11年後のレッドリスト|オオオトメエイ:深い川底で、静かな悲鳴をあげている【IUCNレッドリスト比較】

オオオトメエイ 11年後のレッドリスト
※このページは、[IUCNレッドリスト]世界の絶滅危惧生物図鑑(2014年版)に基づいて制作した個人ブログです。
※画像はすべてAI生成(
DALL·E)によるイメージであり、実際の生物写真ではありません。
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こんにちは、fukumomo3_photo です。

オオオトメエイ(Urogymnus polylepis)は、

2014年、図鑑に【VU:危急】として分類されていました。

2021年、IUCNレッドリストで【EN:危機】と評価されました。

つまり、2014年から2021年にかけて、

オオオトメエイは「深い川底で、静かな悲鳴をあげている」状態になってしまいました。

※2025年時点で、IUCNレッドリストにおけるオオオトメエイの最新評価は2021年版です。それ以降の更新は行われていません。

この記事は、とても短く5分で読めるので、どうぞ最後まで読んでくれると嬉しいです。

※本記事は専門家による学術的な評価ではなく、公開された資料に基づく個人の調査・見解を含んでいます。
最新かつ正確な分類や保全状況については、IUCN公式サイトなどをご確認ください。
参考:https://www.iucnredlist.org/species/195320/104294071

ダムと生態系:利点と影響、そして共存への道

⬇︎オオオトメエイの生態です。必要に応じてご覧ください。⬇︎

基本情報|オオオトメエイ(Giant Freshwater Stingray)
項目情報
和名オオオトメエイ(イバラエイ目/淡水エイ)
英名Giant Freshwater Stingray / Giant Freshwater Whipray
学名Urogymnus polylepis
分類軟骨魚綱・トビエイ目・アカエイ科(Dasyatidae)
分布東南アジアの大河川や汽水域(メコン川、チャオプラヤ川、ボルネオ、ニューギニアなど)
主な生息地河底の砂や泥の浅い場所、下流の河口部など。エステュアリーや大河川の下部を好む
体盤幅/体長体盤幅 最大約2.2m(報告では2.4m)、全長では最大5mに達する可能性あり
体重最大約300kg〜600kgにもなるとされ、記録では300 kg〜661lb(約300kg)報告あり
寿命正確な寿命データは見当たりません。

特徴

  • 体形と色彩:薄くて前部が幅広い卵形の体盤(胸鰭)が特徴。吻は鋭く突き出し、尾は細長くひも状で鰭はない。体表は灰褐色で、腹面は白く、胸鰭・腹鰭の縁には広い暗色帯がある。
  • 捕食様式:河底に潜む小魚や底生無脊椎動物(甲殻類、貝類など)を電気受容器で感知して捕食。まれに岸辺に出てミミズを食べることもある。
  • 繁殖様式:胎生(卵黄初期→母体のヒストロフ=「子宮乳」で栄養補給)。1回に1〜4仔を産み、体盤幅約30cmで誕生。オス成熟は体盤幅約1.1m。
  • 生態:主に底生性で非移行性(水塩間を移動しない)。毒のある尾棘(最大35cm)を持つが、攻撃性は低く、人に襲いかかることはない。

生態と行動

  • 底生活:砂泥の川底に潜って生活しており、浅く広い河床環境が重要。
  • 人間との関係
    • 漁師により肉や軟骨目的で漁獲されるほか、スポーツフィッシングや水族館展示向けにも捕獲されることがある。捕獲後の生存率は不明。
  • 分布と規模の変化
    • メコン川にて13フィート(約4m)、300kg超の個体が記録され、「最大全淡水魚」として注目される。
  • 脅威:過剰漁業、ダム建設による生息地破壊・分断、汚染などにより、タイ中央部やカンボジアでは個体群数が30〜50%減少、ある場所では最大95%減少との報告あり。

保全状況

  • IUCN:全体では「絶滅危惧(Endangered, EN)」と評価され、タイではさらに深刻な「絶滅危惧IA類(Critically Endangered)」とされた地域も存在。
  • 保護対策
    • タイのチャイナート(Chai Nat)にてかつて飼育・繁殖プログラムが試みられたが、1996年以降中断された。
    • 生息地の保全と漁獲規制の強化が今後の重要課題。

2014年絶滅危惧種:オオオトメエイ【VU:危急】

生息地である河川の変化や劣化も脅威となっており、それは森林伐採、ダム建設、水質汚染などきまさまな要因によって引き起こされている。さらに、ダムによって個体群の一部が隔離されてしまうことにより、交配がさまたげられるという脅威もある。

出典:訳者 岩槻邦男,太田英利 / 発行者 池田和博 / タイトル「IUCNレッドリスト世界の絶滅危惧生物図鑑」/発行所 丸善出版株式会社 / 発行 2014/01/31 ©️Kunio Iwatsuki, Hidetoshi Ota, 2014

ダムが作られることによって起こる、人類にとっての利点と生態系への影響を調べてみた。

観点ダムがもたらす利点生態系への影響
治水洪水被害を防ぎ、下流域の人々の生命・財産を守る下流の水位変動が不自然になり、植物や生物の生息環境が不安定化
利水農業用水・工業用水・水道水として利用され、安定した食料生産や産業を支える湖化による環境変化で、流れを好む魚や水生昆虫の生息地が失われる
水力発電二酸化炭素を排出しないクリーンエネルギーで温暖化対策に貢献水の滞留により水温変化・アオコ発生などで水質が悪化
レクリエーション釣り・ボート・キャンプなどで人々の憩いの場となる土砂の流れが止まり、下流や海岸の地形・生息地が痩せ細る
その他(移動・遺伝的影響)ダムが魚の移動を妨げ、個体群が分断。近親交配による遺伝的多様性の低下で存続リスク増大

