11年後のレッドリスト|パナマヒダアシキノボリガエル:遺伝子だけが、冬眠している【IUCNレッドリスト比較】

11年後のレッドリスト|パナマヒダアシキノボリガエル:遺伝子だけが、冬眠している【IUCNレッドリスト比較】 11年後のレッドリスト
※このページは、[IUCNレッドリスト]世界の絶滅危惧生物図鑑(2014年版)に基づいて制作した個人ブログです。
※画像はすべてAI生成(
DALL·E)によるイメージであり、実際の生物写真ではありません。

こんにちは、鶏人|Keijin です。

今回は、「もしかするともう絶滅してしまったかもしれない」、パナマヒダアシキノボリガエル(学名:Ecnomiohyla rabborum)のDNAの話です。

2014年の図鑑では、このカエルは「CR:深刻な危機」として載っていました。
その後、飼育下にいた最後の個体として知られる「タフィー」が亡くなります。

でも、IUCNレッドリスト上では「おそらく野生絶滅」とされつつも、最新の評価でもカテゴリは「CR:深刻な危機」のままなんです。

だからこそ、パナマヒダアシキノボリガエルは今も、「遺伝子だけが、冬眠している」――そんな状態なのだと思います。

この記事は短く、5分で読めます。
よかったら最後まで読んでください。

※2026年時点で、IUCNレッドリストにおける最新評価は2018年版です(以降の更新は確認されていません)。
※本記事は専門家による学術的な評価ではなく、公開された資料に基づく個人の調査・見解を含みます。
※IUCN評価は「世界全体」と「地域・個体群」で分かれる場合があります。地域によって状況は異なります。
最新かつ正確な分類や保全状況については、IUCN公式サイトなどをご確認ください。
参考:IUCN Red List(学名:Ecnomiohyla rabborum)

遺伝子の冬眠:最後のカエル『タフィー』が私たちに残した、タイムマシンの拒絶

⬇︎パナマヒダアシキノボリガエルの生態(基本情報)です。必要なら開いてください。

基本情報|パナマヒダアシキノボリガエル(英名:Rabb’s Fringe-limbed Treefrog)
項目情報
和名パナマヒダアシキノボリガエル
英名Rabb’s Fringe-limbed Treefrog(Rabbs’ fringe-limbed treefrog)
学名Ecnomiohyla rabborum
分類両生類・無尾目(カエル目)/アマガエル科(Hylidae)
分布パナマ中部・エル・バジェ・デ・アントン周辺の山地(雲霧林)。分布は極めて狭い
主な生息環境森林の樹冠部(カノピー)に生息し、繁殖には「水のたまった樹洞(ツリーホール)」を利用する
体長吻端‐肛門長(SVL)で概ね 6〜10cm 程度(オス平均 62〜97mm、メス 61〜100mm)
体重明確な一般値は示されにくい(文献・個体差が大きい)
寿命野生での寿命は不明確である(野外個体の継続観察が困難であったため)
保全状況IUCN:CR(Critically Endangered:Possibly Extinct)/最終評価 2018

特徴

  • 名前の由来:種小名 rabborum は、保全活動家で爬虫両生類学者の George B. Rabb と Mary S. Rabb に献名されたものである
  • 体の特徴:四肢の縁に“フリンジ(ひだ状の皮膚)”を持ち、手足が大きく、樹上生活に適応した形態である
  • 滑空(グライディング):大きく水かきの発達した手足を広げ、樹上から短距離の滑空を行う能力がある
  • 希少性:2005年に発見され2008年に記載されたが、野外での確認は2007年以降途絶えたとされる
  • 危機の中心:カエルツボカビ症(Batrachochytrium dendrobatidis)流行が、野外絶滅(またはそれに近い状態)を招いた主要因と考えられている

生態と行動

  • 回遊性:回遊はしない種である。局所的な山地の雲霧林に依存するタイプである
  • 繁殖:オスは繁殖に使う「水のたまった樹洞」を縄張りとして守り、そこで子を保護する行動が知られる
  • 育児の特異性:オスが幼生(オタマジャクシ)を世話し、皮膚由来の栄養を与えるという、極めて珍しい行動が報告されている
  • 食性:主に昆虫などを捕食する夜行性の樹上性カエルである
  • 現状(重要):飼育下での繁殖も成功せず、最後の既知個体(“Toughie”)は2016年9月26日に死亡したとされる

