11年後のレッドリスト|チュウゴクオオサンショウウオ:静かな絶望が、長い影となって寄り添う【IUCNレッドリスト比較】

11年後のレッドリスト|チュウゴクオオサンショウウオ:静かな絶望が、長い影となって寄り添う【IUCNレッドリスト比較】 11年後のレッドリスト
※このページは、[IUCNレッドリスト]世界の絶滅危惧生物図鑑(2014年版)に基づいて制作した個人ブログです。
※画像はすべてAI生成(
DALL·E)によるイメージであり、実際の生物写真ではありません。

こんにちは、鶏人|Keijin です。

チュウゴクオオサンショウウオ(Andrias davidianus)は、

2014年、図鑑に【CR:深刻な危機】として分類されていました。

2023年、IUCNレッドリストで、【CR:深刻な危機】と評価されました。

つまり、2014年から2023年にかけて、チュウゴクオオサンショウウオは

「静かな絶望が、長い影となって寄り添う」状態なのです。

※2025年時点で、IUCNレッドリストにおけるチュウゴクオオサンショウウオの最新評価は2023年版です。それ以降の更新は行われていません。

この記事は、とても短く5分で読めるので、どうぞ最後まで読んでいただけると嬉しいです。

※本記事は専門家による学術的な評価ではなく、公開された資料に基づく個人の調査・見解を含んでいます。
最新かつ正確な分類や保全状況については、IUCN公式サイトなどをご確認ください。
参考:https://www.iucnredlist.org/species/179010104/48438418

見た目は同じでも、中身は違う|野生動物を「売れるから」利用してきた私たちへ

⬇︎チュウゴクオオサンショウウオの生態です。必要に応じてご覧ください。⬇︎

基本情報|チュウゴクオオサンショウウオ(Chinese Giant Salamander)
項目情報
和名チュウゴクオオサンショウウオ
英名Chinese Giant Salamander
学名Andrias davidianus
分類両生類・有尾目(サンショウウオ目)・オオサンショウウオ科(Cryptobranchidae)
分布中国中部〜南部の山地河川・渓流(長江流域を中心に、黄河・珠江などの流域も含む)
主な生息地森林に囲まれた冷たい山地渓流・河川・湖(岩の隙間や水中洞窟など)
体長平均で約1.3m、最大で1.8mに達することもある、世界最大級の両生類
体重通常は25〜30kg程度、最大記録では50〜59kgに達した個体も報告されている
寿命野生で少なくとも30年以上、飼育下では50年以上生きるとされる(200年以上と推定された個体の報告もある)

特徴

  • 名前の由来:「オオサンショウウオ」は、日本産の近縁種と同じく、体表から出る分泌液が“山椒”のような匂いがすると言われたことに由来します。中国では、赤ちゃんの泣き声のような声を出すことから「娃娃魚(ワーワーユー=赤ちゃん魚)」とも呼ばれます。
  • 世界最大級の両生類:体長1mをこえる個体が普通で、最大1.8mという記録もある、世界最大級のサンショウウオです。幅広い扁平な頭と、しわだらけの厚い皮膚が特徴です。
  • 皮膚呼吸のための“しわ”:全身の皮膚がボコボコとたるんでいて、そのひだにたくさんの毛細血管が走っています。これによって水中で効率よく酸素を取り込み、皮膚呼吸を行うことができます。
  • 色と見た目:体色は暗褐色〜黒色で、まだら模様や斑点が入ることが多く、川底の岩や泥に溶け込むカモフラージュになっています。まれに白っぽいアルビノ個体も知られています。
  • 感覚のしくみ:視力は弱いものの、体側を走る「側線」と呼ばれる感覚器官で、水の振動をとらえ、暗い水中でも獲物の動きを感じ取ることができます。

