11年後のレッドリスト|サイガ:風に消えた群れが、再び地平を渡る【IUCNレッドリスト比較】

11年後のレッドリスト|サイガ:風に消えた群れが、再び地平を渡る【IUCNレッドリスト比較】 11年後のレッドリスト
※このページは、[IUCNレッドリスト]世界の絶滅危惧生物図鑑(2014年版)に基づいて制作した個人ブログです。
※画像はすべてAI生成(
DALL·E)によるイメージであり、実際の生物写真ではありません。
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こんにちは、fukumomo3_photo です。

サイガ(Saiga tatarica)は、

2014年、図鑑に【CR:深刻な危機】として分類されていました。

2023年、IUCNレッドリストで、【NT:準絶滅危惧】と評価されました。

つまり、2014年から2023年にかけて、サイガは

「風に消えた群れが、再び地平を渡る」状態になりました。

※2025年時点で、IUCNレッドリストにおけるサイガの最新評価は2023年版です。それ以降の更新は行われていません。

この記事は、とても短く5分で読めるので、どうぞ最後まで読んでいただけると嬉しいです。

※本記事は専門家による学術的な評価ではなく、公開された資料に基づく個人の調査・見解を含んでいます。
最新かつ正確な分類や保全状況については、IUCN公式サイトなどをご確認ください。
参考:https://www.iucnredlist.org/species/19832/233712210

サイガの保護成功がもたらした新たな課題

⬇︎サイガの生態です。必要に応じてご覧ください。⬇︎

基本情報|サイガ(Saiga)
項目情報
和名サイガ(サイガレイヨウ)
英名Saiga / Saiga Antelope
学名Saiga tatarica
分類哺乳類・ウシ科・レイヨウ属
分布カザフスタン、ウズベキスタン、モンゴル西部、ロシア南部などの草原地帯
主な生息地半乾燥のステップ地帯や砂漠地帯(特にカザフスタンのウスチュルト台地)
体長約100〜140cm
体重約25〜40kg
寿命約8〜10年
IUCN評価(2023年)【NT:準絶滅危惧】

特徴

  • 特徴的な鼻:大きく垂れ下がった鼻(吻部)が最大の特徴。この鼻は、砂漠の塵をろ過し、冷たい冬には吸い込む空気を温める役割を持つ。
  • 角の形:オスには半透明の琥珀色をしたねじれた角があり、密猟の主な対象になっている。
  • 体毛:季節によって毛の長さや色が変化し、冬は灰褐色で厚く、夏は淡い黄褐色で短くなる。
  • 俊敏な走り:最高時速は約80kmに達し、開けた草原を群れで疾走する。

生態と行動

  • 社会性:季節によって群れの大きさが変わり、冬季には数千頭規模の大群になることもある。
  • 食性:草食性で、乾燥地の草、低木、塩分を含む植物などを食べる。乾燥した環境でも水分を植物から摂取できる。
  • 繁殖:オスは繁殖期にハーレム(10頭前後のメス群)を形成し、激しく争う。妊娠期間は約5か月で、春に2頭の子を出産する。
  • 移動:季節的に数百km単位の長距離移動を行い、餌や水を求めて移動する渡り動物。
  • 脅威:密猟(角が漢方薬として取引される)、疫病(パスツレラ症など)、過放牧、道路やフェンスによる分断など。

2014年絶滅危惧種:サイガ【CR:深刻な危機】

かつて 1970年代半ばには 100万を超える個体数を記録したが、高い狩猟圧により全世界での個体数は5万頭にまで減少した。

出典:訳者 岩槻邦男,太田英利 / 発行者 池田和博 / タイトル「IUCNレッドリスト世界の絶滅危惧生物図鑑」/発行所 丸善出版株式会社 / 発行 2014/01/31 ©️Kunio Iwatsuki, Hidetoshi Ota, 2014