最終評価2018年:パナマヒダアシキノボリガエル「CR:深刻な危機」

発見されたときにはすでに希少であり、このめずらしい両生類は2006年に地域でカエルツボカビ症が流行して以降、野生では絶滅した可能性が高い。

出典:訳者 岩槻邦男,太田英利 / 発行者 池田和博 / タイトル「IUCNレッドリスト世界の絶滅危惧生物図鑑」/発行所 丸善出版株式会社 / 発行 2014/01/31 / ©️Kunio Iwatsuki, Hidetoshi Ota, 2014

項目事実(時系列・現状)意味・ポイント(結論/補足)
総論(いま何が起きているか)2014年時点では「まだ希望が残る」状態だったが、現在は飼育下を含め生存個体が確認されていない公式カテゴリ上は「CR(恐らく野生絶滅)」でも、実態としては事実上の“絶滅状態”と見なされている、という整理。
飼育下の現状(最後の個体)最後に生存が確認されていたのは、オス1匹の「タフィー(Toughie)」。飼育場所は米ジョージア州のアトランタ植物園。隔離飼育施設 frogPOD で保全されていた。“最後の1匹”が生きている間は「未来につながる可能性」が残るが、それが消えると一気に「取り返しのつかない地点」を越える。
絶滅の瞬間(エンドリング)2016年9月26日、タフィーが死亡。これにより、地球上から姿を消した(Endling:その種の最後の個体)と考えられている。「絶滅」という言葉が、推定ではなく“最後の個体の死”として現実になる瞬間。
繁殖の試みと失敗2005年、野生から保護された複数個体が米国へ移送。だが2009年に最後のメスが死亡し、その後はタフィーと別園のオスのみになって繁殖が成立しなくなった。“繁殖できない保全”は時間との勝負。個体が残っていても、性比・遺伝的多様性・健康状態が崩れると復活の道が閉じる。
野生の状況(記録の断絶)野生では、ツボカビ症(Bd)が襲った2006年以降に壊滅的打撃。鳴き声の最終確認は2007〜2008年が最後「見つからない」期間が長期化し、再発見の可能性が極端に低くなる。“記録が途絶えた年”がそのまま“消えた年”に近づく。
現在の評価(IUCN上の位置づけ)IUCNでは「CR:おそらく野生絶滅」の扱い。専門家の多くは、すでに絶滅していると見ている公式評価は慎重に残されることがある一方、現場感覚としては“もういない”に傾いている、という温度差がある。
主因(何が決定打だったか)最大要因はカエルツボカビ症(Bd)。生息地へ侵入後、短期間で壊滅的被害。両生類にとってBdは「生息地破壊」とは別軸の、感染症による急崩壊を引き起こす脅威。
ツボカビ症の現在地(世界規模)収束しておらず、両生類にとって最大級の脅威。中央・南アメリカ、オーストラリアなど世界90カ国以上で確認。過去50年で少なくとも90種以上が絶滅したと推定。「一種の悲劇」で終わらず、世界規模で同じことが繰り返され得る構造的な問題。
“新たな希望”の兆し一部の種では、Bdへの免疫獲得や回復傾向が報告されている。“全滅しかない病気”ではなく、条件次第で耐性・回復が起きる可能性もある(ただし種による)。
保全の取り組み(同じ悲劇を繰り返さないために)パナマでは「パナマ両生類救済・保全プロジェクト」が、他の絶滅危惧種を対象に飼育下繁殖と野生復帰(リワイルディング)へ尽力している。タフィーの物語が残したものは、“終わり”だけじゃなく、次の種を救う設計図にもなっている。
このカエルの「特別さ」(失われたもの)オスが樹洞の水でオタマジャクシを育て、さらに父親の背中の皮膚を食べさせて栄養を与えるという希少な子育てが知られていた。絶滅は“数がゼロになる”だけじゃない。生態・行動・進化の一つの答えが、観察不能として永遠に閉じてしまう。
パナマヒダアシキノボリガエルは、ツボカビ症(Bd)の流行により野生個体群が崩壊し、2007〜2008年以降は確認記録が途絶えた。飼育下でも繁殖は成立せず、2009年に最後のメスが死亡、最終個体「タフィー」は2016年9月26日に死亡した。IUCN上はCR(おそらく野生絶滅)とされるが、現状は事実上の絶滅状態にある。父親が皮膚栄養で仔を育てる特異な繁殖行動も失われた。

