11年後のレッドリスト|サルビンネッタイキノボリサンショウウオ:静かな夜の森で、滅びの音が少し遠ざかった【IUCNレッドリスト比較】

11年後のレッドリスト|サルビンネッタイキノボリサンショウウオ:静かな夜の森で、滅びの音が少し遠ざかった【IUCNレッドリスト比較】 11年後のレッドリスト
※このページは、[IUCNレッドリスト]世界の絶滅危惧生物図鑑(2014年版)に基づいて制作した個人ブログです。
※画像はすべてAI生成(
DALL·E)によるイメージであり、実際の生物写真ではありません。
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こんにちは、fukumomo3_photo です。

サルビンネッタイキノボリサンショウウオ(Bolitoglossa salvinii)は、

2014年、図鑑に【EN:危機】として分類されていました。

2020年、IUCNレッドリストで、【VU:危急】と評価されました。

つまり、2014年から2020年にかけて、サルビンネッタイキノボリサンショウウオは

「静かな夜の森で、滅びの音が少し遠ざかった」状態になりました。

※2025年時点で、IUCNレッドリストにおけるサルビンネッタイキノボリサンショウウオの最新評価は2020年版です。それ以降の更新は行われていません。

この記事は、とても短く5分で読めるので、どうぞ最後まで読んでいただけると嬉しいです。

※本記事は専門家による学術的な評価ではなく、公開された資料に基づく個人の調査・見解を含んでいます。
最新かつ正確な分類や保全状況については、IUCN公式サイトなどをご確認ください。
参考:https://www.iucnredlist.org/species/59203/54376209

再評価が示した“危急”の意味|気候変動と生息地の危機

⬇︎サルビンネッタイキノボリサンショウウオの生態です。必要に応じてご覧ください。⬇︎

基本情報|サルビンネッタイキノボリサンショウウオ(Salvin's Mushroomtongue Salamander)
項目情報
和名サルビンネッタイキノボリサンショウウオ
英名Salvin’s Mushroomtongue Salamander
学名Bolitoglossa salvinii
分類両生類・有尾目(サンショウウオ目)・ヒダサンショウウオ科(Plethodontidae)
分布中央アメリカ(グアテマラ、エルサルバドル、ホンジュラス、メキシコ南部)
主な生息地湿潤な山地森林、標高1,000〜2,000mの雲霧林
体長約10〜13cm
体重約5〜10g(推定)
寿命約10〜15年(飼育下での推定)
IUCN評価(2020年)【VU:危急(Vulnerable)】

特徴

  • 名前の由来:「Salvinii」は発見者の一人、オスバート・サルビン(Osbert Salvin)にちなんで名付けられた。
  • 外見:暗褐色〜オリーブ色の体に黒や金色の斑点を持ち、湿った木の皮や苔の上で目立たない。
  • 手足の構造:吸盤状の指先をもち、樹木や葉の裏などにしっかりと張り付くことができる。
  • 呼吸:肺を持たず、皮膚と口腔内の粘膜から酸素を取り込む「皮膚呼吸」を行う。
  • 夜行性:昼は倒木や落ち葉の下に隠れ、夜になると活動する。

生態と行動

  • 生息環境:常に高湿度の山地森林に依存し、乾燥に非常に弱い。環境が乾くと短期間で活動不能になる。
  • 食性:主に小型昆虫やクモ、節足動物などを捕食する肉食性。
  • 繁殖:卵は地上の湿った苔や枯葉の下に産みつけられ、幼生期を経ずに小型の成体として孵化する「直接発生型」。
  • 行動圏:縄張り性は弱く、一定の湿度環境を求めて移動する傾向がある。
  • 脅威:森林伐採、農地開発、気候変動による乾燥化が主な要因。
  • 保全活動:グアテマラやホンジュラスの山岳地帯で一部保護区が設定されているが、個体数は減少傾向。

2014年絶滅危惧種:サルビンネッタイキノボリサンショウウオ【VU:危急】

湿度の変化をともなう気候変動も、湿った皮ふを通した呼吸能力に影響を与えてしまうため、脅威となりうる。

出典:訳者 岩槻邦男,太田英利 / 発行者 池田和博 / タイトル「IUCNレッドリスト世界の絶滅危惧生物図鑑」/発行所 丸善出版株式会社 / 発行 2014/01/31 ©️Kunio Iwatsuki, Hidetoshi Ota, 2014

評価項目以前の評価(EN:危機)現在の評価(VU:危急)
評価年2014年(図鑑版)2020年(IUCN Red List)
評価の根拠限られたデータに基づき、生息範囲が狭いと推定新たな調査により、より広い生息範囲と環境適応能力が判明
変更理由情報が不十分な状態での推定評価より正確な情報に基づく再評価(データ更新)
分布の理解生息地は限定的と考えられていたより広範な分布が確認され、EN基準を下回る
環境への適応原生林にのみ依存すると考えられていた二次林やコーヒー農園など人為的環境にも適応可能
個体数傾向減少依然として減少傾向(Decreasing)
主な脅威生息地の破壊、気候変動農地拡大、伐採、気候変動など脅威は継続中
評価の意味高い絶滅リスク(EN基準)絶滅リスクは依然高いが、わずかに軽減(VU基準)

カテゴリー改善は、喜ばしいニュースというよりは、「以前の我々の知識が不十分だった。より正確に評価し直した結果、VUが妥当だとわかった」という学術的な更新に近いものである。

