11年後のレッドリスト|シセンクロベ:時の隙間で、命の記録が揺れていた【IUCNレッドリスト比較】

11年後のレッドリスト|シセンクロベ:時の隙間で、命の記録が揺れていた【IUCNレッドリスト比較】 11年後のレッドリスト
※このページは、[IUCNレッドリスト]世界の絶滅危惧生物図鑑(2014年版)に基づいて制作した個人ブログです。
※画像はすべてAI生成(
DALL·E)によるイメージであり、実際の生物写真ではありません。
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こんにちは、fukumomo3_photo です。

シセンクロベ(Thuja sutchuenensis)は、

2014年、図鑑に【CR:深刻な危機】として分類されていました。

2013年、IUCNレッドリストで、【EN:危機】と評価されました。

つまり、2013年から2014年にかけて、シセンクロベは

「時の隙間で、命の記録が揺れていた」状態なのです。

注:図鑑の【CR:深刻な危機】は 2003年の古い評価を誤って採用した可能性が高いです。
※2025年時点で、IUCNレッドリストにおけるシセンクロベの最新評価は2013年版です。それ以降の更新は行われていません。

この記事は、とても短く5分で読めるので、どうぞ最後まで読んでいただけると嬉しいです。

※本記事は専門家による学術的な評価ではなく、公開された資料に基づく個人の調査・見解を含んでいます。
最新かつ正確な分類や保全状況については、IUCN公式サイトなどをご確認ください。
参考:https://www.iucnredlist.org/species/32378/2816862

絶滅寸前の木が教えてくれた、真実を見抜く力

⬇︎シセンクロベの生態です。必要に応じてご覧ください。⬇︎

項目情報
和名シセンクロベ(四川黒檜)
英名Ya Bai Shu
学名Thuja sutchuenensis
分類植物界・ヒノキ科(Cupressaceae)・クロベ属(Thuja)
分布中国・四川省(大巴山脈周辺)の限られた地域のみ
主な生息地標高800〜1,500mの石灰岩質の山岳地帯
樹高約15〜20m(最大25mに達する個体も)
樹齢数百年生きると推定される長寿樹
IUCN評価(2013年)【EN:危機(Endangered)】※以前はCR(深刻な危機)とされていた

特徴

  • 名前の由来:「シセンクロベ」は、中国四川省で発見されたことから名づけられた。
    「クロベ」は日本名で、同属の樹木に似た性質を持つことからの呼称。
  • 外見:常緑の針葉樹で、枝は平らに広がり、葉は鱗片状で互いに密接して並ぶ。樹皮は赤褐色で縦に裂ける。
  • 香り:ヒノキに似た芳香をもち、木材は耐久性・防虫性に優れる。
  • 成長:非常にゆっくりと成長するため、老木の存在は貴重。

生態と行動

  • 生息環境:石灰岩質の断崖や峡谷沿いに点在して生育。土壌が薄く、乾燥した環境でも生き延びることができる。
  • 繁殖:球果(松ぼっくり状の実)をつけ、秋に熟す。風によって種子を拡散。発芽率は低く、再生には時間がかかる。
  • 役割:地元では土壌の保持・浸食防止に重要な役割を果たす。
  • 脅威:過去の過伐採、森林火災、家畜放牧による幼樹の踏みつけなどで急減。
  • 再発見の経緯:1892年に初記録されたが、その後100年以上見つからず、絶滅と考えられていた。
     2002年、中国の植物学者チームにより再発見され、奇跡の復活樹として注目された。
  • 保全活動:現在、中国政府と植物園が協力し、苗木の育成・再植林プロジェクトを進行中。

2014年絶滅危惧種:シセンクロベ【CR:深刻な危機(2003年)】

材が用材あるいは工芸材に適しているために、伐採しやすい樹の多くは切り倒され、残っているのは 200本ばかりと推定されている。

出典:訳者 岩槻邦男,太田英利 / 発行者 池田和博 / タイトル「IUCNレッドリスト世界の絶滅危惧生物図鑑」/発行所 丸善出版株式会社 / 発行 2014/01/31 ©️Kunio Iwatsuki, Hidetoshi Ota, 2014

項目2002〜2004年頃(図鑑掲載情報の元時期)2025年現在の状況
個体数約200本(再発見直後の推定値)野生:5,000〜7,000本以上
人工繁殖:約270万本(2024年時点)
状況の傾向再発見直後で極めて危機的明確な増加傾向
IUCNカテゴリーCR(深刻な危機)※2003年評価EN(危機)※2013年評価(最新)
主な保護施策監視・伐採防止の初期段階自然保護区指定、人工繁殖事業、苗木移植プログラム
人工繁殖の成果研究試行段階約270万本が各地で栽培中
野生個体群の発見ごく限られた群落のみ2024年に新たな大規模群落が確認される
政府・研究機関の関与地方レベルの保護国家指定の重点保護種、研究・育成に公的予算投入
総合評価絶滅寸前の状態(CR)回復基調(ENを維持または改善見込み)

補足

図鑑(2014年版)に掲載された「200本」「CR:深刻な危機」という記述は、
実際には2002〜2004年ごろのIUCN旧評価(CR)をもとにした内容とみられます。
その後の2013年公式評価では「EN(危機)」に再分類され、以降は保護活動の進展により個体数が増加しています。

