11年後のレッドリスト|エビアマモ:禁じられた爆薬、残った傷あと【IUCNレッドリスト比較】

エビアマモ(学名:Phyllospadix japonicus) 11年後のレッドリスト
※このページは、[IUCNレッドリスト]世界の絶滅危惧生物図鑑(2014年版)に基づいて制作した個人ブログです。

こんにちは、鶏人|Keijin です。

今回は、エビアマモ(学名:Phyllospadix japonicus)の「海の優先順位」って話です。

2014年の図鑑では、場所によっては日本で爆薬を使った漁業などが原因になって、「EN:危機」と評価されていました。で、最新のレッドリストを見ても、爆薬の規制はできたのに、評価は「EN:危機」のままなんですよね。

だからエビアマモは今も、「禁じられた爆薬、残った傷あと」みたいな状態なんだと思います。

この記事は短くて、5分で読めます。
よかったら最後まで読んでください。

※2026年時点で、IUCNレッドリストにおける最新評価は2008評価(2010年公開)です(以降の更新は、現時点では確認できていません)。

※本記事は専門家による学術的な評価ではなく、公開された資料に基づく個人の調査・見解を含みます。
※IUCN評価は「世界全体」と「地域・個体群」で分かれる場合があります。地域によって状況は異なります。
最新かつ正確な分類や保全状況については、IUCN公式サイトなどをご確認ください。
参考:IUCN Red List(学名:Phyllospadix japonicus

エビアマモはなぜ危機のまま?|爆薬の過去と、養殖・護岸が残した現在の壁

⬇︎エビアマモの生態(基本情報)です。必要なら開いてください。

基本情報|エビアマモ(英名:Asian surf grass)
項目情報
和名エビアマモ
英名Asian surfgrass
学名Phyllospadix japonicus
分類被子植物・単子葉類・アマモ科(Zosteraceae)
分布日本(本州〜九州の沿岸に記録)、韓国、中国(東部沿岸)など
主な生育地外洋に面した岩礁域の、潮間帯下部〜潮下帯(砂がかぶる岩礁上を含む)
大きさ葉は線形で、おおむね長さ25〜55cm・幅2〜2.5mm(地域資料)。別資料では葉長20〜80cm程度の記載もある
寿命多年生(地下茎で群落を維持しやすいタイプ)

特徴

  • 名前の由来:種小名「japonicus」は「日本の」という意味で、記載当時の産地・分布に由来する。
  • 見た目:細長い葉が束になって岩に根を張り、波あたりの強い場所でも“芝生状”の群落(surfgrass bed)を作る。
  • 希少性:地域によっては生育地が局所的で、調査・記録が限られる(分布や現存量が把握しきれていない地域もある)。
  • 保全状況:IUCNではEN(危機)。環境省レッドリスト2020では準絶滅危惧(NT)。

生態など

  • 生育環境:潮間帯下部〜潮下帯の岩礁上に固着して生育し、砂泥底に生育するアマモ(Zostera marina)とは生育基盤が異なる、と整理されることが多い。
  • ふえ方(繁殖):地下茎(根茎)で広がり、雌雄異株で花序をつけ、種子でも更新する(海草の被子植物)。
  • 波との関係:外洋性の波浪環境に適応した海草で、岩礁やタイドプール周辺の微地形によって生育帯が形成されることがある。
  • 脅威:海岸開発・護岸や改変による岩礁環境の消失、富栄養化などの沿岸環境悪化、造成・養浜等にともなう底質変化(砂の被り方の変化)などが要因として挙げられる。

出典

根拠(生育帯・脅威の代表例)

セントラルコンサルタント株式会社 – 総合建設コンサルタント

最終評価2008年:エビアマモ「EN:危機」

海洋に見られる沈水植物で黄海と日本海だけに分布している。……大規模な海藻類の養殖施設のためや、場所によっては日本における爆薬を使った漁業によって、この海藻は無くなってしまった。

出典:訳者 岩槻邦男、太田英利 / 発行者 池田和博 / タイトル『IUCNレッドリスト世界の絶滅危惧生物図鑑』/ 発行所 丸善出版株式会社 / 発行 2014/01/31 / © Kunio Iwatsuki, Hidetoshi Ota, 2014

