11年後のレッドリスト|ウォレミマツ:太古の息吹を、深い森に閉じ込めていた【IUCNレッドリスト比較】

11年後のレッドリスト|ウォレミマツ:太古の息吹を、深い森に閉じ込めていた【IUCNレッドリスト比較】 11年後のレッドリスト
※このページは、[IUCNレッドリスト]世界の絶滅危惧生物図鑑(2014年版)に基づいて制作した個人ブログです。
※画像はすべてAI生成(
DALL·E)によるイメージであり、実際の生物写真ではありません。

こんにちは、鶏人|Keijin です。

ウォレミマツ(Wollemia nobilis)は、

2014年、図鑑に【CR:深刻な危機】として分類されていました。

2024年、IUCNレッドリストで【CR:深刻な危機】と評価されました。

つまり、2014年から2024年にかけて、ウォレミマツは

「太古の息吹を、深い森に閉じ込めていた」状態なのです。

※2025年時点で、IUCNレッドリストにおけるウォレミマツの最新評価は2024年版です。それ以降の更新は行われていません。

この記事は、とても短く5分で読めるので、どうぞ最後まで読んでくれると嬉しいです。

※本記事は専門家による学術的な評価ではなく、公開された資料に基づく個人の調査・見解を含んでいます。
最新かつ正確な分類や保全状況については、IUCN公式サイトなどをご確認ください。
参考:https://www.iucnredlist.org/species/34926/276111449

「買うこと」が守ることになるとき|ウォレミマツ苗木プロジェクトと私たち

⬇︎ウォレミマツの生態です。必要に応じてご覧ください。⬇︎

基本情報|ウォレミマツ(Wollemi Pine)
項目情報
和名ウォレミマツ
英名Wollemi Pine
学名Wollemia nobilis
分類植物界・裸子植物・マツ目・アロウカリオ科
分布オーストラリア、ニューサウスウェールズ州ウォレミ国立公園内のごく限られた峡谷だけに生育(野生は数十株)
体高・形状最大40m、高さ25–40mになるが、野生では複数の幹から群生し直立したりクローン状になる
保存状況IUCN “Critically Endangered” 絶滅寸前。野生個体は80〜100株程度、生息地は4 km²未満

特徴

  • 独特の赤褐色の「ぶつぶつした」樹皮が特徴的で、まるで朝食シリアルの「ココポップス」のような見た目。
  • 葉はやや厚く、線形で長さ3–8cm、明るくライムグリーンに始まり成長と共に黄緑色に変化。
  • 成木の枝には雄球果・雌球果がつき、雌球果は6–12cmと大きく、成熟まで18–20ヶ月。種子は翼を持ち風で散布される。
  • 幹元からの萌芽(コピシング)が盛んで、1株から複数の幹が成長する個体もあり、クローン構造を形成している可能性がある。

生態と行動

  • 生息環境:温帯雨林の深い峡谷内、湿潤で開けた渓谷環境に厳密に限定されている。峡谷の位置は秘密にされ、未開訪地域。
  • 長寿性:野生の幹は数百年以上、場合によっては500〜1,000年と推定される。
  • 保護活動:1994年の発見後、複製・栽培による保護計画が推進され、世界各地の植物園へ広く普及。市販品としても流通し、保全と啓発に寄与。
  • 火災対策:2019–2020年の大規模山火事の際には、軍や消防による緊急保護作戦で命を救われた。
  • 栽培適応力:酸性土壌と日当たりを好み、−5 ℃から45 ℃まで耐える。鉢植えや室内でも比較的育てやすく、家庭園芸にも利用可能。

2014年絶滅危惧種:ウォレミマツ【CR:深刻な危機】

「生きた化石」ともいわれるこの裸子植物は、ごく最近 1994年になって発見され、オーストラリアのウォレミ国立公園内の(2キロメートルと離れていない) 2つの群落だけに限られている。……恐竜の時代にまでさかのぼることができる古代からの生き残りのこの種は、ここ何千年もの間にゆっくりとではあるが、自然に減ってきてはいた。

出典:訳者 岩槻邦男,太田英利 / 発行者 池田和博 / タイトル「IUCNレッドリスト世界の絶滅危惧生物図鑑」/発行所 丸善出版株式会社 / 発行 2014/01/31 ©️Kunio Iwatsuki, Hidetoshi Ota, 2014

