11年後のレッドリスト|スルスミアワビ:波の記憶だけが、まだそこに残っていた【IUCNレッドリスト比較】

11年後のレッドリスト|スルスミアワビ:波の記憶だけが、まだそこに残っていた【IUCNレッドリスト比較】 11年後のレッドリスト
※このページは、[IUCNレッドリスト]世界の絶滅危惧生物図鑑(2014年版)に基づいて制作した個人ブログです。
※画像はすべてAI生成(
DALL·E)によるイメージであり、実際の生物写真ではありません。

こんにちは、鶏人|Keijin です。

スルスミアワビ(Haliotis cracherodii)は、

2014年、図鑑に【CR:深刻な危機】として分類されていました。

2021年、IUCNレッドリストで、【CR:深刻な危機】と評価されました。

つまり、2014年から2021年にかけて、スルスミアワビは

「波の記憶だけが、まだそこに残っていた」状態なのです。

※2025年時点で、IUCNレッドリストにおけるスルスミアワビの最新評価は2021年版です。それ以降の更新は行われていません。

この記事は、とても短く5分で読めるので、どうぞ最後まで読んでいただけると嬉しいです。

※本記事は専門家による学術的な評価ではなく、公開された資料に基づく個人の調査・見解を含んでいます。
最新かつ正確な分類や保全状況については、IUCN公式サイトなどをご確認ください。
参考:https://www.iucnredlist.org/species/41880/78775277

しぼみ症候群の脅威と、そこに見え始めた回復の兆し

⬇︎スルスミアワビの生態です。必要に応じてご覧ください。⬇︎

基本情報|スルスミアワビ(Black Abalone)
項目情報
和名スルスミアワビ(墨海螺)
英名Black Abalone
学名Haliotis cracherodii
分類軟体動物・腹足綱・アワビ科
分布北アメリカ西海岸沿い(カリフォルニア〜メキシコ・バハ半島周辺)
主な生息環境岩礁のある潮間帯〜浅い海域
体長約12〜20cm(個体により差あり)
体重数百g程度
寿命30年以上生きるとされる

特徴

  • 名前の由来:殻の外側が黒〜濃茶色を帯びていることから「Black Abalone(スルスミ=墨)」と呼ばれる。
  • 体は殻の内側が真珠のように輝く「真珠層」でできている。
  • 殻に並んだ穴(呼吸孔)は、呼吸・排泄・生殖に関わる水の流れを作る「アワビ特有」の構造。
  • 移動は遅いが、岩に吸いつく「強い足」を持ち、波の強い海にも適応する。

生態と行動

  • 食性:主に海藻(特にジャイアントケルプ)を食べる草食性。
  • 生息性:干潮時に空気に触れることもある、潮間帯に強い適応を持つ。
  • 繁殖:体外受精。海中に卵と精子を放出し、海中で受精し、幼生として漂う時期を経て着底する。
  • 成長:成長は遅く、成熟までに数年〜10年以上かかることもある。
  • 社会的なまとまり:周囲に仲間が少なくなると産卵の効率が著しく下がる(→これが「個体数が減るほど加速して絶滅しやすい」理由)。

2014年絶滅危惧種:スルスミアワビ【CR:深刻な危機】

ここ数十年にわたり、スルスミアワビの数は大幅に減少した。そのおもな原因はしぼみ症候群とよばれる病気であり、多くの個体に感染が広まったのである。

出典:訳者 岩槻邦男,太田英利 / 発行者 池田和博 / タイトル「IUCNレッドリスト世界の絶滅危惧生物図鑑」/発行所 丸善出版株式会社 / 発行 2014/01/31 ©️Kunio Iwatsuki, Hidetoshi Ota, 2014

項目内容補足・ポイント
病気の現状しぼみ症候群は縮小していない原因菌 Candidatus Xenohaliotis californiensis は南カリフォルニア沿岸で 風土病(エンデミック)化
気候変動の影響水温上昇により症状が悪化高水温ほど死亡率が上昇。近年の海水温上昇が回復を阻害
新たな脅威山火事・嵐 → 土砂流入で生息地が埋没2023–2024年にも確認。 生息地の質が低下
個体数の回復兆しチャンネル諸島の一部で個体数増加サンニコラス島では ~数百 → 2,000匹以上へ(約10倍)
耐性獲得の可能性一部個体が病気に耐性を獲得し始めている可能性研究段階だが回復の鍵となる重要な要素
移殖(トランスロケーション)健康な個体群を回復が必要な海域へ移動2023年〜本格的に開始された保全手法
飼育・繁殖の課題飼育下での繁殖はまだ成功していない他アワビでは成功例あり → スルスミアワビ特有の難しさ