生態と行動

  • 完全水生のくらし:一生のほとんどを水中で過ごす完全水生種で、冷たく酸素の豊富な山地渓流や湖、地下河川などにすみます。日中は岩の隙間や水中の穴に隠れ、夜になると活動的になります。
  • 食性:肉食性で、主な餌は川ガニやエビ、小魚、カエル、他のサンショウウオなど。大きな口で獲物ごと水を吸い込む「吸い込み捕食」で、一瞬で飲み込みます。ときには同種を食べる共食いも報告されています。
  • 繁殖:産卵期は主に夏〜初秋。オスが川岸の岩穴などに巣穴をつくり、メスを巣に誘って数百個の卵を産ませます。産卵後はオスが卵を守り、尾で水を送って酸素を供給するなど「子煩悩なお父さん」として知られています。
  • 行動のリズム:主な活動時間は夕方〜夜間。水温が20℃を超えるとほとんどエサを食べなくなり、28℃付近ではほぼ摂餌を停止、35℃では致死的になるなど、低水温の環境に強く依存しています。
  • 生息地と移動:基本的には同じ渓流の中で生活し、遠くまで移動しないと考えられていますが、大雨や洪水のときには流されて新しい場所に移ることもあります。
  • 直面している脅威:IUCNレッドリストではCR(深刻な危機)。食用・薬用としての乱獲、水質汚濁、ダム開発による生息地の分断により、1950年代以降に80%以上個体数が減少したと推定されています。現在は中国各地で大規模に養殖されていますが、野生個体群は極めて深刻な状態とされています。

2014年絶滅危惧種:チュウゴクオオサンショウウオ【CR:深刻な危機】

かつては普通種だったこの種だが、主として過剰な採取(今では高級な食品とされている)の影響で、劇的な個体数減少に直面している。

出典:訳者 岩槻邦男,太田英利 / 発行者 池田和博 / タイトル「IUCNレッドリスト世界の絶滅危惧生物図鑑」/発行所 丸善出版株式会社 / 発行 2014/01/31 ©️Kunio Iwatsuki, Hidetoshi Ota, 2014

項目内容
現在のレッドリスト評価IUCNレッドリスト: Critically Endangered(CR:近絶滅種)/2014年も2023年も評価はCRのまま変わらず。
野生個体の状況中国全土で野生個体はほぼ姿を消しており、調査しても野生個体を確認することが極めて難しい。「野生絶滅(Extinct in the Wild)」の一歩手前という危機的な状況。
食用としての現状中国国内には、数百万匹規模のチュウゴクオオサンショウウオが養殖されている。かつては1匹あたり数万円〜数十万円の超高級食材だったが、大規模養殖の成功により価格が暴落し、一般に流通するようになった。しかし、この養殖の拡大は野生個体の保全にはつながっていない。
危機の主な要因① 種親としての乱獲養殖場では近親交配を避け、繁殖効率を上げるために、遺伝的多様性の高い「野生個体」が強く求められた。その結果、「食べるため」ではなく「養殖の種親にするため」に、残されたわずかな野生個体までもが徹底的に捕獲されてしまった。
危機の主な要因② 遺伝子汚染価格暴落や洪水、さらに「自然保護」をうたう放流イベントなどにより、養殖個体が大量に川へ放たれた。養殖個体は各地の系統を掛け合わせた雑種であることが多く、それが野外に放たれたことで、地域ごとに独自の進化を遂げてきた純粋な野生の遺伝子が、雑種の遺伝子に飲み込まれてしまっている。
危機の主な要因③ 感染症高密度な養殖環境は病原体の温床となる。放流された個体や養殖場からの排水を通じて、ラナウイルスなど致死率の高いウイルスが自然界へ拡散し、野生個体を死滅させている可能性が指摘されている。
危機の主な要因④ 生息地の破壊ダム建設、河川の護岸工事(水路のコンクリート化)、水質汚染などによる生息地の破壊は、2014年当時と変わらず、あるいはそれ以上のスピードで進行している。
近年の研究(隠蔽種の発見)近年のDNA解析により、「チュウゴクオオサンショウウオ」とされてきたものは、実際には少なくとも5〜8種程度の別種(隠蔽種のグループ)である可能性が高いことが分かってきた。
隠蔽種と養殖の悲劇これらが別種として正式に認識される前に、養殖場での交雑や無秩序な放流が進行してしまった。そのため、「名前がつく前に絶滅してしまった新種」や、純粋な遺伝子を持つ個体がすでに存在しない種があると考えられている。
2014年図鑑とのつながり2014年の図鑑で指摘されていた「過剰な採取」は、現在では「商業的養殖のための乱獲」と「無秩序な放流による遺伝的絶滅」という、より複雑で解決が難しい構造的問題へと変化している。
まとめ「養殖で数を増やせば野生も守られる」という単純な図式にはならなかった。むしろ、大規模な養殖産業の拡大が、野生個体の“トドメ”となってしまった、非常に考えさせられる事例である。

