11年後のレッドリスト|テキーラスプリットフィン:止まった流れに、かすかな命の波が立つ【IUCNレッドリスト比較】

11年後のレッドリスト|テキーラスプリットフィン:止まった流れに、かすかな命の波が立つ【IUCNレッドリスト比較】 11年後のレッドリスト
※このページは、[IUCNレッドリスト]世界の絶滅危惧生物図鑑(2014年版)に基づいて制作した個人ブログです。
※画像はすべてAI生成(
DALL·E)によるイメージであり、実際の生物写真ではありません。

こんにちは、鶏人|Keijin です。

テキーラスプリットフィン(Zoogoneticus tequila)は、

2014年、図鑑に【CR:深刻な危機】として分類されていました。

2019年、IUCNレッドリストで、【EN:危機】と評価されました。

つまり、2014年から2019年にかけて、テキーラスプリットフィンは

「止まった流れに、かすかな命の波が立つ」状態になりました。

※2025年時点で、IUCNレッドリストにおけるテキーラスプリットフィンの最新評価は2019年版です。それ以降の更新は行われていません。

この記事は、とても短く5分で読めるので、どうぞ最後まで読んでいただけると嬉しいです。

※本記事は専門家による学術的な評価ではなく、公開された資料に基づく個人の調査・見解を含んでいます。
最新かつ正確な分類や保全状況については、IUCN公式サイトなどをご確認ください。
参考:https://www.iucnredlist.org/species/169395/1276460

川と魚と人間のこれから|テキーラスプリットフィンが残した問い

⬇︎テキーラスプリットフィンの生態です。必要に応じてご覧ください。⬇︎

基本情報|テキーラスプリットフィン(Tequila Splitfin)
項目情報
和名テキーラスプリットフィン(テキーラフィッシュ)※和名は便宜的表記
英名Tequila Splitfin / Tequila Fish
学名Zoogoneticus tequila
分類条鰭綱・カダヤシ目(Cyprinodontiformes)・グーデア科(Goodeidae)
分布メキシコ中西部・ハリスコ州アメカ川流域に固有(世界中でこの地域にしかいない淡水魚)
主な生息地アメカ川支流の湧水池やゆるやかな流れの浅い川(現在は主にテウチトランの小さな湧水池など、ごく限られた水域)
体長オス:約3〜4cm、メス:約5〜7cm(最大約6〜7cm)
体重数グラム程度(小型のコイ科熱帯魚と同程度)
寿命約3〜5年(飼育下での記録)

特徴

  • 名前の由来:「tequila」という種小名は、大量の酒ではなく、生息地近くにそびえるテキーラ火山(Volcán de Tequila)にちなんでつけられました。地元の“土地の名前”を背負った魚です。
  • 体の色と模様:体色はオリーブ〜灰褐色で、体側にまだら模様や金色〜青緑色の小さな斑が入ります。オスはメスより色が濃く、成熟するとより目立つ斑紋が現れます。
  • 尾ビレの「リング」:成魚オスの尾ビレには、赤〜オレンジ〜黄色の半月形(輪っか状)の帯が入り、その内側・外側が透明になります。このカラフルなリング模様が、近縁種と見分けるポイントです。
  • メスとの違い:メスはオスより大きく、体色もやや薄め。大型のメスで尾ビレに色が出ることもありますが、基本的には透明な尾ビレをしています。
  • 卵ではなく“お腹で育てる”魚:グーデア科の仲間らしく、卵を産むのではなく、メスの体内(卵巣腔)で卵が育ってから、ある程度育った稚魚を産む「胎生」に近いスタイルです。

生態と行動

  • 小さな川と湧水池の住人:もともとはアメカ川の静かな淵やゆるやかな流れにすんでいましたが、現在の野生個体群は、直径約4m・水深20cmほどの小さな湧水池など、ごく限られた場所にしか残っていないと報告されてきました。
  • 群れで暮らす:小さな群れをつくり、水面近く〜中層をゆっくり泳ぎます。性格はおおむね温和ですが、オス同士ではナワバリ争いの小競り合いが見られることもあります。
  • 食性:雑食性で、水中の小さな甲殻類(ミジンコなど)、昆虫の幼虫(ユスリカの幼虫など)、小さな無脊椎動物、デトリタス(有機物のくず)などをついばみます。円すい形の歯を持ち、主に小さな動物プランクトンや底生生物を捕らえる“ミニ捕食者”です。
  • 繁殖:
    • メスは1回の出産で10〜30匹近い稚魚を産むことがあります。
    • 主な繁殖期は夏ですが、条件がよければ通年で繁殖が見られるとの報告もあります。
    • 稚魚は生まれた瞬間から自力で泳ぎ、親による育児は行われません。
  • くらしと脅威:外来魚の侵入や水質悪化により、かつては「野生絶滅の可能性」が指摘されたほど個体数が減少しました。その後、水族館や研究機関による繁殖・再導入プロジェクトが進み、IUCNでは現在「EN(危機)」と評価されていますが、依然として世界的にみてもごく限られた場所にしかいない、非常に貴重な淡水魚です。