ウォレミマツの現在の状況(主なポイント)

項目内容
現在のレッドリスト評価近絶滅種(CR: Critically Endangered)として継続指定
野生個体数成木は依然として 100本未満と推定
生息地発見された渓谷のごく一部のエリアに限定
2019–2020年の大規模森林火災「ブラック・サマー」により自生地が火災の脅威にさらされ、絶滅が現実味を帯びる危機に直面
秘密の救出作戦NSW州の消防隊と科学者チームが極秘ミッションを実施。ヘリコプターで峡谷に降下し、スプリンクラー設置や難燃剤散布で延焼を防止
救出作戦の結果一部の木は焼損したものの、群落全体は焼失を免れ「恐竜の木を救った英雄的作戦」として世界的に報道
新たな脅威(病原菌)Phytophthora cinnamomi(カビの一種)による根腐れ病が致命的なリスクに
新たな脅威(人為的侵入)違法ハイカーなどの靴底から病原菌が持ち込まれる可能性が高く、生息地の場所は現在も極秘扱い
生息域外保全野生での絶滅リスク増大に対応し、生息域外保全が強力に推進
世界的な普及日本を含む世界各地の植物園で栽培・繁殖が進められている
一般販売一般家庭向けの苗木としても販売され、「庭で育ててもらうことで、万が一野生が絶滅しても種を存続させる」という分散型保険戦略がとられている
現在の総括もはや「自然にゆっくり減っている」のを見守る段階ではなく、消防活動や人工繁殖など人の手によってギリギリで守られている状況

2014年版図鑑との比較まとめ

項目2014年頃の認識現在の状況(2025年時点の視点)
減少の理由何千年もかけたゆっくりとした自然減少森林火災(気候変動)と病原菌による急激な危機
最大の出来事1994年の「再発見」2019–2020年の大規模森林火災からの「生還」と極秘救出作戦
保全戦略自生地の保護が中心自生地の厳重保護 + 世界中の植物園・一般家庭での栽培による「分散保存」
結論太古から生き残ってきた強さを持つ「生きた化石」人為的な支え(消防活動・人工繁殖)がなければ存続が危うい、気候危機時代の象徴的な「ギリギリの命」

ウォレミマツは、依然として成木100本未満の限定された個体群からなり、IUCNレッドリストでCRにとどまる。

2014年時点で「ゆっくりとした自然減少」とされていたが、2019~2020年の大規模森林火災と病原菌侵入リスクにより、気候変動下の急性かつ人為依存的な絶滅危機の象徴種へと位置づけが変化した。

同時に、生息域外保全として世界各地の植物園や一般家庭での栽培が進展している。

⬇︎ウォレミマツの主な保護活動の種類です。必要に応じてご覧ください。⬇︎

保護活動の種類内容の概要
生息地の保護自生地を含む国立公園で厳重に管理し、立ち入りを制限
病害対策外来病原菌(特にPhytophthora属菌)侵入防止のため衛生管理を徹底
種苗増殖と移植苗木を増殖し、植物園や安全な場所に植栽して個体数を確保
国際的な取引規制ワシントン条約(CITES)附属書IIに掲載、国際取引には許可が必要
保護区の設定自生地を含むウォレミ国立公園などで法的保護
市民・地域参加植物園での展示や教育活動を通じて認知度向上
研究とモニタリング成長、生理、生態に関する長期的調査と個体数記録

主な取り組み

  • 生息地保全:国立公園で立ち入り制限と環境保全
  • 病害予防:外来病原菌侵入を防ぐ衛生措置
  • 種苗増殖:苗木を増やし安全な場所に植栽
  • 国際保護条約:CITES附属書IIで国際取引に許可制を導入
  • 保護区指定:ウォレミ国立公園などで法的保護
  • 教育啓発:植物園で展示・解説を行い保全意識を高める
  • 研究調査:成長や生態を長期モニタリング

最後に

これを読んでみて、どんなふうに感じましたか?

