11年後のレッドリスト|コビトイノシシ:消えゆく足跡に、希望の芽が芽吹いた【IUCNレッドリスト比較】

11年後のレッドリスト|コビトイノシシ:消えゆく足跡に、希望の芽が芽吹いた【IUCNレッドリスト比較】 11年後のレッドリスト
※このページは、[IUCNレッドリスト]世界の絶滅危惧生物図鑑(2014年版)に基づいて制作した個人ブログです。
※画像はすべてAI生成(
DALL·E)によるイメージであり、実際の生物写真ではありません。
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こんにちは、fukumomo3_photo です。

コビトイノシシ(Porcula salvania)は、

2014年、図鑑に【CR:深刻な危機】として分類されていました。

2019年、IUCNレッドリストで、【EN:危機】と評価されました。

つまり、2014年から2019年にかけて、コビトイノシシは

「消えゆく足跡に、希望の芽が芽吹いた」状態になりました。

※2025年時点で、IUCNレッドリストにおけるコビトイノシシの最新評価は2019年版です。それ以降の更新は行われていません。

この記事は、とても短く5分で読めるので、どうぞ最後まで読んでいただけると嬉しいです。

※本記事は専門家による学術的な評価ではなく、公開された資料に基づく個人の調査・見解を含んでいます。
最新かつ正確な分類や保全状況については、IUCN公式サイトなどをご確認ください。
参考:https://www.iucnredlist.org/species/21172/44139115

コビトイノシシが教えてくれた「草原を守る意味」

⬇︎コビトイノシシの生態です。必要に応じてご覧ください。⬇︎

基本情報|コビトイノシシ(Pygmy Hog)
項目情報
和名コビトイノシシ
英名Pygmy Hog
学名Porcula salvania
分類哺乳類・イノシシ科(Suidae)
分布インド北東部(アッサム州の限られた草原地帯)
生息環境湿性草原、サバンナ状の草地
体長約55〜71cm
体重6〜9kgほど
寿命野生で約8年、飼育下では12年ほど
IUCNレッドリスト2019年〜(EN:危機)

特徴

  • 世界最小のイノシシ:体長60cm前後、体重も10kg未満で、非常に小型。
  • 外見:褐色の毛並みに短い尾を持ち、イノシシらしい姿をしながらも愛らしい印象。
  • 鳴き声:高い声で「キュッ」と鳴くことがある。
  • 群れ:5〜20頭程度の小さな群れで生活する。

生態と行動

  • 巣作り:草を集めてドーム状の巣を作り、昼間はそこで休む。夜行性に近い生活を送る。
  • 食性:雑食性で、草の根、果実、昆虫、小さな無脊椎動物などを食べる。
  • 繁殖:妊娠期間は約100日、1度に2〜6頭の子を出産する。
  • 危機要因:農地開発による草原の消失、放牧や火入れ、狩猟が大きな脅威。
  • 保全活動:インドでの繁殖計画(Pygmy Hog Conservation Programme)により、人工繁殖と野生復帰が進められている。

2014年絶滅危惧種:コビトイノシシ【CR:深刻な危機】

1995年にはじまったコビトイノシシ保全プログラムは飼育下における繁殖と再導入を通じてインド北東部のかつての生息地にこの種を再現することを目的としており、マナス国立公園の管理体制を改善させている。これまで飼育下で 100頭以上が産み出され、昨年は30頭がソナイ・ルパイ野生保護区に放たれている。

出典:訳者 岩槻邦男,太田英利 / 発行者 池田和博 / タイトル「IUCNレッドリスト世界の絶滅危惧生物図鑑」/発行所 丸善出版株式会社 / 発行 2014/01/31 ©️Kunio Iwatsuki, Hidetoshi Ota, 2014

項目内容
個体数野生下:約250頭まで回復
飼育下:約80頭(アッサム州の2繁殖センター)
再導入の進捗1995年にプログラム開始
2008~2024年にかけて合計179頭をアッサム州4保護区へ放獣
野生での繁殖確認2024年、カメラトラップで妊娠中のメスを初確認
オラン国立公園で約130頭の「野生世代のみの群れ」が成立
マナス国立公園2023年10月に18頭を再導入、累計54頭
2025年までに60頭を放す計画、進捗は順調
ソナイ・ルパイ野生保護区過去に再導入実績あり
複数保護区に分散させる戦略の一環
IUCN最新評価2019年版:EN(危機)
※ただし現場の研究者・保護団体は「依然として深刻な危機にある」と認識
主な脅威生息地(高茎草原)の消失・劣化
病気や自然災害リスク

