※このページは、[IUCNレッドリスト]世界の絶滅危惧生物図鑑(2014年版)に基づいて制作した個人ブログです。
Hi, it’s 鶏人|Keijin.
In the 2014 guide, the Hooded Seal (Cystophora cristata) was assessed as “VU: Vulnerable.” This was due to a massive decline in the Northeast Atlantic population caused by large-scale commercial hunting in the past, alongside growing concerns over deteriorating sea ice necessary for breeding and changes in their food environment.
In recent years, commercial hunting of the severely depleted Greenland Sea population has been halted since 2007, and monitoring has continued through aerial surveys and population models. However, even with the hunting nearly stopped, no clear recovery has been observed. Furthermore, it has come to light that the number of births in key breeding grounds has plummeted even in the Northwest Atlantic.
According to the IUCN Red List available as of 2026, their status was upgraded to “EN: Endangered” in 2025. The severe decline of the Northeast Atlantic population continues, and birth rates in the Northwest Atlantic—previously thought to be relatively stable—have dropped significantly. Above all, the loss of sea ice driven by global warming is actively threatening their reproduction and the survival of their pups.
I feel that for Hooded Seals, the reality right now is: the bluer and more open the ocean becomes, the more they lose the very foundation of their survival.
I’ve tucked the finer details into the collapsible sections. Honestly, just reading the main text all the way through would mean a lot to me.
こんにちは、鶏人|Keijinです。
ズキンアザラシ(Cystophora cristata)は、2014年の図鑑では、過去の大規模な商業捕獲によって北東大西洋個体群が大幅に減少し、繁殖に必要な海氷の悪化や餌環境の変化も懸念されていたことなどから「VU:危急」と評価されていました。
近年は、深刻に減少したグリーンランド海個体群で2007年以降、商業捕獲が停止され、航空調査や個体群モデルによる監視が続けられています。しかし、捕獲をほぼ止めても明確な回復は確認されず、北西大西洋でも主要繁殖地の出生数が大幅に減少していたことが判明しました。
そして、2026年時点で確認できるIUCNレッドリストでは、北東大西洋個体群の深刻な減少が続き、従来は比較的安定していると考えられていた北西大西洋でも主要繁殖地の出生数が大幅に減少し、地球温暖化による海氷喪失が繁殖と幼獣の生存を脅かしていることから「EN:絶滅危惧」へ、2025年に評価が変更されました。
ズキンアザラシは今も、「海が青く開くほど、命の足場を失っている」という状態なのだと思います。
少し詳しい内容は折りたたみの中にまとめています。
まずは本文だけでも、最後まで読んでもらえたらうれしいです。
※2026年時点で、IUCNレッドリストにおける最新評価は2025年評価(2025年公開)です(以降の更新は、現時点では確認できていません)。
※本記事は専門家による学術的な評価ではなく、公開された資料に基づく個人の調査・見解を含みます。
※IUCN評価は「世界全体」と「地域・個体群」で分かれる場合があります。地域によって状況は異なります。
最新かつ正確な分類や保全状況については、IUCN公式サイトなどをご確認ください。
参考:IUCN Red List(学名:Cystophora cristata)
ズキンアザラシはなぜVUからENへ?2014年と2026年の絶滅危機を比較
⬇︎ズキンアザラシの生態(基本情報)です。必要なら開いてください。

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 和名 | ズキンアザラシ |
| 漢字表記 | 頭巾海豹 |
| 英名 | Hooded Seal |
