11年後のレッドリスト|ケープヤマトンボ:外来樹の影に、羽音を潜めている【IUCNレッドリスト比較】

11年後のレッドリスト|ケープヤマトンボ:外来樹の影に、羽音を潜めている【IUCNレッドリスト比較】 11年後のレッドリスト
※このページは、[IUCNレッドリスト]世界の絶滅危惧生物図鑑(2014年版)に基づいて制作した個人ブログです。

Hi, I’m 鶏人|Keijin.

In a 2014 encyclopedia, the Gilded Presba (Syncordulia legator) was assessed as “VU: Vulnerable.” This was due to its restricted range—concentrated in specific mountain streams in southwestern South Africa—and the ongoing degradation of its habitat caused by invasive alien trees, water extraction, water pollution, and agricultural intensification.

Fast forward to 2026, and its IUCN Red List status remains exactly the same: still “VU: Vulnerable.” While water conservation initiatives to remove invasive trees have continued in recent years, it is hard to find any major recovery plans dedicated exclusively to this species, or any clear reports showing a distinct increase in its population.

I believe the Gilded Presba is still out there, “keeping the hum of its wings hidden in the shadows of invasive trees.”

This is a quick, 5-minute read.
I hope you’ll stick with me to the end.

こんにちは、鶏人|Keijinです。

ケープヤマトンボ(学名:Syncordulia legator)は、2014年の図鑑では、分布域が南アフリカ南西部の限られた山地河川に集中し、外来樹木の侵入、水の取水、水質汚染、農業の集約化などによって、生息地の質が低下していることなどから「VU:危急」と評価されていました。

そして、2026年時点で確認できるIUCNレッドリストの評価も、2014年と変わらず、「VU:危急」のままでした。

近年は、外来樹木を取り除く水源保全活動は続けられていますが、本種だけを対象にした大きな回復計画や、個体数が明確に増えたという情報は確認しにくい状況です。

ケープヤマトンボは今も、「外来樹の影に、羽音を潜めている」状態なのだと思います。

この記事は短く、5分で読めます。
よかったら最後まで読んでください。

※2026年時点で、IUCNレッドリストにおける最新評価は2017年評価(2018年公開)です(以降の更新は、現時点では確認できていません)。
※本記事は専門家による学術的な評価ではなく、公開された資料に基づく個人の調査・見解を含みます。
※IUCN評価は「世界全体」と「地域・個体群」で分かれる場合があります。地域によって状況は異なります。
最新かつ正確な分類や保全状況については、IUCN公式サイトなどをご確認ください。
参考:IUCN Red List(学名:Syncordulia legator

ケープヤマトンボを脅かす外来樹木と南アフリカの水問題

⬇︎ケープヤマトンボの生態(基本情報)です。必要なら開いてください。

基本情報|ケープヤマトンボ(英名:Gilded Presba)

主に SANBI Red List of South African Species、Zootaxa の原記載論文、Dragonflies & Damselflies of southern Africa、BDI系情報、Centre for Invasion Biology の侵略的外来樹木に関する情報を照合しました。Syncordulia legator は南アフリカ南西ケープ固有のトンボで、英名は Gilded Presba、IUCN/SANBI系では VU:危急 と扱われます。SANBI評価では、既知産地が少なく、EOOは5,091km²、AOOは44km²、10地点とされ、水利用・水質汚染・農業強化・生息地劣化が問題とされています。(種の状態)