世界で最も小さく、最も希少なイノシシであるコビトイノシシ(Porcula salvania)。

その絶滅を防ぐために1995年から続く「コビトイノシシ保全プログラム(Pygmy Hog Conservation Programme – PHCP)」は、2025年に活動30周年を迎え、大きな節目となる成果を報告している。

30年にわたる地道な努力の結果、コビトイノシシは絶滅の危機から一歩ずつ遠ざかっている。

野生での繁殖成功というニュースは、この小さなイノシシとその生息地を守る活動が、未来への確かな希望である。
出典:A further eighteen pygmy hogs return to their historical home in Manas National Park

⬇︎コビトイノシシの主な保護活動の種類です。必要に応じてご覧ください。⬇︎

保護活動の種類内容の概要
生息地の保護インド・アッサム州の草原を保護し、農地転換や火入れによる破壊を防ぐ
飼育下繁殖保護センターで繁殖プログラムを行い、野生復帰を目指す
再導入飼育下で増やした個体を適切な草原へ放獣し、個体群を回復
火災管理草原火災をコントロールし、イノシシの餌や隠れ場所を守る
法的保護インド国内法で「絶滅危惧種」として保護し、捕獲や狩猟を禁止
地域参加地元住民の協力を得て、農業と草原保護を両立させる取り組みを推進
研究とモニタリング個体数調査やカメラトラップでの監視を実施し、保全効果を追跡

主な取り組み

  • 草原保護:生息地である湿地性草原を農業や開発から守る
  • 飼育下繁殖:保護センターで繁殖させ、野生復帰を計画
  • 再導入事業:繁殖個体を野生に放ち、個体群を回復
  • 火災管理:草原火災を制御し、餌場と隠れ場所を維持
  • 法的保護:インドの国内法で狩猟・捕獲を禁止
  • 地域参加:農村コミュニティと連携し、生息地管理を実施
  • 研究調査:個体数モニタリングと生態研究を継続

最後に

これを読んでみて、どのように感じましたか?

「増えたんだ!おめでと〜」

はい、喜ばしいことですよね。

「野生での繁殖成功ってすごいね」

野生での繁殖が成功したという事実は、彼らが自立して生きていける健全な生息地がそこにあるという何よりの証拠です。

この点について、もう少し詳しく見ていきましょう。


観点課題・限界(域外保全だけでは不十分な点)生息地保全の意義
生存スキル飼育下では天敵回避・採食・社会性などのスキルを学べない野生で必要な行動を自然に習得できる
遺伝的多様性飼育個体数が限られ、近親交配のリスクが高まる広い生息地と群れの交流が遺伝子の流れを維持する
繁殖と子育て人工的な環境では「安心して繁殖できる場」が欠ける背の高い草原は隠れ家と子育てのゆりかごになる
食料・水の確保飼育下では人間が供給生態系そのものが餌・水を循環的に供給する
社会構造狭い施設では群れ行動や縄張りが制限される広大な草原は社会生活と繁殖相手探しを保証する
持続性「生きた標本」で終わる危険自立した野生個体群を再建し、未来へつなぐ

生息地保全が広げる効果(アンブレラ種の役割)

項目内容
対象種コビトイノシシ(Porcula salvania)
必要な環境背の高い草原
波及効果草原を守ることで、同じ環境に依存するベンガルトラ・インドサイ・アジアゾウ・鳥類・昆虫・植物まで保全できる
アンブレラ効果一種を守る活動が、その「傘」の下にある生態系全体を包括的に守る仕組みになる

「種」は生態系という複雑なパズルの一つのピースに過ぎない。

ピースだけを大切に保管しても、パズル全体(生息地)が失われてしまえば、そのピースが持つ意味や役割は永遠に失われ本来の姿は見えない。

コビトイノシシの繁殖成功は、「彼らのために草原を守ったからこそ、彼らは自らの力で未来を紡ぎ始めた」という、自然からの力強いメッセージである。


ここまで読んで、『あなた』は、どのように感じましたか?

コメントで意見を聞かせてくれると、とても嬉しいです。

あなたの貴重な命である5分間を、本当にありがとうございました。

コビトイノシシに、あなたの5分が届くことを祈ります。

fukumomo3_photo


インスタでは、コビトイノシシたちの姿を“図鑑みたいに”並べて見られます。
ビジュアルで伝える命の物語、よかったらのぞいてみてください。

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