11年後のレッドリスト|バレトウショウブ:生き残りの場所が、先に奪われる【IUCNレッドリスト比較】

11年後のレッドリスト|バレトウショウブ:生き残りの場所が、先に奪われる【IUCNレッドリスト比較】 11年後のレッドリスト
※このページは、[IUCNレッドリスト]世界の絶滅危惧生物図鑑(2014年版)に基づいて制作した個人ブログです。
※画像はすべてAI生成(
DALL·E)によるイメージであり、実際の生物写真ではありません。

こんにちは、鶏人|Keijin です。

今回は、バレトウショウブ(学名:Gladiolus balensis)の「名前だけの保護区」についての話です。

バレ山地に暮らすこのショウブは、2014年の図鑑では、農地の拡大と牧畜による食餌が主な原因として「EN:危機」と評価されていました。ところが最新のレッドリストを見ても、農地化と放牧圧は今も続いていて、評価は「EN:危機」のままなんです。

だからバレトウショウブは今も、「生き残りの場所が、先に奪われる」状態にいるんだと思います。

この記事は短くて、5分くらいで読めます。
よかったら最後まで読んでください。

※2026年時点で、IUCNレッドリストにおける最新評価は2022評価(2022年公開)です(以降の更新は確認されていません)。
※本記事は専門家による学術的な評価ではなく、公開された資料に基づく個人の調査・見解を含みます。
※IUCN評価は「世界全体」と「地域・個体群」で分かれる場合があります。地域によって状況は異なります。
最新かつ正確な分類や保全状況については、IUCN公式サイトなどをご確認ください。
参考:IUCN Red List(学名:Gladiolus balensis

名前だけの保護区(Paper Park)が見えてくる|バレトウショウブの危機を決める3つの要因

⬇︎バレトウショウブの生態(基本情報)です。必要なら開いてください。

基本情報|バレトウショウブ(英名:定着した英名なし)
項目情報
和名バレトウショウブ
英名定着した一般名は見当たりにくい(学名で扱われることが多い)
学名Gladiolus balensis Goldblatt
分類被子植物・アヤメ科(Iridaceae)/グラジオラス属
分布エチオピア南東部(Bale floristic region)。Ginir 近郊で採集された記録がある/他では知られていないとされる
主な生育地山地の草地〜疎林:岩質の玄武岩露頭(basalt outcrops)の草地、石灰岩の崖・エスカープメント、Acacia–Combretum 系の疎林など
大きさ草丈 約50〜60cm。花は白色系で、花茎(穂状花序)は 5〜9花
体重(植物のため該当なし)
寿命球茎(コーム)をもつ多年草タイプ(長期生存型になりやすいが、本種の寿命目安ははっきり示されにくい)

特徴

  • 名前の由来:種小名 「balensis」 は、最初の採集地が属する Bale(バレ)地域に由来する。
  • 見た目:白い花が基本で、上側の花被片にピンクの筋(または淡いピンクの印)、下側に黄みが出る、と説明されている。
  • くらしの型:地下に球茎(コーム)をもつ 地中植物(geophyte)。乾季・雨季のある地域で“時期を選んで咲く”タイプになりやすい。
  • 希少性:分布がBale地域に限られ、他地域では知られていないとされる(=場所が限られるほど、環境変化に弱くなる)。

くらし・ふえ方

  • 生育環境:山地斜面の草地や疎林で、岩場(玄武岩露頭)や石灰岩の崖といった、場所がかなり限定される環境に出るとされる。標高は およそ1750〜1850mの記述がある。
  • ふえ方(繁殖):グラジオラス属らしく、球茎で生き残りながら季節に合わせて開花・結実し、種子でも増える(ただし本種は「果実・種子は未確認」との記載もある)。
  • 開花期:主な開花は 5〜6月とされる。
  • 脅威(この種に効きやすい形):
    • 分布が狭い(=たった一つの土地利用変化でも致命傷になりうる)
    • Bale山地全体として、植生は火入れ(火災)・過放牧・耕作の拡大・森林の間引き(管理)などの圧を受けうることが示されている
  • 保全状況:少なくとも、参照した主要データベース(KewのPOWO)ではIUCNカテゴリが明記されていない一方、エチオピアの固有植物リストには掲載されている(=少なくとも「国レベルで希少性が意識される枠」に入っている)。