項目内容
和名ケープヤマトンボ
和名の注意「ケープヤマトンボ」は日本語での便宜的表記として扱うのが適切。広く定着した標準和名として確認しにくい。
英名Gilded Presba
英名の表記注意Guilded Presba ではなく、通常は Gilded Presba
アフリカーンス語名Goudvlerkswalker、または Goudvlekswalker と表記されることがある
学名Syncordulia legator
命名者・命名年Dijkstra, Samways & Simaika, 2007
原記載2007年、Zootaxa の論文で Syncordulia serendipator とともに新種記載された
分類昆虫綱・トンボ目・不均翅亜目・Libelluloidea上科・Syncordulia属
科の扱い出典により Corduliidae、Synthemistidae、または Libelluloidea incertae sedis と扱いが揺れる。
Syncordulia
属の特徴南アフリカ固有のトンボ属で、ケープ植物区の冷涼な山地渓流と関係が深い
Syncordulia属の種Syncordulia gracilis、Syncordulia legator、Syncordulia serendipator、Syncordulia venator など
IUCNレッドリストVU:危急
評価基準B2ab(iii)。分布面積が小さく、分断され、生息地の質の低下が続くことに基づく
南アフリカ国内評価SANBI Red List でも Vulnerable
分布国南アフリカ共和国固有
分布地域南アフリカ南西部、西ケープ州の山地地域
分布範囲北はセダーバーグ周辺から、南はパルミート川上流域まで
分布の特徴非常に局所的で、山地渓流沿いの限られた地点に分布する
既知地点数SANBI評価では10地点
EOO5,091km²
AOO44km²
生息環境流れの速い岩の多い山地河川、渓流、フィンボス植生に囲まれた水辺
標高0〜700m程度
周辺植生フィンボス。南アフリカ南西ケープを代表する低木性・硬葉性植生
水域条件流れが速く、岩が多く、水質が良い山地河川を好む
河畔環境低木が茂る自然な河岸植生が重要
成虫の行動場所水面上だけでなく、川から数百m離れたフィンボスや低い低木上を飛ぶことがある
休息場所地面近くの濃い植生内、枝の下面などに止まり、周囲に溶け込む
活動時期主に南半球の春から初夏。9月中旬から1月上旬ごろに成虫が見られるとされる
観察難度非常に珍しく、局所的で、成虫は水面上に常に出るわけではないため見つけにくい
体の大きさ中大型から大型の細身のトンボ
体型細長く、すばやく飛ぶ
体色暗褐色から黒褐色を基調に、黄褐色から麦わら色の斑紋を持つ
雄の顔褐色がかった黄色からヒマワリ色の顔を持ち、上唇基部はやや暗色
雄の眼明るい灰色で、わずかにまだら模様が入る
雄の胸部光沢のある暗褐色。側面に褐色の筋があり、胸部背面に鮮やかな黄色線が入る
翅の特徴透明だが、先端部がややスモーキーに見える
雄の腹部暗い黒褐色で、全体に左右対称の淡黄色斑が並ぶ
雄の尾部付属器非常に長く細い
雌の特徴雄に似るが、腹部中央が雄ほど細くなく、全体にがっしりする
雌の眼雄より褐色味が強い
雌の翅雄より煙ったように見え、特に前縁や先端部が暗く見える
類似種Syncordulia gracilis、Syncordulia serendipator、Syncordulia venator
識別上の注意写真だけでは近縁種との識別が難しい場合がある。雄の尾部付属器、腹部斑紋、胸部背面の黄色線などが重要
幼虫水中生活をする。詳細情報は限られるが、渓流性トンボとして流れのある河川環境に依存すると考えられる
生活史卵、水生幼虫、羽化、成虫というトンボ目の生活史
成虫の食性飛翔性の小型昆虫を捕食する肉食性
幼虫の食性水生小動物を捕食する肉食性
繁殖詳細な種別情報は少ないが、渓流環境で産卵し、水中で幼虫が発育すると考えられる
個体数不明
個体数傾向SANBI評価では個体数・傾向ともに情報不足
主な脅威水路改変、水の取水、水質汚染、農業の intensification、生息地分断、外来植物の侵入
農業の影響既知産地の一部が農地周辺にあり、取水や汚染、河川改変の影響を受けやすい
外来植物の影響河畔を外来樹木が覆うと、フィンボス性の自然河岸植生や水辺環境が変化し、固有トンボ相に悪影響を与える
水質への依存清浄な渓流に依存するため、濁り・農薬・栄養塩・堆積物増加に弱い可能性が高い
保全活動河川と河畔植生の保全、外来樹木の除去、取水管理、水質保全、追加調査、分布確認
外来樹木除去との関係ケープ植物区では、侵略的外来樹木の除去により固有トンボ相が回復する例が報告されており、本種のような渓流性固有種にも重要な対策となる
保全上の課題分布地点が少なく、個体数も不明で、生息地の質が河川単位で変化しやすいこと
生態系での役割渓流とフィンボス河畔の捕食性昆虫として、水辺と陸上をつなぐ食物網に関わる
指標種としての意味清浄な山地渓流と自然な河畔植生の健全性を示す種として扱える