「200本」という情報は、再発見後間もない時期の推定、あるいは特定の地域の個体数を指している可能性がある。

2013年のIUCN(国際自然保護連合)のレッドリストでは、成熟した個体数は5,000〜7,000本と推定されている。

⬇︎シセンクロベの主な保護活動の種類です。必要に応じてご覧ください。⬇︎

保護活動の種類内容の概要
自然林の保護原生林の伐採を制限し、シセンクロベが自生する山地森林を保全
保護区の設定中国・重慶市および湖北省において、天然分布地を含む自然保護区を設立
違法伐採防止地元行政と森林警備隊による監視体制を強化し、希少樹木の伐採を禁止
人工増殖・植栽種子・苗木を人工的に育成し、失われた地域に再導入を試みる
遺伝資源の保存種子バンクや植物園で遺伝的多様性を維持し、将来的な再生計画に活用
研究とモニタリング分布域・個体数・遺伝構造の調査を継続し、環境変化への影響を評価
地域社会の参加地元住民を巻き込んだ持続可能な森林管理・環境教育を推進

主な取り組み

  • 森林保全:自生地の伐採を禁止し、原生林を法的に保護
  • 保護区指定:重慶市城口県・湖北省西部などに自然保護区を設立
  • 違法伐採防止:監視強化と通報制度の導入で不正伐採を抑止
  • 人工植栽:苗木育成と再導入プログラムを実施
  • 遺伝保存:種子バンクで遺伝的多様性を保全
  • 研究活動:分布・気候要因・再生条件の科学的調査
  • 地域協働:住民と連携し、森林資源の持続的利用を啓発

最後に

これを読んでみて、どのように感じましたか?

「どうせ植えて育ててまた伐採するのですよね?」

私も同じことが頭をよぎりました。

詳しく調べてみますね。


現在行われているシセンクロベの保護・増殖活動は、商業的な木材利用を目的としたものではなく、あくまで種の絶滅を防ぎ、生態系を回復させることを目的としている。

観点内容補足・根拠
法的保護の厳格さ国家一級重点保護野生植物に指定(中国法による最高レベルの保護区分)無許可伐採は厳罰対象。日本でいう「国内希少野生動植物種」よりも強い規制。
過去の乱伐を教訓に、国家が威信をかけて保護中。
保護活動の目的商業利用ではなく、「種の保存」と「生態系の回復」が主目的・絶滅回避のための個体数回復
・遺伝的多様性の確保
・自生地への植え戻し
・科学研究による保全知見の蓄積
人工繁殖の内容約270万本の苗木を人工的に育成(2024年時点)各地の自然保護区や山地へ移植。プランテーション(商業林)ではなく、再生林づくりが目的。
伐採との関係「伐採」は保護活動の目的ではなく、依然として脅威違法伐採が続く地域もあり、政府と研究者は監視・防止に注力。
伐採=犯罪行為として取り締まり対象。
総合評価シセンクロベの保護活動は非商業的で純粋な自然保護目的商業伐採の再開は考えにくく、国際的にも保全モデルケースとされつつある。

しかし、現在のシセンクロベの保護活動は、その過去の過ちを繰り返さないという強い決意のもと、法律と科学に基づいて行われている国家的なプロジェクトである。

その目的は、木材として利用することではなく、この貴重な種を地球の財産として未来に残すことにある。


「でも過去の経緯を考えると、信用できないな〜」

過去の歴史をみるとそのような感情が生まれるのもわかります。

さらに深掘りしてみますね。


確かに、過去の中国は急速な経済成長を最優先するあまり、深刻な環境破壊を引き起こしました。

観点過去のイメージ(偏見が生まれた背景)現在の実情(2010年代以降の変化)
環境への姿勢経済成長を最優先し、環境保護が後回しにされていた「生態文明」を国家戦略に掲げ、環境保護を憲法にも明記
大気・水質汚染PM2.5などの深刻な大気汚染、河川・土壌汚染が社会問題化厳しい環境規制を導入し、違反企業への罰則を強化
森林伐採無計画な伐採や農地拡大による森林破壊「緑の長城」など大規模植林により森林面積を回復
産業構造石炭依存・重工業中心再生可能エネルギー(太陽光・風力)投資で世界最大規模に
国際的評価「中国=環境破壊国家」という固定観念「環境先進国の一角」として評価され始めている
国民意識経済優先の価値観が主流若い世代を中心に、自然・動物保護への関心が急上昇
シセンクロベ保護の位置づけかつて乱伐の象徴だった樹種「生態文明」を体現する国家的保護プロジェクトの一例

これらの問題は日本でも大きく報道されたため、「中国=環境破壊」というイメージが強く定着したのは事実である。

この過去のイメージが、現在の保護活動に対しても「どうせ裏があるのだろう」という懐疑的な見方につながっていると考えられる。

このシセンクロベの徹底した保護プロジェクトは、まさにこの新しい中国の姿、つまり「経済成長だけでなく、豊かな自然を次世代に残す」という国家の強い意志を象徴する事例の一つと言える。

だからこそ、過去のイメージだけで判断することは、現在進行している本質的な変化を見誤ってしまう可能性があり危険である。


このことから私はSNSなどで感情を揺さぶる投稿を目にしたとき、すぐに反応するのではなく、過去に同じような経験をした人々の書籍を読んだりして、できる限り「真実を知る」努力をしています。

それでも、ときには間違った情報を信じて、進むべき道ではない方向へ歩き出してしまうこともあるでしょう。

けれども立ち止まり、振り返り、分岐点から再び別の道を選び直すことはできるのです。


ここまで読んで、『あなた』は、どのように感じましたか?

コメントで意見を聞かせてくれると、とても嬉しいです。

あなたの貴重な5分間を、本当にありがとうございました。

シセンクロベに、あなたの5分が届くことを祈ります。

fukumomo3_photo


インスタでは、シセンクロベたちの姿を“図鑑みたいに”並べて見られます。
ビジュアルで伝える命の物語、よかったらのぞいてみてください。

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