11年後のレッドリスト|テワンテペクノウサギ:救いの光は届かず、ただ同じ危機を抱いて立つ【IUCNレッドリスト比較】

11年後のレッドリスト|テワンテペクノウサギ:救いの光は届かず、ただ同じ危機を抱いて立つ【IUCNレッドリスト比較】 11年後のレッドリスト
※このページは、[IUCNレッドリスト]世界の絶滅危惧生物図鑑(2014年版)に基づいて制作した個人ブログです。
※画像はすべてAI生成(
DALL·E)によるイメージであり、実際の生物写真ではありません。

こんにちは、鶏人|Keijin です。

テワンテペクノウサギ(Lepus flavigularis)は、

2014年、図鑑に【EN:危機】として分類されていました。

2019年、IUCNレッドリストで、【EN:危機】と評価されました。

つまり、2014年から2019年にかけて、テワンテペクノウサギは

「救いの光は届かず、ただ同じ危機を抱いて立つ」状態なのです。

※2025年時点で、IUCNレッドリストにおけるテワンテペクノウサギの最新評価は2019年版です。それ以降の更新は行われていません。

この記事は、とても短く5分で読めるので、どうぞ最後まで読んでいただけると嬉しいです。

※本記事は専門家による学術的な評価ではなく、公開された資料に基づく個人の調査・見解を含んでいます。
最新かつ正確な分類や保全状況については、IUCN公式サイトなどをご確認ください。
参考:https://www.iucnredlist.org/species/11790/45176906

肉を食べる時代に考えたいこと|緑の砂漠と失われた多様性

⬇︎テワンテペクノウサギの生態です。必要に応じてご覧ください。⬇︎

基本情報|テワンテペクノウサギ(Tehuantepec Jackrabbit)
項目情報
和名テワンテペクノウサギ
英名Tehuantepec Jackrabbit
学名Lepus flavigularis
分類哺乳類・ウサギ目(ナキウサギ目)・ウサギ科(ノウサギの仲間)
分布メキシコ南部・オアハカ州テワンテペク地峡のごく限られた地域にのみ生息(固有種)
主な生息地熱帯性のサバンナ、草地、低木まじりの草原、海岸沿いの草地砂丘など
体長約56.5〜61cm(耳や脚が長く、細身の体つき)
体重約1.7〜2.9kg
寿命野生下での正確な寿命は不明だが、他のノウサギ類と同様に数年程度と考えられている(推定)

特徴

  • 名前の由来:
    テワンテペクノウサギは、メキシコ南部の「テワンテペク地峡(Istmo de Tehuantepec)」にちなんで名付けられたノウサギで、この地域だけにくらす“ご当地ノウサギ”です。
  • 黄色い首と黒い二本線:
    胸から首にかけて黄みがかった毛色をしており、両耳の付け根からうなじに向かって走る2本の黒いストライプが最大の特徴です。体側は白く、他のメキシコ産ノウサギと見分ける重要なポイントになっています。
  • 長い耳と脚:
    耳の長さは約11〜12cm、後ろ足も11〜13cmと長く、開けた草原で周囲の音をよく聞き取り、すばやく走るのに適した体つきです。
  • 体の色:
    背中は灰褐色〜茶色のまだら模様、腹側や体側は白っぽく、尾は上面が黒く下面が白いという“ツートンカラー”です。
  • 世界で最も絶滅に近いノウサギの一つ:
    生息地の狭さと個体数の少なさから、「世界で最も危機的なノウサギ」とも呼ばれており、IUCNレッドリストでもEN(Endangered:絶滅危惧)に分類されています。