ブラック・サマーの火元は落雷だったと言われています。でも、その火がここまで広がってしまうくらい森を乾かしきったのは、人間が引き起こした気候変動でもあるんですよね。しかも、その火からウォレミマツを救おうとした「英雄たち」も、同じ人間じゃないですか。そう考えると、なんだかすごく複雑な気持ちになってきます。

あと、この種を守るために、「一般家庭向けの苗木としても販売する」という仕組みが作られたのは心強い一方で、もしそれが一部の誰かだけが儲かるビジネスモデルになっているのだとしたら、少しさびしいなとも感じました。

できれば、その収益が、苗木の元になった親木や、自生地そのものを守るためにちゃんと使われていてほしいですよね。

そのあたり、もう少し詳しく調べてみます。


項目内容
保全モデルの位置づけウォレミマツの販売プロジェクトは、「その収益を原種(自生地)を守るために使う」という明確な目的を持って設計された、世界でも稀に見る「保全のための商業化(Commercialisation for Conservation)」の成功モデル。
収益の流れ販売されるすべての苗木にはロイヤリティ(特許使用料のようなもの)が含まれており、その収益は民間の園芸業者だけでなく、発見に関わった王立植物園(シドニー)や、自生地を管理するニューサウスウェールズ州国立公園局に還元される。
収益の使途ロイヤリティ収入は、「英雄たち」の活動資金として使われる。・極秘自生地の警備・監視費用(侵入者を防ぐカメラ設置など)・病原菌対策の研究費・防火対策(ブラック・サマー時のような緊急救出作戦の備えを含む)
苗木購入の意味庭に植えるために苗木を買うことは、「自生地を守るレンジャーや科学者に寄付をしている」のと同義になるように設計されている。
戦略①:盗掘を無意味にする希少価値が高すぎると違法採取(盗掘)のリスクが高まるため、あえて公式に大量繁殖させ一般市場に流通させることで「希少価値」を下げ、ブラックマーケットで違法業者が儲からないようにした。
戦略②:所有欲を保全に変える「欲しい人が正規ルートで買えるようになれば、誰も危険を冒して盗みに行かない」という、人間の所有欲を逆手に取った防御策となっている。
日本での展開事例日本でも、「ディズニーランド」の運営会社であるオリエンタルランドのグループ企業などが、このライセンス契約に基づいて販売を行った事例がある。これらは正規のロイヤリティをオーストラリア側の保全機関に支払う契約に基づいていた。

ウォレミマツの苗木販売プロジェクトは、商業活動の収益を原種保全に直接還元する「Commercialisation for Conservation」のモデルである。

苗木価格に含まれるロイヤリティは、王立植物園シドニーやニューサウスウェールズ州国立公園局等に配分され、自生地の監視、防火・病害対策に用いられる。

また、正規流通を通じた大量普及により盗掘インセンティブを低下させ、日本を含む各国でのライセンス販売事例が報告されている。


この取り組み、本当にすごいですよね。読んでてちょっと泣きそうになりました。たくさん増やして、だれでも買えるようにすることで「盗んでまで手に入れる意味」をなくしてしまうなんて、発想がかっこよすぎます。しかも、そのお金の流れまでちゃんと設計されていて、自生地を守る力になっていると知って、すごく感動しました。

こんな仕組みが、世界中のいろんな生き物にも広がっていったらいいですよね。「化石」とまで呼ばれた木が、普通の家庭の庭に植えられて、子どもたちの成長をそっと見守るように育っていく――想像するだけで、なんだかあたたかい気持ちになります。

人間は一度、ウォレミマツの命の流れをせき止めてしまったけれど、今はまた人の手で新しい「川」を掘って、そこに大量の苗木という水を流し込み、世界中へ届けているんですよね。そして、その川の流れは最終的に、親木を守った人たちのところへ戻り、浄化されて、また小さな流れから大きな流れとなって世界をめぐっていく。

こんなふうに、毛細血管みたいに細かく張り巡らされた「川の流れ」を、少しでも多くの生き物たちに届けられたら――心からそう願います。


ここまで読んで、『あなた』は、どのように感じましたか?

コメントで意見を聞かせてくれると、とても嬉しいです。

あなたの貴重な5分間を、本当にありがとうございました。

ウォレミマツに、あなたの5分が届くことを祈ります。

鶏人|Keijin

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