11年後のレッドリスト|ハーレクイーンアデガエル:焼け跡に、名前だけ残る【IUCNレッドリスト比較】

11年後のレッドリスト|ハーレクイーンアデガエル:焼け跡に、名前だけ残る【IUCNレッドリスト比較】 11年後のレッドリスト
※このページは、[IUCNレッドリスト]世界の絶滅危惧生物図鑑(2014年版)に基づいて制作した個人ブログです。
※画像はすべてAI生成(
DALL·E)によるイメージであり、実際の生物写真ではありません。

こんにちは、鶏人|Keijin です。

今回は、ハーレクイーンアデガエル(学名:Mantella cowanii)が、「8年で80%」も減っている可能性がある、って話です。

2014年の図鑑では、ペット目的の国際取引のために大量に捕獲されていたことなどが理由で、評価は「CR:深刻な危機」でした。
ところが近年の調査では、8年で80%以上減っている可能性があるのに、IUCNの公式表示(最終評価2014年)は「EN:危機」のままなんです。

だからハーレクイーンアデガエルは今も、「焼け跡に、名前だけ残る」──そんな状態なのだと思います。

この記事は短く、5分で読めます。
よかったら最後まで読んでください。

※2026年時点で、IUCNレッドリストにおける最新評価は2014評価(2014年公開)です(以降の更新は確認されていません)。
※本記事は専門家による学術的な評価ではなく、公開された資料に基づく個人の調査・見解を含みます。
※IUCN評価は「世界全体」と「地域・個体群」で分かれる場合があります。地域によって状況は異なります。
最新かつ正確な分類や保全状況については、IUCN公式サイトなどをご確認ください。
参考:IUCN Red List(学名:Mantella cowanii)

絶滅への高速エレベーター|「8年で80%」が示す崩壊のサイン

⬇︎ハーレクイーンアデガエルの生態(基本情報)です。必要なら開いてください。

基本情報|ハーレクイーンアデガエル(英名:Cowan's Mantella)
項目情報
和名ハーレクイーンアデガエル
英名Harlequin Mantella / Cowan’s Mantella
学名Mantella cowanii
分類両生類・無尾目(カエル目)・マンテラ科(Mantellidae)
分布マダガスカル固有(主に中央高地の限られた地域)である。
主な繁殖地小さな水域(流れの緩い小川・湧水・浅い水たまり等)周辺で繁殖するとされる種である(卵は水の外に産み、オタマジャクシは水で育つ型が多い)。
体長体長(吻端〜総排泄口長)は約21〜29mm程度の記録がある。
体重約0.9〜2.1g程度の記録がある。
寿命野外で最大9年以上に達する可能性が示されている。

特徴

  • 名前の由来:英名の“Harlequin(道化師)”は、黒・黄・橙が入り混じる派手な模様に由来する呼び名である。
  • 体色:警告色(目立つ色)をもつタイプで、捕食者に「危険」を知らせる役割を持つと考えられる。
  • 毒(アルカロイド):皮膚のアルカロイド毒は、主にアリやダニなどの餌由来で体内に取り込まれることが知られている。
  • 希少性:分布域が狭く、個体群が小さく分断されやすい点が大きな弱さである。

生態と行動

  • 暮らし:マダガスカル中央高地の環境に適応した陸生寄りのカエルで、局所的な生息地に依存する。
  • 繁殖:卵は水の外(落ち葉の下など湿った場所)に産まれ、孵化後は水域でオタマジャクシとして育つ型が多い。
  • 脅威:国際的なペット取引目的の違法採集と、生息地の劣化(開発・土地利用の変化など)が主要な脅威である。

最終評価2014年:ハーレクイーンアデガエル「EN:危機」

この種は、生息地の細分化や部分破壊を引き起こした森林伐採に加え、国際的なペット動物の商取引のための大量の捕獲にも苦しめられてきた。……個体数はこの15年で80パーセント以上が消滅したと推定される。

出典:訳者 岩槻邦男,太田英利 / 発行者 池田和博 / タイトル「IUCNレッドリスト世界の絶滅危惧生物図鑑」/発行所 丸善出版株式会社 / 発行 2014/01/31 / ©️Kunio Iwatsuki, Hidetoshi Ota, 2014

