(使えても例外的)ので、基本は地上を歩いて行ける範囲だけで世代交代が回る。→ 結果として、集団どうしが混ざりにくい。※補足:mygalomorph(トタテグモ類)でもバルーニングが報告される例はあるが、「一般的には稀/限定的」という整理が安全。
2) メスは「究極の引きこもり」(巣穴に定住)メスは良い場所に巣穴を作ると、長期間そこに定住しやすい。巣が壊されない限り、基本的に引っ越ししない。移動が起きやすいのは主に成熟オス(繁殖期)で、メスほど定住的ではない。“動く個体(オス)”が限られるうえに、舗装路・建物・造成地などは、地上を移動するクモにとって大きな障壁になりやすい。たとえ距離が短くても、間にコンクリートや乾燥した開け地があると、交流(交配)が途切れやすい。
3) 時間スケールが違う(何万〜何百万年単位で分断が効いてくる)「隣の庭に行けるか?」は“今この数年”の感覚。でも種分化(別種になる)は、川の形成・乾燥化・植生の変化などで集団が分断されたあと、長い時間をかけて進む。見た目が似たままDNA的に別種になりやすい(隠蔽種)。いったん分断が起きると、もともと移動が得意ではないため再会しにくい。→ それぞれの場所で独自に進化して、結果的に「同じに見えるのに別種」が増えやすい。だから今私たちが見ている“庭の個体”も、過去に分かれた系統がたまたま残っている可能性がある。

出典:BALLOONING MYGALOMORPHS

人間が開拓したり、農地を広げたりして、もともと一つだった群れがあちこちに分断されて――それぞれが「別のコロニー」みたいになって、そこで独自に進化していったってことだね。
で、移動したくても、クモの糸でスパイダーマンみたいにビューン!って飛んでいくことは、トタテグモ系だとほとんどしない。
しかも、奥さん(メス)はお家が大好きで、巣穴を作ったら基本そこにずっといる。だから、すぐ近くの「お隣のコロニー」にすら行かない。
そう考えると、クモたちにとっての「隣の庭」って、私たちで言ったら 日本とオーストラリアくらい遠いって感覚なのかもね。

その感じ、かなり近いと思います。
クモって、みんながみんなスパイダーマンみたいに糸で自由に飛び回って、どこへでも行ける――みたいなイメージで見てたけど、トタテグモ類はそういう移動が基本的に得意じゃないタイプなんですよね。(もちろん例外的に“飛ぶっぽい”報告が出ることもあるけど、あくまでレア)

だからこそ、人間の物差しで「ここに道をアスファルトで通す」とか、「長くて高い塀を作る」とかをやると、目に見える大きな生き物だけじゃなくて、こういう“地面の世界”で生きてる生き物にとっては、移動が難しいを通り越して、海峡を一本作っちゃったくらいの出来事になる――って思っておいた方がいいんでしょうね。

これからは、自分の家の庭に塀を作ったり、花壇を作ったりするときに、ほんの少しだけでも、トタテグモの気持ちになってミクロの世界から考えるってことを忘れないようにしようと思いましたよ。


ここまで読んで、『あなた』は、どのように感じましたか?

コメントで意見を聞かせてくれると、とても嬉しいです。

あなたの貴重な5分間を、本当にありがとうございました。

アフリカトタテグモに、あなたの5分が届くことを祈ります。

鶏人|Keijin

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