生態と行動

  • 夜行性〜薄明薄暮性:
    夕方から夜、明け方にかけてもっとも活動がさかんで、昼間は草や低木のあいだ、ウチワサボテン(ノパル)の下などに身をひそめて休みます。
  • 食性:
    主にイネ科の草を食べる草食性で、乾季・雨季で好んで食べる植物が変わります。調査では少なくとも18種の植物が確認されており、その多くはサバンナに生える野草です。
  • 行動圏:
    個体ごとの“なわばり”ははっきりしておらず、オス・メス・年齢に関わらず、行動圏は互いに重なり合っています。成獣の年間の行動圏は平均およそ50〜55ヘクタール、よく使う中心部は約8〜9ヘクタールと報告されています。
  • 社会性:
    単独でいることもあれば、昼間に草むらで数頭がゆるく集まって休んでいることもあります。“厳密な群れ”というより、重なり合う生活圏でゆるやかにつながっているイメージです。
  • 繁殖:
    • 主に2月〜12月の長い期間にわたって繁殖し、とくに雨季(5〜10月)にピークがあります。
    • オス1頭が複数のメスと交尾する**一夫多妻(ポリギニー)**の繁殖様式です。
    • 1シーズンの出産数はおよそ1〜4頭とされ、仔ウサギは短い授乳期間ののち、すぐに自立していきます。
  • おもな天敵:
    ヘビ、キツネ、コヨーテ、イヌ、ネコなどにねらわれ、とくに幼い個体は捕食されやすくなっています。
  • 直面している脅威:
    生息地のサバンナや草地が、牧場や農地、外来草本の導入、頻繁な火入れ、人家の拡大などによって急速に変化し、分断・縮小しています。さらに狩猟(食用・娯楽)、小さな個体数による遺伝的な孤立も重なり、IUCNは成獣個体数を300頭未満(2019年推定)としています。

2014年絶滅危惧種:テワンテペクノウサギ【EN:危機】

この種へのおもな脅威は食用狩猟、狩猟競技、絶えずつづく生息地の損失、草原の農地や牧場や移住地への転換、人為的火災による生息環境の劣化、さらに外来の草本の拡大である。

出典:訳者 岩槻邦男,太田英利 / 発行者 池田和博 / タイトル「IUCNレッドリスト世界の絶滅危惧生物図鑑」/発行所 丸善出版株式会社 / 発行 2014/01/31 ©️Kunio Iwatsuki, Hidetoshi Ota, 2014

1. 現在のステータス

項目内容
IUCNレッドリストEndangered (EN) – 絶滅危惧IB類
生息地メキシコ(オアハカ州)の非常に限られた沿岸地域のサバンナや砂丘のみ
個体数成獣の数は1,000頭未満とも言われており、減少傾向(Decreasing)

2. 2014年の記述と現在の状況の比較

脅威要因2014年の記述現在の状況・詳細
食用狩猟・狩猟競技食用や狩猟競技の対象として狩られている継続中。現地では依然として法規制を無視した密猟が行われている。かつてのような「競技」としての狩猟は減った可能性があるが、地元住民による食用としての狩猟圧は依然として存在する。
生息地の損失(農地・牧場・移住地への転換)農地や牧場、移住地への転換による生息地の損失最重要の脅威。牛の放牧地への転換や、人間の居住区域の拡大により、生息地が分断されている。生息地が「飛び地」のようにバラバラになり、個体群同士の交流ができなくなっている。
人為的火災による環境劣化牧草地管理などに伴う火入れによる生息環境の劣化継続中。牧草の再生を促すために野焼き(火入れ)が頻繁に行われる。これがウサギの隠れ家を焼き払い、時には直接的にウサギを死なせてしまう原因となっている。
外来の草本の拡大外来植物の拡大による生息環境の変化深刻化。牧草用に導入されたアフリカ原産のイネ科植物(外来種)が在来の植生を駆逐している。これにより、ウサギが身を隠したり子育てをしたりするための「適切な藪」が失われている。

3. 新たに強調されている/深刻化している脅威

脅威内容
遺伝的多様性の低下生息地が分断された結果、孤立した小さなグループ間での近親交配が進み、遺伝的な健全性が失われつつある(病気への耐性が弱くなるなど)。
捕食者の問題(野良犬など)人間の居住地が近づいたことで、コヨーテやハイイロギツネといった本来の天敵に加え、人間が持ち込んだ犬(野良犬・放し飼いの犬)による捕食が大きな脅威となっている。
気候変動干ばつの頻発などが、生息環境の質をさらに悪化させている。

