11年後のレッドリスト|オブライエンテンニョゲラ:絶えそうな声が、木立の奥でよみがえる【IUCNレッドリスト比較】

オブライエンテンニョゲラ 11年後のレッドリスト
※このページは、[IUCNレッドリスト]世界の絶滅危惧生物図鑑(2014年版)に基づいて制作した個人ブログです。
※画像はすべてAI生成(
DALL·E)によるイメージであり、実際の生物写真ではありません。
※当サイトはアフィリエイト広告による収益を得ています。

こんにちは、fukumomo3_photo です。

オブライエンテンニョゲラ(Celeus obrieni)は、

2014年、図鑑に【CR:深刻な危機】として分類されていました。

2018年、IUCNレッドリストで【VU:危急】と評価されました。

つまり、2013年から2018年にかけて、

オブライエンテンニョゲラは「絶えそうな声が、木立の奥でよみがえる」状態になりました。

※2025年時点で、IUCNレッドリストにおけるオブライエンテンニョゲラの最新評価は2018年版です。それ以降の更新は行われていません。

この記事は、とても短く5分で読めるので、どうぞ最後まで読んでくれると嬉しいです。

※本記事は専門家による学術的な評価ではなく、公開された資料に基づく個人の調査・見解を含んでいます。
最新かつ正確な分類や保全状況については、IUCN公式サイトなどをご確認ください。
参考:https://www.iucnredlist.org/species/22731646/131330745

危機から危急へ|知識の変化がもたらした竹の守り手の希望

⬇︎オブライエンテンニョゲラの生態です。必要に応じてご覧ください。⬇︎

基本情報|オブライエンテンニョゲラ(Kaempfer's Woodpecker)
項目情報
和名オブライエンテンニョゲラ
英名Kaempfer’s Woodpecker
学名Celeus obrieni
分類鳥綱・キツツキ目(キツツキ科)
分布ブラジル中部のセラード(サバンナ地帯)に限定的に分布
主な生息地サバンナ林、特に竹林や低木林
体長約26cm
体重約100g前後
寿命野生で不明(キツツキ類は10年以上生きることが多い)

特徴

  • 名前の由来:学名は日本の博物学者ケンペル(Kaempfer)にちなみ、英名も「Kaempfer’s Woodpecker」。和名の「オブライエン」は発見報告に関わった人物に由来。
  • 外見:体は赤褐色で、頭部に赤い羽を持つ。黒い縞模様が入り、竹林に適応した保護色をもつ。
  • 食性:主に竹に潜むアリやシロアリ、甲虫などの昆虫を捕食する。
  • 特殊性:非常に珍しい「竹専門のキツツキ」として知られる。

生態と行動

  • 生息環境:ブラジル中央部のセラードに点在する竹林を好む。森林伐採や農地転換により生息地が激減。
  • 行動様式:竹を突いて内部にいる昆虫を食べるため、クチバシは竹に適応して強靭。
  • 繁殖:詳細な研究は少ないが、樹洞や竹の内部に営巣すると考えられている。
  • 社会性:単独またはペアで生活することが多い。

保全状況

  • IUCNレッドリスト:EN(絶滅危惧)
  • 主な脅威
    • セラードの大規模な農地転換(特に大豆畑化)
    • 竹林の伐採と分断化
  • 保護活動:保護区の設置、竹林環境の保全、野外調査による分布域の把握が進められている。

2014年絶滅危惧種:オブライエンテンニョゲラ【CR:深刻な危機】

オブライエンテンニョゲラにとってもっとも深刻な脅威は、セラード(ブラジル高原のサバナ)にある生息地の破壊である。大豆などの農作、食肉生産、パルプ繊維産業、インフラ開発のため、セラードは年々、本来の状態を大きく失ってきた。

出典:訳者 岩槻邦男,太田英利 / 発行者 池田和博 / タイトル「IUCNレッドリスト世界の絶滅危惧生物図鑑」/発行所 丸善出版株式会社 / 発行 2014/01/31 ©️Kunio Iwatsuki, Hidetoshi Ota, 2014

オブライエンテンニョゲラが、ここ数年で評価が深刻な危機から危急に変わった理由が気になったので調べてみた。

年・出来事内容保全評価
1926年ブラジルで1羽が採集される
2006年トカンティンス州で約80年ぶりに再発見
2014年生息域・個体数が極めて限定的とされるCR:深刻な危機
2015〜2018年調査により生息地が5ヶ所 → 15ヶ所に増加
個体数推定成熟個体数 2,500〜9,999羽と修正(CR基準:250羽未満を上回る)
生息地面積CR基準より広いことが判明
2018年新知見を反映して評価が見直されるVU:危急

