11年後のレッドリスト|シチリアモミ:風だけが歳月を数えていた森の片隅で【IUCNレッドリスト比較】

11年後のレッドリスト|シチリアモミ:風だけが歳月を数えていた森の片隅で【IUCNレッドリスト比較】 11年後のレッドリスト
※このページは、[IUCNレッドリスト]世界の絶滅危惧生物図鑑(2014年版)に基づいて制作した個人ブログです。
※画像はすべてAI生成(
DALL·E)によるイメージであり、実際の生物写真ではありません。
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こんにちは、fukumomo3_photo です。

シチリアモミ(Abies nebrodensis)は、

2014年、図鑑に【CR:深刻な危機】として分類されていました。

2017年、IUCNレッドリストで、【CR:深刻な危機】と評価されました。

つまり、2014年から2017年にかけて、シチリアモミは

「風だけが歳月を数えていた森の片隅で」状態なのです。

※2025年時点で、IUCNレッドリストにおけるシチリアモミの最新評価は2017年版です。それ以降の更新は行われていません。

この記事は、とても短く5分で読めるので、どうぞ最後まで読んでいただけると嬉しいです。

※本記事は専門家による学術的な評価ではなく、公開された資料に基づく個人の調査・見解を含んでいます。
最新かつ正確な分類や保全状況については、IUCN公式サイトなどをご確認ください。
参考:https://www.iucnredlist.org/species/30478/91164876

2014年の警鐘は現実に──燃え続ける地球とシチリアモミ

⬇︎シチリアモミの生態です。必要に応じてご覧ください。⬇︎

基本情報|シチリアモミ(Sicilian Fir)
項目情報
和名シチリアモミ(シチリアトウヒとも呼ばれることがある)
英名Sicilian Fir / Nebrodi Fir
学名Abies nebrodensis
分類植物界・マツ目・マツ科・モミ属(Abies)
分布イタリア・シチリア島北部のマドニエ山地(Madonie Mountains)のみ
主な生息地標高1,400〜1,600mの石灰岩質斜面
樹高約10〜20m(成木)
樹齢数百年に達する長寿樹
IUCN評価(2017年)【CR:深刻な危機(Critically Endangered)】

特徴

  • 名前の由来:「シチリアモミ」は、イタリア・シチリア島の固有種であることから命名された。
  • 外見:常緑針葉樹で、樹形は円錐形。葉は濃い緑色で短く、裏面に白い筋(気孔帯)がある。
  • 香りと材質:木材は軽く柔らかいが、伐採は厳しく制限されている。
  • 成長:他のモミ属に比べ成長が遅く、乾燥や高温への耐性は弱い。
  • 個体数:20世紀後半までに激減し、1990年代には野生個体がわずか約30本まで減少した。

生態と行動

  • 生息環境:冷涼で湿潤な気候を好み、石灰岩質の急斜面に根を張る。乾燥が進む地中海性気候下では生育が困難。
  • 繁殖:種子の発芽率が極めて低く、自然更新が難しい。人工的な苗木育成による再生が進められている。
  • 脅威:気候変動による乾燥化、過去の過伐採、放牧圧、遺伝的多様性の低下など。
  • 再発見の歴史:1900年代初頭に絶滅したと考えられていたが、1957年に再発見された。
  • 保全活動:現在、イタリア政府とEUの自然保護プログラム(Natura 2000)により、種子バンク・苗木の再導入・遺伝的多様化プロジェクトが行われている。

2014年絶滅危惧種:シチリアモミ【CR:深刻な危機】

現存群落が小さいため、偶発的な事故にあう危険があるし、火災はとくに危険である。

出典:訳者 岩槻邦男,太田英利 / 発行者 池田和博 / タイトル「IUCNレッドリスト世界の絶滅危惧生物図鑑」/発行所 丸善出版株式会社 / 発行 2014/01/31 ©️Kunio Iwatsuki, Hidetoshi Ota, 2014

要素内容
地域イタリア・シチリア島
記録的熱波2021年8月、ヨーロッパ観測史上最高の48.8℃を記録
原因気候変動による極端な高温と乾燥化
影響森林が著しく乾燥し、火災発生時に燃え広がりやすくなる
火災の頻発熱波のたびにシチリア島を含む南イタリア各地で数百件規模の森林火災が発生
被害の可能性シチリアモミの自生地はマドニエ自然公園内のごく限られた範囲にあり、成熟個体は約30本。大規模火災が発生すれば壊滅的な被害の恐れがある
総評気候変動による熱波と乾燥が、極めて限られた生息地をさらに危険に晒している

2014年の図鑑で懸念されていたそのリスクは、近年の気候変動の影響により、残念ながらさらに高まっていると言える。

保護活動の種類具体的な内容
生息域内保全(In-situ)残存個体の保護:フェンス設置による動物の食害防止、ビデオ監視システムの導入などにより、現存する約30本の成木を厳重に保護。
自然再生の促進:周囲の環境を整備し、自然発生した苗木が健全に育つよう管理。2024年12月時点では522本の苗木が確認されています。
生息域外保全(Ex-situ)苗木の育成と再植林:純粋な遺伝子を持つ健康な苗木を育て、マドニエ公園内の適地に再植林。
遺伝資源の保存:将来に備えて、種子を低温保存する種子バンクや、花粉・胚を−196℃で保存するクライオバンク(凍結保存庫)を設立。
クローン果樹園の設置:現存する30本すべての木を接ぎ木し、遺伝的多様性を維持・向上させる果樹園を造成。将来的な種子供給源を確立しています。