ここでの一番の問題は、個体群が分断されることだと思われる。

例えば、アユは川で生まれて海に下り、成長して再び生まれた川を遡上して産卵する回遊魚だけど、

川の途中にダムがあると、海から遡上してきたアユはダムに阻まれて上流の産卵場所へたどり着けない。

これにより、ダム上流のアユの個体群は消滅してしまう。

たとえダムの上流にアユが残っていたとしても、下流の集団との交流が断たれるため、遺伝的な孤立状態に陥ることになる。

⬇︎オオオトメエイの主な保護活動の種類です。必要に応じてご覧ください。⬇︎

保護活動の種類内容の概要
繁殖地の保護メコン川やチャオプラヤ川などの淡水域での繁殖地を保全し、砂州や浅瀬での営巣環境を守る
混獲の防止漁具(刺し網や底引き網)での混獲を減らすため、漁法規制や選択的漁具の導入を推進
水質汚染対策工業排水や農薬流入による河川汚染を防止し、水質改善を進める
国際的な取引規制ワシントン条約(CITES)附属書Ⅰにより国際取引を禁止
保護区の設定メコン川流域や重要な繁殖地を淡水保護区として指定
市民・地域参加地元漁民や住民による資源管理、エコツーリズム、環境教育の普及
研究とモニタリング個体数調査、衛星タグや標識による行動追跡、繁殖状況の把握

主な取り組み

  • 繁殖地保護:メコン川などで繁殖環境を守り、浅瀬や砂州を保全
  • 混獲対策:漁業者に漁法規制や選択的漁具導入を推進
  • 水質改善:工業排水や農薬流入を防ぎ、河川の水質を保全
  • 国際保護条約:CITES附属書Ⅰによって国際取引を禁止
  • 保護区整備:重要な繁殖地を淡水保護区として指定
  • 地域参加:漁民や住民の協力による資源管理や教育活動
  • 調査研究:衛星タグで移動経路を追跡し、個体数や繁殖状況をモニタリング

最後に

これを読んでみて、どのように感じましたか?

「電気ないと困るからな」

と、利己的な考えですか?

「川が曲がって流れる意味を考えたい…」

と、自然の流れを重視しますか?

感じ方は、いろいろあると思います。

「ダムを建設して自然を改変し、問題が起きたから保全活動を行う」という一連の流れは、

結局は人間が引き起こした問題に人間が対処しているに過ぎず、自然の流れを無視している。

根底には人間の都合を優先する「利己的な行い」があると捉えることができる。

対策仕組み課題
魚道の設置ダム脇に通路を作り、魚が遡上・降下できるようにする(階段式、バーチカルスロット式など多様)種によって利用が難しい/大型ダムでは対応困難
捕獲と運搬下流で魚を捕獲し、トラック等で上流へ運び放流(「魚のタクシー」方式)人手・コストが大きい/魚へのストレス/全数対応は不可
ダム撤去ダム自体を撤去し、川の連続性や土砂流下を回復治水・利水・発電機能の代替が必要/高コスト/社会的合意が必須
環境放流ダムから意図的に水量を増やして放流、小規模洪水を起こし環境改善水利用や安全との調整が必要/効果が一時的な場合も
生息地再生上下流に瀬や淵を造成し、産卵場所や稚魚の隠れ場を確保範囲が限定的/維持管理が必要
人工繁殖と放流人工的に繁殖させた魚を放流し、個体群を補強遺伝的多様性の低下リスク/長期的には根本解決にならない

しかし、その後の保全活動は、単なる利己的な後始末という側面だけでなく、

人類の価値観が「自然の支配」から「自然との共存」へと少しずつ移行しているような気がする。

観点具体例・仕組み人間への恩恵
漁業資源の回復と地域経済活性化・熊本県・荒瀬ダム撤去 → アユの遡上・漁獲量増加、遊漁者増加
・米国・エルワ川 → サケが100年ぶりに遡上、先住民族文化復活
漁業収入増加、観光・レクリエーション発展、地域経済の底上げ
自然の恵み(生態系サービス)の回復・水質浄化 → 植生・土壌が天然フィルターに
・防災機能 → 土砂流下で砂浜維持、高潮や津波の防波堤に
・栄養供給 → 栄養塩が海に届き漁業を支える
安全な水利用コスト削減、防災力強化、沿岸漁業の安定
文化・精神的な豊かさの回復 ・文化の継承 → アユ漁・川祭り・舟運など伝統の再生
・心身の健康 → 散歩・釣り・カヌーなど自然体験
地域文化の再生・継承、ストレス軽減、心身の健康促進

結論
「自然環境を守る=利他的な行動」ではなく、経済・防災・文化の面で 巡り巡って私たち自身に返ってくる“未来への投資” であることを、科学的・経済的に裏付ける事例が多数存在する。

そして、少しずつであるがその利他的な行動が、巡り巡って自分達に返ってきているようだ。

ここまで読んで、『あなた』は、どのように感じましたか?

コメントで意見を聞かせてくれると、とても嬉しいです。

あなたの貴重な命である5分間を本当にありがとうございました。

オオオトメエイに、あなたの5分が届くことを祈ります。

fukumomo3_photo


インスタでは、オオオトメエイたちの姿を“図鑑みたいに”並べて見られます。
ビジュアルで伝える命の物語、よかったらのぞいてみてください。

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