観点公式(IUCN Red List:2014年評価=EN)図鑑(2014年版でCR表記)+最近の調査が示す実態(CR相当の懸念)
いま画面で見えているランク差公式サイト上では「2014年に評価されEN」と表示される(=“最後に確定した公式評価”がEN)。図鑑は「CR」として掲載(=図鑑編集時点で採用した評価・資料がCR側だった可能性)
なぜズレが起きる?(結論)レッドリストは「評価→公表」までに手続きがあり、毎年更新される種もあれば、更新が空く種もある。結果として公式評価と最新現地調査の間にタイムラグが出うる近年の現地調査で、分布・個体数・減少速度がより深刻に見えてきており、“再評価(CR相当)を検討すべき”という方向の議論が起きやすい
取引(ペット目的採集)と評価への影響過去に国際取引が問題化。マダガスカルからの輸出は2002年にピークがあり、その後、生体取引は2003年に禁止(ban)とされる取引規制があっても、違法採集や密輸リスクは残りうる。加えて、規制だけでは止めきれない「生息地劣化」「火災」などの圧が強まると、実態は急落し得る
いま強く効いている脅威公式の脅威記載でも、生息地の改変・劣化が中心近年調査では、火災・生息地劣化・違法採集など複合圧のもとで、局所集団が小さく孤立している点がより深刻に見える
個体数・分布の“現場感”公式評価(2014)時点の判断では、EN基準として整理されている(=“当時のデータでENに該当”)調査報告では、既知13地点のうち8地点で確認/3地点は消失の可能性、反復調査3地点で成体13〜137、さらに2015→2023で約80%減少が示され、CR相当の再評価を促す材料になっている
「CRに戻るかも?」の意味公式の“表示ランク”は、次の再評価が完了するまで変わらない(=手続き上の確定が必要)研究・調査側は「この減少速度・小集団・局所絶滅の兆候なら、CR要件に触れる可能性がある」として、再評価(reassess)を推奨し得る
まとめ:図鑑とサイト、どちらが正しい?形式上の正解=公式評価はEN(2014評価が最新の確定版)生物学的な“危うさ”の実態=CR相当の可能性が濃く、再評価が強く望まれる状況

出典:IUCN:Mantella cowanii
出典:Small population size and possible extirpation of the threatened Malagasy poison frog Mantella cowanii
出典:Action Plan for the Conservation of Mantella cowanii launched in Antananarivo, Madagascar

Mantella cowanii は、IUCNレッドリストでは2014年評価に基づき EN として掲載されている一方、図鑑では CR と表記され、評価情報の更新間隔に起因するタイムラグが示唆される。近年の反復調査では局所個体群の小規模化、確認地点の減少、急速な個体数減少が報告され、生息地劣化・火災・違法採集等の複合圧が深刻化している。以上より、公式表示はENでも、実態としてはCR相当への再評価が必要となる可能性が高い。

⬇︎ハーレクイーンアデガエルの保護活動の種類です。必要なら開いてください。

保護活動の種類内容の概要
生息地の保護・管理(in situ)マダガスカル中央高地の限られた生息地(4地点ほど)で、森林・草地と小渓流周辺の環境を守る。保護区に含まれていない個体群もあるため、保全対象地の確保や管理体制づくりが重要。
出典:IUCN Amphibian Specialist Group
火入れ・野火(ブッシュファイア)対策生息地の劣化要因として野火が多い地域のため、火入れ管理・監視・地域合意を通じて燃焼頻度を下げ、植生と水環境の劣化を抑える。
出典:Madagasikara Voakajy
採掘・土地改変の抑制無秩序な金採掘などによる攪乱が課題のため、採掘圧の低減、重要生息地への侵入抑制、影響評価とルール整備を進める。
出典:Madagasikara Voakajy
外来樹種・侵略的植物の管理Pinus(マツ類)やEucalyptus(ユーカリ)など導入植物の拡大が脅威を増幅するため、除去・拡大防止や原植生の回復を行う。
出典:Madagasikara Voakajy
取引規制・密猟対策過去にペット取引で過剰採集が起きたため、輸出停止(ゼロ輸出枠)や取り締まりを継続し、違法採集の抑止と監視を強化する。
出典:IUCN Amphibian Specialist Group
種間交雑(ハイブリッド化)リスク管理近縁種との交雑が報告され、気候変動による分布変化でリスクが増える可能性もあるため、交雑状況の調査と保全上の対応方針を検討する。
出典:Amphibian Survival Alliance
研究・モニタリング個体群サイズ、生息地の質、脅威要因(火災・採掘・外来植物など)を継続調査し、保全効果を評価して行動計画へ反映する(行動計画:2021–2025)。
出典:IUCN Amphibian Specialist Group
ex situ(域外保全)・保険個体群野外でのリスクに備え、飼育下の“保険個体群(survival assurance population)”の整備や飼育繁殖技術の確立を進める。
出典:ResearchGate
地域参加・協働(コミュニティ含む)行動計画にもとづき、行政・研究者・NGO・地域住民の協働体制をつくり、監視や保全管理を継続できる仕組みにする。
出典:IUCN Amphibian Specialist Group

最後に

読んでみて、どんなふうに感じましたか?