2014年絶滅危惧種:テキーラスプリットフィン【CR:深刻な危機】

この種は北アメリカとヨーロッパにおいて人工飼育されており、繁殖プログラムも推進されていて、将来この種をふたたびより大きい水源に再導入することを目指している。法的保護や国際商取引の規制も必要とされている。

出典:訳者 岩槻邦男,太田英利 / 発行者 池田和博 / タイトル「IUCNレッドリスト世界の絶滅危惧生物図鑑」/発行所 丸善出版株式会社 / 発行 2014/01/31 ©️Kunio Iwatsuki, Hidetoshi Ota, 2014

項目内容
種名テキーラスプリットフィン(Zoogoneticus tequila
2014年の扱い図鑑では【CR:深刻な危機】として掲載。事実上「野生絶滅(EW)」とみなされていた可能性が高い。
2019年IUCN評価【EN:危機(Endangered)】に改善。個体数増加傾向。
再導入の有無あり。飼育個体を用いた再導入プロジェクトが実施され、野生復帰に成功
再導入の時期・主体2016〜2017年、メキシコのミチョアカン大学とイギリス・チェスター動物園などの国際チームが中心となって実施。
再導入場所原産地であるメキシコ・テウチトラン川(Teuchitlán River)。
現在の野生個体群放流個体が野生下で自然繁殖し、個体数増加が確認されている。野生絶滅からの復活例として高く評価されている。
IUCNカテゴリ変化かつての「野生絶滅(Extinct in the Wild)」から、現在は「絶滅危惧IB類(Endangered)」へ変更。
メキシコ国内法での保護絶滅危惧種保護法「NOM-059-SEMARNAT-2010」に掲載。以前は「野生絶滅(E)」扱いだったが、野生個体群復活後も絶滅危惧種として保護・管理が継続。
CITES(ワシントン条約)現時点では附属書に未掲載(Not Evaluated)。ただし、メキシコ国内での採集・持ち出しは国内法により厳しく規制。
現在の保全上の課題野生復帰は達成済み。今後は、野生個体群の長期的維持と、生息地であるテウチトラン川の水質・環境保全が主要な課題。

テキーラスプリットフィン(Zoogoneticus tequila)は、飼育個体を用いた再導入によりテウチトラン川で野生個体群が再確立され、IUCNレッドリスト評価はCR相当からENへと改善した。

メキシコ国内ではNOM-059に基づき依然として厳重な法的保護下にあり、今後は生息地水域の環境保全が主要な保全課題である。

⬇︎テキーラスプリットフィンの主な保護活動の種類です。必要に応じてご覧ください。⬇︎

保護活動の種類内容の概要
生息地(テウチトラン川)の保全汚染や外来魚の影響を受けたテウチトラン川・湧水域の環境を回復させるため、水質改善や河川・湧水の保護区化が進められ、テキーラスプリットフィン本来の生息環境を守ろうとしている。
外来種対策と水質改善在来魚を駆逐した外来魚(グッピーなど)や水質汚濁が主な絶滅要因とされたため、外来魚の駆除・管理や、生活排水の抑制・浄化など、水質改善の取り組みが行われている。
保全繁殖(Fish Ark/水族館)ミチョアカン大学の「Fish Ark」プロジェクトやチェスター動物園などが、飼育下で大きな個体群を維持し、遺伝的多様性を確保するための保全繁殖プログラムを継続している。
段階的な再導入IUCNの再導入ガイドラインに従い、まず囲い込んだケージ内で環境順化させ、その後テウチトラン川へ約1,500個体を段階的に放流し、現在は約2,000個体規模の野生集団が定着したと報告されている。
法的保護・レッドリスト評価IUCNレッドリストで絶滅危惧(EN)に指定され、メキシコ国内でも希少淡水魚として保護対象とされている。これにより、開発行為や採捕行為に対する規制や配慮が求められている。
地域コミュニティとの協働研究者は地元住民と協力し、再導入に向けて環境教育やワークショップを行い、「ガリート(小さなニワトリ)」として親しまれてきたこの魚を地域の誇りとして位置づけ直している。
研究とモニタリング再導入個体群の増加率や行動、生態系との相互作用を追跡するため、個体数調査・標識放流・行動観察などの研究が行われており、最近の論文では他種との共存条件や個体群動態が分析されている。

最後に

これを読んで、どう感じましたか?