出典:Bale Mountains National Park
出典: Plants of the World Online
出典: Yumpu

最終評価2022年:バレトウショウブ「EN:危機」

農地の拡大と牧畜による食餌が、この種の生育場所を縮小し、生育の割合を低下させている。この種の生育が確かめられている2つの地域は保護地域には含められておらず、この種を保全するための特別の措置はとられていない。

出典:訳者 岩槻邦男,太田英利 / 発行者 池田和博 / タイトル「IUCNレッドリスト世界の絶滅危惧生物図鑑」/発行所 丸善出版株式会社 / 発行 2014/01/31 / ©️Kunio Iwatsuki, Hidetoshi Ota, 2014

項目2014年当時(図鑑の記述ベース)2026年時点(最新IUCN評価・近年の情報を踏まえた整理)
種名バレトウショウブ(Gladiolus balensis)同左
分布エチオピア南東部のバレ山地(Bale Mountains)周辺のごく限られた地域(固有)固有性は同じ。分布が極端に狭いこと自体が大きな脆弱性(移動できない・逃げられない)
レッドリスト評価図鑑での扱い(当時の記載に準拠)IUCNの最新評価は2022年で区分はEN。評価基準はB系(分布域の狭さ+生息地悪化・断片化)に基づく
個体数・増減傾向記載が薄く、情報不足気味個体数の定量は不足しやすい。IUCNページ上のPopulation trendはUnknownとして扱われる
主な脅威農地拡大、放牧圧農地化と放牧圧が継続・増幅しやすい構造。踏みつけ、芽・花の採食、更新(再生産)の阻害が複合的に作用し得る
生育地の変化2地域で確認、保護措置がない生育地点の断片化が進むほど、局所絶滅が連鎖しやすくなる(小集団化・孤立化の進行)
保護地域との関係保護地域に含まれていないバレ山地国立公園(BMNP)周辺の土地利用や人為圧が保全効果を弱める要因になり得る
保全措置(域外保全など)特別な措置はなし種子保存など域外保全(シードバンク等)に寄せた対応が現実的になりやすい。一方で、自生地側の土地利用問題が残ると回復は難しい
2014→2026で見え方が変わった点「保護がない」「脅威がある」保護区の存在だけでは不十分になりやすく、実効性(境界内外の資源利用、人口圧、家畜密度)がボトルネックになり得る
なぜ厳しさが続くのか(連鎖)脅威の列挙に留まりがち高地草地の農業化 → 放牧圧の増幅 → 更新(種子・球茎)阻害 → 小集団化・孤立化 → 局所絶滅確率の上昇、という連鎖で整理できる
まとめ狭い範囲にしかいない植物は、環境が変わっても移動できない。分布の狭さと土地利用の圧力が重なるほど、危機は静かに深くなる

出典

  • IUCN Red List: iucnredlist.org
  • Plants of the World Online(Kew):Plants of the World Online
  • BMNP周辺の土地利用・管理課題に触れる資料(PDF): (DNB)
  • Bale Mountains National Park の人為圧(居住・放牧・農地化)に関する論考: (academia)
  • BMNP周辺の脅威種・希少種を含む保全文脈で参照されることがある計画文書(UNDP/GEF系PDF): (info.undp.org)
Gladiolus balensisはエチオピア南東部バレ山地に固有で、分布域が極めて狭いこと自体が高い絶滅リスクを規定する。IUCNの最新評価(2022年)はENで、分布域の狭小化と生育地の劣化・断片化が主要因とされる。農地化と過放牧により更新が阻害され、小集団化と孤立化が進行し局所絶滅の連鎖が懸念される。保護区周辺でも人為圧が強く、域外保全のみでは回復に限界がある。