ケープヤマトンボは「水の中だけを守ればよいトンボ」ではありません。成虫は川から離れたフィンボス低木上を飛ぶこともあり、休息には厚い植生を使います。一方で幼虫期は渓流環境に依存すると考えられるため、川の水質、流量、岩場、河畔植生、周辺のフィンボスがまとめて残らないと生活史が途切れます。Centre for Invasion Biology は、ケープ植物区の固有トンボが侵略的外来樹木の影響を強く受け、外来樹木の除去後に固有トンボ相が回復し得ることを説明しており、本種についても外来樹木が除去されていなければ絶滅していた可能性があったと紹介しています。(南部アフリカのトンボ)

出典

最終評価2017年:ケープヤマトンボ「VU:危急」

この種に対するおもな脅威としては、その生息域である川の周辺を覆ってしまう外来種の樹木がある。これらの樹木は最終的に在来の動植物相を駆逐してしまう。南アフリカで全国的に行われている水源保全活動プログラムにより、このような外来種の木を水源付近から取り除く活動が行われている。

出典:訳者 岩槻邦男、太田英利 / 発行者 池田和博 / タイトル『IUCNレッドリスト世界の絶滅危惧生物図鑑』/ 発行所 丸善出版株式会社 / 発行 2014/01/31 / © Kunio Iwatsuki, Hidetoshi Ota, 2014

ケープヤマトンボ(Syncordulia legator)|2026年時点の現状まとめ
出典:IUCNレッドリスト|ケープヤマトンボ(学名:Syncordulia legator

確認できる現在情報では、ケープヤマトンボ / Gilded Presba は、2026年時点でも評価は「VU:絶滅危惧II類」のままです。ただし、最新評価そのものは新しく更新されたものではなく、IUCN画面上では2017年10月27日評価が継続掲載されています。南アフリカSANBIの評価でも2017年10月の地域評価が掲載され、「この種に対する他の評価はない」とされています。(種の状態)

項目2014年の図鑑現在(2026年確認)
和名・英名ケープヤマトンボ。英名は Gilded Presba。Gilded Presba としてIUCNに掲載。和名は日本語図鑑由来として「ケープヤマトンボ」と扱ってよい。
学名Syncordulia legator Dijkstra, Samways & SimaikaSyncordulia legator。学名は現在も同じ。種としての有効性は維持されている。
記載年図鑑本文では「科学的に特定されたのは2007年」と説明。2007年に Zootaxa で新種記載。ケープ植物区系地域でのレッドリスト調査・標本確認・野外調査の過程で確認された狭域固有種。
レッドリスト評価絶滅危惧II類、つまりVU相当。IUCNでは Vulnerable、VU。2014年から見てカテゴリー上の改善・悪化は確認できない。VUのまま。
評価の新旧図鑑時点では、当時利用可能だったIUCN評価または関連評価をもとにVUとして紹介。2026年確認時点で、IUCNの最新掲載評価は2017年10月27日評価。2026年に新評価へ更新されたわけではない。
評価基準図鑑本文では細かい基準までは見えにくいが、個体数・分布域・将来の減少リスクから絶滅危惧II類と説明。IUCNでは VU B2ab(iii)。つまり、実際に占有している面積が狭く、地点数や分断性の問題があり、生息地の質の継続的低下が懸念されるという評価。
分布南アフリカ西南部のケープフォールド山地に生息すると説明。南アフリカ南西ケープの固有種。SANBIでは、北はセダーバーグ、南はパルミート川上流域までと説明されている。
生息環境山地の冷たい川から出現し、強い風をものともせず山を越えると説明。内陸湿地・河川性環境。特にフィンボス周辺の山地性の流れ、岩がちな河川・渓流環境と結びつく種とみられる。
既知地点・範囲図鑑では詳しい地点数までは示されていないが、限られた地域の希少種として扱われている。SANBI評価では、分布範囲 EOO は約5,091 km²、占有面積 AOO は約44 km²、既知地点は10地点とされる。かなり狭い。
個体数図鑑では「個体群の大きさや分布域、個体数動向から判断」と一般説明があるが、具体的な成熟個体数は不明。個体数・成熟個体数・個体群動向はいずれも不明。IUCN画面でも population trend は Unknown。
個体群の傾向将来的な減少リスクがある種として紹介。現在も「増えている」とは確認できない。むしろ個体群情報が不足しており、希少・局所的な種として扱われている。
2014年に気になった主な脅威川の周辺を覆う外来種の樹木。外来樹木が在来の動植物相を駆逐することが主な脅威として説明されている。外来植物は現在も脅威として残る。加えて、SANBIでは水路改変、水質汚染、農業の集約化、水の取水も生息地劣化の要因として挙げられている。
外来樹木問題の現在図鑑では、南アフリカの水源保全活動プログラムにより、水源付近から外来種の木を取り除く活動が行われていると説明。これは Working for Water の文脈と考えられる。プログラム自体は継続しているが、近年は資金・実施規模・効果の低下が指摘されており、外来樹木問題が解決済みとは言えない。
保全活動外来樹木除去が紹介されており、種にとって間接的に重要な保全策として扱われている。種専用の回復計画が大きく進んだという情報は確認しにくい。現行評価では「生態と分布について、さらなる情報が必要」とされる。
状態の変化2014年時点ですでに絶滅危惧II類。外来樹木による河川周辺の変化が問題視されていた。2026年確認でもVUのまま。評価が改善したわけではなく、むしろ水利用・農業・汚染・外来植物が重なった「小さな川の生息地問題」として残っている。
総合判断「まだ存在しているが、川の周辺環境が崩れると危ない種」という扱い。「絶滅危惧II類のまま、情報不足を抱えた狭域固有トンボ」。2014年から大きく好転したとは言いにくく、外来樹木除去だけでは足りず、流量・水質・農地利用・河川周辺植生を一体で守る必要がある。