しかし、一方で、最新の技術も駆使した手厚い保護活動によって、個体数を少しずつ増やし、遺伝的な多様性を未来へ繋ぐための努力が続けられている。

⬇︎シチリアモミの主な保護活動の種類です。必要に応じてご覧ください。⬇︎

保護活動の種類内容の概要
生息地の保全イタリア・シチリア島のマドニエ山地に残る原生林を保護し、開発や放牧を制限
個体群の保護残存する成木を柵で囲い、踏み荒らし・伐採・病害から守る措置を実施
人工増殖・植栽採取した種子を育苗し、周辺地域や標高の異なる場所に再導入を試みる
保護区の設定「パルコ・デッレ・マドニエ自然公園」として国立レベルの保護区に指定
遺伝資源の保存種子バンクや植物園で遺伝的多様性を維持し、将来の再導入計画に備える
国際的支援EUの「LIFE-Nature」プログラムによる資金援助を受け、保全事業を推進
研究とモニタリング個体数変動・発芽率・遺伝構造の調査を継続し、保全効果を科学的に評価

主な取り組み

  • 森林保全:生息地となるマドニエ山地の原生林を法的に保護
  • 個体保護:残存する樹木を柵で囲い、放牧や人為的干渉を防止
  • 人工植栽:種子を採取・育苗し、再導入を実施
  • 保護区指定:マドニエ自然公園として生態系全体を保護
  • 遺伝保存:種子バンクと植物園で遺伝的多様性を維持
  • 国際支援:EU「LIFE Project」により保全活動を資金援助
  • 研究継続:個体数・気候影響・病害状況を長期モニタリング

最後に

これを読んでみて、どのように感じましたか?

「2014年から現在では森林火災はどのぐらい増えてるのかね?」

オーストラリアの大規模な森林火災の記憶が蘇ります。

気になることは調べて知りましょう。


2014年以降、世界の森林火災による焼失面積は著しく増加し、火災はより大規模で深刻化する傾向にある。

項目内容
焼失面積の急増過去20年間で、森林火災による樹木被覆の喪失面積が2倍以上に増加。
記録的な年の続出世界の森林火災におけるワースト5年のうち4年が2020年以降に集中。
近年のピーク2023年:約1190万ヘクタール焼失。
2024年:約1350万ヘクタール焼失(ギリシャの国土面積に相当)。
主な要因・異常気象(熱波・干ばつ)による火災の大規模化・深刻化
・発生件数よりも「1件あたりの被害規模」が拡大傾向。

オーストラリア「ブラック・サマー」(2019–2020)

項目内容
概要オーストラリア南東部で発生した、記録的な大規模森林火災
被害規模過去20年間で最大級の二酸化炭素排出を記録。
数千億匹の動物が影響を受けたと推定。
背景要因・記録的な高温と干ばつ
・気候変動による極端気象の増加が火災を拡大。

火災が増え、深刻化している理由

要因内容
気候変動地球温暖化により気温が上昇し、熱波・干ばつが頻発。
高温と乾燥森林が極度に乾燥し、発火・延焼しやすい「燃えやすい状態」に。
火災シーズンの長期化春の雪解けが早まり、夏の乾燥が長引くことで、火災発生期間が拡大
連鎖的影響火災による森林消失 → 炭素吸収源の喪失 → さらなる温暖化の促進。

国連環境計画(UNEP)は、このまま温暖化が進行すれば、壊滅的な大規模火災の発生リスクは2050年までに30%増加すると予測しており、世界的な喫緊の課題となっている。


「この火災による煙の影響も懸念されてるよね?」

雲がないのに太陽が消えたとの報道もありましたよね。
出典:サンフランシスコの空が“オレンジ色”に染まった現象、その科学的なメカニズム

詳しく調べてみます。


森林火災の煙は、火災現場から遠く離れた場所にも深刻な影響を及ぼし、その脅威は「健康」と「環境」の両面にわたる。

対象者主な症状・リスク
すべての人短期的な症状:咳、喉の痛み、目の刺激、鼻水、頭痛、疲労感
深刻なリスク:喘息発作の誘発、気管支炎、心臓発作や脳卒中のリスク増加
特に注意が必要な方持病のある方:喘息、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、心臓病などが悪化しやすい
子どもや高齢者:呼吸器系・免疫系が未発達または弱いため影響を受けやすい
妊婦:PM2.5が胎児に影響を与える可能性があり、早産や発育への懸念も指摘されています

煙には、PM2.5のほかにも一酸化炭素や、シックハウス症候群の原因にもなる揮発性有機化合物(VOCs)、さらには発がん性物質も含まれており、長期的な曝露はがんのリスクを高める可能性も指摘されている。

影響の種類内容
越境大気汚染・大規模火災の煙は上空の風に乗り、何千キロも移動
・2025年のカナダ森林火災では煙が大西洋を越えてヨーロッパに到達し、広範囲で大気質を悪化。
・日本にも、シベリア火災の煙が流入することがあります。
気候変動との悪循環・火災によって、樹木が蓄えた二酸化炭素(CO₂)が大量に放出。
これが地球温暖化を加速させ、さらに火災が増えるという「負のスパイラル」を引き起こしています。
生態系への影響・煙が日光を遮り、光合成を阻害
有害物質が土壌や水系に沈着し、動植物の生育環境を悪化。
・長期的には生態系全体のバランスを崩すリスクがあります。

このように、森林火災の煙は、個人の健康から地球規模の環境問題まで、非常に広範で深刻な影響を及ぼす脅威となっている。


ここまで読んで、『あなた』は、どのように感じましたか?

コメントで意見を聞かせてくれると、とても嬉しいです。

あなたの貴重な5分間を、本当にありがとうございました。

シチリアモミに、あなたの5分が届くことを祈ります。

fukumomo3_photo


インスタでは、シチリアモミたちの姿を“図鑑みたいに”並べて見られます。
ビジュアルで伝える命の物語、よかったらのぞいてみてください。

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