依然として気候変動や生息地の破壊という脅威に晒されており、保護が必要な状況に変わりはない。

⬇︎サルビンネッタイキノボリサンショウウオの主な保護活動の種類です。必要に応じてご覧ください。⬇︎

保護活動の種類内容の概要
森林保全中米(メキシコ南部〜グアテマラ)に広がる熱帯雲霧林を保護し、農地転換・伐採・焼畑を防止
保護区の設定グアテマラやメキシコの国立公園・生物保護区(例:Sierra de las Minas)において主要生息地を含む区域を指定
土地利用の規制牧草地拡大やコーヒー農園開発を抑制し、森林連続性を維持
研究とモニタリング標高別・気候帯別に個体群調査を実施し、分布域・繁殖生態・遺伝的多様性を把握
気候変動対策高地環境の温暖化に対応するため、森林回廊の保全と再植林を推進
教育と地域協働地元学校・農家を対象に、森林保全の重要性と両生類の役割を伝える教育活動を展開
国際連携IUCN SSC Amphibian Specialist Group や CONAP(グアテマラ国家保全委員会)と連携し、保護計画を策定

主な取り組み

  • 森林保全:伐採や焼畑を制限し、熱帯雲霧林を保護
  • 保護区指定:Sierra de las Minas などの生物保護区に生息域を含める
  • 土地利用規制:農地・牧草地開発の拡大を防ぐ政策を推進
  • 個体群調査:標高帯ごとの生息密度や繁殖行動を継続的に調査
  • 再植林と回廊整備:森林をつなぐ生態学的ネットワークを構築
  • 地域教育:住民に両生類の生態的役割と保全価値を伝える活動
  • 国際協力:IUCNおよび中米各国の研究者と共同で保全プログラムを展開

最後に

これを読んでみて、どのように感じましたか?

「でも、年々気候変動は肌で感じられるぐらいになってるじゃないですか?」

そうなんです。

この気候変動にこの種が耐えることができるか?といった問題があります。

気になったので、調べてみますね。


サルビンネッタイキノボリサンショウウオが気候変動に耐える能力は、残念ながら非常に低いと考えられている。

要因内容影響・結果
① 呼吸方法:皮膚呼吸のみ肺を持たず、粘液で湿った皮膚から酸素を取り込む。乾燥すると皮膚が機能しなくなり、窒息の危険。高温・乾燥の長期化で活動時間も制限される。
② 変温動物であること自ら体温を調整できず、外気温に依存する。気温上昇で「避難場所(マイクロハビタット)」も高温化。干ばつで土中まで乾燥し、逃げ場を失う。
③ 移動能力が低いこと生息地の分断により、涼しい地域への移動が難しい。農地や都市開発による断片化で、孤立した環境に取り残される。気候悪化から逃れられない。

環境変化への耐性

観点内容注意点
観察事例コーヒー農園など人の手が入った環境でも生息確認。これは「日陰」があるためであり、直射日光や乾燥から守られている。
本質的な耐性湿度が高く、隠れ場所がある環境では生存可能。森林伐採で日陰が失われると、農園でも生き残れない。気候変動による乾燥化が追い打ちをかける。

気候変動の進行は、この種にとって極めて深刻な脅威である。

それは、彼らの生物学的な特徴そのものが、気候変動に対して脆弱である根本的な理由となっているからである。

さらに、気候変動の影響から、以下のような影響が報告されている。

要因内容結果・影響
気候変動による病害拡大気温上昇により「コーヒーさび病(カビ)」が高地にも拡大。2012年以降、中米全域で壊滅的被害。多くの農家が廃業。
品質と収量の低下アラビカ種は涼しい気候を好むが、高温で成熟不良。豆の品質低下・収穫量減少。生計維持が困難に。
干ばつによる被害雨が降らない時期が長期化。木が水不足で枯死。農地の生産性が低下。
豪雨・ハリケーンの増加短期間に大量の雨や強風が発生。土壌流出・倒木・農地崩壊などの被害頻発。
森林への波及農家が涼しい高地へ移動。新たな森林伐採が発生し、森林破壊の悪循環を招く。

森林生態系への影響

要因内容結果・影響
乾燥化と山火事リスクの増大気温上昇と降雨パターンの変化で森林が乾燥化。火災発生率が上昇し、山火事の被害が拡大。
生態系構成の変化一部の樹木や植物が温度変化に適応できず衰退。昆虫・動物の生息環境が変化し、食物連鎖が崩壊。
雲霧林の危機霧の発生高度が上昇し、森林が乾燥。湿潤な環境が失われ、雲霧林そのものが消滅の危機。
両生類への影響湿度低下により皮膚呼吸が困難に。サルビンネッタイキノボリサンショウウオなどが生息できなくなる。

この種の生息地である森林と、彼らが避難場所として利用していたコーヒー農園の両方が、気候変動によって同時に脅かされている。

これは、彼らの逃げ場が急速に失われていることを意味しており、極めて憂慮すべき状況である。

例えるなら、水筒を持たないで灼熱の炎天下を人が裸で歩いているような状態である。

しかも、その歩いている道はひび割れ、分断されていて、遠くに見える唯一日陰のあるオアシスは燃えている状況なのだ。


ここまで読んで、『あなた』は、どのように感じましたか?

コメントで意見を聞かせてくれると、とても嬉しいです。

あなたの貴重な5分間を、本当にありがとうございました。

サルビンネッタイキノボリサンショウウオに、あなたの5分が届くことを祈ります。

fukumomo3_photo


インスタでは、サルビンネッタイキノボリサンショウウオたちの姿を“図鑑みたいに”並べて見られます。
ビジュアルで伝える命の物語、よかったらのぞいてみてください。

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