※このページは、[IUCNレッドリスト]世界の絶滅危惧生物図鑑(2014年版)に基づいて制作した個人ブログです。
※画像はすべてAI生成(DALL·E)によるイメージであり、実際の生物写真ではありません。
こんにちは、鶏人|Keijin です。
ツメカビ(Poronia punctata)は、
2014年、図鑑に【VU:危急】として分類されていました。
2020年、IUCNレッドリストで、【LC:低懸念】と評価されました。
つまり、2014年から2020年にかけて、ツメカビは
「土の深みに、微かな希望が芽を上げた」状態になりました。
※2025年時点で、IUCNレッドリストにおけるツメカビの最新評価は2020年版です。それ以降の更新は行われていません。
この記事は、とても短く5分で読めるので、どうぞ最後まで読んでいただけると嬉しいです。
※本記事は専門家による学術的な評価ではなく、公開された資料に基づく個人の調査・見解を含んでいます。
最新かつ正確な分類や保全状況については、IUCN公式サイトなどをご確認ください。
参考:https://www.iucnredlist.org/species/58517228/185715679
ツメカビがいなくなったら、世界はどう変わる?
──薬箱・牧場・下水処理から見える小さな菌の大きな役割
⬇︎ツメカビの生態です。必要に応じてご覧ください。⬇︎

| 項目 | 情報 |
|---|---|
| 和名 | ツメカビ(和名提案・一般には学名で呼ばれることが多い) |
| 英名 | Nail Fungus(ネイルファンガス) |
| 学名 | Poronia punctata |
| 分類 | 菌類・子嚢菌門・キノコ亜門・キシラリア目・Xylariaceae科の糞生菌(フンに生えるカビ) |
| 分布 | ヨーロッパ、西アジア、ロシア、北アフリカなどに点在して分布するが、現在はヨーロッパの多くの地域で希少種とされる |
| 主な生息地 | 馬やポニーなどウマ科動物(ときに牛・羊・ゾウなど)の古くなった糞の上。特に、放牧地・草地・ヒースランド(低木がまばらな荒地)などの日当たりのよい開けた場所 |
| 体長(子実体) | 直径約0.4〜1.5cmほどの小さな円盤状〜カップ状の子実体(キノコのような部分)をつくる |
| 体重 | 個々の子実体は非常に軽く、グラム未満のレベル(糞のかたまり全体に多数生える) |
| 寿命 | 1つの子実体は数週間ほどで老化・崩壊すると考えられており、季節ごとに新しい糞の上で世代交代する一年生タイプの菌(推定) |
特徴
- 名前の由来:英名 “Nail Fungus” は、釘(nail)の頭のように、細い柄の先に小さな白っぽい円盤が乗り、その表面に黒い点々(孔)があいている見た目からきています。種小名 punctata も「小さな斑点のある」という意味です。
- 見た目:白〜灰色がかった小さな皿状・カップ状の子実体が、馬糞の表面からニョキッと生え、その表面に黒い点がたくさん散らばって見えます。この黒い点が、胞子を飛ばす穴(子嚢殻の開口部)です。
- とても専門的な“住処”:ほとんど馬やポニーなどの糞でしか見つからない「糞専門」の菌で、こうしたフンの分解者として進化してきました。
- 食べられる?:人が食用にするキノコではなく、観察の対象・保全の対象になる「保護すべき小さな分解者」です。
- レッドリストの対象:ヨーロッパでは多くの国で絶滅危惧種として扱われており、イギリスではレッドデータブックで“Endangered(絶滅危惧)”として扱われたこともあるほど、希少な菌類です。
生態と行動
- 糞生菌としての役割:ツメカビは「糞生菌(coprophilous fungus)」と呼ばれるグループで、草食動物の糞を分解する役割を担っています。馬やポニー、ロバ、ラバなどの古い糞から養分を取り込み、糞を土へと戻すサイクルの一部になっています。
- 生える場所の条件:特に、農薬や化学肥料が少ない「粗放的な草地」や、ポニーが放し飼いにされているヒースランド・砂丘草原などで見つかりやすいとされています。これは、家畜の飼料や駆虫薬の変化が、この菌の減少に関わっている可能性があるためです。