| 英名の別称 | Bladder-nosed Seal。雄が鼻の袋を風船状に膨らませることに由来する。 |
| 学名 | Cystophora cristata(Erxleben, 1777) |
| 分類 | 動物界、脊索動物門、哺乳綱、食肉目、アザラシ科、ズキンアザラシ属 |
| 分類上の特徴 | ズキンアザラシ属に分類される唯一の現生種。耳介を持たない「真正アザラシ」の仲間で、後肢を前方へ回して陸上を歩くことはできない。 |
| 学名の意味 | 属名Cystophoraは「袋を持つもの」、種小名cristataは「冠毛またはとさかを持つ」という意味を持ち、雄の特徴的な鼻の袋に関係する。 |
| 名前の由来 | 成熟した雄が鼻の上にある袋状構造を膨らませると、頭巾をかぶったように見えることから「ズキンアザラシ」と呼ばれる。 |
| 基本的な特徴 | 北大西洋最大級のアザラシ。流氷上で繁殖する一方、一年の大部分を深い外洋で単独生活する。成熟雄だけに発達する巨大な鼻の袋が最大の特徴である。 |
| 分布 | 北大西洋北部から北極海周辺に分布する。カナダ東岸、ラブラドル海、ニューファンドランド島沖、セントローレンス湾、デービス海峡、バフィン湾、グリーンランド周辺、アイスランド周辺、グリーンランド海、ヤンマイエン島周辺、ノルウェー海、スバールバル諸島周辺などでみられる。 |
| 通常分布の東西範囲 | 東はスバールバル諸島およびグリーンランド海、西はカナダのセントローレンス湾までが主要な分布域となる。 |
| 迷行 | 特に若い個体は長距離を迷行することがあり、北米東岸を南下してカリブ海周辺へ達した例や、ヨーロッパ沿岸、カナリア諸島、地中海付近まで移動した例がある。こうした個体は衰弱していることが多い。 |
| 日本での分布 | 北大西洋固有のアザラシで、日本近海を通常の分布域とはしない。 |
| 生息環境 | 繁殖と換毛には流氷や密集した漂流氷を利用する。それ以外の季節は、大陸棚斜面、海山周辺、海底地形の複雑な外洋など、水深の深い海域で生活する。 |
| 海氷との関係 | 出産、授乳、交尾前後の休息、換毛に海氷を必要とする。ただし一年中氷上で暮らすわけではなく、繁殖期と換毛期以外はほとんどの時間を外洋で過ごす。 |
| 主な繁殖海域 | カナダ東部の「フロント」と呼ばれるラブラドル南部・ニューファンドランド島北東沖、セントローレンス湾、デービス海峡、ヤンマイエン島北西から東グリーンランド沖の「ウェスト・アイス」の4海域が主要な繁殖地である。 |
| 個体群区分 | 管理上は、フロント、セントローレンス湾、デービス海峡で繁殖する北西大西洋個体群と、ウェスト・アイスで繁殖するグリーンランド海個体群に大別される。遺伝的な差は明瞭ではないが、分布、個体数、減少傾向が異なるため別々に管理されている。 |
| 全長 | 成熟雄は平均約2.5~2.6メートル、成熟雌は約2.0~2.2メートル。大型の雄では3メートル近くに達することがある。 |
| 体重 | 成熟雄は平均約300キログラムで、おおむね190~350キログラム。大型個体は400キログラム近くに達する。成熟雌は約145~300キログラムで、平均値は雄より大幅に小さい。 |
| 性的二形 | 雄は雌より長く、平均体重では約2倍になることがある。成熟雄だけに巨大な鼻の袋と、鼻孔から突出させる風船状の鼻中隔が発達する。 |
| 体形 | 胴体は太く頑丈な紡錘形で、頭部は比較的小さく、吻は幅広い。厚い皮下脂肪によって寒冷な海水から体温を守る。 |
| 体色 | 成獣は銀灰色から淡い灰色で、全身に形や大きさの異なる黒色または暗褐色の斑点が散在する。顔とひれは比較的暗色になる。 |
| 雄の頭巾状構造 | 成熟雄の鼻腔上部には、左右二葉に分かれた伸縮性の高い袋がある。空気を送り込むと、鼻から額にかけて黒っぽい大きな袋として膨らむ。 |
| 赤い鼻風船 | 雄は鼻腔内の弾力性のある鼻中隔を一方の鼻孔から外へ押し出し、赤色から桃色の風船状に膨らませることもできる。黒っぽい頭部の袋とは別の構造である。 |
| 鼻の袋の役割 | 繁殖期に雌へ存在を示すほか、雄同士の威嚇、優劣の誇示、闘争の回避、音響による情報伝達に使われる。体が大きく袋も発達した雄ほど、強い競争相手であることを視覚的に示せる。 |
| 感覚 | 水中では聴覚とひげの感覚を利用して周囲や獲物の動きを捉える。鼻の袋を使った音は、視界が悪い流氷域での個体間通信にも役立つと考えられる。 |
| 行動 | アザラシ類の中では比較的攻撃的で、縄張り性が強い。繁殖期と換毛期を除けば群れを作らず、単独で行動する時間が長い。 |
| 遊泳 | 水中では後肢を左右に振って推進力を生み、前肢を方向転換に使用する。外洋を高速で移動でき、季節に応じて長距離を回遊する。 |
| 陸上での移動 | 後肢を体の下へ回せないため、陸上や氷上では前肢と胴体を使って這うように移動する。水中での運動能力に比べ、氷上での動きは遅い。 |
| 回遊 | 春の繁殖後に採餌海域へ分散し、初夏から夏に換毛場所へ集まる。その後は再び広い外洋へ移動し、翌年の繁殖期に流氷域へ戻る。 |
| 性別による生息域の違い | 大型の雄は大陸棚斜面や海山周辺で深く潜る傾向があり、雌と若い個体は比較的平坦で浅い大陸棚上の海域も利用する。季節と餌の分布によって行動域は変化する。 |
| 潜水深度 | 通常は水深100~600メートルほどまで潜る。1,000メートルを超える潜水も多く記録され、最大級の記録では1,500メートル前後に達する。 |
| 潜水時間 | 一般的な採餌潜水は約13~20分。長い場合は約1時間に達する。北大西洋に生息するアザラシの中では、特に高い深海潜水能力を持つ。 |
| 深海潜水への適応 | 血液量が多く、血液中のヘモグロビンと筋肉中のミオグロビンに大量の酸素を蓄えられる。潜水中は心拍数を下げ、重要な臓器へ血流を集中させるほか、脳も低酸素状態に強い。 |