チュウゴクオオサンショウウオはIUCNで一貫してCRと評価され、野生個体は中国全土でほぼ消失し、野生絶滅に近い状態にある。

食用・種親採取のための乱獲に加え、養殖個体の放流による遺伝子汚染と感染症、生息地改変が複合的に作用し、隠蔽種を含む固有遺伝子多様性の喪失が懸念される。

⬇︎チュウゴクオオサンショウウオの主な保護活動の種類です。必要に応じてご覧ください。⬇︎

保護活動の種類内容の概要
生息地(河川・渓流)の保護チュウゴクオオサンショウウオがくらす山地河川が、国・省・県レベルの自然保護区として指定されており、一部の保護区では本種そのものが主要な保全対象種になっている。
法的保護と国際取引規制中国では1988年から「国家重点保護野生動物(Ⅱ級)」に指定され、捕獲や販売が原則禁止。国際的にもCITES附属書Ⅰに掲載され、商業目的の国際取引は原則禁止となっている。
養殖・市場取引の規制強化食用目的の大規模養殖が拡大したため、農場実態調査や法整備を通じて、野生個体の違法持ち込みや病原体・遺伝子汚染のリスクを減らす方向で改善策が検討・実施されている。
保全繁殖とレスキューセンター湖南省(フンナン省)のレスキューセンターなどで、A. davidianus を含む巨大サンショウウオ類の保全繁殖が行われており、遺伝的に純粋な系統を守る「アシュアランス・コロニー」の整備が進められている。
再導入・放流の見直しかつては養殖個体を各地の河川へ大量に放流していたが、外来系統との交雑や病気拡散のリスクが指摘され、近年は放流を減らしつつ、遺伝子・病原体の検査を行ったうえで慎重な再導入を進める方針が示されている。
市民・地域参加と普及啓発国内外のNGOや研究機関が、上映会・講演・SNS(微博など)を通じて本種の危機を伝え、違法食用やペット取引を減らすための啓発活動を行っている。
研究・モニタリング(遺伝・個体群調査)全国的な分布調査やDNA解析により、チュウゴクオオサンショウウオが複数の「隠れた種」に分かれることが明らかになり、各系統ごとの保全単位設定や、野生の純粋な集団の探索・保護が進められている。

