11年後のレッドリスト|サントメテリハトキ:緑の静寂に、記憶だけが羽ばたいている【IUCNレッドリスト比較】

11年後のレッドリスト|サントメテリハトキ:緑の静寂に、記憶だけが羽ばたいている【IUCNレッドリスト比較】 11年後のレッドリスト
※このページは、[IUCNレッドリスト]世界の絶滅危惧生物図鑑(2014年版)に基づいて制作した個人ブログです。
※画像はすべてAI生成(
DALL·E)によるイメージであり、実際の生物写真ではありません。
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こんにちは、fukumomo3_photo です。

サントメテリハトキ(Bostrychia bocagei)は、

2014年、図鑑に【CR:深刻な危機】として分類されていました。

2021年、IUCNレッドリストで、【CR:深刻な危機】と評価されました。

つまり、2014年から2021年にかけて、サントメテリハトキは

「緑の静寂に、記憶だけが羽ばたいている」状態なのです。

※2025年時点で、IUCNレッドリストにおけるサントメテリハトキの最新評価は2021年版です。それ以降の更新は行われていません。

この記事は、とても短く5分で読めるので、どうぞ最後まで読んでいただけると嬉しいです。

※本記事は専門家による学術的な評価ではなく、公開された資料に基づく個人の調査・見解を含んでいます。
最新かつ正確な分類や保全状況については、IUCN公式サイトなどをご確認ください。
参考:https://www.iucnredlist.org/species/22697478/177028688

飛べる鳥と、移りゆく人

⬇︎サントメテリハトキの生態です。必要に応じてご覧ください。⬇︎

基本情報|サントメテリハトキ(Dwarf Ibis)
項目情報
和名サントメテリハトキ
英名Dwarf Ibis / São Tomé Ibis
学名Bostrychia bocagei
分類鳥類・ペリカン目・トキ科(Threskiornithidae)
分布サントメ島(サントメ・プリンシペ民主共和国)のみ(固有種)
主な生息地島中央部の山岳熱帯雨林(標高900〜1,400m)
体長約50cm
体重約500〜600g(推定)
寿命約15〜20年(野生下推定)
IUCN評価(2021年)【CR:深刻な危機(Critically Endangered)】

特徴

  • 名前の由来:「テリハトキ(照葉トキ)」の名は、光沢のある羽根が太陽光を受けて緑や紫に輝くことに由来する。
  • 外見:全体に黒褐色で、首から背にかけて緑や青紫の金属光沢をもつ。嘴は細長く下方に湾曲。
  • 体型:トキ科の中でも特に小型で、「Dwarf(小さい)」の名の通りの姿。
  • 鳴き声:低く「クルルッ、クルルッ」と鳴く。群れではなく、つがいまたは単独で行動することが多い。
  • 飛行:短距離を低く飛ぶことが多く、主に森林内を静かに移動する。

生態と行動

  • 生息環境:サントメ島中央部の湿潤な山岳原生林に生息。樹木の根元や湿地、倒木周辺を好む。
  • 食性:ミミズ、カタツムリ、昆虫、両生類などの小動物を捕食。嘴で地面を突き、湿った土中の獲物を探す。
  • 繁殖:樹上や岩のくぼみに小枝で巣をつくり、2〜3個の卵を産む。詳しい繁殖生態はほとんど未解明。
  • 行動特性:極めて警戒心が強く、人間の気配を察すると森の奥に姿を消す。
  • 脅威:森林伐採による生息地の減少、農地拡大、捕食者(イヌ・ネコ・ラットなど)の侵入が深刻。
  • 保全状況:個体数は100羽未満と推定。オボ国立公園に保護区が設定されているが、監視体制は限定的。

2014年絶滅危惧種:サントメテリハトキ【CR:深刻な危機】

人為的に移入されたモナモンキー、アフリカジャコウネコ、イタチなどの哺乳類による捕食も問題である。

出典:訳者 岩槻邦男,太田英利 / 発行者 池田和博 / タイトル「IUCNレッドリスト世界の絶滅危惧生物図鑑」/発行所 丸善出版株式会社 / 発行 2014/01/31 ©️Kunio Iwatsuki, Hidetoshi Ota, 2014

