11年後のレッドリスト|アオカワガニ:静かな川底で、青がふたたび輝きはじめた【IUCNレッドリスト比較】

11年後のレッドリスト|アオカワガニ:静かな川底で、青がふたたび輝きはじめた【IUCNレッドリスト比較】 11年後のレッドリスト
※このページは、[IUCNレッドリスト]世界の絶滅危惧生物図鑑(2014年版)に基づいて制作した個人ブログです。
※画像はすべてAI生成(
DALL·E)によるイメージであり、実際の生物写真ではありません。

こんにちは、鶏人|Keijin です。

今回は、アオカワガニ(Potamonautes lividus)が暮らす「湿地」の話です。

2014年の図鑑では「VU:危急」とされていたこのカニが、
最新のレッドリストでは「LC:低懸念」へ——評価が引き下げられました。

数字だけ見ると、少し安心してしまいそうですよね。
だから私は、いまのアオカワガニを「静かな川底で、青がふたたび輝きはじめた」……ようにも見えました。
でも調べていくと、その輝きの下で、湿地の乾燥と分断が進んでいることも見えてきました。

この記事は短く、5分で読めます。
よかったら最後まで読んでください。

※2025年時点で、IUCNレッドリストにおける最新評価は2024年版です(以降の更新は確認されていません)。
※本記事は専門家による学術的な評価ではなく、公開された資料に基づく個人の調査・見解を含みます。
※IUCN評価は「世界全体」と「地域・個体群」で分かれる場合があります。地域によって状況は異なります。
最新かつ正確な分類や保全状況については、IUCN公式サイトなどをご確認ください。
参考:IUCN Red List(学名:Potamonautes lividus

LCでも安心できない理由|湿地の乾燥と分断がカニを追い詰める

⬇︎アオカワガニの生態(基本情報)です。必要なら開いてください。⬇︎

基本情報|アオカワガニ(Blue River Crab)
項目情報
和名アオカワガニ
英名Blue River Crab / Blue swamp forest crab
学名Potamonautes lividus
分類節足動物門・甲殻亜門・軟甲綱・十脚目・カニ下目・ポタモナウテス科(Potamonautidae)
分布南アフリカ共和国(クワズールー・ナタール州 北東部)の湿地に局地的に分布
主な生育地湿地林(swamp forest)や湿原のパッチ。スポンジ状の泥炭質土壌に巣穴を掘ってすむ
大きさ甲長(CL)で約25.5mmの標本例が報告されている(中型の淡水ガニ)
体重不明
寿命不明

特徴

  • 名前の由来:種小名「lividus」はラテン語で「青/青白い」の意味で、甲羅の青い光沢(銀青色のシーン)に由来する
  • 見た目:甲羅は青い光沢を帯び、はさみ脚や歩脚はオレンジ〜赤系の色が目立つ、と記載されている
  • 希少性:分布は湿地の孤立したパッチに限られ、移動して別の適地へ移りにくい点が弱みになりやすい
  • 保全状況:2010年頃の資料ではVulnerable(VU)として紹介されている一方 、IUCNの「ステータス変更一覧」では2024年にLeast Concern(LC)へ変更された扱いになっている

生態と行動(くらし・ふえ方)

  • 生息環境:湿地林の植生の中、スポンジ状の泥炭土にU字型の巣穴を掘って生活する
  • 行動:夜間や雨のときに巣穴を出て、陸上で採食する(半陸生的な行動が目立つ)
  • ふえ方(繁殖):淡水ガニ類は一般に、淡水で生活史を完結し、大きめの卵を産み、卵の中で発生が進んでから子ガニが出てくる(浮遊幼生期をもたない)とされる
  • 脅威:湿地が人の居住地拡大や農業のために排水・改変され、湿地パッチの分断が進むことが大きな問題として挙げられている
  • 保護の状況:北東部クワズールー・ナタールの複数の保護区(例:Mapelane Nature Reserve、Mkuze Game Reserve、Hluhluwe Game Reserve)で確認されている