項目2014年の図鑑現在(2026年確認)
対象エビアマモ(Phyllospadix japonicusエビアマモ(Phyllospadix japonicus
生育の特徴(被害が致命的になりやすい理由)波当たりの強い沿岸の岩場に生育する海草で、海底の岩盤・岩礁帯そのものが「土台」になる同左。岩礁帯の改変・破壊が起きると、単なる植生の損失ではなく「基盤ごとの消失」になり得る
世界の評価(IUCN)絶滅危惧(EN)。IUCNの評価は2008年、発表(公表)は2010年の記録として扱われている絶滅危惧(EN)のまま。IUCN上、直近評価は2008年(Last assessed: 11 Aug 2008)の記録が維持されている
1. 「爆薬を使った漁業」についての詳細

なぜ行われたか
いわゆるダイナマイト漁(発破漁)。爆発で魚を気絶・浮上させて一気に捕る目的で行われた(過去の慣行・違法漁法として記述されることが多い)主要因としては過去のもの。現在の日本では爆発物を用いた採捕は法令上禁止で、違反は罰則対象
エビアマモへの影響爆発の衝撃で海底の岩盤・岩礁帯が破壊されると、岩場に生育する海草の群落が基盤ごと失われ、回復が極めて困難になる(群落消失の要因として扱われる)新規の被害要因としては抑え込まれている扱い。ただし、基盤(岩盤)の破壊は後から「植え直す」タイプの損失ではないため、過去被害の痕跡が長期に残り得る
現在既に問題化しており、保護・回復が必要という文脈日本では爆発物を使った採捕は禁止。現在の主要脅威は別要因に移っている
2. 現在(2026年)の主な脅威と変化

「磯焼け」と海水温上昇
図鑑の主眼は沿岸改変・過去の破壊要因が中心で、海域の環境変化が回復を妨げる含意で読める海水温上昇は藻場の衰退・磯焼けの進行要因として整理され、植食動物(ウニ等)による食害の増大などを通じて藻場の持続・回復を難しくし得る。エビアマモは藻場(海草藻場)を構成し得るため、この変化は回復阻害として位置づけやすい
護岸工事・埋め立て沿岸の補強工事(護岸化)など、人為的な海岸改変が主要な脅威として扱われる護岸化・埋め立て等の沿岸開発は、岩場の減少・分断を通じて生育地を直接縮小させる脅威として引き続き重要。長期的に残る地形改変のため、回復余地(適地)自体を小さくしやすい
3. 最新の保全状況

日本の評価(環境省)
図鑑はIUCN評価を軸にした紹介(国内カテゴリそのものの提示は限定的になりやすい)環境省の植物レッドリスト(第5次:植物・菌類)で、維管束植物として準絶滅危惧(NT)に位置づけられている
世界の評価(IUCN)絶滅危惧(EN)として、分布域での減少と生育地改変を重視する整理絶滅危惧(EN)を維持。評価年は2008年(公表2010年の記録)で、沿岸開発などの圧力を背景にした減少傾向の扱いが継続している

出典

エビアマモ(Phyllospadix japonicus)は岩礁に定着して群落を形成する海草であり、基盤となる岩盤・岩礁帯の改変が直接的な生育地喪失につながる。過去には爆発物を用いた違法漁法(発破漁)が局所的に実施され、岩盤破壊を介して群落消失を招いたとされるが、日本では現行法により禁止されている。現在は、沿岸の護岸化・埋め立て等による海岸改変が主要な減少要因として継続し、さらに海水温上昇に伴う磯焼けや植食動物による食害が回復阻害要因となり得る。保全評価は国内で準絶滅危惧(NT)、IUCNでは絶滅危惧(EN)である。

