※このページは、[IUCNレッドリスト]世界の絶滅危惧生物図鑑(2014年版)に基づいて制作した個人ブログです。
Hi, it’s 鶏人|Keijin.
In the 2014 guidebook, the Sahara Killifish (Apricaphanius saourensis) was assessed as “CR: Critically Endangered.” Back then, its habitat was restricted to just a single location. It was facing a perfect storm of threats: the invasive mosquitofish, excessive groundwater pumping, drying wetlands, and severe water pollution.
Fast forward to 2026, and a check of the IUCN Red List shows the exact same status. It’s still stuck at “CR: Critically Endangered,” just like it was in 2014.
But there’s been a recent development. In 2024, a wild population was rediscovered in an isolated wadi within the Guir River basin. By 2026, genetic analysis strongly backed up that these were indeed the same species. On top of that, reports say the discovery site is getting legal protection and captive breeding programs are underway.
Even with this good news, I still see the Sahara Killifish as a creature barely hanging on—a “fish desperately clinging to life in the desert’s hidden water veins.”
I’ve packed the more detailed stuff into the collapsible sections below. But for now, I’d be really glad if you could just read through the main text to the end.
こんにちは、鶏人|Keijinです。
サハラアファニウス(Apricaphanius saourensis)は、2014年の図鑑では、生息地がわずか1か所に限られ、外来魚のカダヤシ、地下水の過剰な取水、湿地の乾燥化、水質汚染が重なっていたことなどから「CR:深刻な危機」と評価されていました。
そして、2026年時点で確認できるIUCNレッドリストの評価も、2014年と変わらず、「CR:深刻な危機」のままでした。
近年は、2024年にギール川流域の孤立したワジで野生個体群が再発見され、2026年の遺伝解析によって同種であることが強く支持されました。さらに、発見地の法的保護や飼育下繁殖計画も進められていると報告されています。
サハラアファニウスは今も、「砂漠の水脈に、命をつなぐ魚」状態なのだと思います。
少し詳しい内容は折りたたみの中にまとめています。
まずは本文だけでも、最後まで読んでもらえたらうれしいです。
※2026年時点で、IUCNレッドリストにおける最新評価は2021年評価(2022年公開)です(以降の更新は、現時点では確認できていません)。
※本記事は専門家による学術的な評価ではなく、公開された資料に基づく個人の調査・見解を含みます。
※IUCN評価は「世界全体」と「地域・個体群」で分かれる場合があります。地域によって状況は異なります。
最新かつ正確な分類や保全状況については、IUCN公式サイトなどをご確認ください。
参考:IUCN Red List(学名:Apricaphanius saourensis)
サハラアファニウスは絶滅したのか|2024年の再発見と2026年の現状
⬇︎サハラアファニウスの生態(基本情報)です。必要なら開いてください。

Sahara Killifish は、アルジェリア西部の砂漠河川に固有の小型淡水魚です。旧学名は Aphanius saourensis ですが、2020年の分類再編により Apricaphanius saourensis へ移されました。2021年のIUCN評価では CR:深刻な危機で、野生絶滅の可能性が示されていましたが、2024年に新たな個体群が発見され、2026年の遺伝解析によって本種である可能性が強く支持されました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 和名 | サハラアファニウス |
| 英名 | Sahara Killifish |
| 別英名 | Sahara Aphanius、Sahara Toothcarp |
| 学名 | Apricaphanius saourensis |
| 学名表記 | Apricaphanius saourensis (Blanco, Hrbek & Doadrio, 2006) |
| 原記載名 | Aphanius saourensis Blanco, Hrbek & Doadrio, 2006 |
| 記載年 | 2006年 |
| 属の変更 | 2020年に Aphanius 属から Apricaphanius 属へ移された |
| 学名の扱い | 現在は Apricaphanius saourensis が受容名。古い資料では Aphanius saourensis と記載される |
| 分類 | 動物界・脊索動物門・条鰭綱・カダヤシ目・Aphaniidae科・Apricaphanius属 |
| 目 | Cyprinodontiformes、カダヤシ目 |
| 科 | Aphaniidae |
| 属 | Apricaphanius |
| 属の種数 | 現在、A. saourensis、A. iberus、A. baeticus の3種が含まれる |
| 近縁種 | スパニッシュトゥースカープ A. iberus、バエティカンキリフィッシュ A. baeticus |
| 属名の由来 | ラテン語で「日なたの、輝く」を意味する apricus と、旧属名 Aphanius を組み合わせた名称 |
| 属名と体色 | 雄の体側にある多数の白色・銀色斑が光って見えることに由来する |