この種で重要なのは、「外来樹木を切れば終わり」ではない点です。南アフリカでは外来樹木が集水域の水を大量に消費し、河岸を不安定にし、火災リスクや在来種の排除につながることが指摘されています。Working for Water はその対策として始まった大規模プログラムですが、2026年の研究紹介では、近年は規模や効果が低下しているとも説明されています。つまり、2014年の図鑑に書かれていた希望の部分はまだ残っている一方で、現在は「その保全活動を維持できるか」が新しい課題になっている印象です。(Stellenbosch University)

出典

ケープヤマトンボは、2014年の図鑑で絶滅危惧II類とされており、2026年確認でもIUCN評価はVUのままです。改善したというより、2017年評価が継続掲載されている状態で、個体数や増減傾向はいまも不明です。分布は南アフリカ南西部の限られた山地河川に集中し、占有面積も非常に狭いままです。主な脅威は、外来樹木による河川周辺環境の変化に加え、水路改変、水質汚染、農業集約化、水の取水などへ広がっています。外来樹木除去の取り組みは続いていますが、種の状態が大きく好転したとは言いにくく、河川環境全体を守る必要があります。

⬇︎ケープヤマトンボの保護活動の種類です。必要なら開いてください。

本種単独の大規模な保全計画は確認しにくいですが、ケープ植物区系地域の河川性トンボ類全体では、外来樹木の除去、河畔植生の回復、河川モニタリング、Dragonfly Biotic Indexの活用、Working for Water型の水源・河川回復事業が重要です。Centre for Invasion Biologyの解説では、外来樹木の除去によって、Syncordulia legatorを含む固有トンボ類が急速に回復しうることが示されています。(Stellenbosch University)