⬇︎パナマヒダアシキノボリガエルの保護活動の種類です。必要なら開いてください。

保護活動の種類内容の概要
生息地の保護(in situ)パナマ中部・エルバジェ周辺の雲霧林に限られた生息地で、伐採・開発などによる生息地改変を抑え、残存林の保全と回復を図る。
感染症対策(ツボカビ症:Bd)急減の主因としてツボカビ症が強く疑われるため、野外での病原体リスク低減(侵入防止・衛生管理)や、病害影響を前提にした保全戦略を組み込む。
ex situ保全(保全飼育・保険個体群)野外での存続が極めて困難な段階では、域外施設での保全飼育(アシュアランス・コロニー)により“絶滅回避の保険”を確保する(本種でも救出・飼育が試みられた)。
飼育下繁殖・遺伝管理飼育下繁殖の試行、系統・遺伝的多様性に配慮した管理、将来の再導入に備えた繁殖技術の確立を進める(ただし本種は繁殖個体の確保自体が困難化)。
再導入・野外復帰の準備生息地の保全と病原体リスクの管理が成立することを前提に、再導入の可否評価(疾病スクリーニング、放逐設計、段階的放流など)を検討する。
研究とモニタリング最終確認が途絶えているため、残存個体の探索調査、分布・生息環境の再評価、Bd影響の検証などを継続し、保全優先度と手段を更新する。
国家計画・優先種指定と連携パナマの国家的な両生類保全計画で高優先度種として位置づけられており、行政・研究・保全施設の連携枠組みに乗せて対策を推進する。

最後に

読んでみて、どう感じましたか?

「タフィー」は2016年9月26日に亡くなったんだよね。レッドリストの見解はいったん置いといて、これでこの種はもう“絶滅しちゃった”ってことなんだなって思った。父親が身を削って子育てするっていう遺伝子情報って、かなり希少だと思うし、これをDNAとかで解析して、現代の何かに役立てることってできないのかな。