| 種小名の由来 | saourensis は、原産地であるサウラ川・サウラ渓谷に由来する |
| IUCNレッドリスト | CR:深刻な危機 |
| IUCN評価年 | 2021年 |
| IUCN評価基準 | B1ab(i,ii,v)+2ab(i,ii,v) |
| 野生絶滅可能性タグ | 2021年評価では「野生絶滅の可能性あり」と扱われていた |
| 2026年時点の注意 | 2026年に野生個体群の再発見を支持する遺伝的証拠が公表されたため、野生絶滅可能性の扱いは今後再検討される可能性が高い |
| CITES | 掲載されていない |
| CMS | 掲載されていない |
| 分布国 | アルジェリア |
| 固有性 | アルジェリア固有種 |
| 歴史的分布 | アルジェリア西部のサウラ川流域、ズースファナ川・ギール川を含む水系 |
| タイプ産地 | アルジェリア西部、サウラ渓谷のマゼル付近 |
| タイプ産地の位置 | 北緯約30度19分、西経約2度16分 |
| 過去の記録地 | マゼル、イグリ、ケルザズなど、サウラ川・ズースファナ川沿いの湧水や河川環境 |
| 旧タイプ個体群 | 原記載に使われた個体の採集後、繰り返し調査されても確認されず、消失した可能性が高い |
| 2024年の発見 | 2024年6月25日、ギール川へ流れ込む孤立した支流ワジで多数の小型魚が発見された |
| 再発見地点 | アルジェリア・ベシャール県アバドラ地区、ギール川流域の二次的なワジ |
| タイプ産地からの距離 | タイプ産地の約115km北西 |
| 再発見地点の座標 | 北緯約31度12分、西経約2度53分 |
| 再発見地点の特徴 | 都市や農地から離れた、非常に孤立した砂漠の水路 |
| ワジの長さ | 21kmを超える |
| ワジの幅 | 約4~20m |
| 水深 | 調査時には約1~2mの場所があった |
| 水源 | 地下湧水と複数の小さなワジによって水が供給される |
| 乾季の状態 | 区間によって干上がり、上流部では小さな水たまりだけが残ることがある |
| 主な生息区間 | 水と水草が比較的豊富な中流部約6km |
| 2026年の遺伝解析 | ミトコンドリアDNAと核DNAの両方が解析され、再発見個体群を本種とみなす証拠が得られた |
| 遺伝解析の標本数 | 再発見地点で見つかった死亡個体20個体を解析 |
| ミトコンドリア遺伝子 | シトクロムb遺伝子を解析 |
| 核遺伝子 | RAG1遺伝子を解析 |
| 遺伝的な一致 | RAG1の一つの対立遺伝子は、タイプ産地個体の配列と一致した |
| ミトコンドリアDNAの差 | 再発見個体群とタイプ産地個体のハプロタイプは、わずか1~2塩基置換の差だった |
| 遺伝解析の結論 | 現時点で最も妥当な解釈は、ギール川個体群を Apricaphanius saourensis とみなすこと |
| 遺伝解析の限界 | ミトコンドリア1遺伝子と核1遺伝子に基づくため、将来は全ゲノム規模の解析が望まれる |
| 遺伝的多様性 | 再発見個体群のミトコンドリア遺伝的多様性は非常に低かった |
| 野生個体群数 | 現在確実に確認されている可能性が高いのは、ギール川流域の1個体群 |
| 個体数 | 正確な個体数調査は行われていない |
| 観察上の個体数 | 2024年の調査では「大きな個体群」と表現され、多数の個体が観察された |
| 個体数表現の注意 | 「多数いた」ことは、個体数が安定していることや絶滅リスクが低いことを意味しない |
| 生息環境 | 砂漠地域の淡水河川、湧水、ワジ、水路、浅い流れ |
| 水域区分 | 淡水魚 |
| 生活層 | 底層から中層付近を利用する底中層性 |
| 気候帯 | 亜熱帯・砂漠気候 |
| 流れ | 流れの緩い場所から緩やかに流れる区間を利用する |
| 水草との関係 | 水草や底生植物が多い場所で個体数が多かった |
| 水草の役割 | 採食場所、捕食者からの隠れ場所、産卵基質として重要 |
| 乾燥への適応 | 水温、水量、塩分などが季節的に大きく変化する砂漠水域に適応している |
| 体長・雄 | 最大標準体長約3.2cm |
| 体長・雌 | 最大標準体長約3.4cm |
| 全長 | 尾びれを含めると、おおむね3~4.5cm程度になる |
| 体型 | 小型で、やや細長い紡錘形 |
| 尾柄 | 細く長い尾柄を持つ |
| 頭部 | 比較的大きな眼と短い吻を持つ |
| 口 | 小さく、体の前方に開く |
| 背びれ | 体の後方寄りに位置する |
| 背びれ軟条 | 合計8~11本 |
| 背びれ分枝軟条 | 通常7~8本、まれに9本 |
| 臀びれ軟条 | 10~11本 |
| 雄の体色 | 繁殖状態では青色・銀色・白色の細かな斑点が体側全体に広がる |
| 雄の模様 | 近縁種のような明瞭な縦帯がなく、斑点状・まだら状になる |
| 雄のひれ | 背びれ・臀びれ・尾びれに暗色の帯や斑紋が現れる |
| 雌の体色 | 淡褐色から黄褐色 |
| 雌の模様 | 体側に不規則な濃褐色のまだら模様を持つ |
| 雌の尾柄斑 | 尾柄と尾びれ中央軟条の境界付近に暗色斑がある |
| 性的二形 | 雄と雌で体色と模様が大きく異なる |
| 再発見個体群の雄 | タイプ産地の雄より、青色・銀色の斑紋が弱い個体が確認された |
| 再発見個体群の雌 | 体の後半に大きな黒点が列状に並ぶ個体も確認された |
| 体色差の解釈 | 地域個体群による変異と考えられるが、今後さらに形態学的な比較が必要 |
| 食性 | 小型の水生動物を中心に食べる雑食性・微小捕食性と考えられる |
| 主な動物質の餌 | 小型甲殻類、水生昆虫の幼虫、ミミズ類、動物プランクトンなど |
| 植物質の餌 | 藻類、付着生物、有機物なども利用すると考えられる |
| 食性情報の注意 | 本種固有の野外での胃内容物調査はほとんどなく、近縁種と飼育観察から推定される部分が多い |
| 採食場所 | 水草の表面、浅い水底、中層付近 |
| 活動 | 日中に遊泳・採食する様子が観察できる |
| 社会性 | 小さな群れを作り、同じ水草帯や浅瀬に集まる |
| 繁殖方法 | 卵生 |
| 繁殖型 | 非年魚型のキリフィッシュと考えられる |
| 非年魚型の意味 | 乾燥に耐える休眠卵だけで世代をつなぐ一年生キリフィッシュとは異なり、水域が残る環境で成魚も生活を続ける |
| 産卵場所 | 水草、糸状藻類、細かな植物質などに卵を産み付けると考えられる |
| 産卵行動 | 雄が雌を追い、水草の中で少数ずつ卵を産ませるタイプと考えられる |
| 産卵期 | 野生下の詳しい時期は不明 |
| 卵数 | 野生下の1回の産卵数・年間産卵数は不明 |
| 孵化 | 水温などの条件に応じて発生し、稚魚は水草帯で成長すると考えられる |
| 成長速度 | 小型で比較的早く成長すると考えられるが、本種固有の野外データはない |
| 寿命 | 信頼できる野生下の寿命データはない |