出典

最終評価2024年:アオカワガニ【LC:低懸念】

アオカワガニは孤立化した湿地のパッチに見られるが、そうした場所でも排水が行われ、つづいて人の移住や農業の拡大が見られる。

出典:訳者 岩槻邦男,太田英利 / 発行者 池田和博 / タイトル「IUCNレッドリスト世界の絶滅危惧生物図鑑」/発行所 丸善出版株式会社 / 発行 2014/01/31 / ページ 1 / ©️Kunio Iwatsuki, Hidetoshi Ota, 2014

項目(3カラム表)要点詳細
最新の評価(2024年2月)VU → LC(低懸念)へ変更2024年の最新評価で、アオカワガニ(Potamonautes lividus)は、絶滅危惧種(VU)から「低懸念(LC:Least Concern)」へとランクが引き下げられた。ここで重要なのは、「危険がゼロになった」ではなく、“種全体としての絶滅リスク評価”が見直されたという点。
2014年当時の前提(VUだった理由)分布が極端に狭いと思われていた2014年の図鑑が出た頃は、南アフリカのクワズール・ナタル州北東部にある非常に限られた湿地(沼沢林)にしかいない=「局所的な環境変化で一気に消える」タイプだと想定されていた。つまり、わずかな開発・排水でも致命傷になりうる、と判断されてVUに置かれていた。
ランクが変わった最大の理由生息域(分布)の再確認2020年以降の研究や調査が進み、さらに iNaturalist などの市民科学的データも蓄積されて、「思っていたより広い範囲で見つかる」ことが明確になっていった。分布が“狭い一点集中”ではなく、複数地点で確認されるなら、種全体のリスク評価は下がりやすい。
追加の理由①:分布が予想より広かった見つかる場所が増えた以前は「そこにしかいない」と思われていたのが、調査や記録の積み上げで、別の湿地・周辺地域でも生息が確認されるようになった。これにより「限定された一点の消失=種の消失」という見立てが弱まった。
追加の理由②:個体数が安定している“点在する湿地”で維持されている生息に適した湿地が複数点在し、それぞれで一定の個体数が維持されていることが分かってきた。つまり、「すぐに個体数が崩壊するほどの急減傾向」とは言いにくくなり、結果としてLCへ移行しやすい条件が揃った。
結論としての評価ロジック“絶滅の確率が低い”側へ生息域が広がって見え、個体群が複数あり、個体数も維持されているなら、種全体としては「すぐ絶滅する危険性は低い」と判断される。これが今回のランクダウンの骨格(=評価の軸)。
では「危機的状態」ではないのか?局所的には脅威が残るランクが下がっても、生息環境が脅かされている事実は残る。LCは「安心して放置してOK」ではなく、あくまで“種全体として”直ちに高い絶滅リスクではない、という整理。局所個体群や湿地単位では、条件が悪化すれば普通に危うくなる
継続する脅威①:農地拡大と排水地下水位低下が致命的湿地周辺での農業開発や排水は続いている。アオカワガニは湿地の泥に深い穴を掘って暮らすため、地下水位が下がる=生活基盤が崩れる。図鑑が指摘していた「湿地の乾燥化に弱い」という脆弱性は、今も課題として残っている。
継続する脅威②:生息地の断片化“飛び地化”で交流が減る道路建設や住宅地開発などで生息地がパッチ状(飛び地)に分断されると、個体群間の移動・交流が難しくなる。これが進むと、局所的に弱った群れが回復しにくくなったり、遺伝的多様性が落ちたりするリスクが出る。
分類整理(混同の解消)似た別種の発見が影響2015年に、よく似た新種(Potamonautes isimangaliso)が発見され、分類・同定の整理が進んだ。これにより「アオカワガニと思っていたものが別種だった/逆もある」といった混同が解け、より正確な生息実態の把握が可能になった。結果として、分布や個体数の見え方(=評価の前提)も整っていった。
まとめランクダウン=安全、ではない現在のアオカワガニは、「種全体としては絶滅の瀬戸際ではないが、局所的には生息地の消失(排水・開発)で危うくなりうる」という立ち位置。今回のランクダウンは「安全になった」よりも、「調査が進んで、当初の想定より“広く・そこそこ居た”と分かった」という意味合いが強い。
アオカワガニ(Potamonautes lividus)は、2014年当時はクワズール・ナタル州北東部の限られた湿地に局在するとみなされVUと評価された。以後の調査(2020年以降)や市民科学データにより分布拡大と個体群の安定が確認され、2024年にLCへ改訂された。一方、農地拡大に伴う排水、開発による生息地断片化、近縁新種(P. isimangaliso)との分類整理に伴う局所的リスクは継続する。