4. まとめ

要約内容
総括2014年の図鑑の指摘は現在でも極めて正確であり、その脅威は「解消されていない」どころか、生息地の分断化によって「より逃げ場のない状況」になっていると言える。

テワンテペクノウサギ(Lepus flavigularis)は、IUCNにより現在もENに分類され、成獣1,000頭未満・減少傾向にある。

食用狩猟、生息地改変、人為的火災、外来草本による植生改変は2014年以降も継続・深刻化しており、生息地の分断に伴う遺伝的多様性の低下、野良犬を含む捕食圧、気候変動による乾燥化が、存続リスクをさらに高めている。

⬇︎テワンテペクノウサギの主な保護活動の種類です。必要に応じてご覧ください。⬇︎

保護活動の種類内容の概要
生息地(サバンナ・草原)の保全テワンテペクノウサギはオアハカ州の海岸沿いに残る乾燥サバンナ・草原だけに生息するため、モンテシージョ・サンタクルスなどの草原を重点的な保全対象とし、牧草地転換や宅地化を抑える土地利用計画が検討されている。
放牧・草地管理の改善過放牧や外来牧草の導入が大きな脅威となっているため、回転放牧や適正な家畜密度の設定、在来草本の回復などを通じて、ノウサギに必要な自然草原構造を維持しようとする管理が提案されている。
狩猟の規制・法的保護本種はメキシコ連邦官報で「危機的絶滅危惧種(en peligro de extinción)」に指定されており、IUCNでもEN(危機)として評価されている。法的には狩猟が禁止されているが、現場では取締り強化が課題とされている。
保護区・保全サイトの設定現在知られている3〜4個体群はすべて、地域保全エリアやコミュニティ保護区として位置づけられ、ノウサギが利用する草地モザイク(サバンナ・砂丘植生など)全体を守る方向で保全計画が立てられている。
コミュニティ参加型保全サンタ・マリア・デル・マルなどの村で、研究者と住民が協力し、狩猟自粛、放牧管理、環境教育を組み合わせた「地域主体の保全プロジェクト」が試行されている。
研究とモニタリング個体数の推移や行動圏を明らかにするため、ペレットカウント、目視調査、行動圏解析などが継続的に行われており、2001年以降の密度変化や3つの孤立個体群の状況が定期的に評価されている。
生態・採食研究保全に必要な草地管理条件を知るため、食性(好むイネ科植物やサバンナ植生のタイプ)や季節ごとの利用環境を調べる研究が行われ、適切な火入れ・放牧強度などの指針づくりに活用されている。
普及啓発と国際的支援IUCNや研究者が「世界で最も絶滅に近いノウサギ」として本種を紹介し、メキシコ国内外の保全団体・寄付プログラムにより、調査資金や保全活動への支援が呼びかけられている。

最後に

これを読んで、どんなふうに感じましたか?

私は、牧草を増やすために火入れをするって書いてあったけど、その牧草を食べるのは結局、牛などの家畜なんだよね、と考えました。
そう思うと、「これ以上、肉を生産するために家畜を増やすことって、本当に良いことなのかな?」と、正直あまりいい気持ちはしません。

今までいろいろ調べてきた中で、牧草地が“ほかの野生生物にとっても良い場所になっている”という情報は、あまり見つけられていない気がしています。

このあたりのことは、もう少し詳しく調べてみようと思います。


1. 現代の牧草地が「悪」とされる理由

観点内容
緑の砂漠(Green Desert)家畜が好む栄養価の高い草(多くは外来種)だけを植えることで、植物種が単一化(モノカルチャー)する。
生物多様性の低下特定の草しか生えないため、それを食べる昆虫の種類が減り、その昆虫を食べる鳥なども減少し、生態系が貧弱になる。
物理的な破壊牛はウサギのような小動物にとって「動く重機」のような存在で、巣穴を踏み潰したり、隠れ場所となる藪をなぎ倒したりする。
テワンテペクノウサギの生息地での火入れ牧草用として導入されたアフリカ原産のイネ科植物(ギニアグラス等)は成長が早く燃えやすい。火入れによりこれらが激しく燃え、ウサギが必要とする低木の隠れ家まで焼き尽くされる。