保護活動の種類内容実施・提案の状況重要度補足
分布再調査CederbergからPalmiet River上流域までの既知・潜在生息地を再確認する必要最重要SANBIでも個体数・個体群動向の情報不足が示されている
既知10地点の保全既知地点を優先的に管理対象にする必要最重要AOOが44km²と小さいため、各地点の価値が高い
未確認地点の探索過去記録地周辺、未調査の山地河川、保護区内外の適地を探索する必要高い狭域固有種で、発見されにくい可能性がある
生息地地図化河川、標高、植生、外来樹木、水質、土地利用を重ねて適地を地図化する必要高い保全優先地の選定に役立つ
生息適地モデル既知記録と環境条件から潜在分布を予測する必要中〜高新規調査地点や保護対象河川の絞り込みに有効
河川生息地の保全速い流れをもつ山地河川・渓流環境を守る必要最重要本種はケープ地域の冷涼な山地河川性トンボ群に属する
河畔林・河畔植生の保全川沿いの自然植生、フィンボス、在来河畔植物を維持する必要最重要河川の日陰、水温、微小環境、水質を支える
フィンボス景観の保全河川周辺のフィンボス植生を農地化・植林・外来樹侵入から守る必要高いケープ植物区系地域の固有昆虫相にとって重要
河川上流域の保全生息地点だけでなく、上流域の土地利用と水質を管理する必要最重要水質と流量は上流域の影響を強く受ける
流域単位の管理支流、源流、河畔、農地、取水、外来樹木をまとめて管理する必要最重要トンボ幼虫は水中にいるため、流域全体の管理が必要
水質保全農薬、肥料、生活排水、土砂、化学物質の流入を抑える必要最重要SANBIは水質汚染を脅威として挙げている
農業排水対策果樹園、畑、牧草地などから河川へ流れる農薬・肥料を減らす必要高い既知地点は農地周辺にあるとされる
河畔緩衝帯の設定農地や道路と河川の間に自然植生帯を残す必要高い土砂、農薬、肥料の河川流入を抑える
土砂流入対策道路、農地、伐採地、外来樹除去後の裸地からの土砂流入を防ぐ必要高い細流・渓流の底質が埋まると幼虫環境が劣化する
水温上昇の抑制河畔植生を保ち、直射日光と水温上昇を抑える必要高い冷涼な山地河川性種では微気候管理が重要
自然流量の維持取水、灌漑、貯水による流量低下を抑える必要最重要SANBIは水利用・取水を脅威として挙げている
取水規制農業・家庭・施設利用による過剰取水を管理する必要最重要乾季や低水期の流量低下は幼虫生息地に直結する
環境流量の設定河川生態系を維持する最低流量を設定する必要高い成虫だけでなく水中幼虫の生存に必要
小規模ダム・堰の管理流れを止める構造物が生息河川に与える影響を評価する必要高い流速・水温・底質・魚類相を変える可能性がある
河川改修の回避護岸、直線化、浚渫、河床改変を避ける必要高い自然な岩場・瀬・淵の構造が重要
岩場・瀬の保全岩盤、礫、急流、瀬などの自然構造を残す必要高いSyncordulia類は山地河川環境に結びつく
外来樹木の除去河川沿いのAcacia mearnsiiなど侵略的外来樹木を取り除く実施・継続必要最重要外来樹木の除去後に固有トンボ類の回復が報告されている
外来樹木の再侵入防止伐採後の萌芽、実生、再侵入を継続的に管理する必要最重要一度除去しても再侵入すれば河川環境が再び劣化する
Working for Water型事業水源・河川沿いの侵略的外来植物を除去する国家的な水源保全事業を活用する実施中・継続必要最重要南アフリカでは外来樹木除去が淡水生物保全に大きく寄与してきた
外来樹除去後の復元外来樹木除去後に在来河畔植生を回復させる必要高い伐採だけでなく、植生回復と土砂流出防止が必要
河畔在来植生の再生在来低木、草本、フィンボス植生を戻す必要高い河川の温度、水質、餌生物、羽化場所の回復に関わる
河川の連続性保全生息地点間の河川環境を分断しない必要高い分布が断片化しているため、再分散可能性を保つことが重要
個体群孤立の抑制農地・外来樹・改修区間による個体群の孤立を減らす必要高い小集団化は局所絶滅リスクを高める
保護区内の重点管理Cederberg、Kogelberg、Palmiet River上流域などの保護区・保全地で重点調査する必要高い分布域内の保護区が重要な避難地になり得る
保護区外の河川保全農地周辺や私有地内の河川も管理対象にする必要最重要SANBIは既知地点が農地付近にあることを示している
私有地所有者との協働農家・土地所有者と河畔緩衝帯、取水、水質、外来樹管理を調整する必要最重要保護区外の生息地では所有者協力が不可欠
農家向け啓発本種と河川生物の重要性、農薬・取水・外来樹の影響を伝える必要高い水質と流量の改善には地域理解が必要
水利用者協議農業、自治体、保全機関、土地所有者で取水量を調整する必要高い低水期の過剰取水を防ぐ
水質モニタリングpH、溶存酸素、濁度、栄養塩、農薬、導電率を測定する必要高い汚染の早期発見に役立つ
流量モニタリング季節ごとの水量、低水期、取水影響を記録する必要高い幼虫の生息可能期間を把握できる
水温モニタリング河川の日中・季節水温を測定する必要中〜高外来樹除去後の日射増加や気候変動影響を確認する
底質モニタリング岩、礫、砂、堆積泥の状態を調べる必要中〜高幼虫の微小生息場所を把握する
成虫調査成虫の飛翔、なわばり、休止、交尾、産卵行動を記録する必要最重要目撃が少ない種のため、成虫期の集中調査が重要
調査時期の最適化成虫出現期に合わせて調査を行う必要高い出現期を外すと見落としやすい
幼虫調査河床、岸辺、落葉、石下などで幼虫を調べる必要高い成虫確認だけでなく繁殖地の特定に必要
羽化殻調査河畔の岩、植物、岸辺に残る羽化殻を探す必要高い成虫の一時的飛来ではなく、実際の繁殖を確認できる
産卵場所の特定雌の産卵行動や卵発生環境を確認する必要高い生息地管理の精度を高める