- 生活史:
- 草を食べた馬の腸内を胞子が通過し、糞と一緒に排出される。
- 糞が地面に落ちて時間がたち、水分や環境条件が整うと、糞の表面に小さな白い円盤が現れ、やがて黒い点々(胞子の出口)が目立つようになる。
- 成熟すると、黒い点から新しい胞子が飛び出し、近くの草に付き、それをまた草食動物が食べることで次のサイクルへつながる——という、「フン→草→草食動物→フン」のループで暮らしています。
- 季節性:多くの報告では、家畜が放牧され、糞が地面に残る夏〜秋にかけて良く見つかるとされていますが、具体的な発生時期は地域の気候や放牧状況によって変わります。
- 減少の背景:20世紀後半以降、
- 放牧スタイルの変化(屋内飼育や集約的畜産への移行)、
- 草地の化学肥料・除草剤の使用、
- 家畜への駆虫薬(とくにイベルメクチン系)の普及
などにより、ツメカビが生きられる「適度に自然な草地+馬糞」の環境が減り、ヨーロッパ広域で激減したと考えられています。
- 保全とのつながり:近年、保全放牧や「自然に近い草地管理」が見直される中で、ポニーを使った管理地で再発見されるケースも増えつつあります。小さな菌類ですが、「草地の健全さ」を教えてくれる指標種としても注目されています。
2014年絶滅危惧種:ツメカビ【VU:低懸念】
すでに古いふん上で生きている他の菌との競争に打ち勝つために、ツメカビは抗生物質を放出している。運が悪いことに、ツメカビもまた人工の物質に敏感に反応し、ふんを出す動物の食物に余分なものを加えており、それがこの菌の減少を加速させている。
出典:訳者 岩槻邦男,太田英利 / 発行者 池田和博 / タイトル「IUCNレッドリスト世界の絶滅危惧生物図鑑」/発行所 丸善出版株式会社 / 発行 2014/01/31 ©️Kunio Iwatsuki, Hidetoshi Ota, 2014
| 視点 | 内容 |
|---|---|
| 減少の原因となっている「人工の物質」とは? | 図鑑で「人工の物質」「余分なもの」と表現されていたものの正体は、イベルメクチン(Ivermectin)などの駆虫薬(抗寄生虫薬)。 |
| 駆虫薬の役割 | 家畜(特に馬や牛)のお腹の中にいる寄生虫を殺すために投与される薬。 |
| 駆虫薬の問題点 | 薬の成分が体内で分解されきらず、活性を保ったまま「ふん」として排出されてしまう。 |
| なぜそれがツメカビを減らすのか? | ツメカビは、単に「ふん」があれば育つわけではなく、自然な分解サイクルに組み込まれた、デリケートな菌である。薬入りのふんでは生き残れない。 |
| 直接的なダメージ | ふんに残留した薬剤そのものが、ツメカビの胞子の発芽や成長を阻害してしまう。 |
| 間接的なダメージ(生態系の破壊) | 残留した薬剤は、ふんを食べるフン虫(糞虫)・ダニ・ウジなどの昆虫も殺してしまう。 それにより、ふんがかき混ぜられず分解も進まない「死んだふん」となり、ツメカビが発生できる環境が失われる。 |
| ツメカビの生息戦略 | ツメカビは、フン虫などの昆虫がふんを適度にかき混ぜ・分解・保湿状態を変えてくれる環境を利用し、他の菌との競争に勝てるタイミングで発生する。 |
| 現在の生息状況(世界的な視点) | 現在、ツメカビは世界的に見ても非常に希少な存在となっている。 |
| 日本での状況 | 日本では、環境省レッドリストや各都道府県のリストで絶滅危惧I類や情報不足などに指定されることが多い「幻のキノコ」のひとつ。発見例自体が稀。 |
| 海外での成功例 | イギリス(とくにニューフォレストなど)では、かつて絶滅寸前だったが、「薬を投与しない馬(ポニー)を放牧する」保護活動により、劇的な個体数回復が確認された。 |
| 成功例が示すこと | この成功例により、「薬を使わない自然なふん」がツメカビや関連する生態系にとってどれほど重要かが証明された。 |
ツメカビ Poronia punctata の衰退には、家畜に投与される駆虫薬由来の残留物質が重要な要因となる。
薬剤は糞中で真菌と分解者群集の双方に毒性を示し、糞分解プロセスを破綻させることで本種の微細な生息環境を失わせる。