2. 放牧が「良い」とされる例外的なケース

観点内容
適度な攪乱(かくらん)阿蘇の草原やヨーロッパの伝統的放牧地などでは、適度に草が食べられることで、背の低い植物や日光を好む希少な花が残り、それに依存する蝶なども生き残る。
条件付きのメリットこうしたメリットが生まれるのは「低密度の放牧」や「昔ながらの粗放的な管理」の場合に限られる。
現代との違い現代の食肉産業が求める、高密度かつ効率重視の放牧では、このような生物多様性の恩恵はほとんど期待できない。

3. テワンテペクノウサギにとっての「理想」と「現実」

観点内容
理想的な環境「開けた草地(採食場所)」と「低木の藪(隠れ家・寝床)」がモザイク状(パッチワーク状)に入り混じった環境。
牧草地開発の実態牛のための牧草地開発では、「邪魔な藪」をすべて取り払い、一面を同じ牧草にしてしまう。
生息環境のギャップ牛にとって最適化された土地は、テワンテペクノウサギにとっては隠れる場所も子育て場所も失われた「住めない土地」となってしまう。
直感の妥当性「牧草地=自然豊か」というイメージとは裏腹に、テワンテペクノウサギにとっては、生存条件を奪われた環境であるという点で、あなたの直感は生態学的にも的を射ている。

現代の集約的放牧で形成される牧草地は、外来牧草の単一栽培と家畜による強い攪乱を通じて、生物多様性を低下させる「緑の砂漠」となりやすい。

テワンテペクノウサギが必要とする低木と草地がモザイク状に混在する環境は、藪の除去と火入れにより消失し、牛に最適化された土地は本種にとって生息不可能な景観へと変質している。


「緑の砂漠」って言葉、なんだかゾッとしますよね。
見た目は一面の緑で「自然が豊かそう」に見えるけれど、結局あれって人間の都合に合わせて作られた牧草地なんだよな、と思います。

畜産を工業化するための“牧草工場”みたいなもので、そこにウサギの暮らしなんて考える余地はなくて、だから平気で火入れもできてしまうんですよね。

その牧草だって、おそらく人が管理しやすいように、虫がつきにくくなるよう農薬を散布して、ある程度伸びたら大きな機械で一気に刈り取るのでしょう。

こうやって考えると、日本の田んぼの風景にも少し似ている気がします。

昔よりお米の収量は上がったのかもしれないけれど、その代わりにタガメなどの水生昆虫や、かつて田んぼに当たり前にいた固有種がいなくなった、とよく聞きます。
実際、田んぼをのぞいても、小さな生き物が泳いでいる様子を観察できる機会は、かなり減ってしまいました。

なんでもかんでも、自然界のものを人間の都合のいい形に“工業化”してきた現代社会のツケは、いったいどこに回っているのでしょうか。

それは、私たちが普段目にすることのない小さな生き物や微生物たち、そして昔一緒に遊んだゲンゴロウのような生き物たちの「多様性」を削り取っていること、なのかもしれません。

本当に、彼らにこの人類のツケを払わせてしまっていいのでしょうか?

大量生産・大量消費について、最近よく考えるのですが、いまだにこれといった答えは、私の中で見つかっていません。


ここまで読んで、『あなた』は、どのように感じましたか?

コメントで意見を聞かせてくれると、とても嬉しいです。

あなたの貴重な5分間を、本当にありがとうございました。

テワンテペクノウサギに、あなたの5分が届くことを祈ります。

鶏人|Keijin

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