繁殖地の保護幼虫・羽化殻・産卵が確認された河川区間を重点保護する必要最重要種の存続には繁殖場所の保全が最重要
微小生息環境研究流速、水深、日陰率、河床、河畔植物を細かく記録する必要高い本種の具体的な生息条件はまだ情報不足
個体数推定定点調査、ラインセンサス、羽化殻数から相対個体数を推定する必要高いSANBIは個体数・動向情報がないとする
長期モニタリング同じ河川区間を毎年または数年ごとに調査する必要最重要個体群動向を把握するために不可欠
Dragonfly Biotic Index活用トンボ群集を用いて河川の生物多様性・環境状態を評価する実施・有効高い南アフリカ発のDBIは淡水評価に活用されている
指標種としての活用本種を清流性・固有性の高い河川環境の指標として扱う必要高い希少種の存在は高品質な河川環境を示す可能性がある
トンボ群集調査本種だけでなく、同じ河川のトンボ相全体を調べる必要高い河川状態の総合評価に役立つ
近縁種との比較Syncordulia gracilis、S. venator、S. serendipatorと生息環境を比較する必要中〜高属全体の保全に役立つ
分類・同定技術の維持形態識別、写真記録、標本確認により誤同定を防ぐ必要高い2007年の記載種であり、正確な同定が重要
博物館標本の再確認過去標本、未同定標本、近縁種標本を確認する必要中〜高分布・時期・過去生息地の把握に役立つ
市民科学の活用写真投稿、観察記録、iNaturalist等を補助情報として使う可能ただし専門家による確認が必要
写真記録の蓄積成虫の識別写真、生息環境写真、羽化殻写真を保存する必要中〜高再確認と普及啓発に役立つ
研究者・自然観察者の研修希少トンボの見分け方、調査時期、記録方法を共有する必要高い発見率を高めるために重要
CapeNature等との連携西ケープ州の保護区管理機関と調査・外来樹管理を連携する必要高い分布域の保護区管理に関わる
SANBIとの連携レッドリスト、DBI、淡水生物評価と連動して情報を更新する必要高い国レベルの評価と現場管理をつなぐ
大学・研究機関との連携Stellenbosch Universityなどの研究蓄積を活かす実施・必要高い外来樹除去とトンボ回復研究の中心的知見がある
農業計画との連携河川沿いの農業拡大、灌漑、農薬使用を生物多様性情報と照合する必要高い農業の intensification が脅威として示されている
農薬使用削減河川近くでの殺虫剤、除草剤、肥料の使用を抑える必要高い水生昆虫の幼虫に影響する可能性がある
有機汚濁対策畜産排水、生活排水、堆肥流出を管理する必要中〜高水質悪化を防ぐ
農地からの濁水防止耕作地・作業道・裸地からの雨水流出を抑える必要高い河床の目詰まりを防ぐ
エコロジカル・インフラ管理河川・湿地・水源域を水供給と生物多様性の基盤として保全する必要高い外来樹除去は水資源確保にもつながる
気候変動影響評価乾燥化、降雨変動、水温上昇が分布と幼虫生息地に与える影響を調べる必要中〜高ケープ地域の淡水生物にとって将来的な重要課題
渇水リスク対策低水期に流量が消失しないよう取水・外来樹・流域管理を行う必要高い水中幼虫は河川の継続性に依存する
洪水攪乱の評価豪雨・洪水が幼虫、河床、河畔植生へ与える影響を把握する必要自然攪乱と人為的劣化を区別する必要がある
山火事後の河川保全火災後の土砂流入、灰、植生喪失を管理する必要中〜高フィンボス地域では火災後の流域影響が重要
外来魚対策必要に応じて外来魚が水生昆虫群集に与える影響を評価する必要に応じてFrontiers論文では南アフリカで外来魚対策も淡水保全課題として触れられている
淡水保護区の設定重要河川区間を淡水生物保全の重点区域として扱う必要高い陸上保護区だけでは河川の水質・流量を守りきれない
河川回廊保全山地河川沿いの連続した自然植生を維持する必要高い成虫の移動と再定着に役立つ
開発前環境影響評価道路、農業施設、観光施設、水利施設が生息地に与える影響を評価する必要高い既知地点が少ないため、事前回避が重要
観光・レクリエーション管理渓流利用、踏み荒らし、車両侵入、ゴミ投棄を管理する必要に応じて河川区間によっては局所的脅威になる
詳細位置情報の慎重管理希少な生息地点のGPS情報を不用意に公開しない必要中〜高観察圧よりも、生息地攪乱や過度な訪問を避けるため
飼育下繁殖施設内で繁殖させる主要対策として確認できず低〜保留本種では生息地保全・再調査が優先
再導入失われた河川へ個体を戻す主要対策として確認できず低〜保留まず繁殖地、幼虫生態、個体群状況の把握が必要
移殖別河川へ人為的に移す推奨情報は確認できず狭域固有種では遺伝・適地・病原体リスクを慎重に扱う必要がある
現地外標本保存研究用標本を博物館で保管し、分類・分布研究に使う実施・必要2007年の記載研究でも博物館・野外調査が重要だった
レッドリスト更新最新の分布、個体数、水質、外来樹除去効果を反映して評価を更新する必要高いSANBI評価は2017年版で、動向情報が不足している
保全優先地の再評価新しい記録と河川状態に基づき、重点河川を更新する必要高い外来樹除去後の回復地も優先地になり得る
成果評価外来樹除去、水質改善、取水管理後の個体確認・繁殖確認で効果を測る必要高い活動量ではなく、個体群と河川状態の回復で評価する
長期資金確保外来樹除去後の再侵入管理、調査、水質測定に継続資金を確保する必要高い一度の除去・調査では保全効果が続かない
順応的管理調査結果に応じて、外来樹管理、取水、水質、調査地点を見直す必要最重要情報不足種なので、得られたデータをすぐ管理へ反映する必要がある
河川を中心にした保全個体そのものより、冷涼で清澄な山地河川を維持する必要最重要本種保全の本質は、ケープ山地河川の水・光・植生を守ること

