11年後のレッドリスト|スティリアナキイナゴ:絶望の草原に、わずかな緑が戻りはじめた【IUCNレッドリスト比較】

11年後のレッドリスト|スティリアナキイナゴ:絶望の草原に、わずかな緑が戻りはじめた【IUCNレッドリスト比較】 11年後のレッドリスト
※このページは、[IUCNレッドリスト]世界の絶滅危惧生物図鑑(2014年版)に基づいて制作した個人ブログです。
※画像はすべてAI生成(
DALL·E)によるイメージであり、実際の生物写真ではありません。

こんにちは、鶏人|Keijin です。

スティリアナキイナゴ(Podismopsis styriaca)は、

2014年、図鑑に【CR:深刻な危機】として分類されていました。

2016年、IUCNレッドリストで、【VU:危急】と評価されました。

つまり、2014年から2016年にかけて、スティリアナキイナゴは

「絶望の草原に、わずかな緑が戻りはじめた」状態なのです。

※2025年時点で、IUCNレッドリストにおけるスティリアナキイナゴの最新評価は2016年版です。それ以降の更新は行われていません。

この記事は、とても短く5分で読めるので、どうぞ最後まで読んでいただけると嬉しいです。

※本記事は専門家による学術的な評価ではなく、公開された資料に基づく個人の調査・見解を含んでいます。
最新かつ正確な分類や保全状況については、IUCN公式サイトなどをご確認ください。
参考:https://www.iucnredlist.org/species/16084476/70646131

変わる基準、変わらぬ脅威──そして私たちの選択

⬇︎スティリアナキイナゴの生態です。必要に応じてご覧ください。⬇︎

基本情報|スティリアナキイナゴ(Styrian Plump Grasshopper)
項目情報
和名スティリアナキイナゴ
英名Styrian Plump Grasshopper
学名Podismopsis styriaca
分類昆虫類・バッタ目(直翅目)・イナゴ科(Acrididae)・ヒメギス亜科(Gomphocerinae)
分布オーストリア・アルプス東部(シュタイアーマルク州およびケルンテン州の山地)
主な生息地標高約1,800~2,200 mの湿った高山草地・低木群落上部。例えばナルトゥス・ストリクタ(Nardus stricta)やケイビクルヴァ(Carex curvula)などが優占する草地。
体長雄:14〜17 mm、雌:21〜26 mm程度
寿命詳細不明(標高高地の昆虫として数年程度と推定)
IUCN評価【VU:危急】欧州レベルでの評価あり

特徴

  • オスは鮮やかな黄緑〜暗色の体色を持ち、雌は体色が褐色〜黄土色など変異が大きい。
  • 翅が極端に短く退化しており、飛翔能力はほぼない。地面または植生上を跳躍して移動。
  • 名前の「ゴールデン(Golden)」は、オスや一部個体の体色が黄色味を帯びていることに由来。
  • 高地の風の強い開けた草地に適応しており、寒冷や強風に対して比較的耐性がある。

生態と行動

  • 成虫出現期は8月初旬〜11月初旬で、短い夏の間に活動・交尾・産卵を行う。
  • 生息地の植生として、低木群落や岩盤露出部、草地などがあり、高山環境特有の気候に適応。
  • 産卵・幼若期の生態について詳細は十分には解明されていないが、高地環境ゆえ成長・発育はゆっくりであると考えられる。
  • 生息域が非常に限定されているため、将来的な気候変動(高山域の温暖化・植生の変化)が大きな脅威となっている。

2014年絶滅危惧種:スティリアナキイナゴ【CR:深刻な危機】

年・出典評価カテゴリ基準評価理由・背景備考
2014年
『IUCNレッドリスト 世界の絶滅危惧生物図鑑』(丸善出版)
CR:深刻な危機(絶滅危惧IA類)明記なし(おそらく BまたはC基準)2007年の調査で「非常にまれ」とされ、生息地が極めて限定的。個体数が急速に減少している、または減少すると予測された。生息地の極端な狭さと減少傾向に基づく評価。
2015年10月査定(2016年公開)
The IUCN Red List of Threatened Species 2016
VU:危急(絶滅危惧II類)D2個体数は急速に減少している証拠はないが、生息地がジルビッツコーゲル山(約16km²)のみに限られる。単一の脅威(開発・気候変動など)で短期間に絶滅の危険がある。生息地が極めて限定的であることによる脆弱性(Vulnerability)評価。
評価変更の要点CR から VU D2 へ緩和脅威評価基準の変更と、保護活動(Natura 2000 ネットワーク)による安定化。個体数は不明(Unknown)だが、急減傾向は確認されず。IUCN基準上の再分類による変更であり、実際の個体数回復とは限らない。

CR:【深刻な危機】 → VU 【危急】への最大の理由は、2016年の再評価時に、この種の脅威の判定基準が変更されたためで、「絶滅の危機が去った」わけではなく、「危機的な減少はしていないが、生息地が狭すぎて依然として脆弱である」という、より実態に即した評価カテゴリーに見直されたということである。


標高2396メートルのジルビッツコーゲル山は最終氷河期に氷がなかったところとして知られる。そこは多様な動物相を維持しており、EUのナチュラ2000ネットワークによって保護されているが、気候変動の影響は深刻だろう。

出典:訳者 岩槻邦男,太田英利 / 発行者 池田和博 / タイトル「IUCNレッドリスト世界の絶滅危惧生物図鑑」/発行所 丸善出版株式会社 / 発行 2014/01/31 ©️Kunio Iwatsuki, Hidetoshi Ota, 2014

