第3章|民が育てる太陽 ― LENR(レナー)

第3章|民が育てる太陽 ― LENR(レナー) 二つの太陽
※本記事は、専門家による学術的評価ではなく、公開情報や文献をもとにした筆者個人の調査・見解を含みます。
※本記事は、革新的なエネルギー研究に取り組む企業や研究者の努力を尊重し、未来への可能性を考える目的で制作しています。
※Clean Planet の「量子水素エネルギー(QHe)」は、研究文脈上で「LENR(低エネルギー核反応/凝縮系核反応)」と関連づけて紹介されることがありますが、学術的に確立された技術ではありません。
最新かつ正確な技術情報・研究状況については、国際熱核融合実験炉(ITER公式サイト)および
クリーンプラネット株式会社(Clean Planet公式サイト)など、公式発表をご確認ください。

静かな実験室の片隅で、ひとつの“太陽”が息づいている。
それは燃え盛る炎ではなく、金属の奥でそっと囁くような光。
名を――LENR(レナー)。

この太陽を育てているのは、巨大な国家機関ではない。
愛媛に拠点を置く日本の小さなベンチャー企業、クリーンプラネットだ。
彼らが追いかけているのは、“燃やさない熱”“放射しない炎”。
人と自然が調和する、もうひとつのエネルギーのかたちである。

彼らが生み出そうとしている現象は、「量子水素エネルギー(Quantum Hydrogen Energy)」
水素が金属の微細な構造に入り込み、量子の世界で生まれる微かな揺らぎ――
その振動が、ゆっくりと熱に変わっていく。
火を起こすのではなく、光を響かせるという発想だ。

「なぜ1億度がいらないのか?」
「なぜ中性子が出ないのか?」

その答えは、激しい爆発の先ではなく、静けさの中にあった。
LENRは“制御”ではなく、“共鳴”を選んだのだ。

この章では、そんなLENRの“静かな革命”を覗いてみたい。
テクノロジーではなく、希望の研究として。
未来の地球が、もう一度ゆっくり呼吸するために。

民が育てる太陽 ― クリーンプラネットとは

クリーンプラネット株式会社は、愛媛にルーツを持ち、東京を拠点に活動するエネルギーベンチャーだ。
創業者は、東日本大震災と原発事故を経て「火を使わないエネルギーを生み出す」という志を立てた。
出典:Developing “Quantum Hydrogen Energy”, a future energy for the earth?

彼らの掲げる技術は量子水素エネルギー(QHe:Quantum Hydrogen Energy)
燃やさない、放射しない、静かな熱――
それを現実のものにしようとしている。
出典:CleanPlanet

この研究は東京都の助成を受け、約10億円規模の公的支援を受けて進められている。
国際的な評価も高まりつつあり、すでに複数の大学・企業と共同研究を展開している。
出典:Fusion Startup Wins Tokyo Grant for Low-Temperature Technology

量子水素エネルギーとは ― 火を使わない熱

量子水素エネルギー(QHe)は、金属と水素が生み出す不思議な“共鳴”に注目した技術である。
ナノサイズの金属層(ニッケルや銅など)の中に水素原子を吸蔵させると、
その内部で予想を超える量の熱が発生する――それが彼らの報告する現象だ。

その熱は、化学反応では説明できないほど大きく、
研究者たちはこの現象を「過剰熱」と呼んでいる。
出典:Industrial Heating Device Using Nuclear Transmutation to be Massproduced before 2030

この現象は、従来の核融合とは異なるルートで生まれる「熱の変換」であるとされ、
理論的には「低エネルギー核反応(LENR)」、あるいは「凝縮系核反応」とも呼ばれている。
出典:Industrial Heating Device Using Nuclear Transmutation to be Massproduced before 2030

なぜ1億度がいらないのか

太陽の核融合では、1億度という超高温が必要とされる。
それは、水素原子どうしが強く反発するため、その壁を突破するための“熱”がいるからだ。

しかし、QHeやLENRの世界では、別の道が探られている。
ナノ構造金属の中では、水素原子が極めて近い距離で共鳴し、
電子雲のゆらぎによって反発の壁がやわらぐ――そんな仮説が立てられている。
出典:Quantum hydrogen energy between chemical and fusion

つまり、熱ではなく“量子の静けさ”で融合を助ける。
1億度ではなく、常温に近い温度で起こる反応。
そこに、もうひとつの太陽の秘密がある。

なぜ中性子が出ないのか

ITERのような高温核融合では、中性子が大量に発生する。
それは制御不能な放射線として、炉の材料を劣化させる厄介な副産物でもある。

一方で、QHeやLENRの実験では、「中性子が出ない」と報告されている。
反応で生じたエネルギーは、放射線ではなく、ほぼ“熱”として現れるというのだ。
出典:Industrial Heating Device Using Nuclear Transmutation to be Massproduced before 2030

もしこれが事実なら、それは“放射しない太陽”を意味する。
人が触れても危険のない、静かな炎。
だがもちろん、再現性や理論の裏づけは、今も慎重に検証が続けられている。
出典:LENR Forum September 2025 Newsletter

実験で見えてきた「過剰な熱」

これまでの報告では、QHe実験で入力エネルギーを超える熱が観測されたという。
出典:Industrial Heating Device Using Nuclear Transmutation to be Massproduced before 2030

東北大学との共同研究では、ニッケルと銅の薄膜に水素を吸蔵し、
加熱と冷却を繰り返す中で、予想を超える熱量が計測された。
出典:Quantum hydrogen energy between chemical and fusion

ある装置では、600日以上にわたり安定して過剰熱が持続したという報告もある。
わずか1時間で安定運転に入り、燃料となる水素も極少量。
出典:A Rebrand Breathes Life Into Cold Fusion Research in Japan

それが真に「太陽のような連続的な反応」であるなら、
世界は、静けさの中で最も強い光を手に入れるかもしれない。

QHe/LENRが目指す世界 ― 常温で調和する太陽

ITERが「制御の科学」だとすれば、LENRは「調和の科学」だ。
1億度の炎を封じるのではなく、室温の静けさの中に光を見出す。
それは、自然を支配するのではなく、自然と共鳴する技術である。

この小さな太陽は、巨大な発電所を必要としない。
住宅やコミュニティ単位でエネルギーを自立できる未来。
CO₂を出さず、燃料は水素、そして静寂。

“国家が創る太陽”が炎の象徴なら、
“民が育てる太陽”は、希望の象徴である。

そして両者の光がいつか交わるとき、
人類はようやく、太陽と同じ場所に立てるのかもしれない。

次章では、二つの太陽の「制御と調和」を私なりに考えてみる。


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