一方、無投薬家畜の放牧地では個体群の回復が報告され、化学物質負荷の低減が保全に有効と示唆される。
⬇︎ツメカビの主な保護活動の種類です。必要に応じてご覧ください。⬇︎
| 保護活動の種類 | 内容の概要 |
|---|---|
| 生息地(放牧草地・牧場)の保全 | ツメカビ(Poronia punctata)は、主にウマ・ポニーなど草食動物の古い糞の上に発生する希少菌で、イギリスやヨーロッパ各地で、伝統的な放牧草地や貧栄養な牧草地を「重要生息地」として位置づけ、草地そのものの保全が進められている。 |
| 保全放牧(ポニー放牧など)の推進 | イギリスでは、ニューフォレストなどでポニーによる通年放牧を保全手法として利用しており、その結果、ツメカビの分布が広がった事例が報告されている。保全放牧によって「肥料をまかない草地」と「適度な糞」が維持され、本種の好む環境が保たれている。 |
| 肥料・農薬・駆虫薬の影響軽減 | 強い化学肥料の投入や、糞中に残留する駆虫薬(イベルメクチンなど)は、糞生きの昆虫・菌類を減らす要因とされるため、一部の保全ガイドラインでは、無肥料管理や低投入型管理、駆虫薬の使用回数・タイミングの見直しが推奨されている。 |
| 保護区・重要生息地としての指定 | ツメカビが確認されている草地の多くは、ニューフォレスト国立公園や自然保護区、Natura 2000サイトなどとして保護されており、サイト管理計画の中で本種の生息に適した放牧・刈り取り regime が検討されている。 |
| 生物多様性行動計画(BAP)への位置づけ | イギリスでは「UK Biodiversity Action Plan 種」として、またイングランドやウェールズのローカルBAPでも優先保全種として扱われ、行動計画の中に生息地管理やモニタリングの目標が組み込まれている。 |
| 調査・モニタリングと培養実験 | ニューフォレストやノーフォークでは、ポニーやウマの糞を定期的に調べるフィールド調査や、採取した糞を湿った状態で実験室培養し、ツメカビの発生状況を確認するモニタリングが行われている。 |
| 市民・アマチュア菌類学者の参加 | 菌類研究会やアマチュア菌類学者が、草地での「ツメカビ探し調査」や記録提出を行い、分布データの充実や、新しい発生地の発見に大きく貢献している。これらの情報は地域の保全計画にも活用されている。 |
| 国際的レッドリストと研究 | ツメカビはヨーロッパ各国のレッドリストに掲載され、IUCNグローバルレッドリストでも評価されたことで注目が高まり、生息要因(植生・放牧条件など)を解析する研究が進められている。 |
最後に
これを読んで、どんなふうに感じましたか?
「ツメカビって名前からしてちょっとイヤだし、本当にそんなに大事なカビなの? なくなっても牛や馬は困らないんじゃない?」と思う人もいるかもしれませんよね。
たしかにそう感じるところもありますが、ツメカビが出す抗生物質の役割や、生物多様性という視点から見ると、とても重要な存在だと分かります。
このあたりについては、もう少し詳しく調べてみようと思います。
| 視点 | 内容 | 説得のロジック |
|---|---|---|
| 1. 人類にとっての損失(人類の薬箱) | ツメカビは生存競争に勝つため、独自の抗生物質(二次代謝産物)を作り出す。 プンクタチンなどユニークな化学構造は、耐性菌時代における新薬候補となりうる。 | ツメカビを失うことは、「未知の医学書を読む前に燃やす」ようなもの。未来の特効薬を自ら捨てている可能性がある。 |
| 2. 家畜・牧場にとっての損失(牧場の掃除屋) | ツメカビとフン虫は、ふんの分解プロセスの最終ランナー。 薬剤の影響でこれらが消えると、ふんが何年も残り、草が生えず、寄生虫や害虫の温床になる。 | ツメカビがいる牧場は「健康な土の証拠」。いなくなると牧場は排泄物に覆われ、家畜の健康も損なわれる。 |
| 3. 生物多様性の視点 | ツメカビが抗生物質を出して陣取ることで、他の病原菌の増殖を抑えている側面がある。 特定の菌だけが消滅すると、空白地帯により有害な菌が入り込む危険がある。 | 小さな菌が消えることで、生態系という“歯車”が外れ、より大きなトラブルが連鎖する可能性がある。 |