出典に使えそうな厳選URL

最後に

Questioner: So, clearing out those invasive trees wasn’t originally about saving the Gilded Presba, but if it hadn’t happened, they might have actually been wiped out completely.

Me: That makes me wonder where those invasive trees came from in the first place, and how they ended up taking over the rivers where the Gilded Presba lives. Let’s dig a little into the history to find out.

質問者:ケープヤマトンボさんの保全から始まった外来樹木の除去じゃなかったみたいだけど、これがなかったら、絶滅していた可能性もあったみたいだね。

私:そもそもこの外来樹木がどこからどのような経緯で、ケープヤマトンボが暮らす川の周りに生育してしまったのかが気になります。そのあたり歴史を遡って調べてみます。


どのような外来樹木が、どこから来たのか?

南アフリカのケープ地方などで生態系を脅かしている主な外来樹木は、オーストラリア原産のアカシア(特にブラックワトル)やユーカリ、そしてヨーロッパや北米由来のマツ(パイン)です。

これらの樹木は、主に17世紀半ばから19世紀にかけて、ヨーロッパからの入植者たちによって意図的に持ち込まれました。

なぜ南アフリカに持ち込まれたのか?(導入の歴史的背景)

本来、南アフリカに広がる「フィンボス」と呼ばれる独自の植生地域には、木材として使えるような成長の早い高木がほとんど存在しません。そのため、入植者たちは以下のような実用的な理由から外来樹木を大量に植林しました。

  • 皮革産業のための「タンニン」採取: 1864年にオーストラリアから持ち込まれたブラックワトルは、樹皮に皮革のなめし加工に不可欠な「タンニン」を豊富に含んでいました。これにより南アフリカのタンニン産業は競争力を持つようになり、大規模な商業植林が行われました。
  • 鉱業やインフラのための木材不足解消: 19世紀後半に南アフリカで鉱業が急成長すると、鉱山の足場を組むための大量の木材が必要になりました。また、蒸気機関車の燃料(薪)や建築用木材としても、ユーカリやマツが重宝されました。
  • 景観の美化: 樹木の少ない現地の風景を、入植者たちが「故郷のヨーロッパのような緑豊かな風景」に変えたいと望んだことも、植樹を後押ししました。

なぜ川の周辺を覆い尽くしてしまったのか?