| 人への危険性 | 無害 |
| 商業漁業 | 対象にならない |
| 観賞魚としての飼育 | ヨーロッパの水族館・愛好家によって飼育繁殖されてきた |
| 飼育個体群の由来 | 旧タイプ産地周辺で採集された個体の子孫 |
| 飼育個体群の重要性 | 野生個体群が見つからなかった期間、本種の完全な絶滅を防ぐ保険個体群となった |
| 飼育上の性質 | 水温や水質が季節的に変化する環境を好み、一般的な熱帯魚とは異なる管理が必要 |
| 主要な脅威 | 外来魚、水の取水、河川・湿地の乾燥、水質汚染、極端な干ばつ |
| 外来魚・カダヤシ | Gambusia holbrooki が餌や生息場所を奪い、卵・稚魚を捕食する可能性がある |
| 外来魚・ナイルティラピア | Oreochromis niloticus が競合や捕食を通じて影響する |
| その他の外来魚 | パンプキンシード、コイなどが周辺水域で確認されている |
| ダムの影響 | ダム湖が外来魚の供給源となり、洪水時に周辺のワジへ広がる可能性がある |
| 地下水利用 | 農業・生活用の地下水取水によって湧水量や河川流量が減少する |
| 農業用水 | 水路の縮小・乾燥を引き起こし、生息地を直接消失させる |
| 水質汚染 | 農業排水、生活排水、廃棄物などが小さな生息水域へ集中する |
| 干ばつ | 水域が縮小・消失し、個体群が短期間で壊滅する危険がある |
| 気候変動 | 高温化と極端な干ばつの増加により、生息水域の安定性が低下する可能性がある |
| 個体群の孤立 | 他の生息地とつながっていないため、局地的な事故が種全体の絶滅につながり得る |
| 遺伝的脅威 | 小個体群化と孤立により、遺伝的多様性の低下・近親交配が懸念される |
| 最優先の保全策 | 再発見されたワジと湧水環境を法的・物理的に保護すること |
| 外来魚対策 | カダヤシなどの除去と、新たな外来魚の侵入防止 |
| 水利用対策 | 地下水・河川水の取水量を管理し、年間を通して水域を維持する |
| 水質対策 | 農業排水・生活排水・廃棄物の流入を防ぐ |
| 生息域外保全 | 野生個体群を補完する飼育繁殖集団を確保する |
| 飼育繁殖計画 | 2025~2026年の研究では、アルジェリア政府が新個体群の飼育繁殖計画を開始したと報告されている |
| 法的保護 | 再発見地点のワジを国家遺産地域として保護する決定が研究者から報告されている |
| 再導入 | 旧生息地の水質・水量・外来魚問題を改善できれば、将来的な再導入が検討できる |
| 調査の必要性 | ギール川・サウラ川流域の未調査ワジで、ほかの個体群を探す必要がある |
| 保全上の注意 | 1地点で再発見されたことは、絶滅危機を脱したことを意味しない |
2026年の研究では、再発見個体群のミトコンドリアDNAと核DNAが、旧タイプ産地の個体と同一または非常に近いことが確認されました。研究者は、現時点で最も支持される解釈として「野生の Apricaphanius saourensis の再発見」と結論づけています。ただし、確認された野生個体群は今のところ1地点だけで、低い遺伝的多様性も示唆されています。
IUCNの公式評価は2021年のままで、CRおよび野生絶滅の可能性がある状態を前提としています。FishBaseも現時点では2021年評価のCRを掲載しています。
基本情報:出典
- The Science of Nature:遺伝解析によるサハラアファニウスの野生再発見
https://link.springer.com/article/10.1007/s00114-026-02074-7 - Discover Animals:サハラアファニウス再発見候補個体群の報告
https://link.springer.com/article/10.1007/s44338-025-00093-8 - IUCN Red List:Apricaphanius saourensis
https://www.iucnredlist.org/species/182964/137217343 - FishBase:Apricaphanius saourensis
https://www.fishbase.se/summary/62763 - Zootaxa:A new species of the genus Aphanius from Algeria
https://mapress.com/zt/article/view/zootaxa.1158.1.2
最終評価2021年:サハラアファニウス「CR:深刻な危機」
今ではサハラ砂漠にあるマッツァー近くのたった1か所の残存個体群だけが知られ、同じような泉系内の他のたくさんの生息地からはすべて絶滅してしまった。北米の魚であるトウブアメリカメダカが蚊の駆除の手段として導入されたが、今ではサハラアファニウスの100倍以上の数になっており、この種にとって深刻な脅威となっている。そのうえ、農業用に地下水を過剰にくみ出したために、湿地は乾燥化し、水関連の公害がサハラアファニウスへの脅威となっている。他の地域でサハラアファニウスを記録しようというさまざまな努力が重ねられたが、どこでも発見されなかった。
出典:訳者 岩槻邦男、太田英利 / 発行者 池田和博 / タイトル『IUCNレッドリスト世界の絶滅危惧生物図鑑』/ 発行所 丸善出版株式会社 / 発行 2014/01/31 / © Kunio Iwatsuki, Hidetoshi Ota, 2014

以下は、IUCNの最新掲載評価と、2024年の発見を報告した2025年論文、種の同定を遺伝的に確認した2026年論文を突き合わせた比較です。IUCNの評価自体は2021年に実施されたものであり、2024年以降の再発見はまだ反映されていません。
| 項目 | 2014年の図鑑 | 現在(2026年確認) |
|---|---|---|
| 学名 | Aphanius saourensis | Apricaphanius saourensis。2020年の分類再検討により、Aphanius属から新設されたApricaphanius属へ移された。同じ種であり、別種になったわけではない |
| 科の扱い | キプリノドン科として掲載 | 現在の主要な分類ではAphaniidaeに含められる。目はカダヤシ目(Cyprinodontiformes)のまま |
| 英名 | Sahara Aphanius | IUCNではSahara Killifishが主に使われる。Sahara Aphanius、Sahara Toothcarpも使用されている |
| IUCNカテゴリー | CR:絶滅危惧IA類 | CR:深刻な危機のまま。評価基準はB1ab(i,ii,v)+2ab(i,ii,v) |
| IUCN評価の時期 | 当時の評価に基づきCRと掲載 | 現在のIUCNページに表示されている評価日は2021年5月17日で、2022年に公表されたもの。ページが2026年版でも、評価内容は再発見前の情報である |