「タフィー」の遺伝情報が、なんらかの形でつながったらうれしいよね。
ちょっと調べてみます。


論点現状(いま分かっていること)未来(何に繋がり得るか)
1. タフィーの遺伝子は保存されているか?タフィーの遺伝情報は保存されているとされています。「もう生きた個体はいない」状況でも、将来の技術革新に備えた“バックアップ”として価値が残る。
組織・細胞のバンク化(クライオプレゼベーション)タフィーの死後、皮膚細胞や組織サンプルが採取され、極低温で凍結保存(クライオプレゼベーション)された、という報道・記述があります。解析(ゲノム・遺伝子発現・タンパク質など)の材料になり得る。将来、より高度な再生・生殖技術が成立した場合の基盤にもなる。
「フローズン・ズー(凍結動物園)」という発想絶滅危惧種の細胞を保存する施設として、たとえばサンディエゴの“Frozen Zoo”のような取り組みが知られています。エンドリング級のサンプルは特に重要な保存対象になりやすい。個体そのものは失っても、「遺伝情報の時間」を止められる可能性がある。将来的な復元・研究の“鍵束”になる。
2. その遺伝子は研究に役立っているのか?(結論)直接の“復活”は難しくても、研究価値は大きいと考えられています。「失われた種を戻す」だけでなく、いま生きている種を救う研究に繋げられる。
研究①:「献身的な子育て」のメカニズムオスが樹洞の水で子を育て、さらに自分の皮膚を食べさせるという極めて特殊な繁殖行動が注目点。これを制御するホルモン(例:プロラクチンなど)や、皮膚再生に関わる遺伝子の解析が期待される。生物の利他的行動の進化、繁殖戦略、皮膚再生・栄養供給の仕組みの理解に繋がる可能性。
研究②:ツボカビ症(Bd)への耐性のヒントタフィーはツボカビ症が広がる時代に長く生き延びた個体とされるため、他個体との比較から「なぜ耐えたのか」を探る発想がある。Bdで苦しむ他の両生類に対して、治療・予防(薬剤、飼育管理、将来的には遺伝子レベルの介入)のヒントになり得る。
3. 絶滅種の遺伝情報が持つ「未来への価値」パナマヒダアシキノボリガエルに限らず、絶滅種の遺伝情報は「過去」ではなく、未来の選択肢にもなり得る。「何が可能で、何が難しいか」を見極めながら、社会実装(倫理・費用・優先順位)も含めて議論が進む。
医療・創薬への可能性カエルの皮膚は抗菌ペプチドなど有用物質の宝庫になり得る。絶滅種が持っていた未知の化合物が、耐性菌対策などのヒントになる可能性がある。新規抗菌薬・創薬シーズ探索の視点で、保存サンプルが“未発掘の情報源”になることがある。
脱絶滅(De-extinction)近縁種の卵などを用い、タフィーのDNAを使って「復活」を狙う構想はあるが、現時点では困難。技術的には視野に入り始めている、という段階。実現には技術だけでなく、倫理・生息地・病原体・生態系への影響などの壁が大きい。それでも「不可能ではない」側に少しずつ寄っている。
生態系の復元(役割の理解)種が消えると、その種が担っていた役割(捕食、栄養循環、他種との関係)に穴が開く。遺伝情報から、その種の能力や特性をより正確に推定できる場合がある。「穴をどう埋めるか」の対策(保全計画、代替機能の補完、復元方針)を考える材料になり得る。

「近縁種の卵などを用い、タフィーのDNAを使って“復活”を狙う構想はあるが、現時点では困難」ってあるけど、これって正直ちょっとモヤるんですよね。
だって、この種が絶滅した根本の原因を解決していないのに、もし復元できたとしても、また同じ苦しみを味わわせることになるんじゃないですか。私だったら絶対イヤだなって思います。

うん、それ、すごくわかります。
苦しい病気が蔓延している中で生き延びて、最後の一匹になって、それで「研究所で復活」って……なんか、映画の『エイリアン4』で、リプリーが自分の遺伝情報で作られた実験の失敗作たちを、火炎放射器で焼き払うシーンを思い出しました。

きっとカエルが復活させられたとしても、最初は何もわからないから喜ぶどころか、そもそも状況が理解できないのかもしれない。でも、もし“事実”を知ったら、どう感じるんだろうね……って思ってしまいます。

それと、やっぱり根本の解決って、ツボカビ症を蔓延させた背景にある人類の移動手段とか、気候変動とか、そういうところを何とかするのが先なんじゃないかって、強く思うんです。
だって、遺伝情報を知って、書き換えて、さらに新種を作ったり、元に戻したり……そういう“タイムマシン”みたいなことをやり始めたら、どこかで間違いなく、おかしなことが起きる気がするんですよね。

なんで人類って、そんなに先を急ぐのかなって最近すごく感じます。
化石燃料を掘って燃やして、車や飛行機やいろんな機械を動かして、時間を縮めるみたいに“タイムマシン”を作って。
で、今度はDNAを読み解いて書き換えて、過去から未来へ生き物を移動させる――これも、まさしくタイムマシンだと思うんです。

ちょっと聞いただけだとワクワクする。
でも、やっぱり……リプリーが感じた、あの怒りのほうが“正常”なんじゃないかなって。

あなたはどう思いますか。


ここまで読んで、『あなた』は、どのように感じましたか?

コメントで意見を聞かせてくれると、とても嬉しいです。

あなたの貴重な5分間を、本当にありがとうございました。

パナマヒダアシキノボリガエルに、あなたの5分が届くことを祈ります。

鶏人|Keijin

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