| 漂流潜水 | 深海まで潜った後、ほとんど体を動かさずにゆっくり沈みながら休息する「ドリフトダイブ」を行う。睡眠、休息、消化、エネルギー節約などの役割があると考えられている。 |
| 食性 | 肉食性。魚類、イカ類、甲殻類、二枚貝類などを食べる。地域や季節によって利用する餌は大きく異なる。 |
| 主な餌 | カラスガレイ、タイセイヨウダラ、ホッキョクダラ、カラフトシシャモ、ニシン、赤魚類、イカナゴ類、ホタルイカモドキ科のイカ、エビ類、端脚類など。 |
| 摂食方法 | 大陸棚斜面や海山周辺の中層で魚やイカを追跡する。頭骨や口腔の形態から、口内を陰圧にして獲物を吸い込む吸引摂食も行うと考えられている。 |
| 生態系での役割 | 魚類やイカ類を捕食する中・上位捕食者である一方、ホッキョクグマやシャチなどの餌にもなる。魚類や無脊椎動物の個体数調節、海洋内の栄養循環に関与する。 |
| 繁殖期 | 出産は主に3月後半から4月初め。ひとつの繁殖海域では、ほとんどの出産が数日間に集中するほど強く同調している。 |
| 出産場所 | 雌は海上の漂流氷へ上がり、氷上で出産する。陸上の固定された繁殖地ではなく、その年の海流、風、海氷の形成状況によって繁殖場所が移動する。 |
| 産仔数 | 通常は1回の出産で1頭。成熟した雌の多くは年1回出産するが、餌不足や健康状態によって繁殖しない年もある。 |
| 出生時の大きさ | 出生時は全長約87~115センチメートル、体重約23~30キログラム。平均では全長約1メートル、体重約24キログラム。 |
| 幼獣の体色 | 生まれた子は背面が青みを帯びた灰色、腹面が白色で「ブルーバック」と呼ばれる。この美しい毛皮を目的として、かつて多数の幼獣が捕獲された。 |
| 幼獣の換毛 | ブルーバックの体毛は長期間維持され、一般に生後約14か月で最初の本格的な換毛を迎える。その後、成獣にみられる斑点模様へ変化していく。 |
| 授乳期間 | わずか3~5日、平均約4日で離乳する。哺乳類の中で最も短い授乳期間として知られる。母親は授乳期間中、通常は餌を食べずに氷上で子を守る。 |
| 母乳 | 母乳の脂肪分は60%を超えることがあり、哺乳類の中でも特に高脂肪・高エネルギーである。短期間で母親の脂肪を大量に子へ移す仕組みとなっている。 |
| 授乳中の成長 | 幼獣は1日に約7キログラム増えることがあり、3~5日間で体重が約42~48キログラムに達する。出生時の体重をほぼ倍増させて離乳する。 |
| 離乳後 | 母親は授乳を終えると子を残して海へ戻る。幼獣は数日間氷上にとどまった後、自力で泳ぎ、餌を探し始める。生後約3週間で15分を超える潜水が可能になる個体もいる。 |
| 交尾 | 離乳直後、雌が海へ戻る時期に水中で交尾する。繁殖期には1頭の雌の周囲へ複数の雄が集まり、鼻の袋を使った誇示や闘争を行う。優位な雄が複数の雌と交尾することがある。 |
| 着床遅延 | 受精卵はすぐに子宮壁へ着床せず、約4か月間発育を停止する。着床後に本格的な胎児の成長が始まり、次の年の繁殖期に出産する。 |
| 性成熟 | 雌はおおむね3~6歳、雄は5~7歳で性成熟する。雄は成熟に伴って鼻の袋が発達し、体も雌より大きくなる。 |
| 寿命 | 平均で約25~30年。30~35年ほど生きる個体もいる。 |
| 天敵 | 主な天敵はホッキョクグマとシャチ。特に幼獣はホッキョクグマに襲われることがある。ニシオンデンザメが若い個体を捕食する可能性も確認されている。 |
| 推定個体数 | 北西大西洋個体群については約59万4,000頭という推定値が使用されてきた。グリーンランド海個体群は約7万7,000頭とされたが、調査年や推定方法が異なり、現在の世界総個体数を正確に示す数値ではない。 |
| 北西大西洋の変化 | 最大の繁殖地であるニューファンドランド島北東沖の幼獣生産数は、2012年と2017年の調査で2005年の40%未満に減少した。周辺海域への繁殖地移動だけでは説明できず、雌の繁殖率や幼獣の生存率の低下が疑われている。 |
| グリーンランド海の変化 | 過去数十年間に85%を超える大幅な減少が起きたとされる。2007年に商業捕獲が停止された後も回復せず、2022年の幼獣生産数は約1万3,500頭で、深刻な低水準が続いている。 |
| 個体数の傾向 | 減少傾向。特にグリーンランド海個体群の長期的な減少と、近年確認された北西大西洋での幼獣生産数の低下が懸念されている。 |
| IUCNレッドリスト | Endangered(EN・絶滅危惧)。2025年の再評価でVulnerable(VU・危急)から一段階引き上げられた。 |
| IUCN評価変更の背景 | 繁殖に不可欠な海氷の急速な減少、個体群の減少、幼獣生産数の低下、餌環境の変化、将来も続くと予測される地球温暖化の影響が重視された。 |
| 最大の脅威 | 地球温暖化による海氷の縮小、薄氷化、形成時期の遅れ、早期崩壊。繁殖期に適切な氷が不足すると、出産場所が減り、幼獣が離乳前に海へ落ちたり、氷塊が分散したりする危険が高まる。 |
| 餌環境への影響 | 海水温、海流、海氷、一次生産の変化は、ホッキョクダラやカラフトシシャモ、イカ類などの分布と量を変える。餌不足によって雌の体調や妊娠率が低下し、幼獣の生産数が減る可能性がある。 |
| その他の脅威 | 漁網への混獲・絡まり、船舶交通、海中騒音、石油・天然ガス開発、油流出、残留性有機汚染物質や重金属、感染症、持続可能な範囲を超えた捕獲など。 |
| 捕獲の歴史 | 脂肪から得る油、肉、皮革、毛皮を目的として数世紀にわたり捕獲された。20世紀には特にブルーバックと呼ばれる幼獣の毛皮が珍重され、多数の幼獣が捕獲された。 |