区分内容具体例・影響
植民地化の始まり1470年頃、ポルトガル人がサントメ・プリンシペに到達。以降、無人島がプランテーション拠点へと変化。サトウキビ・カカオ栽培、奴隷貿易の拠点化。
食料源としての導入家畜として豚やヤギが持ち込まれ、一部が野生化(フェラ化)。植生や在来昆虫への影響。
ペットとしての導入モナモンキーなどがペット目的で持ち込まれ、逃亡・放棄により野生化。固有の鳥類や小動物への捕食圧増大。
害獣駆除目的の導入プランテーションのネズミ対策として、アフリカジャコウネコやイタチ類を導入。鳥類の卵・雛を捕食、個体数を激減させる要因に。
偶発的侵入船荷物などに動物が紛れ込み、意図せず島に到達。小型哺乳類や昆虫などの非意図的外来種。
生態系への影響外来哺乳類が島の固有種(例:サントメテリハトキ、サントメオナガモズなど)に脅威をもたらす。捕食・競合・生息地破壊により絶滅危機を加速。

これらの哺乳類は、サントメ・プリンシペの独自の生態系に深刻な影響を与え、多くの固有種を絶滅の危機に追いやっている。

そしてこの影響は一過性のものではなく、ユニークな生態系に対する慢性的かつ継続的な脅威として、2025年現在も深刻な問題となっている。

⬇︎サントメテリハトキの主な保護活動の種類です。必要に応じてご覧ください。⬇︎

保護活動の種類内容の概要
森林保全生息地であるサントメ島の熱帯多雨林を保護し、農業拡大・伐採・道路建設による破壊を防止
保護区の設定オボ国立公園(Obô Natural Park)を中心に、主要な生息域を保全対象に含める
外来種対策ネズミ・ネコ・オオトカゲなど、卵やヒナを捕食する外来種の制御
生息地再生劣化した森林地帯の再植林および植生回復プログラムを推進
研究とモニタリング定期的な個体数調査、繁殖地の確認、分布域の再評価を実施
地域社会との協働地元住民と協働した森林管理や保全教育を通じて、違法伐採や狩猟圧を軽減
国際協力BirdLife International、Oikos、SPEA(ポルトガル鳥類学会)などの国際NGOと連携し、長期的保全計画を実施

主な取り組み

  • 森林保全:伐採や農業開発を防止し、原生林を保護
  • 保護区指定:オボ国立公園に主要生息域を含め、法的保護を強化
  • 外来種対策:ネズミやネコによる卵・ヒナの捕食を制御
  • 再植林活動:劣化森林の回復と生態的連続性の確保
  • 個体数調査:繁殖状況・分布域の変化を継続的にモニタリング
  • 地域協働:住民を巻き込んだ持続的森林管理と保護教育
  • 国際連携:BirdLife International などと協力した種保全プロジェクトの推進

最後に

これを読んでみて、どのように感じましたか?

「このトキって飛べるんだよね?」

飛んで逃げることができるのに、なぜと感じますよね。

詳しく調べてみます。


原因説明具体的な影響・事例
① 巣や雛が狙われる成鳥は飛んで逃げられるが、卵や雛は無防備。高木の巣でもモナモンキーやネズミが登って襲う。モナモンキー・ネズミによる卵・雛の捕食。繁殖成功率の低下。
② 地上で餌を探す習性サントメテリハトキは地上で昆虫やミミズを探す。野生化した豚が掘り返した地面を利用することも。地上採餌中に、ジャコウネコ・イタチなど地上捕食者の不意打ちを受けやすい。
③ 警戒心の欠如(Island Tameness)島では元々哺乳類の捕食者がいなかったため、捕食への警戒心や逃避行動が進化していない。外来哺乳類や人間への警戒が甘く、容易に捕食・捕獲される。

