11年後のレッドリスト|ウォレミマツ:火を消した手で、また火をつける【IUCNレッドリスト比較】

11年後のレッドリスト|ウォレミマツ:火を消した手で、また火をつける【IUCNレッドリスト比較】 11年後のレッドリスト
※このページは、[IUCNレッドリスト]世界の絶滅危惧生物図鑑(2014年版)に基づいて制作した個人ブログです。
※画像はすべてAI生成(
DALL·E)によるイメージであり、実際の生物写真ではありません。

こんにちは、鶏人|Keijin です。

今回は、ウォレミマツ(学名:Wollemia nobilis)が教えてくれた「究極のマッチポンプ」って話です。

2014年の図鑑によれば、ウォレミマツの生息地はウォレミ国立公園内の「たった2つの群落」に限られていました。しかもその2つは、2キロも離れていないくらい近い場所です。そんな理由もあって評価は「CR:深刻な危機」でした。

そして最新のレッドリストを見ても、状況はやっぱり厳しくて、「CR:深刻な危機」のままです。
火災のリスクが上がってきていることに加えて、病原体が入り込んで弱ってしまう心配もある。そんな中でも、植物園などで育てて増やす域外保全が進んでいるおかげで、なんとかギリギリ持ちこたえている…そんなふうに見えます。

だから、ウォレミマツは今も、「火を消した手で、また火をつける」状態なのだと思います。

この記事は短く、5分で読めます。
よかったら最後まで読んでください。

※2026年時点で、IUCNレッドリストにおける最新評価は2024評価(2024年公開)です(以降の更新は、現時点では確認できていません)。
※本記事は専門家による学術的な評価ではなく、公開された資料に基づく個人の調査・見解を含みます。
※IUCN評価は「世界全体」と「地域・個体群」で分かれる場合があります。地域によって状況は異なります。
最新かつ正確な分類や保全状況については、IUCN公式サイトなどをご確認ください。
参考:IUCN Red List(学名:Wollemia nobilis

ブラックサマーが残した傷と、次の不安

⬇︎ウォレミマツの生態(基本情報)です。必要なら開いてください。

基本情報|ウォレミマツ(英名:Wollemi Pine)
項目情報
和名ウォレミマツ(ウォレミパイン)
英名Wollemi Pine など
学名Wollemia nobilis
分類裸子植物・マツ綱・ナンヨウスギ科(Araucariaceae)ウォレミマツ属
分布オーストラリア固有(ニューサウスウェールズ州のウォレミ国立公園のごく限られた範囲)
主な生育地暖温帯の雨林(渓谷の谷底や斜面)/ユーカリ林に接する雨林縁/砂岩地形の湿った環境
大きさ野生では高さ約25〜40mほど。栽培では10〜15m前後で育てられる例もある
寿命長寿。野生個体は数百年〜1000年級と推定される例がある(個体差あり)

特徴

  • 名前の由来:属名 Wollemia は「ウォレミ国立公園」に由来する。種小名 nobilis は「立派な・高貴な」という意味合いに加え、発見者デビッド・ノーブル(David Noble)への敬意を込めた名、と説明されることが多い。
  • 見た目:樹皮がゴツゴツした粒状で独特。枝先に葉がまとまって付き、全体が“古代の針葉樹”っぽい雰囲気になる。
  • 増え方のクセ:根元から複数の幹が立ち上がる姿になりやすく、1本立ちというより“株立ち”に見える個体も多い。
  • 希少性:野生の自生地が極端に狭く、個体数も限られている。
  • 保全状況:IUCNの評価ではCR(深刻な危機)として扱われる。

生態など

  • 生育環境:深い砂岩渓谷の、湿り気が残る雨林に生き残ってきたタイプ。周囲が乾きやすい場所でも、谷の中は空気が冷えて湿度が保たれやすい。
  • ふえ方(繁殖):雌雄同株で、同じ木に雄球果と雌球果ができる。風で花粉が運ばれて受粉する。
  • 更新(世代交代)の難しさ:種子で増える流れはあるが、野外ではうまく更新できない(実生が増えにくい)ことが課題として挙げられる。
  • 脅威:山火事(大規模火災)、病原体(例:Phytophthora など)、気候変動による環境の揺らぎ、そして希少さゆえの盗掘・踏み荒らしリスクなどが重なりやすい。

出典

最終評価2024年:ウォレミマツ「CR:深刻な危機」

「生きた化石」ともいわれるこの裸子植物は、ごく最近 1994年になって発見され、オーストラリアのウォレミ国立公園内の(2キロメートルと離れていない) 2つの群落だけに限られている。……恐竜の時代にまでさかのぼることができる古代からの生き残りのこの種は、ここ何千年もの間にゆっくりとではあるが、自然に減ってきてはいた。