| 現在の捕獲管理 | 深刻に減少したグリーンランド海個体群では、2007年以降、科学調査目的を除く商業捕獲が停止されている。北西大西洋では、カナダやグリーンランドで少数の捕獲が行われる場合がある。 |
| CITES | ワシントン条約の附属書には掲載されていない。国際取引規制とは別に、各国・地域の海棲哺乳類保護法や捕獲管理制度の対象となる。 |
| 米国での保護 | 米国では海洋哺乳類保護法により保護され、許可のない捕獲、殺傷、追跡、嫌がらせなどが原則として禁止されている。 |
| 主な保全対策 | 温室効果ガス排出削減による海氷環境の維持、繁殖・換毛海域の保護、幼獣生産数と個体数の継続調査、捕獲量の厳格な管理、混獲防止、船舶騒音の低減、石油開発と海洋汚染の管理、衛星標識による回遊調査など。 |
| 調査上の課題 | 一年の大部分を外洋と水中で過ごし、繁殖場所も漂流氷とともに移動するため、直接の個体数調査が難しい。繁殖期の航空調査で幼獣を数え、繁殖率や死亡率を組み合わせて個体数を推定する。 |
| 生態系との関係 | 北極・北大西洋の魚類や無脊椎動物を消費し、自身も大型捕食者の餌となる重要な海洋哺乳類である。ズキンアザラシの減少は、海氷環境と北大西洋の食物網が変化していることを示す指標の一つでもある。 |
基本情報:出典
最終評価2025年:ズキンアザラシ「EN:絶滅危惧」
スキンアザラシは何世紀にもわたって商業目的で乱され、しばしば捕獲数は個体数維持の限界を上回っていた。最近は、大西洋北西部におけるこの種の個体数は安定しているように見えるが、大西洋北東部の個体群は顕著に減っている。ここ数十年で商業捕獲が個体群の85パーセントの減少をもたらしたとされ、繁殖域の氷の状態の劣化が個体群減少の原因となっていることも明らかである。サケのように好んで食べるえさ動物が減しているのも、減少の理由である。
出典:訳者 岩槻邦男、太田英利 / 発行者 池田和博 / タイトル『IUCNレッドリスト世界の絶滅危惧生物図鑑』/ 発行所 丸善出版株式会社 / 発行 2014/01/31 / © Kunio Iwatsuki, Hidetoshi Ota, 2014

| 項目 | 2014年の図鑑 | 現在(2026年確認) |
|---|---|---|
| 種名 | ズキンアザラシ。学名は Cystophora cristata。引用文冒頭の「スキンアザラシ」は「ズキンアザラシ」の脱字とみられる。 | 和名・学名に変更はない。北大西洋とその周辺の北極海域に分布し、繁殖、換毛、休息などに流氷を利用する氷上繁殖性のアザラシである。 |
| IUCNレッドリスト | 危急(VU:Vulnerable)として掲載されていた。 | 2025年5月9日の最新評価で絶滅危惧(EN:Endangered、基準A2a)へ引き上げられた。2026年現在もこの評価が最新で、個体群動向は「Decreasing(減少中)」である。2014年のVUから一段階悪化した。 |
| 評価悪化の意味 | 北西大西洋では安定しているように見える一方、北東大西洋では顕著に減少しているという、地域差の大きい状態として説明されていた。 | 最新評価のA2aは、過去3世代における個体数減少がENの基準に達したことを示す。北東大西洋の減少が続くだけでなく、かつて比較的安定しているとみられていた北西大西洋でも、主要繁殖地の出生数が大幅に減っていたことが明らかになった。 |
| 世界全体の個体数 | 図鑑の引用部分には、世界全体の個体数は示されていない。 | 信頼できる新しい世界総個体数は算出されていない。北西大西洋の約59万4,000頭という数字は2005年の推定、グリーンランド海の約7万6,600頭という数字は2018年の調査に基づく推定であり、現在の世界総数として単純に合計することはできない。新しい出生数調査は、両海域で減少が続いていることを示している。 |
| 北西大西洋個体群 | 「最近は安定しているように見える」と記載されていた。 | 安定しているという見方は維持できなくなった。全出生数の90%以上を占めるニューファンドランド島北東沖の主要繁殖地「フロント」では、出生数が2012年に4万1,129頭、2017年に3万9,021頭と推定された。これは2005年の推定値のそれぞれ38%、36%にすぎず、約62〜64%の減少に相当する。周辺海域の広範な探索でも別の大規模繁殖集団は確認されず、単なる繁殖地の移動では説明しにくい。 |
| 北東大西洋・グリーンランド海個体群 | 顕著に減少しており、ここ数十年の商業捕獲によって約85%減少したと説明されていた。 | 深刻な減少状態が続いている。推定総数は1946年ごろの約140万頭から10万頭未満まで減少し、2018年には約7万6,623頭と推定された。出生数は1997年の約2万8,100頭から2018年には1万2,977頭へ減少し、2022年も1万3,509頭にとどまった。2012〜2022年はおおむね1万〜1万5,000頭という低水準で、商業捕獲停止後も明確な回復は確認されていない。 |
| 商業捕獲の影響 | 数世紀にわたって商業目的で捕獲され、捕獲数が個体群を維持できる範囲を上回ることがあった。北東大西洋個体群の大幅な減少は、主として商業捕獲によるものと説明されていた。 | 過去の大規模捕獲が個体群を激減させた主要因であることに変わりはない。グリーンランド海では2007年以降、科学目的などを除いて商業捕獲が停止されている。北西大西洋やグリーンランドでは少数の捕獲が続くが、現在の減少や回復の遅れは捕獲だけでは説明できず、海氷減少、海洋生態系の変化、繁殖率や幼獣生存率の低下などが重なっていると考えられている。 |