図鑑を作るときに調べてた段階では、たしか Mantella cowanii が CR って扱いだったんだよね。で、その後2014年のIUCN評価では、輸出制限(クォータみたいな管理)が効いて国際取引が減った、って判断されて EN になった。
でも最近の調査だと、専門家たちが「いやいや、2015年から2023年の8年間で、場所によっては個体数が80%以上減ってるんだぞ。これ、まだCRレベルじゃない?」って強く言ってて、また CRに戻るんじゃないか、っていう話だね。
まあ結局、どっちにしろ危機なのは変わらないんだけどさ。てか”8年で80%”って異常だと思うのよ。原因が知りたいよね。

そうなんですよね。危機は変わんないんだからね。

じゃあ、その 「80%減」を深掘りします。


視点(要因)何が起きているか(観測・報告)80%減につながるポイント(負の連鎖の中身)
1. 遺伝的な消失(交雑)近縁種 バロンアデガエル(Mantella baroni)との交雑が、同所的に起きる地点で確認されている。報告では、ある地点で 最大10%が交雑由来とされる。個体数が減るだけでなく、「純粋な M. cowanii」が遺伝的に薄まる方向に進むと、見た目が残っても“種として残らない”リスクが増える。さらに生息地改変が進むほど両種の接触機会が増え、交雑が加速し得る(=減少+同化の二重苦)。
2. 火災の常態化と微細環境の乾燥反復調査のある地点で 2015〜2023年に80%超の減少が報告され、その要因候補の一つとして 火災が挙げられている。火災は個体の直接死だけでなく、産卵・隠れ家になる湿った微小環境(マイクロハビタット)を乾燥化させ、再生産の失敗を連鎖させる。頻度が高いほど回復前に次の攪乱が来て、減少が“階段状”ではなく“崩れる”形になりやすい。
3. 「高地の罠」+気候変動行動計画では、マダガスカルの両生類全体に対して 気候変動が主要脅威の一つとして位置づけられている。高地性の種は、温暖化に対して上方移動の余地が小さい可能性がある。さらに乾燥化が進むと皮膚呼吸・体表水分に依存する両生類には不利で、火災や生息地劣化と組み合わさると影響が増幅しやすい(=気候×火災×劣化の複合圧)
4. 違法取引の「闇」過去にはペット取引目的の採集が問題化し、報告では 2003年に野生個体の輸出停止へ至った経緯が示される。一方で、近年の報道・解説では、依然として 違法採集が主要脅威として挙げられている。公式な輸出が止まるほど希少性が上がり、闇市場でのインセンティブが残る。分布が狭く集団が小さい種では、特定地点が狙われると局所集団が一気に消える(=“点”が抜け落ちて全体が崩れる)。
5. 孤立化と「絶滅の渦」反復調査で残存集団が 13〜137個体と非常に小さいことが報告されている。小集団が分断されると、近親交配や偶然要因(病気・干ばつ・火災・密猟)で減少が自己増幅しやすい(一般に「絶滅の渦」と呼ばれる状態)。外的圧が少し強まるだけで、回復より減少が速くなり“コラプス”に近い落ち方になり得る。
まとめ(なぜCR再検討が出るのか)公式評価は2014年のままでも、近年のデータでは 急減(80%超)・小集団・脅威の複合化が示され、再評価の必要性が強まる「取引管理が前提の評価」だけでは説明しきれないほど、生息地側(火災・劣化・気候)+違法採集+遺伝的同化が同時進行しているため、カテゴリー上も CR相当へ“戻る”議論が起きやすい。

出典:IUCN:Mantella cowanii
出典:New Action Plan Mantella cowanii 2021-2025
出典:Action Plan for the Conservation of Mantella cowanii launched in Antananarivo, Madagascar

これってさ、前にも話してた「人類が絶滅へのベルトコンベアで、このカエルたちを高地からさらに追い詰める“絶滅へのエスカレーター”に運んでる」って話よりも……。
この”80%減”って、もう 「絶滅への高速エレベーター」 って言った方がしっくりくるよね。

そうなんですよね。
そのエレベーターのボタンには、赤い色のやつがずらっと並んでる気がするんです。たとえば 「野焼きをする」 とか 「密猟する」 とか、「森林破壊で分断させる」 とか、「化石燃料を燃やし続ける」 とか……たぶん数えきれないくらい。

でも、きっとその下のほうには、緑色のボタンも残ってるはずなんですよね。
「化石燃料を少しずつ減らす」、「野焼きをしないで代わりの方法を考える」、「森林破壊を止める」、「買い物という選択で意見する」……そういう、気候変動や環境悪化を少しでも緩やかにするボタン。

ちょっと前までは、たぶん 「止める」 とか 「一時停止」 みたいなボタンもあったんだと思うんだけど、きっと今はもう無い。
だから、今にも消えそうなその緑のボタンを、みんなで連打するしかないんじゃないかなって。

エレベーターの下降(=絶滅への落下)そのものを完全に止められないとしても、スピードを落として、どこか別の階でいったん下ろすとか、そういう対策はまだできるんじゃないか……って、そんなふうに感じるんですよ。


ここまで読んで、『あなた』は、どのように感じましたか?

コメントで意見を聞かせてくれると、とても嬉しいです。

あなたの貴重な5分間を、本当にありがとうございました。

ハーレクイーンアデガエルに、あなたの5分が届くことを祈ります。

鶏人|Keijin

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