出典:訳者 岩槻邦男、太田英利 / 発行者 池田和博 / タイトル『IUCNレッドリスト世界の絶滅危惧生物図鑑』/ 発行所 丸善出版株式会社 / 発行 2014/01/31 / © Kunio Iwatsuki, Hidetoshi Ota, 2014

項目2014年の図鑑現在(2026年確認)
和名ウォレミマツウォレミマツ
英名Wollemi PineWollemi Pine
学名Wollemia nobilisWollemia nobilis
分類ナンヨウスギ科ナンヨウスギ科
絶滅危惧ランクCR(絶滅危惧ⅠA類)CR(Critically Endangered)
評価・発表2014年時点でCRとして掲載2024年評価(公開:2024年)
分布(国)オーストラリアオーストラリア(ニューサウスウェールズ州)
分布の特徴ウォレミ国立公園内のごく限られた場所単一個体群(ウォレミ国立公園内)
群落(知られている範囲)2つの群落に限られる(約2km以内)既知の野生個体群は単一(野生は1サブ個体群扱い)
成木(成熟個体)数50株に満たない成木39–56(最頻推定:45)
個体数トレンドゆっくり減ってきていた(自然減が示唆される)減少(Decreasing)
生息地の状態分布が極端に狭く、わずかな変化で消滅し得る生息地の質は低下が続いている
火災リスク火事が入れば完全消滅の危険が高い2019–2020年の森林火災で初めて野生群落が火災影響を受けた
病気・病原体病気などの要因でも消滅し得る外来病原体の影響が継続(生息地の質低下・個体数減少要因)
人の立ち入り小さな分布域ゆえ、攪乱に弱い無許可の立ち入りが脅威として継続
保護状況国立公園内で保護されている分布域の保護率:100%(保護地域内)
域外保全(保険個体)保全が計画・実行されている趣旨の記載生育コレクションと種子バンクにより域外保全が進行(131の域外コレクション報告)
商業栽培・流通記載あり(保護の取り組みが示される)栽培技術の確立と商業化・世界流通により、野生採取の抑制が狙われている
移植・新規個体群づくり記載なし追加個体群の造成(移植)により単一災害リスクの低減を図っている(2019年に遠隔地移植個体群、2024年時点で苗木835本)

出典

ウォレミマツ(Wollemia nobilis)は、2014年時点でCR(深刻な危機)とされ、成木個体数は50株未満と記録されていた。IUCNの2024年評価においてもCRのままであり、成木は39〜56株(推定45株)と極めて少ない。個体数は大きく変化していないように見えるが、個体群動向は減少(Decreasing)と明示されている。とくに2019〜2020年の大規模森林火災は自生地に甚大な影響を及ぼし、残存個体の脆弱性を顕在化させた。現在は火災リスクの増大に加え、病原体侵入による衰退が懸念される一方、植物園等での域外保全は進展し、種の存続可能性を補強している。

⬇︎ウォレミマツの保護活動の種類です。必要なら開いてください。

保護活動の種類内容の概要
野生個体群の厳重保護自生地の場所は不特定多数に広めず、立入管理・監視・アクセス制限などで、人の持ち込みリスク(踏み荒らしや病原体の侵入)をできるだけ減らす
火災対策大規模火災が最大級の脅威になるため、火災リスクが高い時期の警戒、延焼を避ける判断、緊急時の防火対応など「燃やさない・燃え広がらせない」管理を優先する
病害・外来病原体の侵入防止野生地へ外部から菌や病原体を持ち込まないよう、装備や靴の消毒、現場作業の手順管理などのバイオセキュリティを徹底する
域外保全(増殖・バックアップ)ボタニックガーデン等で挿し木や組織培養で増殖し、野生集団に何かあっても“残せる個体”を確保する(保険集団の維持)
商業栽培の活用(違法採集の抑制)市場に合法な栽培株を流通させることで、野生株の盗掘需要を下げる考え方(育てて守る保全)を取り入れる
研究とモニタリング野生個体の健康状態、更新(芽生えや成長)、遺伝的多様性、脅威(火災・病害など)を継続的に調べ、回復計画に反映する
回復計画にもとづく統合管理国と州が共同で策定したリカバリープランに沿って、保護・増殖・監視・緊急対応などを長期で組み合わせて進める

出典

最後に

読んでみて、どのように感じましたか?