しぼみ症候群の脅威は依然として継続している。

しかし、スルスミアワビが有する耐性や、生息地の保全・移殖といった人為的な保全措置によって、一部地域では回復の兆候が確認されつつあるのが現在の状況である。

⬇︎スルスミアワビの主な保護活動の種類です。必要に応じてご覧ください。⬇︎

保護活動の種類内容の概要
密漁対策商業目的・個人採取を厳しく取り締まり、沿岸警備・巡回を強化。
漁業規制休漁期間の設定、禁漁区の設置、採取サイズ制限を導入し個体回復を促進。
海洋生息地の保護岩礁・潮間帯の環境を保全し、海藻群落や隠れ場所となる地形の破壊を防ぐ。
病原体対策「アワビの白点症候群(withering syndrome)」の拡大を監視し、感染区域での採取・移動を制限。
保護区の設定生息密度が高かった海域に「海洋保全区(MPA)」を設置し回復を支援。
市民・地域参加ダイバー・漁師・研究者による個体数調査、異常発生時の情報共有ネットワークを構築。
養殖・再導入研究人工育成した稚貝を野外に再放流し、個体群の再生を試みる取り組みが進行中。

主な取り組み

  • 密漁防止:監視強化と法的罰則の引き上げ
  • 休漁と禁漁区設定:個体数回復のための漁業制限
  • 海藻群落の保護:生息地となる岩礁帯の環境維持
  • 病気対策:白点症候群の拡大防止と感染区域の制御
  • 海洋保護区の整備:回復を目指した再生海域の設定
  • 市民調査ネットワーク:ダイバーや地域協力による個体数モニタリング
  • 再導入計画:養殖した稚貝を野生海域に放流して個体群再建を試みる

最後に

これを読んで、どんなふうに感じましたか?

「しぼみ症候群って、やっぱり海水温が上がったせいなのかな?」

そう思うのは、すごく自然なことだと思います。

もう少し詳しく調べてみますね。


要素何が起きるか詳細結果
① 病原菌の活性化細菌が「攻撃モード」に切り替わる原因菌 Candidatus Xenohaliotis californiensis低水温では休眠18°Cを超えると増殖・病原性が強まるアワビの消化腺が破壊され、消化酵素が作れなくなる
② アワビ側の免疫力低下高水温はアワビに強いストレススルスミアワビは冷たい湧昇流に適応した種のため、暖かい海水に長く晒されると体力を消耗免疫機能が弱り、病気を防ぐ力が低下する
③ 相乗効果による悪化「病気は強く、アワビは弱く」状態になる敵(細菌)は強化 → 味方(アワビ)は弱体化発症 → 消化・吸収ができず筋肉が萎縮衰弱死へ進行

結果として起こる悪循環

海水温上昇
 ↓
アワビの免疫力低下(弱くなる)
 ↓
細菌の病原性が強化(強くなる)
 ↓
消化腺が破壊される
 ↓
栄養吸収ができなくなる
 ↓
「しぼんでいく」ように体力が失われる
 ↓
死亡

1980年代の大発生期や、1997〜1998年に壊滅的な被害が生じた時期は、いずれも海水温が異常に高くなるエルニーニョ現象と重なっていた。現在は、こうした一時的な現象に加え、地球温暖化による長期的な海水温上昇が継続している。

その結果、病原菌が活発化する「危険水温」の期間が長くなり、アワビが免疫力を回復するために必要な「低水温の期間」が短縮されている。これが、しぼみ症候群が長期にわたってスルスミアワビを脅かし続けている主要な要因である。


「熱帯魚の水槽で水質が悪くなると、藻が一気に増えて、水草が覆われて枯れてしまうことがありますよね。それと、すごく似たことが海の中でも起きているんだね。」

そうなんです。

このまま海水温の上昇が止まらなければ、もっと深刻な状況になる可能性があります。

スルスミアワビは素早く移動できるわけではないので、急速に進む気候変動に追いつくことができないと思われます。

そして、これは海の中だけの話ではありません。

陸でも同じように、これまで寒い地域にはいなかった生き物が広がり、もともとそこに暮らしていた種が追い詰められて絶滅してしまう。

結果的に、「たまたま環境に耐えられた生き物だけが生き残る場所」になっていく、そんな未来が進行しているのかもしれません。


ここまで読んで、『あなた』は、どのように感じましたか?

コメントで意見を聞かせてくれると、とても嬉しいです。

あなたの貴重な5分間を、本当にありがとうございました。

スルスミアワビに、あなたの5分が届くことを祈ります。

鶏人|Keijin

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