| 繁殖地の海氷 | 繁殖域の氷の状態が悪化していることも、個体群減少の原因として挙げられていた。 | 海氷喪失は、IUCNが挙げる最も重要な気候変動上の脅威である。ズキンアザラシは流氷上で出産、授乳、交尾、換毛、休息を行う。海氷の面積、厚さ、安定性、存続期間が低下すると、適切な繁殖場所そのものが失われる。グリーンランド海では、繁殖地と換毛地が氷を追って北方やグリーンランド沿岸側へ移動している。 |
| 幼獣への気候変動の影響 | 海氷状態の劣化が個体群減少に関係するとされていたが、具体的な影響過程は詳しく示されていない。 | 母親による授乳はわずか3〜5日程度で、その後も幼獣は流氷を休息場所として利用しながら遊泳や採餌を覚える。氷が早く崩壊すると、授乳の中断、早すぎる離水、低体温、飢餓、溺死などによって幼獣の生存率が低下する可能性がある。氷の減少によってホッキョクグマやシャチなどに襲われやすくなる可能性も指摘されている。 |
| 海洋温暖化と餌資源 | 「サケのように好んで食べる餌動物が減少している」ことも、減少理由として挙げられていた。 | 現在の食性研究では、サケが主要な好物であるとは位置づけられていない。主な餌は海域によって異なり、カラスガレイ、タイセイヨウダラ、レッドフィッシュ、ホッキョクダラ、カラフトシシャモ、イカ類、甲殻類などである。魚類資源の減少や漁業との競合が影響する可能性はあるが、特定の餌の減少だけを個体群減少の主因とする証拠は十分ではない。 |
| 採餌海域の変化 | 餌動物の減少は指摘されていたが、温暖化に伴う採餌海域の移動までは示されていなかった。 | 北西大西洋個体群は、過去約30年間に同様の海洋環境を求めて採餌域を北方へ移していた。将来も適した採餌環境が北方へ移動すると予測されている。グリーンランド海個体群では、食性と好む環境は比較的安定していた一方、採餌域は東へ移動していた。高排出シナリオでは適した採餌域が東へ拡大する可能性も示されたが、これは繁殖用海氷の喪失を補えることや、個体群が回復することを意味しない。 |
| 地球温暖化による総合的影響 | 海氷状態の悪化と餌資源の減少が、すでに個体群を圧迫していると考えられていた。 | 北極域は世界平均の約4倍の速さで温暖化しており、海氷の縮小と薄氷化が進んでいる。直接的な繁殖場所の喪失だけでなく、餌生物の分布変化、採餌距離の増加、幼獣生存率の低下、繁殖率への影響、人間活動が入り込む海域の拡大を通じて、複合的な圧力を与えている。個体群ごとに反応は異なるが、海氷への依存という根本的な弱点は共通している。 |
| その他の脅威 | 主に商業捕獲、海氷の劣化、餌動物の減少が取り上げられていた。 | 捕獲に加え、漁業による混獲、船舶交通と騒音、石油・鉱物資源開発、海洋汚染、魚類資源をめぐる漁業との競合などが挙げられている。温暖化によって北極海への船舶や資源開発の進出が容易になるため、海氷減少はほかの人為的圧力も強める。 |
| 保護と管理 | 捕獲数の割り当て、捕獲道具や捕獲時期の制限、国際的な管理計画や協定によって、過剰捕獲された個体群の回復が図られていた。 | グリーンランド海では2007年以降、商業捕獲が停止され、航空調査や個体群モデルによる監視が続けられている。しかし、捕獲をほぼ止めても個体群は回復していない。北西大西洋でも古い個体数推定への依存が大きく、最新の広域調査と管理評価の更新が必要とされている。捕獲規制だけでなく、重要な繁殖・換毛海域の保全、混獲や騒音の軽減、温室効果ガス排出削減が重要になっている。 |
| 2014年との総合比較 | 「北西大西洋は安定、北東大西洋は大幅減少」という地域差が強調され、過去の商業捕獲が中心的な問題とされていた。 | 状況は明確に悪化した。北東大西洋の個体群は捕獲停止後も低迷し、北西大西洋でも主要繁殖地の出生数が2005年比で約6割減少していた。IUCN評価はVUからENへ引き上げられ、個体群は現在も減少中である。過去の乱獲に加えて、地球温暖化による海氷喪失と海洋生態系の変化が、種全体の回復を妨げる中心的な脅威になっている。 |
現状まとめ:出典
- IUCNレッドリスト「Cystophora cristata 2025年評価」:https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2025-2.RLTS.T6204A279892432.en
- IUCN「地球温暖化と海氷減少によって危機が深まる北極圏のアザラシ」:https://iucn.org/press-release/202510/arctic-seals-threatened-climate-change-birds-decline-globally-iucn-red-list
- NAMMCO「ズキンアザラシの個体数・生態・捕獲・気候変動」:https://nammco.no/hooded-seal/
- NAMMCO Scientific Publications「ニューファンドランド島北東沖における出生数の大幅減少」:https://doi.org/10.7557/3.7410
- Ecosphere「気候変動に対するズキンアザラシ個体群ごとの反応の違い」:https://doi.org/10.1002/ecs2.70482
ズキンアザラシは、2014年の危急(VU)から、2025年の再評価で絶滅危惧(EN)へ悪化し、現在も個体数は減少しています。北東大西洋では、過去の商業捕獲によって激減した個体群が、2007年の捕獲停止後も回復していません。さらに、安定していると考えられていた北西大西洋でも、主要繁殖地の出生数が2005年から約6割減少していたことが判明しました。地球温暖化による海氷の縮小や不安定化は、出産、授乳、換毛、幼獣の成長を直接脅かし、餌生物や採餌海域も変化させています。過去の乱獲に、急速な気候変動が重なり、種全体の回復を妨げている状態です。
⬇︎ズキンアザラシの保護活動の種類です。必要なら開いてください。
| 保全活動の種類 | 具体的な活動内容 | 実施状況・重点課題 |