⬇︎アオカワガニの保護活動の種類です。必要なら開いてください。⬇︎

保護活動の種類内容の概要
生息地(湿地・湿地林)の保護本種が暮らす湿地のパッチ(湿地林や泥炭質の湿地)そのものを守る。特に、居住地拡大や農地化のための排水・改変を抑えることが重要。
排水・開発圧の抑制湿地が排水されると、生息地が直接消えるうえ、残った場所も細切れになって移動先がなくなる。排水計画や土地利用の段階で、湿地の保全・回避を優先する。
生息地の分断(孤立)の緩和個体群が孤立すると、他の適地へ移れず脆弱になる。湿地の連結性を保つ・緩衝帯を確保するなど、パッチ間の“つながり”を残す管理が要点。
保護区の設定・管理強化既に保護区内で確認されている地域があり、こうした重要地の保全管理を強化する(保護区の維持、周辺開発圧の調整など)。
重要地点の把握(分布調査)分布が限られる可能性が指摘されており、既知地点(例:大学キャンパス周辺、湿地林、自然保護区など)と周辺の追加調査で、保全の優先エリアを明確にする。
長期モニタリング湿地の状態(排水・土地改変の進行など)と個体群の変化を継続的に追う。小さな湿地パッチに依存する種ほど、環境変化が個体群に直撃するため定点監視が効く。
地域参加・啓発湿地の価値や、排水・改変が生物多様性に与える影響を共有し、保全に合意を作る(保護区周辺・自治体・開発側との協議、地域の見守りなど)。

出典

最後に

これを読んでみて、どのように感じましたか?

農地を広げるための排水とか、開発で生息地が断片化するとか書いてあったけど、地下水位が下がることで、泥の中で暮らしてるカニが具体的にどう困るのかが、いまいち見えてこなかったんだよね。
あと「断片化」って、たとえば広い湿地の真ん中を道路とか工場が建設されて、湿地が分断される…みたいなことなのかな? なんか絵が浮かばなくて、よくわからなかった。

