11年後のレッドリスト|ゴールデンビスカチャラット:乾いた月の下で、最後の光が息づいていた【IUCNレッドリスト比較】

11年後のレッドリスト|ゴールデンビスカチャラット:乾いた月の下で、最後の光が息づいていた【IUCNレッドリスト比較】 11年後のレッドリスト
※このページは、[IUCNレッドリスト]世界の絶滅危惧生物図鑑(2014年版)に基づいて制作した個人ブログです。
※画像はすべてAI生成(
DALL·E)によるイメージであり、実際の生物写真ではありません。
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こんにちは、fukumomo3_photo です。

ゴールデンビスカチャラット(Tympanoctomys aureus)は、

2014年、図鑑に【CR:深刻な危機】として分類されていました。

2016年、IUCNレッドリストで、【CR:深刻な危機】と評価されました。

つまり、2014年から2016年にかけて、ゴールデンビスカチャラットは

「乾いた月の下で、最後の光が息づいていた」状態なのです。

※2025年時点で、IUCNレッドリストにおけるゴールデンビスカチャラットの最新評価は2016年版です。それ以降の更新は行われていません。

この記事は、とても短く5分で読めるので、どうぞ最後まで読んでいただけると嬉しいです。

※本記事は専門家による学術的な評価ではなく、公開された資料に基づく個人の調査・見解を含んでいます。
最新かつ正確な分類や保全状況については、IUCN公式サイトなどをご確認ください。
参考:https://www.iucnredlist.org/species/136557/78324400

ハーバー・ボッシュ法が拓いた世界と、失われたもう一つの地球

⬇︎ゴールデンビスカチャラットの生態です。必要に応じてご覧ください。⬇︎

基本情報|ゴールデンビスカチャラット(Golden Viscacha Rat)
項目情報
和名ゴールデンビスカチャラット
英名Golden Viscacha Rat
学名Tympanoctomys aureus
分類哺乳類・テンジクネズミ目・ビスカチャラット科
分布アルゼンチン北西部(サルタ州・カタマルカ州などの乾燥地帯)
主な生息地乾燥した塩性平原や低木林、砂丘地帯
体長約15〜20cm(尾を除く)
体重約100〜150g
寿命約3〜5年(野生下)
IUCN評価(2016年)【CR:深刻な危機】

特徴

  • 名前の由来:金色がかった柔らかい毛並みが特徴で、「ゴールデン」という名がつけられています。
  • 特異な遺伝構造:哺乳類としては珍しい「四倍体(4n)」の染色体数を持つことで知られ、進化研究の貴重な対象。
  • 聴覚が発達:大きな鼓膜構造(属名 Tympanoctomys の由来)を持ち、音の反響を敏感に察知します。
  • 巣作り上手:地下にトンネルを掘って暮らし、乾燥した植物を巣材として利用します。

生態と行動

  • 食性:主に塩分を含む植物(例:Atriplex 属の低木など)を食べる草食性。乾燥地でも水分を植物から摂取します。
  • 生活様式:夜行性で、昼間は巣穴で休息します。単独または小さな群れで生活。
  • 繁殖:年に1〜2回出産し、1〜3匹の子を産む。妊娠期間は約3週間ほど。
  • 生息環境の危機:塩湖の干上がりや放牧による植生破壊が進み、分布域が急速に縮小しています。

2014年絶滅危惧種:ゴールデンビスカチャラット【CR:深刻な危機】

ゴールデンビスカチャラットへのおもな脅威は、オリーブプランテーションの開発・設置による生息地の喪失である。

出典:訳者 岩槻邦男,太田英利 / 発行者 池田和博 / タイトル「IUCNレッドリスト世界の絶滅危惧生物図鑑」/発行所 丸善出版株式会社 / 発行 2014/01/31 ©️Kunio Iwatsuki, Hidetoshi Ota, 2014

