11年後のレッドリスト|ニセムシトリゴケ:誰も書き足さない赤が、ずっと残る【IUCNレッドリスト比較】

11年後のレッドリスト|ニセムシトリゴケ:誰も書き足さない赤が、ずっと残る【IUCNレッドリスト比較】 11年後のレッドリスト
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
※このページは、[IUCNレッドリスト]世界の絶滅危惧生物図鑑(2014年版)に基づいて制作した個人ブログです。
※画像はすべてAI生成(
DALL·E)によるイメージであり、実際の生物写真ではありません。

こんにちは、鶏人|Keijin です。

ニセムシトリゴケ(Myriocolea irrorata)は、

2014年、図鑑に【CR:深刻な危機】として分類されていました。

2000年、IUCNレッドリストで、【CR:深刻な危機】と評価されました。

つまり、2000年から、ニセムシトリゴケは

「誰も書き足さない赤が、ずっと残る」状態なのです。

※2025年時点で、IUCNレッドリストにおけるニセムシトリゴケの最新評価は2000年版です。それ以降の更新は行われていません。

この記事は、とても短く5分で読めるので、どうぞ最後まで読んでいただけると嬉しいです。

※本記事は専門家による学術的な評価ではなく、公開された資料に基づく個人の調査・見解を含んでいます。
最新かつ正確な分類や保全状況については、IUCN公式サイトなどをご確認ください。
参考:https://www.iucnredlist.org/species/39228/10177704
注意:2012年のDNA解析により、ニセムシトリゴケはコルラ属(Colura:ヨウジョウゴケ属の仲間)に含まれることが分かり、分類が見直されて転属しました。現在は Colura irrorata(コルラ・イロラタ) として扱われています。しかし、ブログでは2014年の図鑑の表記通りの名前を使用しています。

トポ川の打撃と、新産地がつないだ希望

⬇︎ニセムシトリゴケの生態です。必要に応じてご覧ください。⬇︎

 基本情報|ニセムシトリゴケ(Myriocolea irrorata)
項目情報
和名ニセムシトリゴケ
英名(一般に定着した英名はあまり使われず、学名で扱われることが多い)
学名Myriocolea irrorata(※2012年に Colura irrorata へ移された扱いがある)
分類植物・コケ植物(タイ類=Liverwort)/ウロコゴケ科(Lejeuneaceae)
分布エクアドル固有(東部アンデス)。リオ・トポ(Río Topo)周辺など、ごく限られた河川域
主な生育地河川の水際(ときどき水没する川岸)で、低木の枝などに付着して生育
体長目安:葉をつけた茎(シュート)が最大約5cmほどになることがある
体重不明(コケ植物のため、通常は体重で示されない)
寿命不明(コケ植物は「個体の寿命」を推定しにくく、情報が限られる)
保全状況(IUCN)CR(Critically Endangered:深刻な危機)※2000年評価として引用される

特徴

  • “流れに生きる”コケ:流水環境に適応した「レオファイト(rheophytic=流水性)」のタイ類として紹介されます
  • 住んでいる場所が特殊:川岸の低木の枝や幹など、増水で水に浸かる場所に生えるのが大きな特徴です
  • 見た目が“変わり者”:形態がかなり独特で、分類が難しかった(その後、分子系統などの研究で Colura へ移された)
  • 「とても珍しい」前提の種:長く1地点のみとされ、のちに追加の産地が報告されるなど、分布情報が少ないまま語られがちです

生態と行動

  • 生息域がピンポイント:標高およそ1200〜1700mの河川沿いなど、狭い範囲で確認されています
  • “川の都合”に左右される:川の増水・流量変化とセットの環境で、岸辺の植生が保たれる条件がそろって初めて成立するタイプの生息地です
  • 最大の懸念:ダムなどの水力開発計画が、この種の存続リスクとして強く言及されています
  • ここがポイント:2014年の報告では「分布が増えたことで、(IUCNの再評価が行われれば)カテゴリーが変わり得る」趣旨にも触れられていますが、IUCNレッドリストとしての評価自体は“2000年のCR”が参照され続けています

2014年絶滅危惧種:ニセムシトリゴケ【CR:深刻な危機】

トポ川に水力発電のためのダムや堤防をつくった結果、水の流れや水質が変わり、その結果残存しているこのめずらしい苔類を荒らすことにつながった。

出典:訳者 岩槻邦男,太田英利 / 発行者 池田和博 / タイトル「IUCNレッドリスト世界の絶滅危惧生物図鑑」/発行所 丸善出版株式会社 / 発行 2014/01/31 ©️Kunio Iwatsuki, Hidetoshi Ota, 2014