項目内容
概要EU全体に広がる世界最大の自然保護ネットワーク。加盟国の陸地面積の約18%、海域の約4%以上が指定されている。規模・制度ともに世界でも類を見ない取り組みである。
法的根拠EUの2つの指令に基づく。
鳥類指令(1979年):渡り鳥や保護鳥類のための「特別保護地域(SPA)」を指定。
生息地指令(1992年):鳥類以外の希少動植物や自然環境を守る「特別保全地域(SAC)」を指定。
基本理念「人と自然の共生」。単に活動を制限するのではなく、保護と地域経済の両立を目指す。生態系を損なわない範囲で、農業・林業・漁業・観光などの持続的利用を奨励する。
スティリアナキイナゴとの関連唯一の生息地であるジルビッツコーゲル山は、2006年5月からナチュラ2000の「特別保全地域(SAC)」に指定されている。これにより、この高山草原とそこに生息するスティリアナキイナゴは、オーストリア国内法だけでなくEU全体の法的枠組みによって保護されている。IUCNの「VU D2」評価における「保護活動が行われている」とは、主にこのナチュラ2000指定を指す。

成果と課題

分類内容
主な成果・EU全域で生物多様性に関する科学的データが大幅に蓄積された。
・NGOや地域団体が保全活動に参加する仕組みが整備された。
・生態系を破壊する大規模開発を法的に阻止できる仕組みを確立した。
主な課題・最大の課題は「実行力」。EUが方針を定めても、現場管理は各国・地方自治体に委ねられており、資金・人員不足が問題となっている。
・経済開発を優先する地域では、政治的抵抗に直面することがある。
・地域住民や土地所有者が「規制強化」と誤解し、否定的な反応を示す場合も少なくない。

ナチュラ2000ネットワークとは、世界最大の自然保護ネットワークである。

EU加盟国全体の陸地面積の約18%、海域の約4%以上がこのネットワークに指定されている。これはEU全土に広がる、世界でも類を見ない規模の取り組みである。

⬇︎スティリアナキイナゴの主な保護活動の種類です。必要に応じてご覧ください。⬇︎

保護活動の種類内容の概要
生息地の保全オーストリア東部〜スロベニア北部の高地草原や石灰質の乾燥草原に分布。これらの希少な草原生態系を保全し、農業・観光による攪乱を防止。
放牧・草刈り管理過剰放牧や過度な草刈りによる草原破壊を防ぐため、持続可能な放牧・刈取りスケジュールを導入。
農業・土地利用規制開発・観光地化・森林化による生息地縮小を抑えるため、自然草原や半自然草地の維持を推進。
保護区の設定個体群が確認されているオーストリア・シュタイアーマルク州などで、Natura 2000保護区や生態保全地域に指定。
環境モニタリング個体数・分布・植生状態を定期的に記録し、気候変動や土地利用変化の影響を評価。
遺伝的・分類学的研究近縁種との識別や遺伝的多様性を調査し、保全優先度の科学的根拠を強化。
市民・地域参加地域の牧畜農家や自然観察団体が、在来草原の維持管理・観察活動に協力。

主な取り組み

  • 生息地保全:高地草原・石灰質乾燥草原を保護し、開発や森林化を防止
  • 放牧・草刈り管理:生息環境を維持するため、過度な放牧や刈取りを制限
  • 農業管理:農薬・肥料使用を減らし、自然草原を維持する環境農業を推進
  • 保護区指定:Natura 2000地域や生態系保全区に指定し、法的保護を確立
  • モニタリング:個体数・分布の変動や植生の質を定期的に観測
  • 研究活動:分類・遺伝学的研究を通じて地域個体群の重要性を明確化
  • 地域参加:地元住民と協力し、持続的な土地利用と草原の再生を進める

最後に

これを読んで、どう感じましたか?

「2014年の時点で、すでに気候変動の影響が心配されてたんですね。」

ほんと、その通りなんです。

このあと、11年前から行われているこの種の生息地に関する気候変動対策について、少し調べてみようと思います。


区分主体・内容具体的な取り組み
オーストリア国家レベルの対策(緩和策)オーストリア政府・2040年までにカーボンニュートラルを達成する国家目標を掲げている。
・2030年までに電力の100%を再生可能エネルギーで供給する計画。
・国内全域で利用可能な年間パス「気候変動チケット(Klimaticket)」を導入し、公共交通への転換を推進。
ナチュラ2000における管理(適応策)EUおよびオーストリア地方自治体・高山草原や湿地環境の保全を目的に、草原の乾燥化や植生変化を防ぐ管理を実施。
・「低強度の放牧」を維持し、草原環境の変質を防ぐ。
・気温変化に敏感なバッタ類を指標として、生態系のモニタリングや研究を継続。

残念ながら、スティリアナキイナゴのために「植林」や「ダム建設」といった直接的な対策は行われていない。

しかし、①国全体で温暖化を抑える緩和策と、②ナチュラ2000の枠組みで放牧などの伝統的土地利用を維持し、生息環境の変化を防ぐ適応策という二重のアプローチが取られている。


「11年後の今、気候変動の影響を肌で感じるようになったのに、“それは人間のせいじゃない”って言う人もまだいるそうです。」

たしかに、人ってどうしても“今のまま”を守りたくなるものですよね。

どんなに一生懸命に種を守っても、その裏で誰かがマッチを擦り続けていれば、いずれその火は広がってしまう。消そうとしても追いつかないんです。

だからこそ、私たちにできるのは「知ること」だけじゃなく、「疑うこと」だと思います。

知って、疑って、また知って、また疑って——。

その繰り返しの中で、少しでも今この地球で起きていることを正確に知りたい。

わたしはそう思っています。


ここまで読んで、『あなた』は、どのように感じましたか?

コメントで意見を聞かせてくれると、とても嬉しいです。

あなたの貴重な5分間を、本当にありがとうございました。

スティリアナキイナゴに、あなたの5分が届くことを祈ります。

鶏人|Keijin

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