野生の個体が、2014年の時点からずっと50本未満って…数字だけでもかなり驚きなんだけど、そこに2019〜2020年の大規模な森林火災が起きちゃったんだよね。
当時のニュースで「ニューサウスウェールズ州の消防隊と科学者が、“生きた化石”を守るために、極秘の軍事作戦みたいな消火活動をした」って見かけたんだけど、あれって映画みたいな現場だったのかな。

ミッションインポッシブルみたいな、まさに「Mission: Wollemia」って感じだったのかもしれないですね。

ちょっと調べてみます。


項目内容要点
作戦名ウォレミマツ救出作戦(ウォレミマツ防衛の消火活動)野生のウォレミマツ群落を、火災の直撃から守る目的
時期2019年末〜2020年初頭(ブラック・サマー期)火災が最も激化した時期に実施
現場オーストラリア・ニューサウスウェールズ州のウォレミ国立公園周辺の峡谷部野生個体が残る場所は一般に非公開で、立ち入りも厳重に管理されている
迫っていた火災ゴスパーズ・マウンテン火災(Gospers Mountain fire)を含む大規模火災群「メガファイア」と呼ばれる規模の火災が長期化した
火災の規模感約50万ha規模まで拡大したと報じられ、周辺の火災と合流して100万ha規模になったとも報じられている都市や町だけでなく、生態系そのものが焼かれるレベルの広域火災
状況の深刻さ火の手が峡谷付近まで迫り、燃え方次第では群落が一気に失われる危険があった群落が少数かつ局所的だと、1回の災害が「全滅」につながりやすい
参加組織NSW National Parks and Wildlife Service(NPWS)とNSW Rural Fire Service(RFS)など保全担当と消防の連携で実行された
作戦の秘匿性正確な場所が外部に漏れないよう、情報管理を徹底したと報じられている盗掘・過剰な立ち入り・病原体の持ち込みなどを避ける目的もある
主な戦術(空から)空中消火により、火災の進行を抑える支援を実施まず火の勢いを落とし、地上部隊が動ける余地を作る
難燃剤の投入航空機による難燃剤(fire retardant)の投下が行われたと報じられている木の真上を狙うというより、火が落ちてくるルートを抑える考え方
主な戦術(地上)専門の消防隊員がヘリで現場へ入り、灌漑(散水)システムを設置したと報じられている“燃えない環境を作る”方向の守り方
散水・保湿の狙い木に直接水をかけるだけでなく、周辺の湿り気を保って着火しにくい状態をつくる火の粉が飛んでも燃え広がりにくい環境へ寄せる
水源渓谷内の水を使って散水したと報じられている現場で確保できる水を使う必要があった
現場のイメージ遠隔地での作業、ヘリ投入、時間制限つきの設営など、かなり綱渡りの現場だったと伝えられている「映画みたい」と感じるのは自然な描写
撤退火災の接近前に隊員は離脱し、設置した仕組みで耐える形になった直前まで準備して、最後は“守りの装置”に託す
運命の数日火災が周辺を通過し、設置した対策が機能するかどうかが勝負だったここで失敗すると、取り返しがつかない可能性があった
結果群落の中心部が生存し、全滅は免れたと報じられている「守り切れた」という点が最大の成果
被害一部の木が熱によるダメージを受けた可能性は示されている生き残ったが、無傷では済まないレベルの接近だった
この出来事の意味“野生の存続”が、自然の強さだけではなく人の介入にも支えられている現実が見えた野生個体が少ない種ほど、災害時の対応が生存率を左右する
いまの見え方「奇跡の生還」ではあるが、同じ規模の火災がまた来たら危うい危機が去ったのではなく、ひとまず耐えただけに近い

出典

ちょっと出典を辿ってたら見つけちゃったんだけど、当時のニューサウスウェールズ州の環境大臣だった Matt Kean(マット・キーン)さんの声明が、めちゃくちゃかっこいいんだよね。

“These pines outlived the dinosaurs, so when we saw the fire approaching we realized we had to do everything we could to save them.”

(直訳:この松は恐竜よりも長く生き延びてきた。だから火が迫っているのを見た時、我々はこれらを守るためにできることは全てやらなければならないと悟ったのだ。)

これ、読んだ瞬間に背中が「ゾワゾワ…」ってして、ちょっと涙出そうになるやつでしょ。

しかもね、David Crustさん(ニューサウスウェールズ州国立公園野生生物局)が当時のインタビューで、この木の「唯一無二の重要性」について語った部分も、またゾワるんですよ。

“The Wollemi Pine is a particularly important species and the fact that this is the only place in the world where they exist and they exist in such small numbers is really significant.”