| IUCN上の「野生絶滅の可能性」 | 野生では1個体群だけが残っているとされた | IUCNでは「野生絶滅の可能性あり」と表示されているが、これは2024年の発見以前の評価。2026年の遺伝解析によって、野生個体群が現存することが強く確認された |
| 野生での確認状況 | マッツァー付近に残る1個体群だけが知られていた | 2003~2004年頃を最後に約20年間確認されず、野生絶滅が疑われていた。しかし2024年6月25日、ギール川流域の孤立したワジで個体群が発見され、2026年にサハラアファニウスと遺伝的に確認された |
| 現在知られる野生個体群 | マッツァー付近の1個体群 | 確実に確認されているのは、ギール川に流入する孤立した二次的なワジの1個体群。現在も、世界で最後に残った野生個体群である可能性が高い |
| 生息地の位置 | サウラ川流域のマッツァー付近 | 旧生息地マッツァーから北西へ約115km離れた、アバドラ地区のギール川流域。ギール川は下流でサウラ川水系につながる |
| 過去の生息地 | 同じ泉・河川系の多くの場所から消滅していた | マッツァー、イグリ、ケルザズなど、かつて本種と考えられる魚がいた場所では、現在も野生個体群は確認されていない。2012~2024年の広範な調査でも、新発見地点以外では見つからなかった |
| 生息範囲 | ごく狭い泉系・湿地に限定 | 新発見されたワジは全長21km以上、幅約4~20m、深さ約1~2m。実際に多数が確認された中心的な生息区間は約6kmで、上流の小さな水たまりでも確認された |
| 個体数 | 正確な個体数は不明。カダヤシより極端に少なかった | 正式な個体数推定はまだ行われていない。2024年の現地観察では、少なくとも数百匹が生息していると判断された。ただし成熟個体数は不明 |
| 個体数の傾向 | 減少し、ほかの生息地では消滅 | IUCN画面ではDecreasingと表示されるが、これは2021年評価によるもの。再発見個体群について長期的な増減を判断できる継続調査データはまだない |
| トウブアメリカメダカの脅威 | Gambusia holbrookiが本種の100倍以上に増え、深刻な脅威となっていた | 新しい生息地にもGambusia holbrookiは侵入している。ただし流水のある中心部ではサハラアファニウスの方が多く、上流や岸辺の小池ではサハラアファニウスだけが観察された |
| カダヤシとの関係 | 数の差が100対1以上で、競争や捕食によって圧迫されていた | 現在の個体数関係は旧生息地より良い。しかしカダヤシは長期的に在来アファニウス類を消滅させる可能性があるため、研究者は除去・根絶の検討を勧めている |
| 塩分による避難場所 | 特に詳しい記載なし | 高塩分・高水温・低酸素になりやすい上流の小池ではカダヤシが確認されず、サハラアファニウスだけが生息していた。幅広い塩分に耐える能力が、残存を助けている可能性がある |
| その他の外来魚 | 主にトウブアメリカメダカが問題とされた | 周辺のギール川・サウラ川水系では、ナイルティラピア、ブルーギルの一種であるパンプキンシード、コイなど多数の外来魚が優占している。近隣のジョルフ・トルバ・ダムが外来魚の供給源になる危険も指摘されている |
| 地下水の過剰取水 | 農業用の地下水くみ上げによって湿地が乾燥化 | 地域全体では引き続き重大な脅威。新発見地点は人里から遠く、農業用取水や都市汚染の影響が比較的小さいことが、個体群の生存につながったと考えられている |
| 水質汚染 | 水関連の公害・汚染が主要な脅威 | サウラ川流域では依然として脅威。ただし新生息地では、現在まで深刻な都市・農業汚染は報告されていない。将来の開発や取水を防ぐ必要がある |
| 干ばつと乾燥化 | 湿地の乾燥化が進行していた | 極端な干ばつの頻度増加が新たに強く警戒されている。新生息地でも下流側約4kmがほぼ干上がり、上流では水が小池に分断されていた |
| 生息環境 | 泉や湿地などの水域 | 水中植生の豊富な場所に個体が多かった。植生は餌場、隠れ場所、産卵場所として重要であり、水量だけでなく水底植生の維持も必要 |
| 再発見の確実性 | 該当なし | 2025年の発表段階では、写真による形態判断だけだったため別種の可能性も残されていた。2026年にミトコンドリアDNAと核DNAを解析し、マッツァーの旧個体群と同一種であることが強く支持された |
| 遺伝的な状態 | 遺伝的多様性についての記載なし | 調べた20個体ではミトコンドリアDNAの多様性が非常に低かった。長期間の個体数減少、局所絶滅、干ばつによる繰り返しのボトルネックが影響した可能性がある |
| 飼育下個体群 | 水槽での飼育や、捕獲個体から系統を残す試みが行われていた | 記載時に採集された個体の子孫が、ヨーロッパの施設や飼育者によって維持されている。さらに、新しく発見されたギール川個体群を基礎とする飼育下繁殖計画もアルジェリアで開始された |
| 生息地の法的保護 | 図鑑では具体的な保護指定の記載なし | 研究論文によると、アルジェリア政府は新生息地のワジと個体群に法的保護を与え、地域を国の遺産として保全する方針を決定した |
| 現在必要な保全 | 生息地の保全、再導入前の環境整備、飼育下繁殖 | ワジの法的・実質的保護、取水・汚染・開発の防止、外来魚の追加侵入防止、カダヤシ除去の検討、個体数調査、全ゲノム規模の遺伝調査、飼育下保険個体群の維持、未調査水域での探索が必要 |
| 2014年との総合比較 | 最後の1個体群が外来魚と環境悪化によって消滅しかねない状態 | 約20年間姿を消し、野生絶滅寸前と考えられていた種が再発見された。これは大きな前進だが、野生個体群は依然として1か所だけで、低い遺伝的多様性、外来魚、干ばつという重大な危険を抱えている |
最も重要な変化は、「個体数が回復してIUCNカテゴリーが改善した」のではなく、「野生絶滅した可能性が高いと考えられていた種が、別の場所で生き残っていたことが確認された」という点です。IUCNのCR表示は現在も妥当ですが、「野生絶滅の可能性あり」という表示については、2026年の遺伝的確認を受けて、今後の再評価で修正される可能性が高いと考えられます。
現状まとめ:出典
- IUCNレッドリスト|Apricaphanius saourensis
https://www.iucnredlist.org/species/182964/137217343 - 2026年・遺伝解析による野生再発見の確認
https://link.springer.com/article/10.1007/s00114-026-02074-7 - 2025年・アルジェリアでの再発見報告
https://link.springer.com/article/10.1007/s44338-025-00093-8 - 2020年・Apricaphanius属への分類変更を提案した論文