ツメカビ Poronia punctata は、独自の抗生物質様二次代謝産物を産生することで、将来の新規抗菌薬候補となりうる「人類の薬箱」である。
同時に、フン虫とともに家畜糞分解の終末段階を担う「牧場の掃除屋」として牧草地の生産性と衛生環境を維持し、生物多様性と病原菌動態の安定化にも寄与する。
これは、本当に「いなくなってはいけない菌」ですね。最初はツメカビって聞いて、つい「人間のツメを白くするあれ(爪のカビ)」を思い出しちゃいますけど、実際のツメカビはぜんぜん別物で、家畜のふんを分解することで未来の私たちを助けてくれるかもしれない、とても大事な菌なんですね。それに、この構図って、私たちの生活でいうところの浄化槽や下水処理施設にも通じるところがあると思います。
ツメカビは、自然界で「小さな分解工場」をやってくれている存在で、私たちが大規模な施設でやっていることの“元祖”みたいにも見えてきます。
このあたり、もう少し掘り下げて調べてみますね。
| 視点 | 内容 |
|---|---|
| 1. 名前の誤解と違いの明確化 | 人間の爪のカビ(水虫の一種)は白癬菌などで、ケラチン(タンパク質)を分解し「破壊する側」。一方、ツメカビ(Poronia punctata)は見た目が「小さな釘」に似て名づけられた菌で、セルロースやリグニンなど植物繊維を分解する「再生の担い手」。名前は似ていても、性質も役割もまったく異なる。 |
| 2-① 難分解物処理:微生物タンク vs ツメカビ | 人間の下水処理場では、活性汚泥(微生物タンク)で汚水を処理するが、バクテリアはリグニンなどの硬い植物繊維の分解が苦手。 ツメカビは、草食動物のふんに残った未消化繊維を、酵素によって分解できる数少ない生物であり、自然界における高度な「難分解物処理」を担っている。 |
| 2-② 殺菌・制御:薬品消毒 vs バイオコントロール | 人間の処理施設では、塩素や紫外線で有害菌を殺菌して水を放流する。 ツメカビは、自身のテリトリーを守るために抗生物質を放出し、他の菌の増殖を抑制する。これは自然の中で病原菌の増殖を防ぐ「バイオコントロール」として働き、薬品を使わずに衛生状態を保っている。 |
| 2-③ 資源循環:汚泥処理 vs 自然のコンポスト仕上げ | 人間の下水処理では、汚泥の焼却や肥料化などに追加のエネルギー(化石燃料など)が必要となる。 ツメカビは、ふんを土へ戻す最終段階を担い、植物が再び利用できる栄養へと変換する。外部エネルギーを使わず、炭素循環の要として自然の物質循環を支えている。 |
ツメカビ Poronia punctata は、人爪白癬を起こす白癬菌とは異なり、草食動物糞中のセルロース・リグニンといった難分解性繊維を分解する真菌である。
同時に、抗生物質様物質の産生による微生物群集の制御と、無機栄養塩への変換を通じて資源循環を担い、人工の下水処理・堆肥化システムに匹敵する「自然由来の高度処理機構」と位置づけられる。
もしも人間がツメカビの代わりをしようとしたら…牧場中のふんをトラックで回収し、巨大なプラントに運び、 重油を使ってボイラーを焚き、特殊な薬品を使って分解・殺菌し、 再びトラックで牧場に撒き戻さなきゃいけないぐらいだね。
私たちが下水処理場を失ったら街がパニックになるのと同じで、 自然界もこの「小さな処理場」を失えば、牧場は機能不全に陥ってしまいます。
「汚いものに生えるカビ」ではなく、「汚いものをきれいに変える錬金術師」 そう呼ぶべき存在なのかもしれません。
このことから考えると、私たちが下水に有害な物質を流したり、家畜に「自然界には本来ない成分」を過剰に投与したりすることは、目に見えないところで働いてくれている「汚いものをきれいに変える錬金術師」たちの暮らしをかき乱し、その子孫が増えていくチャンスまでも奪ってしまう行為なのかもしれませんね。
ここまで読んで、『あなた』は、どのように感じましたか?
コメントで意見を聞かせてくれると、とても嬉しいです。
あなたの貴重な5分間を、本当にありがとうございました。
ツメカビに、あなたの5分が届くことを祈ります。
鶏人|Keijin




コメント