区分内容(要約)時期・場所 / 補足
ダム建設(現状)エクアドル政府が反対や訴えを押し切り、トポ川に水力発電ダム「Central Topo」を建設・稼働。トポ川(Río Topo)/2016年頃に稼働開始
影響① 環境の変化本種は渓流性(増水時の浸水・飛沫など)に依存。ダムにより水位が一定化したり、急放水で条件が乱れ、繊細な生育バランスが崩れて個体群が減少。生態特性:渓流植物(Rheophyte)
影響② 生息地の断片化護岸工事・濁り等で、着生に必要な特定の低木が失われるなど、厳しい状況が継続。ダム周辺で顕著
希望① 再発見(別河川)トポ川隣のズニャグ川(Río Zuñag)でも個体群が確認。2014年以降の重要ニュース/EcoMinga財団の保護区内で開発から守られている
希望② 再発見(遠隔地)エクアドル南東部のコンドル山脈(Cordillera del Condor)で新個体群が見つかり、「トポ川固有」の前提が崩れ、存続可能性が上がった。2020年代に報告
脅威① 小規模水力の拡大エクアドル各地で、河川の小規模ダム開発計画が続く。将来リスク
脅威② 鉱山開発コンドル山脈の新生息地周辺で、露天掘り採掘計画があり、新たな生息地も破壊されうる。新産地にもリスク
脅威③ 気候変動渓流性植物は雨量変化に敏感で、渇水・豪雨パターン変化が直接的な脅威。広域要因
まとめ(現状評価)トポ川では危機が続く一方、保護区や遠隔地での発見により、種の存続は「首の皮一枚」でつながっている。状況の全体像
IUCN評価IUCN上は、CR(絶滅寸前)のまま。「最新評価は2000年版」
保全の最前線植物学者Lou Jost氏らが関わるEcoMinga財団が、土地の買い取り等で民間保護区を整備し、ダム影響を受けないエリア確保を進める。保全アクション

トポ川では水力発電ダム(Central Topo)の建設・稼働(2016年頃)により、増水時の浸水や飛沫に依存する渓流性苔類の生育環境が改変され、護岸工事や濁水化も相まって生息地の断片化が進行した。一方、2014年以降に隣接するズニャグ川および2020年代にコンドル山脈で新個体群が確認され、分布は再評価の余地を示す。ただし小規模水力・鉱山開発・気候変動が継続的脅威である。

⬇︎ニセムシトリゴケの主な保護活動の種類です。必要に応じてご覧ください。⬇︎

保護活動の種類内容の概要
生息地(河川・飛沫帯)の保全河川のしぶき(飛沫)や周期的な冠水に依存するため、河岸の微小環境(湿度・水しぶき・基質)を維持する管理を行う。
河川改変の抑制(環境流量の確保)取水・導水トンネル等で流量が大きく減ると生育条件が崩れるため、環境流量(最低流量)の設定・運用、取水計画の見直しを求める。
開発規制・環境影響評価(EIA)小水力・道路建設などの開発に対し、分布域が極端に狭い種である点を踏まえて影響評価を厳格化し、回避・低減策を条件化する。
河岸植生(宿主低木)の保全本種は河岸の低木(例:Cuphaea など)の枝上に成立するため、河岸植生の伐採・攪乱の抑制、侵食対策を含めて宿主・基盤を守る 。
保護区・微小保護区の設定生育地が「河川のごく短い区間」「極小パッチ」に偏るため、流域全体の保護に加え、重点区間の微小保護区(マイクロリザーブ)を設定する。
市民・地域参加(合意形成)開発計画に対する地域の関与、訴訟・要望書、監視活動など、地域コミュニティと連携した保全を進める。
研究とモニタリング分布(リオ・トポ/ズニャク等)と個体群規模が限られるため、定期調査で群落面積・水量・攪乱履歴を追跡し、絶滅リスクを評価する。
域外保全(培養・保存)の検討現地条件の再現が難しい可能性が指摘されるため、可能性評価を行いつつ、コケ類コレクション等で胞子・標本の保存を検討する。

最後に

これを読んでみて、どう感じました?

最近は化石燃料の発電が問題になってるけど、水力発電のダム建設にも反対があるよね。もちろん、あの場所が水に沈むっていうのが大きいんだろうけど、太陽光だって地面を広く覆うじゃない?このブログでこんなこと言うのもアレだけど、生態系への影響と、化石燃料で出る炭素の量を天秤にかけたらどうなるんだろうって、すごく気になった。

たしかに、そこは考えちゃいますよね。水力は運転中のCO₂排出は少ないと言われるけど、ダムで環境が変わって生態系のバランスが崩れることもある。逆に火力はCO₂が出て、広い範囲にじわじわ影響が出る。太陽光も設置場所次第で自然への負担が変わるし、このジレンマは気になります。

調べてみます。


1) 「炭素」と「生態系」の天秤(全体像)