人間の行為(開発・設置)内容の概要生息地への影響
土地の開墾(かいこん)元々あった塩性湿地や低木地を伐採・焼き払い、農地として整備する。自然環境を直接破壊し、野生動物の「住処」を消失させる。
灌漑(かんがい)設備の設置川や地下水から大量の水を引き、水路・貯水池・パイプラインを建設する。水循環を変化させ、湿地の乾燥化や生態系の崩壊を招く。
インフラの整備道路・作業場・宿舎などを建設して管理体制を整える。土地の分断や人間活動の拡大により、生息地が細分化・縮小する。

オリーブプランテーションのような特定の作物を大規模に単一栽培(モノカルチャー)するプランテーションは、ゴールデンビスカチャラットが生きるために必要な ①住処、②食べ物、③安全な環境 の全てを、人間の経済活動のために根こそぎ奪ってしまうため、深刻な脅威となっている。

⬇︎ゴールデンビスカチャラットの主な保護活動の種類です。必要に応じてご覧ください。⬇︎

保護活動の種類内容の概要
生息地の保全アルゼンチン北西部の乾燥した塩性草原や砂漠地帯の保護区設定を推進し、開発・放牧を制限
農業開発の抑制牧草地開発や放牧による植生破壊を防ぐため、土地利用計画の見直しと持続的農法を導入
捕食・外来種対策イヌ・ネコなど外来捕食者の管理や侵入防止策を講じ、生息地の安全性を向上
国際的な保護枠組みアルゼンチン国内法およびIUCNガイドラインに基づき、希少種として法的保護下に置く
研究とモニタリング生息域の分布調査、個体数の変動観測、繁殖生態や遺伝的多様性に関する研究を実施
環境教育と地域協働地元住民に対して砂漠生態系の重要性や保全意識を高める教育プログラムを展開
繁殖・保全技術の検討飼育下繁殖の可能性を探る試験的プロジェクトを進め、将来的な再導入を検討

主な取り組み

  • 生息地保護:アルゼンチンの塩性砂漠地域を保護区に指定し、開発を制限
  • 土地利用管理:放牧や農業による植生破壊を防ぐための持続的農業政策を導入
  • 外来種対策:イヌ・ネコなどの捕食圧を軽減するため管理体制を整備
  • 法的保護:国内法およびIUCNの枠組みに基づき、絶滅危惧種として保護
  • 研究活動:分布・個体数・繁殖データを継続的にモニタリング
  • 教育活動:地域住民向けに乾燥地の生態系保全をテーマとした啓発活動を実施
  • 繁殖プログラム:将来の再導入を見据えた飼育下繁殖の研究を推進

最後に

これを読んでみて、どのように感じましたか?

「どのように単一栽培が可能になったの?経緯が知りたい」

気になりますよね。

単一栽培がどのように可能になったのか調べてみますね。


課題技術革新・対策内容の概要結果・影響
土地が痩せる化学肥料(ハーバー・ボッシュ法, 1909年)空気中の窒素からアンモニアを人工合成。安価で大量の窒素肥料を供給。同じ土地で同じ作物を連続栽培できるようになった。
病気・害虫が発生しやすい農薬の進化(殺虫剤・殺菌剤・除草剤)病害虫を化学的に防除し、雑草を除去。病気や害虫による収穫減を防ぎ、単一栽培の安定化を実現。
労働効率が低い農業機械の発達(トラクター・コンバインなど)大規模農地を少人数で管理できるように。機械化が進み、同質な作物を大量生産する体制が確立。
作物のばらつき品種改良(均一化・高収量・耐病性)形や高さを揃え、機械収穫に適した品種を開発。均一な栽培が容易になり、大規模単一栽培を後押し。
地域の生産効率差グローバル経済の発展地域ごとに「最適作物」を集中生産し、国際貿易で流通。世界的に単一作物への依存が進む構造が形成された。

単一栽培は、化学肥料によって土地の栄養問題を、農薬によって病害虫の問題を克服し、さらに農業機械や品種改良によって効率性と規模を追求することで可能になった。

その中でも、空気からパンを作る錬金術とも呼ばれた「窒素固定技術」ハーバー・ボッシュ法が、農業のあり方を根本から変え、現代の食料生産システムの礎を築いた、非常に重要なターニングポイントであったと言える。