サントメ・プリンシペのような海洋島では、もともと地上性の哺乳類の捕食者が存在しない。

そのため、そこに生息する鳥たちは、捕食者に対する警戒心や逃避行動が十分に進化していないと推測される。

さらに、その影響は鳥類にとどまらず、哺乳類、両生類、昆虫、植物など広範囲に及んでいる。

分類種名(学名)主な脅威詳細内容
鳥類サントメ・モズ
(Lanius newtoni)
捕食・生息地破壊クマネズミ、モナモンキー、アフリカジャコウネコ、野生化ネコなどによる巣・雛・成鳥への捕食。さらに森林伐採や農地開発が加わり、生息域が縮小。絶滅危惧IA類(CR)。
哺乳類サントメ・トガリネズミ
(Crocidura thomensis)
捕食・競争サントメ島唯一の陸生哺乳類。移入哺乳類による捕食・競合が生存を脅かす要因。
淡水生態系固有の魚類・両生類捕食・餌資源の競争外来魚の放流により、固有魚や両生類が捕食・競争の圧力を受け、生態系のバランスが崩壊。
植物島内の在来植物群生態系改変外来植物の繁殖力が強く、在来植物を駆逐。鳥類などが外来植物の種子を運び、植生構造そのものが変化。

移入された生物は特定の種を狙うだけでなく、捕食、競争、生息地の改変といった様々な形で生態系全体に影響を及ぼし、ドミノ倒しのように多くの固有種の生存を脅かしている。

そして、生物の『移入種問題』が示すモデルは、現代のグローバル社会における人の流動や、多様な文化が交わるプロセスを考える上で、示唆に富んだ視点を与えてくれます。

観点共通点(アナロジーとしての類似)決定的な違い
既存の環境・社会への影響移入種:新たな生物が持ち込まれることで、在来種との間に捕食・競争関係が生じ、生態系の均衡が崩れる。
新しい文化・価値観:異なる考え方や生活様式が流入することで、社会構造や経済活動、価値観に変化が起こる。
人間は尊厳と権利を持つ存在。
生態学の「駆除」や「排除」といった概念を人に当てはめることは、非倫理的であり、差別を正当化する危険を孕む。
受け入れ側の脆弱性移入種:天敵のいない島では固有種が脆弱で、外来捕食者に対応できない。
新しい文化・価値観:変化への準備が整っていない社会では、摩擦や対立が生まれやすい。
社会は適応と対話によって変化できる。
学びと制度の整備により、多様な価値を共に活かす道を見出せる。
意図せざる結果移入種:善意の導入(例:害獣駆除)でも、生態系破壊を引き起こすことがある。
新しい文化・価値観:当初は期待されなかった社会的課題や摩擦を生むこともある。
人には意志と背景がある。
より良い生活、平和、学び、共創を求める意図のもとで動く存在。
目的と価値観どちらも「他者との関係性」を通して変化を生む。生態系保全の目的は“元に戻すこと”。
人間社会の目的は“共に進むこと”。
多様性の共存こそが未来を形づくる力となる。

生物の移入種問題は、閉鎖されたシステムに新たな要素が加わった時の「力学」を理解する上で、非常に分かりやすいモデルケースである。

その視点から人間の問題を眺めると、なぜ摩擦が起きるのか、どのような影響が考えられるのかを冷静に分析する一つのきっかけにはなる。

しかし、そのアナロジーはあくまで思考の道具であり、その先にいるのが、権利と尊厳を持った「人間」であることを前提として議論することが、何よりも重要だと言える。


ここまで読んで、『あなた』は、どのように感じましたか?

コメントで意見を聞かせてくれると、とても嬉しいです。

あなたの貴重な5分間を、本当にありがとうございました。

サントメテリハトキに、あなたの5分が届くことを祈ります。

fukumomo3_photo


インスタでは、サントメテリハトキたちの姿を“図鑑みたいに”並べて見られます。
ビジュアルで伝える命の物語、よかったらのぞいてみてください。

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