⬇︎エビアマモの保護活動の種類です。必要なら開いてください。

保護活動の種類内容の概要
生育地(岩礁性藻場)の保護エビアマモは岩礁の波当たりの強い浅所に生育するため、護岸・漁港整備・埋立・浚渫などで基盤や波環境が変わると消失しやすい。残存藻場を重要区画として扱い、改変を避ける・影響を最小化する方針で守る。
沿岸開発の影響低減(工事管理)工事時の濁り、浮泥の堆積、基盤の覆砂、漂砂バランスの変化は定着と光環境を悪化させる。工事の時期・施工方法の調整、濁り対策、影響範囲の監視などで藻場への負荷を下げる。
水質・透明度の改善陸域からの栄養塩・有機物・土砂流入の増加は透明度低下や底質悪化を招き、海草類に不利になる。流域対策(濁水・赤土・生活排水の負荷低減)とあわせて、藻場が維持できる光環境を確保する。
物理的攪乱の抑制(立入・係留・採取の管理)岩礁の浅所では、人の踏み込み、漁具の接触、係留・アンカー、沿岸レジャーによる擦過が直接の損傷になる。局所的な立入抑制、係留方法の工夫、採取の抑制などで直接損傷を減らす。
再生・復元(移植・播種・基盤の工夫)波浪の強い岩礁域では、移植株が流失しやすい。地下茎を含む株移植や種子利用に加え、人工構造物(人工礁・水中基盤)を利用して定着率を上げる手法が検討・開発されている。
調査とモニタリング(分布・面積・健全度)藻場面積、被度、株密度、季節変動、攪乱要因(濁り・堆積・食害など)を継続的に記録し、減少兆候を早期に把握する。再生事業を行う場合は、施工前後で効果検証を行い順応的に改善する。
気候変動への適応(将来分布を見据えた保全)水温上昇や海況変化により分布域や適地が変わる可能性がある。将来の適地(残りやすい海域・避難地)を見据えて、保全優先順位づけ、連続性の確保、沿岸計画への組み込みを進める。

出典

最後に

読んでみて、どう感じましたか?

環境省だとNT(準絶滅危惧)なのに、世界のIUCNだとEN(危機)って、けっこう差があるよね。これって、何を根拠に決めてるんだろう。日本人の自分が言うのも変だけど、日本って漁業に対してというか、漁師さんにちょっと甘い気がするんだよね。でも、実際はそんなことないのかな。

ないとは思うけど、ちゃんと調べてみます。


項目内容要点
評価の「ズレ」が起きる最大の理由:視点の違い同じ種でも、評価の前提(見る範囲・優先するリスクの置き方)が違うと、カテゴリがズレることがあるズレは誤りというより、評価軸の違いで起きやすい
IUCN(世界)の視点日本・韓国・中国北部を含む分布域全体での減少や、生育地の縮小・分断を重く見る。エビアマモはIUCNで絶滅危惧(EN)として扱われ、韓国や中国北部での減少が示されている世界全体で見たときの「分布域の危うさ」を強く反映しやすい
環境省(日本)の視点日本国内での絶滅リスクを中心に評価する。エビアマモは日本のレッドリスト(維管束植物)で準絶滅危惧(NT)に位置づけられている国内に残っている生育地・個体群の状況が評価に反映される
「漁師さんに甘い?」という直感の正体漁獲規制の緩さというより、沿岸の利用をめぐる現実的な力学(どこに何を置くか、何を優先するか)に由来する違和感として出やすい規制の話より、場所と用途の取り合いとして現れることがある
生息地の競合IUCN側の説明では、広範な海藻類の養殖施設(例:ケルプ等)の設置以降、韓国や中国北部でエビアマモが減少しているとされる浅い岩礁帯は養殖・港湾・海岸保全などとも競合しやすい
優先順位生活や産業(養殖など)・インフラの優先が続くと、自然の岩場や沿岸環境が後回しになり、生育地の維持や回復が難しくなる「保全したい」より「必要だから使う」が先に立つ局面が起きる
もう一つの「日本の事情」:コンクリートの海岸IUCN側では脅威の一つとして海岸線の硬化(shoreline hardening)が挙げられている。日本では防災・港湾・海岸保全の文脈で護岸や消波ブロック等が広く整備されてきた岩礁帯の改変・置換は、岩に根を張る海草にとって打撃になりやすい
テトラポッドと護岸海岸の人工化は、自然の岩場や潮間帯の構造を変え、生育可能な基盤や波当たりの条件を変化させる生育地の質そのものが変わり、回復余地も小さくなりやすい
公共事業の壁防災・インフラ整備は社会的な合意と予算の上で動くため、自然回復や改変抑制は進め方が難しくなりがち生態系だけの理屈では動かない領域がある
その違和感は正しい評価差は「甘い・厳しい」の単純な話ではなく、世界と国内の評価がそれぞれ別のリスクを優先していることの表れとして理解できる直感が向いている先は、規制よりも構造(利用・開発・優先順位)にある
世界(IUCN)分布域全体での減少、養殖施設の設置や海岸線の硬化などを背景に、危機カテゴリ(EN)として扱う世界スケールで見た減少と生育地喪失を強く反映
日本(環境省)国内の絶滅リスク評価として、準絶滅危惧(NT)に位置づける国内の現状を基準に、直ちに上位カテゴリとはしない整理