項目内容影響・意義
発明者・年代フリッツ・ハーバー(1909年に実験成功)/カール・ボッシュ(1913年に工業化)化学史に残る革新的技術としてノーベル賞受賞(ハーバー:1918年、ボッシュ:1931年)。
反応式N₂ + 3H₂ ⇌ 2NH₃(発熱反応)空気中の窒素と水素からアンモニアを合成。化学肥料の基礎となる。
反応条件高圧(200〜350気圧)、高温(400〜600℃)、触媒(四酸化三鉄 Fe₃O₄)「ルシャトリエの原理」を応用し、実用的な速度と収率を両立。
技術的意義空気から窒素肥料を無限に作れるようになった。世界的な食料増産を可能にし、「空気からパンを作った」と称される。
社会的影響(正)化学肥料の大量生産、農業革命、人口増加の支え。「緑の革命」を支え、飢餓を減少させた。
社会的影響(負)第一次世界大戦で爆薬原料として利用され、戦争の長期化を招く。科学技術が平和と戦争の両面で使われる象徴的事例。
現代の課題(環境面)・高エネルギー消費(世界エネルギーの1〜2%)
・CO₂排出(化石燃料依存)
・窒素汚染(赤潮・地下水汚染)
食料生産を支える一方で、気候変動や生態系への負荷が拡大。
現在の研究動向再生可能エネルギーを用いた「グリーンアンモニア」開発CO₂を出さない新たな窒素固定技術の確立が期待されている。

しかし、ハーバー・ボッシュ法が発明されていなかったら、世界はどのような姿になっていたのでしょう。

きっと「世界はより貧しく、人口が格段に少なく、常に食糧不安と隣り合わせの世界」になっていた可能性が非常に高いと考えられる。

観点想定される世界主な影響・変化
① 人口と食料世界人口は30〜40億人程度で頭打ち。化学肥料なしでは収穫量が激減し、現在の人口(約80億人)の半分以下しか養えなかった。
② 農業の姿と暮らし輪作や厩肥などの伝統農法が中心。
マメ科植物と穀物の交互栽培が主流。
土地の回復を待つ必要があり、生産効率が低下。人口の大半が農業に従事し、都市化は進まなかった。
③ 経済と社会構造食料は貴重で高価。飢饉リスクが常に存在。一部の富裕層しか安定した食を得られず、社会格差が拡大していた可能性。
④ 戦争と国際関係火薬原料の硝石を確保できず、第一次世界大戦は短期で終結したかも。窒素資源をめぐる紛争が頻発。20世紀の戦争史そのものが大きく変わっていた。
⑤ 環境への影響(正)化学肥料由来の窒素汚染・赤潮・地下水汚染がほぼ存在しない。
CO₂排出も数%削減。
地球環境への化学的負荷は小さく、富栄養化の被害も限定的。
⑥ 環境への影響(負)食料確保のため、より広大な森林や草原を農地化。化学肥料がない代わりに森林伐採が進み、生物多様性の喪失が加速した可能性。

ハーバー・ボッシュ法は、人類を「天然の窒素循環の制約」から解放したという点で、まさに光と影を併せ持つ「諸刃の剣」のような発明である。

もし発明されていなければ、私たちは飢餓の恐怖と隣り合わせのまま、より持続可能な(しかし貧しい)循環型の農業社会に留まっていたかもしれない。

しかし、この技術の恩恵によって現在の豊かな社会が築かれた一方で、その代償としてエネルギー問題や環境汚染という新たな課題を抱えることになったのである。

このことから、科学は、人類に“生きる力”を与えると同時に、“選択の責任”を残したと言える。


ここまで読んで、『あなた』は、どのように感じましたか?

コメントで意見を聞かせてくれると、とても嬉しいです。

あなたの貴重な5分間を、本当にありがとうございました。

ゴールデンビスカチャラットに、あなたの5分が届くことを祈ります。

fukumomo3_photo


インスタでは、ゴールデンビスカチャラットたちの姿を“図鑑みたいに”並べて見られます。
ビジュアルで伝える命の物語、よかったらのぞいてみてください。

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