「すごくうれしい話だけど、これから先、生息地の川にダムができたり、水質がまた汚れたりして、せっかく戻った環境が壊れないか心配だなあ」と、私は思いました。

本当にそうですよね。「増やせるから」「戻せるから」といって開発をどんどん進めてしまったら、本末転倒ですから。

このあたりは、もう少し踏み込んで調べてみますね。


区分・テーマ内容
モラルハザードの問い「技術で増やせるなら壊してもいいのか?」現地の状況を調査した結果、テキーラスプリットフィンの保全は、人間の慢心との闘いであり、「増やして終わり」では全くないことが明らかになった。環境復元そのものが核心で、楽観視できる状況ではない。
1. 地元住民の意識改革「戻して終わり」ではなかった真の成果は放流ではなく、川を守る地域社会の意識変容にある。研究者は放流前から子ども・住民に環境教育を実施し「川の守護者(River Guardians)」が結成された。外来種駆除やゴミ撤去を行い、「環境が整うまで放流しない」という順序が徹底された。
2. 観光地ゆえのリスク現在も続く脅威生息地テウチトランの泉は観光地で、日焼け止め・食品残渣・ゴミなどによる水質悪化が常に懸念される。レストラン排水や農業取水も影響。さらにプラティ・グッピー等の外来種が持ち込まれると競合や病気で容易に負けてしまうため、脅威は継続している。
3. 「増やせるからいい」への反証飼育繁殖は「最後の保険」であり解決ではない。水槽育ちの個体は野生の本能を弱めるため、再導入前に半野生環境での訓練が必須だった。野生復帰は「また放せばよい」と言えるほど簡単ではなく、環境保全なくして成立しない。
結論テキーラスプリットフィンの事例は、「壊しても増やせばいい」という発想が成立しないことを示す。根本に必要なのは、環境そのものを守り続ける姿勢である。

テキーラスプリットフィンの保全事例は、飼育下繁殖技術を背景とした「増やせるから環境を損ねてもよい」というモラルハザードを批判的に照射している。

再導入成功の核心は、地域住民の環境教育と流域管理による生息地の再生にあり、観光利用や外来種侵入、水質悪化という継続的脅威の下で、飼育下繁殖はあくまで最終的な保険に過ぎないことを示している。


魚の数を増やすことももちろん大事なんだけど、本当に大きかったのは、その川を使って暮らしている地元の人たちが、「自分たちの川を大事にしたい」と心から思うようになったことなんだね。

まさに、その意識を育てることに力を注いだからこそ、今回のプロジェクトはうまくいったんだと思います。

たとえば、フィルターが破れて、ろ過装置も壊れかけている汚れた水槽を想像してみてください。
そんな水槽に、いくらテキーラスプリットフィンを増やして入れても、入れたぶんだけ水はどんどん汚れていきます。
そこに、少し水質変化に強い外来種がいたら、デリケートなテキーラスプリットフィンは、とてもじゃないけど生きていけませんよね。

テウチトランの町の人たちは、そのことにちゃんと気づいて、
「まずは水槽(=川)をきれいにしよう」
「できれば外来種には別の場所へ移ってもらおう」
そうやって、自分たちから動き出したんですよね。
その結果として、「この川で、気持ちよく暮らしてほしい」という思いが形になっていったわけです。

人間が一度壊してしまった自然は、放っておいても元に戻るまでにとても時間がかかります。
しかも変化のスピードが速すぎると、弱い種にばかりしわ寄せがいってしまいます。

だからこそ、私たちが壊してしまったものは、
私たち人間の手で、できるかぎり丁寧に修復していくことが大切なんだろうな、と思います。


ここまで読んで、『あなた』は、どのように感じましたか?

コメントで意見を聞かせてくれると、とても嬉しいです。

あなたの貴重な5分間を、本当にありがとうございました。

テキーラスプリットフィンに、あなたの5分が届くことを祈ります。

鶏人|Keijin

コメント