出典

世界は「養殖とか護岸工事で生息地が削られてるんだから、これは危機(EN)で決まりでしょ!」って見てる。

一方で日本は「うん、減ってるのはわかるけど、養殖も護岸も産業や防災として必要なんだよね。しかも国内にはまだ残ってる場所もあるし、今すぐ絶滅ってわけでもないから、とりあえずNT(準絶滅危惧)で」って見てみぬふりしてる。

まあ、そんな感じってことなんでしょうかね。

まあ、実際にそんな会議のノリで決めたかはわからないですけど、世界は絶滅危惧のほうを強く重視して、日本は経済や現実の都合を重視している、っていう違いは読み取れますよね。たしかに、経済が回らないと、保全とか保護の話は後回しになりがちなんでしょうけど。

それと、調べていて気づいたんですが、IUCNの報告書では脅威としてもう一つ「Shoreline hardening(海岸線の硬化)」も挙げてるんですよ。要するに、日本は世界でもかなりの「護岸大国」で、防災の名目で自然の岩場がコンクリートとかテトラポッドに置き換えられてきたことを心配してる、ってことですね。

私、昔に軽バンで、日本の海岸線をできるだけ選んで外周を一周したことがあるんです。本州だけじゃなくて、北海道も九州も、海沿いをぐるっと回ったんですよ。で、その時の記憶を思い出すと、たしかにどこもかしこも、砂浜ですらテトラポッドがない海岸を探すほうが難しいくらいだった気がします。

当時の自分は台風とか防災の目線しかなかったので、「日本ってテトラポッドで高波から守られてるんだな」って、素直に感心してたんですよね。だけど、こういう話を知ったあとだと、「ああ、日本って国全体を戦艦みたいに囲ってるのかもな」って、そんなふうにも思えてしまいました。

それで、今の日本の気候変動への向き合い方を見ていると、なんとなくこの絶滅危惧種の評価の決め方と似てる気がするんですよね。はっきり言わないで、あいまいなまま進んでいて、結局どこからどう見ても、気候変動より経済を優先する動きしか今はできていないように感じます。

たぶん背景には、戦後から経済大国になって、世界に「すごい」って言われるくらい成功した体験があるんだと思うんです。その成功体験が、今の日本を「変わる」ことから遠ざけてる気がするんですよね。

なんというか、「ここまで育てた日本を変えるのは嫌なんです」って駄々をこねてるようにも見えてしまう。だけど、変えないままでいたら、経済も、守ってきた海岸線も、漁業も、結局は気候変動の嵐にまとめて飲み込まれてからじゃ遅いと思うんですよ。

失敗してから立ち上がる強さを持っている国なんだからこそ、世界の先頭に立って、気候変動に対して強い意見を言ってくれたら、日本人としても心強いんですけどね。やっぱり成功体験っていう魔物には、なかなか勝てないんでしょうかね。


ここまで読んで、あなたは、どのように感じましたか?

コメントで意見を聞かせてもらえると、とても嬉しいです。

貴重な5分間を、本当にありがとうございました。

エビアマモに、その5分が届くことを祈ります。

鶏人|Keijin

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