https://doi.org/10.11646/zootaxa.4810.3.2 - 2006年・サハラアファニウスの原記載論文
https://doi.org/10.11646/zootaxa.1158.1.2
サハラアファニウスは、2014年当時、マッツァー付近に残る最後の1個体群だけが知られ、外来魚のカダヤシ、地下水の過剰取水、湿地の乾燥化、水質汚染によって野生絶滅が強く懸念されていた。その後、約20年間確認されなかったが、2024年に旧生息地から約115km離れたギール川流域のワジで再発見され、2026年の遺伝解析で同種と確認された。数百匹の生息が推定され、法的保護や飼育下繁殖も始まった一方、野生個体群は依然1か所のみで、遺伝的多様性の低さ、外来魚、干ばつ、取水や開発への警戒が続いている。
⬇︎サハラアファニウスの保護活動の種類です。必要なら開いてください。
主な脅威は、カダヤシ Gambusia holbrooki、ナイルティラピア、コイ類などの外来魚、水の農業利用、地下水・湧水量の減少、水質汚染、湿地の乾燥、極端な干ばつです。アルジェリア政府は発見されたワジを法的保護下に置き、飼育下繁殖計画を設けたと研究論文で報告されています。
以下では、確認できる実施済み対策と、今後必要な対策を区別して整理します。
| 保護活動の種類 | 具体的な内容 | 実施・提案状況 | 重要度 | 根拠・注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 発見地の法的保護 | 野生個体群が確認されたワジを、土地改変や生物採集から守る | アルジェリア政府が保護を決定したと研究者が報告 | 最重要 | 現時点で確認されている唯一の野生個体群である可能性がある |
| 国家自然遺産としての指定 | ワジと周辺生態系を国家的な自然遺産として管理する | 指定されたと2025年論文で報告 | 最重要 | 正式な境界、禁止行為、管理主体、予算を明確にする必要がある |
| 保護区域の境界確定 | 水域だけでなく、湧水源、集水域、上流部、地下水涵養域を含める | 必要 | 最重要 | 水面だけを保護しても、上流や地下水が改変されれば個体群は維持できない |
| 緩衝地帯の設定 | ワジ周辺で農業、掘削、建設、道路整備を制限する | 必要 | 高い | 水質汚染と地下水利用の影響を防ぐ |
| 詳細位置情報の管理 | 正確な生息地点を一般公開せず、行政・研究者間で限定管理する | 必要 | 高い | 無許可採集、観賞魚目的の捕獲、観光による攪乱を防ぐ |
| 無許可捕獲の禁止 | 野生個体を研究・飼育・販売目的で無断捕獲しない | 法的保護に含める必要 | 最重要 | 個体群が一地点しかない場合、少数の捕獲でも影響が大きい |
| 湧水源の保護 | ワジを維持する地下湧水と小支流を改変しない | 必要 | 最重要 | 発見地は地下湧水によって乾季にも水が維持されている |
| 地下水取水の規制 | 農業用井戸や生活用取水による地下水位低下を防ぐ | 必要 | 最重要 | 旧生息地では農業用水利用と湿地乾燥が主要脅威とされた |
| 地下水位モニタリング | 観測井戸を設置し、水位と季節変動を記録する | 必要 | 高い | 個体数減少より先に水環境悪化を検出できる |
| ワジ流量の監視 | 流速、水深、水面積、乾燥区間の長さを継続的に測る | 必要 | 最重要 | 発見時にも下流部の約4kmはほぼ乾燥していた |
| 季節的な水域縮小の記録 | 雨季・乾季ごとに池、浅瀬、流水区間を地図化する | 必要 | 高い | 小さな残存水域が干ばつ時の避難場所になる |
| 極端な干ばつへの緊急計画 | 水域が消失する危険がある場合の救出・一時飼育手順を準備する | 必要 | 最重要 | 分布域では極端な乾燥と水域消失が繰り返される |
| 緊急水域の維持 | 干ばつ時にも最低限の水深と水質を確保する | 慎重に検討 | 高い | 人工給水により水温、塩分、病原体が変化しないようにする |
| 流路改変の禁止 | 浚渫、直線化、堰、水路化、砂利採取を避ける | 必要 | 最重要 | 流水区間、浅い池、植生帯の組合せが生息地を形成する |
| ダム・放流の影響評価 | Djorf Torbaダムなどからの水放出や洪水が外来魚を拡散させないか調査する | 必要 | 高い | ダム湖には多数の外来魚が確認され、増水時の拡散源となり得る |
| 水質モニタリング | 水温、塩分、pH、溶存酸素、濁度、導電率、栄養塩を測定する | 必要 | 最重要 | 水質条件は本種とカダヤシの競争関係にも影響する |
| 生活排水の流入防止 | 集落や施設からの未処理排水をワジへ入れない | 必要 | 高い | 発見地が人里から離れていることが存続に寄与した可能性がある |
| 農業排水の防止 | 肥料、農薬、塩類を含む農業排水を流入させない | 必要 | 最重要 | 小規模水域では低濃度の汚染でも影響が集中しやすい |
| 廃棄物投棄の禁止 | ごみ、油、建設廃材、家畜死体などの投棄を防ぐ | 必要 | 高い | 水質悪化と病原体持込みを防ぐ |
| 家畜利用の管理 | 家畜の踏圧、糞尿、河岸植生の食害を抑える | 必要 | 中〜高 | 実際の影響を調査したうえで利用区域を調整する |
| 水生植物の保全 | 底部や岸辺の水草を除去しない | 最重要 | 最重要 | 個体数が多かった場所では底部植生がよく発達していた |
| 産卵基盤の保護 | 卵が付着する水草、藻類、細い植物体を維持する | 必要 | 最重要 | 水生植物は産卵場所、隠れ場所、採食場所として機能する |
| 岸辺植生の保護 | 日陰、昆虫供給、土壌安定を支える岸辺植物を残す | 必要 | 高い | 植生除去は水温上昇と濁りを引き起こす |
| 外来魚の新規放流禁止 | カダヤシ、ティラピア、コイ類などをワジへ放さない | 最重要 | 最重要 | 外来魚は競争、捕食、疾病、餌資源の変化を引き起こす |
| 外来魚の分布調査 | 本種の生息区間と周辺水系で外来魚の種類・密度を調査する | 一部調査済み、継続必要 | 最重要 | 周辺の多くの水域では外来魚が優占または唯一の魚種だった |
| カダヤシの個体数監視 | 本種との個体数比、分布境界、季節変動を記録する | 必要 | 最重要 | 発見地の流水区間にはカダヤシも存在している |
| カダヤシの除去可能性調査 | 網、わな、電気漁法などによる選択的除去を検討する | 研究者が提案 | 高い | 根絶は難しく、本種を誤って捕獲しない方法が必要 |
| 段階的な外来魚除去 | 小区間で試験し、本種への影響を確認してから拡大する | 提案 | 高い | 一斉除去による水質変化や在来個体の混獲を避ける |
| 化学薬剤の慎重な扱い | 魚毒などを安易に使用しない | 必要 | 最重要 | 同じ水域に本種が生息するため、非選択的薬剤は危険 |