最後に

「これって、日本のオオサンショウウオにも影響あるのかな?」って、ちょっと気になりました。

……気になりますよね。

このあたりも、私なりにもう少し調べてみます。


項目内容
概要チュウゴクオオサンショウウオの食用輸入と野生化は、日本固有種のオオサンショウウオ(Andrias japonicus/特別天然記念物)にとって、現在進行形で「種の存続を脅かす最大級の危機」を引き起こしている。
なぜ日本に中国種がいるのか1970年代、「高級食材」としてブームになりかけた時期に、中国から大量のチュウゴクオオサンショウウオが食用目的で輸入された。その後、ブームの沈静化や管理のずさんさにより、逃亡個体や業者によって川に捨てられた個体が日本の河川に定着した。
最大の問題:交雑(ハイブリッド化)日本種(A. japonicus)と中国種(A. davidianus)は別種だが、近縁のため交尾して子孫を残すことができる。その結果、両者の交配による雑種(ハイブリッド)が生まれ、これが大きな「遺伝子汚染」を引き起こしている。
雑種の繁殖能力と浸透交雑生まれた雑種は、ラバのように一代限りではなく繁殖能力を持つ。雑種が純粋な日本種とさらに交配を重ねることで「浸透交雑」が進行し、地域全体のオオサンショウウオの遺伝子が徐々に中国種由来の遺伝子を含んだものへと置き換わりつつある。純粋な日本種の遺伝子は、この世から消えつつある。
「スーパーオオサンショウウオ」の脅威雑種は、純粋な日本種よりも体が大きく、成長が早く、気性も荒い傾向があるとされる(雑種強勢)。このため、生存競争において日本種は不利になり、巣穴や餌場を雑種・中国種に奪われ、さらに追いやられている。
京都・鴨川水系の深刻な状況代表的な事例が京都の鴨川水系である。調査の結果、この水系で確認されるオオサンショウウオの約90%以上が交雑種または中国種であり、純粋な日本のオオサンショウウオはほとんど見つからないという、極めて深刻かつ絶望的な状況にある。
見た目で区別できない問題日本種と交雑種、中国種は外見が非常によく似ており、専門家であっても、DNA鑑定を行わなければ確実な判別がほぼ不可能である。この「見た目では区別がつかない」ことが、現場の対応を難しくしている。
法律の壁:守るべき存在と駆除対象日本のオオサンショウウオは「特別天然記念物」に指定されており、許可なく捕獲・移動・飼育などを行うことは犯罪となる。一方で、交雑種および中国種は「特定外来生物」に指定され、本来は生態系保全のために駆除されるべき対象である。
現場のジレンマと混乱現場では「目の前の個体が、守るべき国の宝なのか、駆除すべき外来生物なのか」が外見だけでは分からないため、DNA鑑定をしない限り明確な判断ができない。その結果、迅速な隔離や駆除が難しく、対策の遅れがさらなる交雑の進行を招くというジレンマに直面している。

中国産チュウゴクオオサンショウウオの食用輸入と野生化により、日本固有のオオサンショウウオとの交雑が広域で進行し、遺伝的純系は急速に失われつつある。

雑種強勢を示す交雑個体が優占する鴨川水系などでは、外見では識別不能な特別天然記念物と特定外来生物が共存し、保全管理を著しく困難にしている。


DNAを調べてみたら、「今、日本にいるオオサンショウウオは、実は全部チュウゴクオオサンショウウオでした」なんてことになってもおかしくないんじゃないか──そんな危機感を、正直すごく強く感じています。
見た目はほとんど同じなのに、中身(遺伝子)はまったく別物かもしれない。そう考えると、ちょっとゾッとしませんか。

私自身、この問題は本当に深刻だと思っています。

しかもこれは、自然に起きたことではなくて、完全に「人間のエゴ」がつくり出した結果なんですよね。

「美味しいから」と中国で乱獲し、「日本でも売れるから」と大量に輸入し、「売れなくなったから」と川に捨てる。そのツケが今、中国では“野生絶滅寸前”、日本では“固有種が絶滅の危機”という形で返ってきています。

もちろん、「菜食主義やヴィーガンにならなきゃダメ」と言いたいわけではありません。

ただ、ほかに食べるものがいくらでもあるのに、「珍しいから食べてみたい」「これを食べると長生きするらしい」「高い=きっと美味しい」──そんな発想を手放さない限り、この問題は根っこの部分では解決しないのではないか、と感じています。

「売れるから」「利益になるから」「需要があるから」と、野生の生き物を好きなように利用し続ければ、そのツケは必ず、次の世代が払うことになる。
出典:奄美大島における特定外来生物フイリマングースの根絶の宣言について

それは、これまでの歴史がはっきりと証明してきたことだと思うのです。


ここまで読んで、『あなた』は、どのように感じましたか?

コメントで意見を聞かせてくれると、とても嬉しいです。

あなたの貴重な5分間を、本当にありがとうございました。

チュウゴクオオサンショウウオに、あなたの5分が届くことを祈ります。

鶏人|Keijin

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