|---|---|---|
| 商業捕獲の停止 | 大幅に減少したグリーンランド海の個体群について、商業目的の捕獲を停止し、繁殖可能な成獣と新たに生まれる子の減少を防ぐ。 | グリーンランド海では2007年以降、商業捕獲が停止されている。科学調査目的の少数捕獲やグリーンランド住民による自給的捕獲などには例外がある。 |
| 捕獲枠をゼロとする管理 | 個体群が限界基準を下回っている場合、予防原則に基づいて年間捕獲枠をゼロとし、回復が科学的に確認されるまで商業捕獲を再開しない。 | ノルウェー海洋研究所の2026年向け勧告でも、ズキンアザラシの捕獲枠はゼロとされた。低水準のまま回復が確認できないため、禁漁継続が中心的措置となっている。 |
| 国際共同の資源評価 | ICES、NAFO、NAMMCOの合同作業部会が、ノルウェー、カナダ、グリーンランドなどの調査結果、捕獲数、混獲数、繁殖状況を統合して個体群を評価する。 | 本種は広範囲を回遊するため、一国だけの調査では個体群全体を把握できない。北東大西洋と北西大西洋を別の管理単位として扱いつつ、相互移動も考慮する必要がある。 |
| 予防原則による管理 | 調査間隔が長い個体群や繁殖率・自然死亡率が不明な個体群を「データ不足」として扱い、利用可能な最大捕獲量を高く設定しない。 | 北西大西洋個体群は長期間、本格的な資源評価が行われておらず、古い推定値だけで捕獲可能量を判断しない慎重な管理が必要である。 |
| カナダにおける許可制捕獲 | 商業捕獲を免許制とし、捕獲可能な海域、期間、船舶、漁具、報告義務を定める。監視船、航空機、衛星船舶監視、港湾検査によって違反を取り締まる。 | カナダではズキンアザラシの捕獲自体は全面禁止ではないが、現在の捕獲数は少ない。科学的助言と実際の捕獲数を照合し、必要に応じて漁期を閉鎖する方式が採られている。 |
| 繁殖・授乳期の捕獲停止 | 出産と授乳が行われる時期には捕獲区域を閉鎖し、母子の分離や授乳中の雌の死亡を防ぐ。繁殖状況と海氷の移動に応じて再開時期を決定する。 | カナダでは毎年、出産・授乳期間を確保するための一時的な閉鎖が行われている。海氷の形成時期が変動するため、暦だけでなく現地の繁殖状況に応じた管理が必要である。 |
| 幼獣「ブルーバック」の捕獲禁止 | 青灰色の幼獣毛を残す若いズキンアザラシの商業捕獲を禁止し、毛皮を目的とした幼獣の集中捕獲を防ぐ。 | カナダでは1987年からブルーバックの商業捕獲が禁止されている。年齢の判定が難しい場合もあるため、船上・港湾での識別と監視が必要である。 |
| 捕獲数・陸揚げ量の監視 | 捕獲者に個体数、年齢区分、性別、捕獲場所、日時を報告させ、港、加工施設、買受業者の記録と照合する。 | 自給的捕獲、負傷後に回収できなかった個体、混獲死亡などが統計に含まれない場合があり、総死亡数の推定には補正が必要である。 |
| アザラシ製品の市場規制 | 毛皮、皮革、油、肉などの販売・輸入条件を厳しくし、大規模商業捕獲を支える需要を抑制する。製品の原産地と捕獲方法を確認する制度を整える。 | EUではアザラシ製品の市場流通が原則として制限されているが、イヌイットなど先住民の伝統的・自給的狩猟に由来する製品などには例外がある。 |
| ベルン条約による保護 | ベルン条約附属書IIIの保護動物として、締約国が捕獲の時期・方法・規模を規制し、個体群を危険な水準まで減少させないよう管理する。 | 附属書IIIは全面的な捕獲禁止ではないため、各国が個体群の状態に応じた免許、禁猟期、捕獲数、禁止猟法を具体化する必要がある。 |
| 米国海洋哺乳類保護法による保護 | 米国水域では海洋哺乳類保護法により、許可のない捕獲、殺傷、嫌がらせ、所持などを原則禁止する。調査や工事による偶発的影響も許可・監視の対象とする。 | 米国沿岸では主に迷行個体として確認されるが、漂着、混獲、海洋工事、軍事活動などへの対応に法的保護が適用される。 |
| 先住民との共同管理 | グリーンランドやカナダ北部の自給的・文化的利用を一律に排除せず、地域の捕獲記録、伝統的知識、食料安全保障を資源評価と管理に組み込む。 | 商業的な大量捕獲と地域社会の自給的利用を区別し、捕獲数の記録、年齢・性別構成、地域で観察される海氷や出現時期の変化を共同で把握する必要がある。 |
| 繁殖海域の保護 | ニューファンドランド北東沖、セントローレンス湾、デービス海峡、ヤンマイエン島周辺の流氷上繁殖域で、捕獲、船舶接近、航空機の低空飛行、騒音を制限する。 | 繁殖場所は固定した陸地ではなく毎年移動する流氷上に形成されるため、固定型の保護区だけでなく、衛星海氷情報を利用した移動型・季節型の保護区域が必要である。 |
| 換毛海域の保護 | 6~8月ごろに多数が集まるグリーンランド周辺などの換毛海域で、捕獲、船舶接近、工事、地震探査などによる攪乱を抑える。 | 換毛中は流氷上で過ごす時間が長く、逃避行動によるエネルギー消費や海中への追い立てを避ける必要がある。 |
| 海氷生息地の監視 | 衛星観測、航空調査、船舶観測を用いて、海氷の面積、厚さ、密度、流氷の移動、形成・融解時期を継続的に記録する。 | ズキンアザラシは出産、数日間の授乳、休息、換毛に流氷を必要とする。薄い氷や早期崩壊は、母子分離、低体温、溺死、捕食リスクの増加につながる。 |
| 温室効果ガスの削減 | 二酸化炭素、メタン、ブラックカーボンなどの排出を削減し、北極・北大西洋の海氷消失を抑える。 | IUCNは2025年、ズキンアザラシをVUからENへ引き上げ、海氷減少を主要な脅威としている。捕獲規制だけでは海氷を回復させられず、気候変動対策が長期的保全の根幹となる。 |