| ティラピアの侵入防止 | ナイルティラピアが生息地へ到達しないよう監視・管理する | 必要 | 高い | 旧生息域の減少要因の一つとして指摘されている |
| コイ類などの侵入防止 | ダムや周辺水域からの外来魚拡散を防ぐ | 必要 | 高い | コイ類は濁りや植生破壊を引き起こす可能性がある |
| 物理的侵入防止設備 | 必要に応じて、外来魚の遡上を抑える構造を検討する | 調査・設計が必要 | 中〜高 | 洪水時の機能と本種の移動を妨げない設計が必要 |
| 定期個体数調査 | 同じ区間・季節・方法で個体数を数える | 必要 | 最重要 | 発見時の「数百個体」という観察を基準値として発展させる |
| 標準化された区間調査 | ワジを区間分けし、魚数、水深、植生、外来魚を記録する | 必要 | 高い | 個体群の増減と生息地変化を対応させられる |
| 年齢・サイズ構成の調査 | 幼魚、亜成魚、成魚の割合を記録する | 必要 | 高い | 繁殖が継続しているか確認できる |
| 雌雄比の調査 | 雄と雌の割合を季節別に調べる | 必要 | 中〜高 | 捕獲や環境条件による偏りを検出できる |
| 繁殖時期の確認 | 産卵期、卵数、孵化率、幼魚加入を調べる | 必要 | 高い | 野外個体群に適した管理時期を決める基礎になる |
| 干ばつ避難場所の確認 | 高塩分の小池や上流部が避難場所として機能するか調べる | 必要 | 高い | カダヤシが少ない小池で本種だけが観察された |
| 塩分環境の維持 | カダヤシを抑制する自然な高塩分環境を不用意に淡水化しない | 必要 | 高い | 高塩分水域が外来魚からの避難場所になっている可能性がある |
| 生息地別の生存率調査 | 流水区間、小池、上流部ごとの生存・繁殖を比較する | 必要 | 高い | どの環境を優先保護すべきか判断できる |
| 未調査地域の探索 | ギール川、サウラ川と周辺ワジで追加個体群を探索する | 研究者が継続を推奨 | 最重要 | 遺伝的に確認された個体群が1地点だけでは脆弱 |
| 過去の生息地の再調査 | Mazzer、Igli、Kerzazなどを定期的に調査する | 過去に調査済み、継続必要 | 高い | 外来魚が優占していても小さな残存個体群を見落とす可能性がある |
| 環境DNA調査 | 水試料から本種のDNAを検出する方法を確立する | 導入候補 | 高い | 個体を捕獲せず、低密度地点を探索できる |
| カメラ・水中映像調査 | 水中カメラで行動、分布、外来魚との関係を記録する | 発見時に実施 | 中〜高 | 個体への負担が少ない |
| 気候・衛星データの利用 | 水面積、植生、干ばつ、豪雨を衛星画像で監視する | 提案 | 高い | 現地へ行けない期間も水域消失を把握できる |
| 遺伝的多様性の監視 | 野生個体群のDNAを定期的に分析する | 2026年に初期分析、拡充必要 | 最重要 | ミトコンドリアDNAの多様性が低い可能性が示された |
| ゲノム規模の遺伝解析 | 多数の核DNAマーカーを用いて多様性、近親交配を調べる | 2026年論文が優先課題として提案 | 最重要 | 現在の結論は主に1つの核遺伝子と1つのミトコンドリア遺伝子に基づく |
| 野生集団と旧飼育系統の比較 | ギール川個体群とMazzer由来の飼育系統を遺伝的に比較する | 必要 | 最重要 | 由来や遺伝的差異を無視して混ぜないために重要 |
| 飼育下保険個体群の設立 | 野生個体群消失に備え、管理施設で繁殖集団を維持する | アルジェリア政府が設置したと報告 | 最重要 | 野生保全を代替するものではなく、保険として行う |
| 既存の欧州飼育系統の維持 | 旧基準産地由来の系統を絶やさず維持する | 民間・施設で長年維持 | 高い | すべてが少数の創始個体に由来する可能性がある |
| 飼育系統の由来記録 | 産地、親魚、世代、移動先を台帳で管理する | 必要 | 最重要 | 産地不明個体や近縁種との混同を防ぐ |
| 血統管理 | 近親交配を抑えるため、繁殖組合せを計画する | 必要 | 最重要 | 個体数だけでなく遺伝的多様性を維持する |
| 複数施設での分散飼育 | 1施設の事故で全個体を失わないよう複数拠点で維持する | 必要 | 高い | 停電、疾病、設備故障、災害への備え |
| 野生からの創始個体採取 | 遺伝的代表性を確保しつつ、野生個体群を減らさない範囲で採取する | 慎重に実施すべき | 最重要 | 採取数は個体群調査後に科学的に決める |
| 飼育下繁殖技術の確立 | 水温、塩分、pH、照明、餌、産卵基盤を標準化する | 既存飼育経験あり、正式手順の整備が必要 | 高い | 野生の季節変動を再現する必要がある可能性がある |
| 飼育水温の季節変化 | 一定温度だけでなく自然に近い温度変動を与える | 飼育情報として実践例あり | 中〜高 | 正確な野生環境データに基づいて調整する |
| 飼育下の塩分管理 | 適切な塩分を維持し、急激な変化を避ける | 飼育経験あり | 高い | 野生個体群の実測値を優先する |
| 疾病検査と検疫 | 野生魚、飼育魚、施設間移動個体を検疫する | 必要 | 最重要 | 病原体を野生個体群や別施設へ持ち込まない |
| 近縁種との交雑防止 | A. iberus、A. baeticusなどと同じ水槽で繁殖させない | 必要 | 最重要 | 保全系統としての遺伝的純粋性を失う |
| 観賞魚系統との混同防止 | 産地不明・交雑疑いの個体を保全繁殖へ使用しない | 必要 | 高い | 外見だけでは由来を判断できない場合がある |
| 生殖細胞・組織保存 | DNA、組織、精子などの保存技術を検討する | 将来対策 | 中 | 長期的な遺伝資源保存を補助する |
| 緊急救出手順 | 水域消失、汚染事故、外来魚侵入時に個体を救出する | 必要 | 最重要 | 救出先、検疫、遺伝記録を事前に決める |
| 再導入計画 | 旧生息地を復元し、飼育個体を戻す可能性を検討する | 将来段階 | 高い | 外来魚、水不足、汚染を解決せず放流してはならない |
| 再導入候補地の評価 | 水量、水質、外来魚、植生、土地利用を調査する | 必要 | 高い | 歴史的生息地だから適地とは限らない |
| 段階的な試験放流 | 条件が整った小規模水域で少数個体を試験的に放流する | 将来検討 | 中〜高 | 野生個体群から離れた管理可能な場所が望ましい |
| 放流個体の遺伝選択 | 旧飼育系統、ギール川系統を無計画に混ぜない | 必要 | 最重要 | 系統間の差異を評価してから判断する |
| 放流後モニタリング | 生存、繁殖、外来魚、疾病を複数世代にわたり調査する | 再導入時に必要 | 最重要 | 放流直後の生存だけでは成功とはいえない |