さらに、気になったので、生息地面積の評価が見直されたことで保全状況の評価が変わった例が他にもないか調べてみた。

種名状況評価変更の理由保全状況の変化
マウンテンゴリラ (Gorilla beringei beringei)アフリカ中央部に限定的に生息。長年【CR:深刻な危機】精度の高い個体数調査と保護活動により、個体数が1,000頭超に回復2018年に【EN:危機】へ引き下げ
ニューギニア・ハイランド・ワイルドドッグ50年以上目撃情報がなく絶滅と考えられていた2016年に再発見。小規模ながら繁殖個体群が確認される「絶滅」想定から一転し【DD:情報不足】等に再評価の可能性
タカヘ (Porphyrio hochstetteri)NZ固有の飛べない鳥。19世紀末に絶滅と考えられた1948年に再発見。複数の保護区で再導入・繁殖が成功【CR:深刻な危機】から改善し、現在は【EN:危機】相当まで回復

これらの例が示すように、種の保全状況の評価は、生物学的な変化だけでなく、人類の「知識の変化」によっても更新されていくようだ。

オブライエンテンニョゲラの例も、まさにこの「知識の変化」がもたらした希望と言える。

⬇︎オブライエンテンニョゲラの主な保護活動の種類です。必要に応じてご覧ください。⬇︎

保護活動の種類内容の概要
繁殖地の保護巣作りに必要な枯木や大木を伐採から守り、繁殖環境を維持
生息地の保全セラード(サバンナ林)の焼畑・牧草地化・大規模農業を規制し、森林回廊を復元
農薬・化学物質対策農業での農薬散布による昆虫減少を防ぎ、餌資源を確保
国際的な取引規制ワシントン条約(CITES)附属書Ⅰにより、国際取引を禁止
保護区の設定ブラジル中部のセラード地域に保護区を設け、生息地の断片化を抑制
市民・地域参加住民・農家と協力し、森林保全や持続可能な農業、環境教育を推進
研究とモニタリング個体数・分布・巣作り成功率を調査し、長期的なモニタリングを実施

主な取り組み

  • 繁殖地保護:巣穴利用のための枯木・大木を伐採から守る
  • 生息地保全:セラードの焼畑・牧草地化を制限し、森林回廊を復元
  • 農薬対策:農薬使用を減らし、餌となる昆虫を守る
  • 国際保護条約:CITES附属書Ⅰで国際取引を禁止
  • 保護区整備:ブラジル中部セラードに保護区を設置
  • 地域参加:住民・農家が協力する環境教育や持続可能農業の推進
  • 調査研究:個体数や繁殖状況をモニタリング

最後に

これを読んで、どのように感じましたか?

「世界は広いね〜」

と、楽観視しますか?

「セラードの減少は止まってないよね?」

と、現地の状況が心配になりましたか?

感じ方は、十人十色あると思います。

オブライエンテンニョゲラが「竹のスペシャリスト」と呼ばれる理由は、その特殊な食性にある。

  • 主なエサ: 好物なのは、特定の竹(主にGuadua paniculataという種)の茎の中に巣を作るアリ。
  • 採餌方法: 硬い竹の茎にくちばしで穴を開け、中のアリやその幼虫を長い舌で捕食する。

このように、「特定の竹」と「その竹に住むアリ」という2つの条件が揃わないと生きていけないため、生息地が極めて限定的な生物である。

よって、セラードが開発によって広範囲に失われていることに加え、この鳥の生存に不可欠な竹林はセラードの中でもパッチ状にしか存在しないため、当初の推定より多くの個体数がいると判明したため評価は変わったが、生息地の破壊や分断が深刻な脅威となっていることは、変わらないままである。
出典:First Protection for the Rediscovered Kaempfer’s Woodpecker in Brazil

ここまで読んで、『あなた』は、どのように感じましたか?

コメントで意見を聞かせてくれると、とても嬉しいです。

あなたの貴重な命である5分間を本当にありがとうございました。

オブライエンテンニョゲラに、あなたの5分が届くことを祈ります。

fukumomo3_photo


インスタでは、オブライエンテンニョゲラたちの姿を“図鑑みたいに”並べて見られます。
ビジュアルで伝える命の物語、よかったらのぞいてみてください。

コメント