区分内容
分類の変化2014年:CR(深刻な危機) → 2023年:NT(準絶滅危惧)
象徴する地域中央アジアの草原(主にカザフスタン)
評価更新日2023年12月11日(IUCN Red List 2023: e.T19832A233712210)
回復の意義絶滅寸前から準絶滅危惧へ――国際社会が連携した保護史上まれな成功例
個体数の推移1970年代:約100万頭 → 2005年:約4.8万頭 → 2023年:約190万頭(カザフスタン)
激減の主な要因(1990〜2000年代)・ソ連崩壊後の経済混乱による密猟の激化
・オスの角(漢方薬原料)の乱獲
・農業・インフラ開発による草原の分断と劣化
危機的状況(2014年当時)絶滅は時間の問題と考えられ、CR(深刻な危機)に分類
保護活動の柱① 密猟対策の徹底
② 広大な保護区の設定
③ 国際協力と地域連携
④ 科学的モニタリング
密猟対策の徹底政府による法執行の強化、パトロール隊の組織化、レンジャー装備支援、ドローン導入など
保護区の設定カザフスタンでは九州地方の約1.2倍の面積を保護区に指定
国際協力と地域連携WWF、Saiga Conservation AllianceなどのNGOが資金・知識を支援
地域住民への啓発活動で保護意識を醸成
科学的モニタリング個体数・生息地を継続的に調査し、データに基づく保護計画を策定
回復要因高い繁殖力(メスは生後7〜8ヶ月で繁殖可能)と多国間の保護活動の連携
現状(2023年)カザフスタンを中心に190万頭を超えるまで回復
今後の課題・密猟再発のリスク
・気候変動による干ばつ・異常気象
・感染症による大量死リスク
・道路・鉄道建設による生息地分断
象徴的メッセージ「絶滅寸前の種でも、人間の協力で未来を取り戻せる」

中央アジアの草原を象徴する動物、サイガ(Saiga tatarica)は、2023年12月11日にIUCN(国際自然保護連合)のレッドリストで、最も絶滅リスクが高い【CR:深刻な危機】から【NT:準絶滅危惧】へと2段階引き下げられた。

これは、国際社会と生息国による長年の地道な保護活動が実を結んだ、保護史上まれに見る成功例として注目されている。

しかし、サイガの未来は、決して楽観視できるものではない。

この奇跡的な回復を未来へとつなげるためにも、今後も継続的な監視と国際的な協力が不可欠である。

⬇︎サイガの主な保護活動の種類です。必要に応じてご覧ください。⬇︎

保護活動の種類内容の概要
密猟防止角(サイガ角)の違法取引を取り締まるため、国境警備やパトロールを強化し、違法狩猟を厳罰化
生息地の保全放牧・農地化・インフラ開発による草原の分断を防ぐため、ステップ地帯を保護区に指定
国際的な取引規制ワシントン条約(CITES)附属書Ⅱに掲載され、国際取引を厳しく規制
保護区の設定カザフスタン・モンゴル・ロシアなどでサイガ専用の保護区(例:Stepnoi Reserve)を整備
疾病対策パスツレラ症など感染症による大量死を防ぐため、監視・通報・ワクチン開発を進行
地域住民参加地元の遊牧民と協力し、密猟防止・生態系保全・持続可能な放牧の啓発活動を実施
研究とモニタリングGPS首輪による移動経路追跡、個体群動態の長期観察、気候変動の影響調査を実施

主な取り組み

  • 密猟防止:角目的の違法狩猟を取り締まるため、監視体制と法的罰則を強化
  • 生息地保護:草原の分断を防ぐため、インフラ開発や過放牧を制限
  • 国際規制:CITES附属書Ⅱにより、角や製品の国際取引を厳重に制限
  • 保護区整備:カザフスタンなどでサイガ保護区(Stepnoi Reserveなど)を設置
  • 疾病管理:感染症の発生モニタリングと原因分析、ワクチン研究を推進
  • 地域協働:地元遊牧民の協力による密猟防止と生態系保全活動を実施
  • 長期研究:GPS追跡や空中調査による個体数・回遊ルートの把握

最後に

これを読んでみて、どのように感じましたか?