視点火力(化石燃料)水力(ダム)太陽光
炭素排出高い(気候変動の主因)低いと思われがちだが条件次第で増える低〜中(主に製造時)
生態系影響広範囲に「じわじわ」建設地点の生態系に「ピンポイントで決定的」設置場所次第で広範囲に影響
問題の性質地球規模・長期局所・急激局所〜広域(サプライチェーン含む)

2) 炭素排出(カーボンフットプリント)の比較(提示値)

発電方式ライフサイクルCO₂排出量(g-CO₂/kWh)特徴
石炭火力800〜1,000以上圧倒的に高い。気候変動の主因。
太陽光30〜50程度製造時の排出が主。土地を広く占有。
一般水力4〜150以上熱帯地域では急増。メタン発生が課題。

3) 重要ポイント:貯水池が「メタン発生源」になる問題

論点内容
何が起きる?ダム湖に沈んだ樹木・植物が水底で腐敗し、メタンが発生。
なぜ深刻?メタンはCO₂より温室効果が強い。
どこで増えやすい?エクアドルのような熱帯・亜熱帯で傾向が強い。
追加主張「建設後の最初の数年は火力並みの温室効果」という研究もある。

4) 生態系への影響(エコロジカルフットプリント)

発電方式影響の出方例としての説明
火力発電広範囲に「じわじわ」温暖化・酸性雨などを通じて地球全体の生態系を蝕む。
水力(ダム)局所に「決定的」特定環境に依存する種には「棲み家そのものの消滅」。

5) 太陽光発電の「隠れたコスト」

論点内容
広大な面積同じエネルギーを得るのに広い土地が必要。森林伐採なら吸収源を失い、生物も追い出す。
素材の採掘レアメタルや銀の採掘現場で、新たな環境破壊が起きる構造がある。

6) なぜ「トポ川のダム」は止まらなかったのか(社会経済)

視点内容
エネルギー安全保障輸入依存の石油・ガスから、自国の水資源による発電へ転換=国家戦略。
「苔 vs 経済」の構図「希少種を守れ」vs「市民の電力供給と経済成長をどうする」の衝突。

7) 対立を越える「第3の道」(模索されるアプローチ)

アプローチ内容注意点・補足
流れ込み式(Run-of-river)水力大規模ダムを作らず自然流を利用。メタンや大改変を抑える。小規模環境にはそれでも影響が出うる。
生物多様性オフセット開発で失う価値を算定し、別地点でそれ以上の保全を行う。ズニャグ川の保護区化で「種の存続」を図る動きが該当。
既存インフラ活用既存ダムの効率改善、屋上・ため池などで太陽光=「新たな自然を壊さない」方向へ。開発の“新規破壊”を減らす発想。

発電方式の評価では、ライフサイクルCO₂排出は石炭火力(約800–1000+ g-CO₂/kWh)に比べ太陽光(約30–50)と水力(約4–150)が低いが、水力は貯水池で有機物分解に伴うメタン放出が生じ、熱帯域では実質的温室効果が増大し得る。生態系影響は火力が広域・慢性的である一方、ダムは局所の生息環境を改変し、渓流性種などを決定的に圧迫する。加えて太陽光は土地占有と資源採掘の外部性を伴う。開発が進む背景にはエネルギー安全保障と成長戦略があり、対立緩和策として流れ込み式水力、生物多様性オフセット、既存インフラ活用が提案される。


「100%完璧にクリーンなエネルギーって、たぶん存在しない」ってことだよね。読んでいて感じたのは、人間だけが火を使えて、その火でいろんなものを作ってきたってこと。そしてその裏側で、たくさんの生き物たちに迷惑をかけてきたってことだよ。悲しいけど、これが現実なんだと思う。

そうなんだよね。今回は水力・火力・太陽光を例に出したけど、ほかにも風力とか、波の力を使う発電とか、いろんな方法が研究されているって聞く。だけど結局どれも、「どこかで何かしら自然に負担をかけている」っていう事実からは逃げられない気がする。

それに、私が未来に期待している核融合の技術だって、AIを使っていろんな角度から研究が進んでいるみたいだけど、そのAIを動かすために大量の電力が必要だったり、GPUの熱を冷やすために大量の水を使ったりする、っていう問題も今言われているよね。もし技術として完成できるとしても、実用化までにはまだ数十年かかるとも言われている。

だからこの「エネルギーのジレンマ」って、炭素の数字(CO₂削減量)だけでは測れない「生き物の価値」を、議論のテーブルに乗せ続けなきゃいけないんじゃないかと思う。でも、その価値を本気で乗せた瞬間、きっと議論は進まなくなって、みんな沈黙してしまう気もする。

だって、この話をしている私たち自身も、生き物なんだからね。


ここまで読んで、『あなた』は、どのように感じましたか?

コメントで意見を聞かせてくれると、とても嬉しいです。

あなたの貴重な5分間を、本当にありがとうございました。

ニセムシトリゴケに、あなたの5分が届くことを祈ります。

鶏人|Keijin

コメント