それ、すごくわかります。
「水位が下がると、なんでダメなの?」とか、「断片化って、実際どういうふうに起きるの?」って、そこがイメージできないとピンと来ないよね。

そのへん、もう少し具体的に調べてみます。


何が起きる?(環境の変化)カニの「困りごと」(生活目線のメカニズム)その結果どうなる?(危機の形)
地下水位が下がる(地面が乾く/排水が進む)アオカワガニは、湿地の泥に掘ったU字型の穴でほとんどの時間を過ごす。穴の奥に地下水がしみ出していると、そこは常に湿度が高い「住処」になる。ところが水位が下がると、穴の中が乾き、“家”と“肺”を同時に失うような状態になる。住める場所そのものが成立しなくなり、局所的に個体群が崩れる(「その湿地からいなくなる」)リスクが上がる。
地下水位低下 → 穴の中の湿度が下がるエラが乾く。カニはエラ呼吸だが、陸上でも生きられるのはエラを湿らせられるから。穴が乾くと湿度100%の環境が消え、エラが乾いていく。人間で言うと窒息に近い状態になり、長時間の生存が難しくなる。
地下水位低下 → 泥の性質が変わる湿地の泥(泥炭土など)は水分を含むから穴の形が保てる。乾くと、①ボロボロに崩れる/②逆にカチカチに固まる、の両方が起こり得る。「家」の機能が失われる。隠れ場所・休息場所・安全な居場所が消える。
乾燥で穴が崩れる崩れると、寝ている間でも穴が潰れてしまい、生き埋めのような状態になる。直接的な死亡リスクが上がる(巣穴が“罠”になる)。
乾燥で泥が固まる固まると、カニが穴を掘り直せない。逃げ込める場所を作れず、外に出る時間が増える。天敵(鳥やマングース等)に狙われやすくなる/隠れ場所喪失。
地下水位低下 → 脱皮に必要な水分が不足成長に必須の脱皮は水分に強く依存。脱皮直後は体が柔らかく、十分な水がないと殻形成がうまくいかない。脱皮失敗=そのまま死ぬことが増える(成長段階でのボトルネック)。
生息地の断片化(道路・農地・住宅地・工場などで湿地が分かれる)小さな生き物にとって断片化は「通れない壁」が増えること。感覚としては、湿地が海に浮かぶ小島みたいになって、そこに閉じ込められる。個体群が孤立し、長期的に弱体化しやすい。局所災害で一気に全滅もしやすくなる。
断片化 → 道路や乾燥した農地が“移動不能地帯”になるカニにとってアスファルトや、木が切られ乾いた畑は、命がけでも渡れない「灼熱の砂漠」。距離が短くても、直射日光と熱い地面で体が乾く。たった数m〜10mでも“分断”になる。隣の湿地に行けない=交流が途切れる。
断片化 → 熱いデスゾーン(灼熱地帯)の出現熱せられた地面は、カニを短時間で乾かしてしまう(“干物”になる感覚)。移動中の死亡リスク増。結果として「移動しない」=隔離が固定化。
断片化 → エッジ効果(切り口から乾燥が侵入)森や湿地が切り裂かれると、切り口から日光・風が入り、残った湿地の奥まで乾燥が進む。見た目は緑でも内部は乾いていく。“残ったはずの湿地”が、実は住めない湿地に変わっていく。
断片化が進む → 結婚相手に出会えない隣の湿地に相手がいても、道路や乾燥地が越えられず出会えない。狭い範囲で交配が続きやすい。近親交配のリスクが上がり、病気への弱さ・奇形増など、群れ全体がじわじわ弱る。
断片化が進む → 逃げ場がない火事、農薬流入、事故的汚染などが起きても、隣の湿地へ避難できない。「島」ごとに閉じ込められる。そのパッチの個体群が一気に全滅する可能性が高くなる。
まとめ(カニ視点の最悪シナリオ)「家(穴)のエアコン=湿度」が壊れて、外へ出ようとしても周囲が熱々の鉄板(道路・乾燥地)で囲まれていて、どこにも行けない――そんな状態。2024年にLCになったのは「思ったより分布が広く、まだ“島”が点在している」からで、各“島”が安全になったわけではない(局所リスクは残る)。

地下水が下がるって、つまり乾燥するってことなんだね。
で、湿地の真ん中に道路とかができちゃうと、せっかく仲良くなったカップルが離れ離れになっちゃう。
それでも会いたくて頑張って道路を渡ろうとするんだけど、直射日光で体が乾いて、窒息みたいになって、結局出会えなくなっちゃう……ってことなんだね。

なんか、すごく切ないです。
あと、これ知っちゃうと、全然「低懸念」って思えないんですよ。

わかります。
今まで広い湿地で暮らしていたカニたちが、人間の開発で分断されて、狭くて小さな湿地に閉じ込められてしまう。
その結果、湿地が“海に浮かぶ孤島”みたいになってしまって、そこで暮らす群れは多様性も乏しくなる。だから、病気や災害みたいなことが起きると、一気に危機的な状況になってしまう——そんな絵が見えてきました。

絵が見えると、たぶん解決の方法も見えてくると思うんです。
でも、日本から遠く離れた南アフリカ共和国まで行って、直接なにかを解決するのは、正直なかなか難しい。

ただ、こういう「湿地の分断化で起きること」って、日本でもきっと起きているはずなんですよね。草原や森の分断化なんて、目に見える形でも起きています。

だから、私たち一人ひとりにできることがあるとしたら、まずは「小さな足元の生き物に目を向ける」ことなんじゃないかな、って思うんです。
ほんの少しの時間でも、足元のアリとか、側溝の隅から伸びてきた花や草とか、そういうものの名前を調べてみるところから始める。

そうやっていくうちに、いつか世界の生き物たちを救える側に近づける気がするんですよ。
だって、地球は丸くて、ちゃんと繋がっているんですから。


ここまで読んで、『あなた』は、どのように感じましたか?

コメントで意見を聞かせてくれると、とても嬉しいです。

あなたの貴重な5分間を、本当にありがとうございました。

アオカワガニに、あなたの5分が届くことを祈ります。

鶏人|Keijin

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