もともと植林地(プランテーション)で人工的に管理されていたこれらの外来樹木ですが、やがて管理の手を離れて野生化し、猛烈な勢いで広がっていきました。

  • 驚異的な環境適応力: マツなどは、山火事の多い南アフリカの環境に非常に適応しており、在来種を駆逐して自生範囲を広げる性質を持っていました。
  • 「水を大量に消費する」性質と水辺への侵入: 成長が早い分、これらの外来樹木は大量の水を必要とするため、水が豊富な川沿い(水辺環境)に好んで定着しました。その結果、強烈なポンプのように湿地や川の水を吸い上げて枯渇させてしまいました。
  • 国家レベルでの水不足: 南アフリカ全体で、外来樹木は在来の植物が使用するよりも年間で約33億立方メートルも多くの水を消費していると推計されており、深刻な水資源の浪費を引き起こしました。

ケープヤマトンボを救った「Working for Water」の真の目的

外来種を取り除く水源保全活動プログラム「Working for Water(WfW)」は、実は「生態系の保護」を第一の目的として始まったものではありません。

  • 水資源の確保と失業対策: 1995年、アパルトヘイト撤廃後の新政権下でこのプログラムが立ち上げられた際の最大の目的は、「水資源の枯渇を防ぐこと」と「貧困層・失業者の雇用創出」でした。
  • 大規模な公共事業: 水を大量に吸い上げる外来樹木を伐採するため、数万人規模の失業者や貧困層(退役軍人や仮釈放者なども含む)を作業員として雇用したのです。

まとめ

固有種のトンボなどを絶滅の危機に追いやったのは、19世紀の「木材・タンニン需要」という人間の経済活動でした。しかし皮肉なことに、そのトンボを絶滅の淵から救い出すきっかけとなったのも、自然保護というよりは「人間の飲み水・農業用水の確保」と「貧困層の失業対策」という人間側の強烈な社会・経済的ニーズだったのです。

結果的に、この巨大な公共事業が外来樹木を水辺から取り除き、図らずもケープヤマトンボをはじめとする貴重な水生生物の生息環境を劇的に回復させることに繋がりました。

出典

Questioner: So basically, humans brought them over for timber and extracting tannins, but then they exploded around the rivers. Then people realized these trees were guzzling up water like crazy, panicked, and said, “Hey, that’s our water!” and started cutting them down. And that’s what the “Working for Water” project actually means.

Me: Classic humanity, always putting out fires we started ourselves. It reminds me of something similar from when I was a kid. There was this huge uproar about these yellow flowers called Canada goldenrod completely taking over the riverbanks. People suspected their pollen was causing asthma and hay fever, so they went out and mowed them all down. But later on, it turned out the real culprit was actually ragweed.

Questioner: It’s so selfish, honestly. We drag things over from halfway across the world without a second thought just because we think we need them, and the second they become an inconvenience, we chop them all down.

Me: True. But in the end, cutting down those trees accidentally saved the Gilded Presba. And honestly, the bees and other insects were probably pretty thrilled about all that goldenrod, too.


Thank you for sharing five minutes of your day with me.

I hope those five minutes somehow find their way to the Gilded Presba.

鶏人|Keijin

質問者:自分たちがタンニン採取や材木で利用するために持ち込んだけど、びっくりするぐらい川の周りに生育しちゃって、それも調べたら水をものすごい勢いで吸ってるから、「俺たちが使う水がなくなるだろう!」って伐採することになったのが、Working for Waterっていう、水のために働くってことだったんだね。

私:相変わらず人類はマッチポンプな行動ばかりです。似たようなことで、子供のころセイタカアワダチソウという黄色い花を咲かせる花が、河川敷を覆い尽くすことが問題になりました。理由は、この黄色い花の花粉が花粉症や喘息の原因だと疑われたからです。そのことから、一斉に刈り取られたのですが、のちにブタクサが原因だったと判明したことを思い出しました。

質問者:必要だと思ったら後先考えないで遠い国から持ってきて植えて、困ったら一斉に伐採したり刈り取ったりして、ほんと勝手ですね。

私:まあでも、今回の伐採も結果としてケープヤマトンボを救うことになりましたし、セイタカアワダチソウもミツバチなどの昆虫たちからしたら嬉しいことだったのかもしれませんけどね。


貴重な5分間を、ありがとうございました。

ケープヤマトンボに、その5分が届くことを祈ります。

鶏人|Keijin


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