⬇︎バレトウショウブの保護活動の種類です。必要なら開いてください。

保護活動の種類内容の概要
生息地(高地草原・山地植生など)の保護バレトウショウブはエチオピアのバレ山地(Bale Mountains)に関わる固有植物として扱われ、まずは生息地そのものを守るのが土台になります。保護区(国立公園)内の重要エリアで植生を維持し、踏み荒らしや採取圧を下げます。
放牧・農地拡大・燃料材採取の圧力を下げるBale Mountains では、過放牧・農地拡大・燃料材採取などが「生息地の劣化・喪失」を引き起こす主要因として挙げられています。家畜密度の抑制、段階的な禁牧ゾーン拡大、資源利用のルールづくりが重要になります。
緩衝地帯の整備と景観スケールの管理国立公園の外側(緩衝地帯)も含めて土地利用を調整し、森林・草地・湿地のつながり(回廊)を保つ考え方が示されています。住民の利用と保全を両立させる設計がポイントです。
侵入(外来)植物・劣化地の植生管理Bale Mountains では「侵入性・不嗜好性植物の拡大」や「重要樹種の更新不良」が課題として挙げられています。植生回復(再生)とセットで、侵入植物の管理を進めます。
道路などインフラ影響の抑制公園を横断する道路は、脆弱な生息地への攪乱や、奥地へのアクセス増加(=開発圧や採取圧の増大)につながりうる、と指摘されています。路肩の踏圧抑制、立入管理、影響評価に基づく対策が重要です。
地域参加・合意形成(参加型管理)緩衝地帯での参加型森林管理(PFM)協同組合、コミュニティ対話の枠組み(PCDF など)を通じて、保全と生計の両立を目指す仕組みが紹介されています。保護区の“外”も含めて味方を増やすのが効きます。
域外保全(種子・生体の保存)エチオピアの遺伝資源保全の枠組みでは、低温貯蔵やフィールド遺伝子バンク(例:バレ州ゴバ周辺のフィールドジーンバンク)での保存が行われ、Gladiolus balensis も「脅威・希少・固有」植物として収集・保全対象に含まれています。
研究とモニタリング生育地の分布確認、個体数・開花結実の年変動、放牧圧や侵入植物の影響などを継続観測し、「どこをどう守ると効くか」を更新していきます(保護区の管理計画に反映)。

出典:Bale Mountains National Park
出典: UNESCO World Heritage Centre

最後に

読んでみて、どのように感じましたか?

こういう高山植物たちを見てると、みんなに共通して感じるんだけど、前に話していた「絶滅へのエスカレーター」に乗っちゃってる気がするんだよね。

それに、人類のほうも低地で農業がだんだん厳しくなってきたから、同じように高いほうへ上がっていって、そこで作業するようになってるのかな。結果として生息地が分断されて、この植物たちが増えるチャンスをさらに減らしてるんだと思う。