| 地域住民との協働 | 牧畜民、農家、住民が水量・汚染・外来魚を通報する | 必要 | 高い | 遠隔地の継続監視には地域の協力が不可欠 |
| 水利用者との合意形成 | 農業用水と生態系維持水量のルールを作る | 必要 | 最重要 | 一方的な規制では長期的な協力を得にくい |
| 外来魚放流への啓発 | 釣り、蚊対策、養殖目的で魚を放さないよう周知する | 必要 | 高い | 善意の放流でも固有魚を絶滅させる可能性がある |
| 学校・地域教育 | アルジェリアだけに生息する固有魚として紹介する | 必要 | 中〜高 | 小型で知られていない種への地域の関心を高める |
| 研究者・行政の連携 | 大学、環境行政、水資源行政、地方自治体が情報を共有する | 進行中・強化必要 | 最重要 | 水管理と生物保全を別々に進めない |
| 種別回復計画の策定 | 生息地、外来魚、水利用、飼育繁殖、再導入を一つの計画にまとめる | 必要 | 最重要 | 期限、担当機関、予算、評価指標を明記する |
| IUCN評価の更新 | 2024年の発見と2026年の遺伝的確認を正式評価へ反映する | 必要 | 高い | 「野生絶滅の可能性あり」という補助表示は見直しが必要 |
| 保全効果の評価 | 野生個体数、水面積、外来魚密度、遺伝的多様性で成果を測る | 必要 | 最重要 | 保護指定や飼育数だけで成功と判断しない |
| 長期資金の確保 | 水文調査、外来魚管理、遺伝分析、飼育施設を継続する | 必要 | 最重要 | 一時的な再発見調査だけでは個体群を維持できない |
| 現地保全の最優先 | 飼育下繁殖だけに依存せず、野生のワジをそのまま守る | 基本方針 | 最重要 | 飼育環境では自然の生態系や進化過程を代替できない |
現在確認できる具体的な進展
2024年6月の発見時には、ワジの約6kmの中流区間と上流の小池で多数の個体が確認されました。2026年の遺伝解析では、ギール川個体群のミトコンドリアDNAが基準産地の個体と非常に近く、核DNAでは基準産地と同じ対立遺伝子も確認されました。このため、研究者は野生再発見とみなすことが最も妥当だと結論づけています。
アルジェリア政府は、研究結果を受けて生息ワジを法的に保護し、現地個体群を基にした飼育下繁殖計画を設けたと論文中で報告されています。ただし、保護区域の正式名称、管理計画、飼育個体数、繁殖実績などの詳細は、今回確認できた公開資料には示されていません。
一方で、カダヤシは現在も同じワジの一部に生息しています。比較的塩分が高い上流の小池ではカダヤシが確認されず、本種だけが観察されました。この自然な高塩分環境が外来魚からの避難場所として機能している可能性があり、外来魚除去と同時に、塩分・水量・植生の維持が重要です。
保護活動の種類:出典
- The Science of Nature|DNA解析によるサハラアファニウスの野生再発見確認
https://link.springer.com/article/10.1007/s00114-026-02074-7 - Discover Animals|2024年に発見された野生個体群と保全提案
https://link.springer.com/article/10.1007/s44338-025-00093-8 - IUCN Red List|Apricaphanius saourensisの2021年評価
https://www.iucnredlist.org/species/182964/137217343 - FishBase|脅威・分類・IUCN評価の概要
https://fishbase.se/summary/62763 - Zootaxa|Aphanius saourensisとしての原記載論文
https://www.mapress.com/zt/article/view/3016
サハラアファニウスの最後の生息地|ワジを脅かす気候変動と地下水利用
Questioner: You mentioned they were found in a place called a “wadi” in 2024. People debated for a couple of years, saying “maybe it’s a different fish,” but then genetic analysis in 2026 confirmed it’s the exact same species. But what exactly is a “wadi”?
Me: A “wadi” is basically a dried-up riverbed or valley you find in arid regions like the Arabian Peninsula or North Africa. Normally, there’s no water flowing through it. So, in short, these fish were found in a river or valley that had completely dried out.
Questioner: Wait, what? If it’s dried out, that means there’s zero water, right?
Me: Well, this particular isolated wadi in the Guir River system is a bit special. Even though it’s mostly dry on the surface, groundwater and specific springs keep tiny pockets of water alive. It’s a pretty precious ecosystem that allowed these fish to somehow survive.
Questioner: Ah, so they were just quietly hanging on in little puddles. But here’s the usual depressing question… isn’t there a risk that climate change and global warming caused by us humans will just dry up those puddles entirely?
Me: You’ve hit the nail on the head. Because the wadi is such a fragile, unique environment, we really can’t rule out the nightmare scenario where it dries up until there’s literally not a single drop left. Let me look into that.