(直訳:ウォレミマツは特に重要な種であり、ここが彼らが存在する世界で唯一の場所であり、かつこれほど少数しか存在しないという事実は、本当に重大なことなのです。)

ところで、こうやって「ウォレミマツ救出作戦」で守られた約45本って、今どうなってるんだろうね。

気になりますよね。調べます。


項目内容要点
火災後に確認された変化2019〜2020年の大規模火災後、焦げた樹皮や幹の損傷が懸念された一方で、幹や基部から新芽が出るなど、回復に向かう反応が示されている。火災ダメージ=即全滅ではなく、部分的な回復力がある。
胴吹き(epicormic growth)ウォレミマツは、幹上の休眠芽から枝(シュート)を出す成長様式(epicormic shoots)を持つことが知られ、火災後の再生に関与しうる。幹内部の組織が生き残れば、樹体が再構築される可能性がある。
再生能力の限界低強度の火災では再生できる場合がある一方、高強度火災では壊滅的影響になり得るとされ、再生能力は一様ではない。「再生できる」=安全ではなく、火災強度と頻度が致命的要因。
個体数の脆弱性野生集団は極めて小規模で、2024年時点でも成木が約46本規模と報告されている。個体数の少なさ自体が、単発の災害・疫病で全滅し得るリスク。
リスク分散の基本方針単一の渓谷に集中する危険性を減らすため、国立公園内で「保険個体群(insurance populations)」を作る移植(translocation)が進められている。野生集団を守りつつ、別地点にバックアップを構築する戦略。
移植(translocation)の実施2019年に国立公園内で追加の移植個体群が造成され、複数の移植サイトで植栽が行われている(報道では3サイトの存在が示される)。「元の渓谷だけ」に依存しない体制づくりが進行。
移植個体群の拡大2019年に造成された2つの移植個体群は、2024年に各サイトへ379本ずつ追加植栽され、移植個体群の総数は835本超とされる。バックアップ群落が「数として増えている」ことが確認できる。
主要な脅威:疫病(根腐れ病など)病原体としてPhytophthora(根腐れ病菌)が重大視され、野生群落の一部は感染が確認されている。火災の次に深刻な敵は病原体で、持ち込みが致命傷になり得る。
病原体の持ち込み経路訪問者の靴底などから土壌由来の病原体が侵入し得るとされ、無断侵入が感染の原因になった可能性が示されている。立ち入りは「踏み荒らし」以上に、病気を運ぶリスクがある。
立ち入り制限(完全封鎖)自生地・移植地は位置情報を秘匿し、法律により一般の立ち入りが厳しく制限されている。保全の前提として「秘密」と「封鎖」が制度化されている。
現場の防疫プロトコル調査や管理に入る場合も装備を徹底洗浄し、移動中に靴や衣類へ消毒液(メチル化スピリッツ等)を噴霧するなど、感染拡大を避ける運用が取られている。保護の現場は、火災対応だけでなく“検疫”としても機能している。
いまの防全体像火災と病原体という二大リスクに対し、野生群落の保護と、移植・域外保全(栽培)を組み合わせた多重バックアップが進められている。「奇跡の一本勝負」ではなく、複線化で絶滅確率を下げる段階に入っている。

出典

なんだか読んでいて、「人間と同じだな」って感じたよ。
人も大火傷を負って入院したりすると、ビニールで囲われた無菌室みたいな場所で治療することがあるじゃない? それと同じで、ウォレミマツも立ち入りを禁止して守っていて、保護する人たちも入る前にちゃんと消毒してから入るんだね。

それにさ、新しい場所に植えられた「子どもたち」が順調に根付いて、生存率もすごく高いって読んだとき、なんか「ホッと」したんだよね。
一本の感動する映画を見終わったみたいな気分になった。

ほんと、映画みたいな話でしたよね。
…って、感動してるところ申し訳ないんだけど、そもそもこれって究極の「マッチポンプ」なんですよね。

ブラックサマーの引き金になったのは落雷だって言われてるけど、その前に、世界中で化石燃料を使いまくって温暖化を進めて、そのうえ森全体がガソリンみたいな可燃物を撒かれた状態になってたわけじゃないですか。
そんな状態で、どうやって火災を止めるんだろうって思いますよ。

だからこの「ウォレミマツ救出作戦」が成功したのは、ほんと奇跡だったんじゃないかとも感じます。

今回はたまたま生き残れた種だったけど、このまま気候変動を進める方向で人類がポンプを動かし続けたら、また自然現象っていうマッチが、いつどこで擦られて大火災が起きる。

この映画のような物語の第二弾が公開されないことを祈ります。


ここまで読んで、あなたは、どのように感じましたか?

コメントで意見を聞かせてもらえると、とても嬉しいです。

貴重な5分間を、本当にありがとうございました。

ウォレミマツに、その5分が届くことを祈ります。

鶏人|Keijin

コメント