しかも保護区を作ったはずなのに、実際には人が入って農業したり放牧したりしてるわけでしょ。なんでこんな「名前だけ」の保護区ができちゃうんだろうね。

うん、その見方はかなり核心を突いてると思う。もう少し調べてみるね。


論点仕組み・背景(何が起きているか)バレ山地で起きやすい帰結(保全が効きにくい理由)
絶滅へのエスカレーターと農業の垂直移動気候変動の影響で、低地の農業が乾燥化や不安定化にさらされる一方、相対的に涼しく湿り気が残る高地が生計の場として選ばれやすくなる。山岳域では気候変化の影響が大きく、種の分布上昇(上方移動)と、人間活動の上方展開が同時に起きる構図が生まれやすい。植物は気候に押されて上へ移動しようとするが、その上部が農耕・放牧のフロンティアになりやすく、逃げ場が先に塞がる。結果として、分布域が狭い高山植物ほど「上へ行くほど狭い」地形条件と重なって、圧迫が加速する。
なぜ「名前だけ」の保護区が生まれるのか:① 生存と保全の衝突保護区周辺の生活が農業・放牧に強く依存している場合、「立ち入り禁止」はそのまま収入と食料の断絶につながりやすい。代替の現金収入や燃料・飼料の選択肢が乏しいと、規制があっても現場では継続利用が起きやすい。ルールが守られないというより、守るコストが生活コストを上回ってしまう状態になりやすい。結果として、境界線はあっても利用が止まらず、保護区が実質的に緩む。
なぜ「名前だけ」の保護区が生まれるのか:② トップダウン型の限界(要塞保全)住民合意が弱いまま境界を引き、人の利用を排除する発想は、要塞保全(fortress conservation)として批判されてきた。外から与えられたルールは、反発や不信を生み、順守の動機を弱めやすい。地域の視点では「土地を奪われた」という感覚が残り、違反が道徳的に正当化されやすくなる。結果として、保護区の理念が現場の協力関係に変換されないまま残る。
なぜ「名前だけ」の保護区が生まれるのか:③ 予算・人員・装備の不足(運用問題)面積が広い保護区ほど、巡視・取り締まり・紛争調停・代替策の実装に継続コストがかかる。バレ山地国立公園は約2,200 km²規模とされ、監視や運用が追いつかない状況が生じやすい。地図上の指定(線を引くこと)はできても、常時パトロールや住民支援、合意形成まで回らず、いわゆるペーパーパーク化が進みやすい。
なぜ「名前だけ」の保護区が生まれるのか:④ 土地権利の曖昧さ(法制度と慣行の摩擦)エチオピアでは土地と天然資源の所有は国家と国民に帰属し、土地売買が認められない枠組みが憲法に明記されている。制度上の権利と、慣行的な利用権が衝突しやすい。境界や利用の正当性が曖昧なままだと、違法開墾や利用が既成事実化しやすい。取り締まりも紛争解決も長期化し、保全の実効性が落ちる。
バレトウショウブを襲う不可視の分断:パッチ化生育地が農地などで細切れになり、点在する小さな斑(パッチ)に分かれる。花粉媒介者の移動が阻害されやすく、繁殖の失敗が増える。小集団化で偶然要因(干ばつ・踏みつけ・採食)の一撃に弱くなる。
バレトウショウブを襲う不可視の分断:遺伝的孤立パッチ間の遺伝子流動が弱まり、近親交配や遺伝的多様性の低下が起きやすくなる。病害や環境変動への耐性が落ち、回復力が下がる。結果として局所絶滅が連鎖しやすい。
バレトウショウブを襲う不可視の分断:縁辺効果生育地の「端」が増え、乾燥・攪乱・外来種侵入などの影響を受けやすくなる。湿り気を好む微環境が失われ、更新(芽生え・球茎の成長)が止まりやすくなる。

出典

最初の項目に「絶滅へのエスカレーターと農業の垂直移動」ってあったけど、これって現地の農家の人たちが、気候変動による乾燥で困り果てた結果、この植物たちが乗っているすぐ横に「絶滅へのエレベーター」を作っちゃった、みたいな感じだね。

たしかに、そんなふうに見えるね。

しかもそのエレベーター、「下りる」ボタンが壊れてて、登り専用になってる……みたいな感じもする。

ここまで考えていたら、この植物の話とは一見ぜんぜん違うんだけど、知り合いの会社で起きていたことを思い出しちゃったんだよね。

その会社では、トップがある日いきなり「明日から〇〇禁止です」って通達を出して、現場の管理者に「禁止事項を守るように監視して」って言うんだ。でも、トップはそもそも現場を見てないし、書類の報告だけでその禁止を決めてる。

そうなると、現場を知ってる管理者は「できるわけねーじゃん」ってなるし、現場の人たちも「何言ってんの? それ禁止したら商品作れないよ」ってなる。

こういう企業の話なら、最悪、会社を辞めるって選択肢もある。でもバレ山地で農業してる人たちにとっては、「それ禁止されたら生きていけないんですけど……」って話になるはずなんだよね。

それに、取り締まる側のレンジャーも、たぶん地元の事情をよく分かってる人だと思う。だから「そんな可哀想なことできるわけないじゃん」って、見て見ぬふりをしてしまう可能性だってあると思う。

自分はその会社のことを少し客観的に見られる立場だったから、「かわいそうだな」って物語として眺められたんです。でも、バレ山地で農業してる人たちにとっては、これが生きるための現実なんだよね。

これをもっと大きな世界に当てはめたとして、たとえば日本が「それじゃいけないから、もっと保護活動にお金を使えよ」なんて簡単には言えないと思う。自分も、その会社に「社長さん、もっと現場見て発言しなよ」なんて言えないしね。

だからこそ、これを解決するには、根本のところ――

「なぜ、さらに高い場所で咲かなければいけないのか」
「なぜ、さらに高い場所で農業をしなければいけないのか」

こういう原因のほうに目を向けるのが先なんじゃないか、って感じるんですよ。


ここまで読んで、『あなた』は、どのように感じましたか?

コメントで意見を聞かせてくれると、とても嬉しいです。

あなたの貴重な5分間を、本当にありがとうございました。

バレトウショウブに、あなたの5分が届くことを祈ります。

鶏人|Keijin

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