質問者:2024年にワジってところから発見されたけど、「これ違うかもね」と数年議論されていたけど2026年の遺伝子解析で同種と確認されたってことなんだけど、この「ワジ」ってなにかな。
私:「ワジ(Wadi)」とは、アラビア半島や北アフリカなどの乾燥地域に見られる「普段は水が流れていない涸れ川」や「涸れ谷」のことです。要するに、水がなくなった川や谷から見つかったということですね。
質問者:え?かれていたってことは、水がないってことだよね。
私:ギール川水系の孤立したワジは、完全に水がないわけではありません。普段は乾燥していても、地下水や特定の湧水によって小さな水域が保たれ、魚が生き延びることができた貴重な環境だと考えられます。
質問者:ってことは、小さな水たまりでひっそり生きていたってことなんだね。これ毎度のことなんだけど、人類が招いた地球温暖化による気候変動でその水たまりが干上がっちゃうってことはないのかな。
私:そうですね。この特殊な環境であるワジが本当に乾燥して水が一滴もなくなるようなことがないともかぎりませんからね。調べてみます。
奇跡の再発見も束の間?サハラアファニウスが命を繋ぐ「ワジ(涸れ川)」に迫る気候変動の足音
新たにサハラアファニウスの生息が確認されたのは、模式産地マッツァーから北西約115km、アルジェリアのアバドラ地区にあるギール川支流の非常に孤立したワジです。2024年に発見され、2026年のミトコンドリアDNAと核DNAの解析によって、サハラアファニウスであることが強く支持されました。ワジは全長21kmを超え、複数の地下湧水に支えられていますが、ギール川との合流点に近い約4kmはほぼ干上がり、上流部でも水域が小さな水たまりへ分断されていました。命をつなぐ水は、決して豊富ではありません。
気候変動による直接的な乾燥化
ギール川流域を対象とした気候予測では、温室効果ガスの排出量が高い状態で続くRCP8.5シナリオのもと、2019年から2060年にかけて降水量は全体として減少し、気温と蒸発散量は増加するとされています。地表を流れ出る水量も、2019年の0.045百万立方メートルから、2060年には0.030百万立方メートルへ約3分の1減少する予測です。
この研究が対象としているのは、主にモロッコ領内のギール川上流域全体であり、サハラアファニウスが再発見されたワジそのものの水量を直接予測したものではありません。それでも、同じ水系で雨が減り、気温上昇によって水が失われやすくなる傾向は、この孤立した生息地にとって無視できない警告です。ただでさえ細い水のつながりが、干ばつの長期化によって途切れる危険があります。
人間の活動が水を奪う危険
再発見地点は人里から離れており、農業用取水や都市汚染の影響が比較的小さかったことが、個体群の生存につながったと考えられています。現時点で、このワジの地下水が急速に低下していることを示す直接的な観測結果はありません。
しかし、ギール川上流のモロッコ南東部では、「グリーン・モロッコ計画」によって砂漠地帯で近代的な灌漑農業が拡大し、地下水の過剰利用が問題となっています。水系は国境を越えてつながっているため、上流域で続く取水や水利用の変化が、長期的に下流側の湧水や流量へ影響する可能性は否定できません。気候変動で補給される水が減る一方、農業が地下水を使い続ければ、自然に残される水はさらに少なくなります。
さらに、人間が持ち込んだ外来魚もすでにワジへ入り込んでいます。流水のある中流部ではトウブカダヤシが確認され、周辺のダムにはティラピア、コイ、パンプキンシードなど多数の外来魚が生息しています。豪雨や洪水によってこれらが流出すれば、孤立していた生息地へ新たな捕食者や競争相手が広がる可能性があります。
サハラアファニウスにも限界がある
サハラアファニウスは、季節や年によって水位と水温が大きく変化する砂漠の水域に適応した、きわめて粘り強い魚です。上流の小さな水たまりでは、水温や塩分、濁度が高く、酸素が少なくなると考えられる環境でも生息していました。研究者は、本種が広い範囲の塩分変化に耐えられる可能性を指摘していますが、耐えられる水温、塩分、pHの正確な限界は、まだ十分に測定されていません。
どれほど過酷な水質や温度変化に耐えられても、水域そのものが完全に失われれば生き延びることはできません。しかも、現在確認されている個体群は最後の野生個体群である可能性があり、遺伝的多様性も低いことが示されています。再発見は危機の終わりではありません。守るべき最後の避難場所が、ようやく見つかったという段階なのです。
出典
- 再発見地点と現在の生息環境:
Potential rediscovery of the endemic critically endangered Sahara killifish in Algeria - 遺伝解析による種の確認と遺伝的多様性:
Genetic evidence for the rediscovery in the wild of the critically endangered Sahara killifish - ギール川流域の気候変動と水量予測:
Impact of Climate Change on Water Resources in the Wadi Guir Watershed - グリーン・モロッコ計画と地下水利用:
The Green Morocco Plan in Boudnib: Examining Effects on Rural Livelihoods
Questioner: Even if they’re far from where people live, groundwater is all connected, right? And on top of that, you’ve got the very real threat of human-caused climate change bringing severe droughts that could just bake the place bone-dry.
Me: Exactly. If you look at what people are talking about on social media lately, water scarcity is becoming a huge topic. The massive water consumption from newly built data centers, especially for AI, is really starting to raise red flags.
Questioner: Man, I just hope they don’t build any of those near this wadi.
Me: I actually looked into that. From what I can find, there are no records of massive data centers being built right next to this wadi at the moment. In places like Morocco, the major data centers tend to be concentrated around coastal cities like Casablanca and Rabat.
Questioner: Still… since the groundwater is all connected, it definitely makes you worry.
Me: Water flowing deep underground, the air drifting in the sky… you can’t fence those in with national borders. We draw lines on our maps, but the Earth is just one interconnected sphere. At the end of the day, the ones paying the price for these imaginary borders and arbitrary human rules are the tiny, fragile species like the Sahara Killifish—creatures you wouldn’t even know existed unless you actively went looking for them.
Thank you for sharing your precious time with me.
I truly hope our thoughts somehow reach the Sahara Killifish out there.
鶏人|Keijin
質問者:人間の生活圏から離れているっていっても地下水って繋がってるもんね。それに加えて人類が招いた温暖化による気候変動で干ばつでカラカラになっちゃう可能性もあるもんね。
私:そうですね。最近SNSなどの投稿の傾向をみていると、水問題が大きく取り上げられています。とくにAIなどのデータセンターなどの新設が問題視されていますね。
質問者:このワジの近くに作らないといいけどね。
私:調べましたところ、現時点ではこのワジのすぐ近くに巨大なデータセンターが建設されているという記録はありませんでした。モロッコなどの主要なデータセンターは、カサブランカやラバトといった沿岸部の都市圏に集中しているのが現状のようです。
質問者:でも地下水はつながってるからちょっと心配になるね。
私:地下を流れる水も、空を漂う空気も、国境で区切ることはできません。地図の上では線が引かれていても、地球は一つにつながっています。結局のところ、人間が地図の上に引いた国境や、どこかの誰かが決めたルールによって迷惑しているのは、調べなければ存在さえ分からない、サハラアファニウスのような小さな種なのだと思います。
貴重な時間を、ありがとうございました。
サハラアファニウスに、その想いが届くことを祈ります。
鶏人|Keijin
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