「増えすぎたらまた減らすとかしないかな?」

過去にそのようなこともありましたよね。

その辺も踏まえて調べてみますね。


過去にも同様の事例は国内外で数多く報告されている。

地域種名危機と保護個体数の回復と問題現在の管理
日本ニホンジカ
(Cervus nippon)
・明治時代の乱獲、戦後の造林で激減
・絶滅の懸念から1970年代以降に保護強化(メスジカの禁猟など)
・保護政策と天敵不在により1980年代以降に爆発的増加
・農林業被害、希少植物の食害など全国的な問題化
・「特定鳥獣保護管理計画」に基づき、狩猟による積極的な個体数調整(駆除)を実施
・保護から管理への転換を象徴する事例
アメリカアメリカアリゲーター
(Alligator mississippiensis)
・20世紀半ば、皮目的の乱獲・生息地開発で絶滅寸前
・1967年に絶滅危惧種に指定
・保護策により個体数が急増
・1987年に絶滅危惧指定から解除
・住宅地・ゴルフ場などに出没、人やペットへの被害も
・多くの州で管理された狩猟を許可
・皮・肉が地域産業資源として利用される
北米(カナダ・米国)カナダガン
(Branta canadensis)
・20世紀初頭の無制限狩猟で激減
・保護活動により劇的に回復
・都市部・農地に適応し身近な存在に
・糞害、水辺汚染、農作物被害、人への威嚇行動が問題化
・北米では卵の除去や許可狩猟で個体数を制御
・日本では外来種として特定外来生物に指定し防除(駆除)を実施

絶滅の危機から生物を救う保護活動が成功すればするほど、今度は人間社会との新たな軋轢、いわゆる「保護管理問題」が生まれる。

これは、保護の成功がもたらした新たな、そして非常に複雑な課題と言える。

区分内容
背景サイガは絶滅危機を脱し、特にカザフスタンでは個体数が急増。2025年には300万頭を超えるまでに回復。
地域的特徴世界の約95%以上のサイガがカザフスタンに集中して生息。
問題の発生爆発的な個体数増加により、農業や牧畜業に深刻な影響が発生。
主な被害内容・農地への侵入による作物被害(小麦など)
・牧草を食べ尽くすことによる家畜との競合
・地域経済への打撃と住民の反発
社会的影響「保護の成功」が「全国的な問題」に転じ、保護と生活のバランスが新たな課題となった。
政府の対応2023年後半から、カザフスタン政府がサイガの個体数調整方針を発表。
調整の内容科学的調査に基づき、一部の個体を計画的に捕獲・駆除。2025年の案では全体の約20%(約80万頭)を対象。
目的単なる削減ではなく、「生態系の均衡」と「人との共存」を維持するための調整。
国際的議論「持続可能な利用(Sustainable Use)」という新たな管理方針が検討中。
持続可能な利用の内容・限定的な管理狩猟の許可
・捕獲個体の肉・皮・角を資源として活用
・得られた収益を地域経済・保護活動へ還元
文化的背景サイガは歴史的に遊牧民の食料源であり、ソ連時代には管理された狩猟が行われていた。
期待される効果・地域住民が保護の恩恵を実感できる仕組み
・保護と利用の両立による共存モデルの確立
懸念点・管理を誤れば再び乱獲に発展するリスク
・「持続可能な利用」の実践には高度な科学的管理が必要
現在の状況(2025年)国際機関・研究者・政府の協議が継続中。科学的データに基づく慎重な調整計画が進行中。
象徴的メッセージ「命を守ること」と「数を保つこと」は、必ずしも同じ意味ではない。

歴史的に見ても、サイガは中央アジアの遊牧民にとって重要な食料源だった。

ソビエト連邦時代にも、工業的な規模で管理された狩猟が行われていた歴史がある。

この「持続可能な利用」がうまくいけば、サイガを保護の対象としてだけでなく、地域の貴重な資源として位置づけることで、人間との共存を図ることができる。

それは、野生動物管理の新たな成功事例となる可能性を秘めているのだ。

しかし、その管理方法を誤れば、かつてのように乱獲につながり、再びサイガを絶滅の危機に追い込む危険性もはらんでいる。

このことからも、今一度人間中心的な考えを改める時が来ているのではないかと感じる。


ここまで読んで、『あなた』は、どのように感じましたか?

コメントで意見を聞かせてくれると、とても嬉しいです。

あなたの貴重な5分間を、本当にありがとうございました。

サイガに、あなたの5分が届くことを祈ります。

fukumomo3_photo


インスタでは、サイガたちの姿を“図鑑みたいに”並べて見られます。
ビジュアルで伝える命の物語、よかったらのぞいてみてください。

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