| 気候変動への適応型管理 | 海氷と繁殖集団の位置が変化した場合、禁漁区域、調査海域、航路、漁期を毎年調整する。将来も比較的海氷が残る可能性の高い海域を気候避難地として特定する。 | 従来の繁殖地が利用できなくなった場合に、新しい集結地点を迅速に確認し、保護措置を移動させる仕組みが必要である。 |
| 航空機による幼獣数調査 | 出産期に航空機から繁殖群を探索し、目視・高解像度写真で幼獣を数える。調査時点より後に生まれる個体などを補正し、年間の幼獣生産数を推定する。 | グリーンランド海では2022年にも航空調査が行われ、画像の目視判定に加えて自動検出技術も試された。長期的に同じ方法を継続することが傾向把握に重要である。 |
| 北西大西洋の再調査 | ニューファンドランド沖、セントローレンス湾、デービス海峡で同時期に航空調査を行い、繁殖群の見落としや別海域への移動を確認する。 | 北西大西洋個体群は最新の包括的評価が不足している。2012年と2017年の写真解析では、主要繁殖地で幼獣生産数の大幅な減少が示されており、定期調査の再開が重要である。 |
| 衛星標識・行動追跡 | 個体に衛星発信器や潜水記録計を装着し、回遊経路、潜水深度、海水温、採餌場所、繁殖地と換毛地の移動を調べる。 | 北東大西洋と北西大西洋では、温暖化に対する採餌海域の移動方向が同じとは限らない。個体群ごとの反応を確認して保護海域や漁業管理に反映する必要がある。 |
| 遺伝的交流の調査 | 組織試料から遺伝的多様性と繁殖集団間の交流を調べ、北東大西洋と北西大西洋の管理区分が生物学的実態に合っているか検証する。 | 遺伝的には広範囲に交流している可能性がある一方、繁殖地ごとの減少状況は異なる。遺伝的に近いことだけを理由に、減少した繁殖群の保護を弱めないことが重要である。 |
| 混獲の記録と削減 | 刺網、底刺網、トロール、延縄などに偶発的に捕獲された個体について、漁法、場所、時期、個体の状態を報告させる。混獲集中域では漁具変更や季節的閉鎖を行う。 | 混獲は総死亡数に含まれない場合が多い。漁業オブザーバー、電子監視、漁業者への報告支援を組み合わせ、未報告死亡を減らす必要がある。 |
| 漁具絡まり対策 | 浮遊ロープや遺失漁具を減らし、識別可能な漁具標識、回収制度、弱い接続部などを試験する。絡まった個体は訓練された専門チームが救助する。 | ズキンアザラシに対して効果が実証された専用漁具は限られるため、漁法別の試験と放流後の生存確認が必要である。 |
| 餌資源の生態系管理 | カラフトシシャモ類、ホッキョクダラ、アカウオ類、カラスガレイ、イカ類などの餌資源を過剰漁獲から守り、漁獲枠に捕食者の必要量と気候変動の影響を反映する。 | 海水温と海流の変化によって餌の分布が移動すると、繁殖・換毛海域から採餌場までの距離が伸びる可能性がある。単一魚種ではなく食物網全体を対象とした管理が必要である。 |
| 船舶交通の管理 | 繁殖・換毛集団の周辺で減速、迂回、接近距離の設定を行い、砕氷船が流氷を分断したり母子を分離したりする危険を減らす。 | 海氷減少で北極海航路へのアクセスが拡大しており、従来は少なかった船舶、騒音、衝突、汚染の影響が増える可能性がある。 |
| 海中騒音の抑制 | 地震探査、軍事ソナー、海底工事、船舶などの強い音源について環境影響評価を行い、重要時期の作業停止、監視員配置、段階的な音量増加などを実施する。 | ズキンアザラシへの影響には未解明点が多い。繁殖地だけでなく、深海での採餌行動や長距離移動への影響も調査する必要がある。 |
| 石油・ガス開発の規制 | 繁殖・換毛海域や主要回遊経路での掘削、地震探査、船舶活動を制限し、流出事故に備えた海洋哺乳類対応計画を整備する。 | 寒冷海域では油の分解や回収が遅く、広範囲を泳ぐ個体への曝露を防ぎにくい。開発許可の段階で累積影響を評価する必要がある。 |
| 化学汚染物質の監視 | 血液、脂肪、肝臓、腎臓などを分析し、PCB、PFAS、有機塩素系農薬、水銀、カドミウムなどの濃度を追跡する。母子間の移行や甲状腺・免疫・繁殖への影響も調べる。 | ズキンアザラシでは複数の残留性汚染物質が確認されている。捕獲調査個体、漂着個体、自給的捕獲個体から標準化した試料を収集し、長期的変化を監視する必要がある。 |
| 海洋ごみ・遺失漁具の削減 | プラスチック、ロープ、網、梱包材の海洋流出を抑え、港での漁具回収と漂流ごみの除去を進める。 | 外洋性で広い範囲を回遊するため、発生地域だけでなく北大西洋全体での廃棄物管理が求められる。 |
| 感染症・健康状態の監視 | 生体、捕獲個体、漂着死体から血液・組織を採取し、ウイルス、細菌、寄生虫、栄養状態、免疫機能を調べる。異常な死亡増加には国際的な緊急調査を行う。 | 病原体が過去の減少に関係した可能性は研究されているが、主要な原因として確定していない。海氷減少、栄養不足、汚染物質との複合影響を調べる必要がある。 |
| 漂着・救護ネットワーク | 沿岸で発見された衰弱個体、幼獣、絡まり個体、死体を専門機関へ通報し、必要に応じて保護、治療、解剖、試料保存を行う。 | 通常の分布域より南で漂着する若い個体もいる。一般の人が接近・移動させず、訓練された対応者が健康状態と救護の可否を判断する。 |
| 人による攪乱の防止 | 休息中の個体との距離を保ち、追跡、接触、餌付け、ドローンの接近を避ける。研究・撮影にも許可と行動基準を設ける。 | 母子がいる流氷や換毛集団では、接近によって個体が海へ逃げる可能性がある。観光利用が少ない地域でも、将来の利用増加を見越した基準が必要である。 |
| 保全効果の定期評価 | 幼獣生産数、成獣数、繁殖率、海氷条件、捕獲、混獲、漂着、汚染物質を共通指標として、禁漁やその他の対策が回復につながっているか検証する。 | グリーンランド海では2007年から商業捕獲を停止しても明確な回復が確認されていない。捕獲圧以外の海氷、餌資源、疾病、汚染などを同時に評価する必要がある。 |
