第2章|国家が創る太陽 ― ITER(イーター)

第2章|国家が創る太陽 ― ITER(イーター) 二つの太陽
※本記事は、専門家による学術的評価ではなく、公開情報や文献をもとにした筆者個人の調査・見解を含みます。
※本記事は、革新的なエネルギー研究に取り組む企業や研究者の努力を尊重し、未来への可能性を考える目的で制作しています。
※Clean Planet の「量子水素エネルギー(QHe)」は、研究文脈上で「LENR(低エネルギー核反応/凝縮系核反応)」と関連づけて紹介されることがありますが、学術的に確立された技術ではありません。
最新かつ正確な技術情報・研究状況については、国際熱核融合実験炉(ITER公式サイト)および
クリーンプラネット株式会社(Clean Planet公式サイト)など、公式発表をご確認ください。

人類は、いま「太陽を地上に再現しようとしている」
それは神話のようでいて、確かに現実の科学の現場で進められている。

舞台はフランス南部、カダラッシュ。
世界35の国と地域が力を合わせて進める、国際熱核融合実験炉「ITER(イーター)」。

彼らが挑むのは、「制御された炎」を作ることだ。
太陽のように、絶えず燃えながらも暴走しない炎。
地球のどこにも存在しない“1億度”という熱を閉じ込め、
その中で水素の同位体を融合させてエネルギーを取り出す──。

この壮大な実験は、
「人類が神の火を手に入れる物語」と言ってもいいかもしれない。

だが、その“火”を扱うには、想像を超える壁が立ちはだかっている。
磁場で炎を包み込み、暴走を抑え、
中性子の嵐を防ぎながら、安定したエネルギーを生み出す。

それは「自然を制御する科学」の到達点であり、
同時に、人類がどこまで自然を支配できるかを問う挑戦でもある。

国家が創る太陽 ― ITER(イーター)とは何か

人類は、いま「太陽を地上に再現しようとしている」。
それが、フランス南部カダラッシュに建設中の国際熱核融合実験炉──ITER(イーター)だ。

欧州連合、日本、アメリカ、ロシア、中国、インド、韓国など、35の国と地域が参加する国際共同プロジェクト。目的はただひとつ。「人類が使える新しい太陽を創ること」である。

1億度の炎を閉じ込める ― トカマクのしくみ

ITERが挑戦しているのは、太陽の中心で起きている核融合反応を地上で人工的に起こすことだ。太陽の内部では、水素の原子核が融合してヘリウムを生み、その際に莫大なエネルギーを放出している。

この反応を再現するには、1億度を超える超高温のプラズマを作り出す必要がある。なぜなら、原子核どうしが融合するには、通常なら互いに反発しあう「陽子の壁」を突破しなければならないからだ。
1億度──それは、物質がすべて気体を超えて電離し、電子と原子核がばらばらに飛び交う「プラズマ状態」でしか到達できない温度である。

ITERでは、このプラズマをトカマク型磁場装置でドーナツ状に閉じ込める。強力な磁場の“檻”の中で、プラズマが金属壁に触れないように高速で回転し続ける──まるで、「光の輪」を浮かべているかのような構造だ。

なぜ1億度が必要なのか

太陽の中心はおよそ1500万度だが、地球上ではそれよりずっと高温が必要になる。なぜなら、太陽の内部には膨大な重力があり、原子核が密集しているため、低温でも融合しやすい。地上ではその「圧力」がないため、温度という力で代わりを作るしかないのだ。

つまり、1億度は「太陽の重力を熱で再現する温度」なのである。

中性子という見えない脅威

ITERの反応で使われるのは、水素の同位体──重水素(D)と三重水素(T)。この組み合わせが融合すると、膨大なエネルギーとともに高速の中性子が放出される。

中性子は電荷を持たないため、磁場では制御できない。反応炉の壁にぶつかり、構造材を劣化させたり、放射化(放射能を帯びる現象)を引き起こす。そのため、「中性子をどう扱うか」が核融合炉の最大の課題のひとつとなっている。

制御の科学 ― 国家が描く太陽

ITERは、自然の力を完全に制御しようとする“科学の極致”だ。
1億度の炎を閉じ込め、放射線を抑え、暴走を防ぎながらエネルギーを取り出す。
その姿はまさに、「自然を制御する人類の挑戦」である。

しかし同時に、それは膨大なコストと時間を必要とする「国家の夢」でもある。ITERが放つ光は、技術の勝利であると同時に、「制御」という人間の信念の象徴でもあるのだ。

そしてこの“制御の太陽”の対極にあるのが、民が静かに育てているもうひとつの太陽──QHe/LENR。
次章では、その「調和の太陽」に目を向けてみたい。


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