保全活動の種類:出典
- IUCN「気候変動で北極のアザラシが危機に―2025年レッドリスト更新」
https://iucn.org/ja/press-release/202510/qihoubiandongtebeijinoasarashikaweijinishijienoniaoleihajianshaoqingxiang - ICES「タテゴトアザラシ・ズキンアザラシ合同作業部会報告書」
https://ices-library.figshare.com/articles/report/Joint_ICES_NAFO_NAMMCO_Working_Group_on_Harp_and_Hooded_Seals_WGHARP_/24306100 - ノルウェー海洋研究所「2025年海洋哺乳類諮問委員会報告」
https://www.hi.no/en/hi/nettrapporter/rapport-fra-havforskningen-2025-83 - カナダ水産海洋省「アザラシ捕獲規則とブルーバック捕獲禁止」
https://www.dfo-mpo.gc.ca/fisheries-peches/seals-phoques/humane-sans-cruaute-eng.html - NOAA Fisheries「Hooded Sealの保全・管理」
https://www.fisheries.noaa.gov/species/hooded-seal/conservation-management
ズキンアザラシと気候変動|消える海氷が繁殖を脅かす
Questioner: The Arctic is warming about four times faster than the global average, right? Because of that, the sea ice is shrinking and thinning out. But even if we change everything and give it our all to fight global warming, the thinned ice and the ice that’s already gone… it’s never coming back, is it?
Me: They say that when the white sea ice melts and exposes the dark ocean surface, it absorbs even more of the sun’s heat, which just accelerates the warming even further.
Questioner: But once winter comes around again, the ocean freezes over and everything goes back to normal, right?
Me: When winter arrives, the surface will freeze again, so the sight of an ice-covered ocean might not disappear completely. But the reality underneath has changed drastically. The “multi-year ice”—the kind that used to survive for years and boast layers meters thick—is almost entirely gone. Now, it seems the Arctic is mostly left with “first-year ice,” which forms a thin layer during the winter and then easily melts away as soon as summer hits.
Questioner: When you really think about it, that sounds incredibly serious. I mean, the ocean absorbs all that heat during the summer, melting even more of the old ice. Even if new ice manages to form over that trapped heat, it’s going to be too thin. That means it’s going to be a really tough environment for the Hooded Seals to raise their pups, doesn’t it?
Me: I’ll dig a little deeper into that, especially regarding future predictions for the Arctic climate cycle.
質問者:北極域って世界平均の約4倍の速さで温暖化しているんだよね。それで海氷が減って氷も薄くなってるってことなんだけど、これ僕たちが全てを変えて温暖化対策を頑張ったとしても、薄くなった氷と無くなってしまった海氷はもどってこないんだよね。
私:白い海氷が減って暗い海面が露出すると、より多くの太陽熱が吸収され、さらに温暖化が加速すると言われています。
質問者:でも、また冬がこれば氷が張って元に戻るんだよね?
私:冬が来れば表面上は再び海面が凍り、氷が張る光景自体はなくならないかもしれません。しかし、その中身は大きく変質してしまいます。かつては何年も、何メートルもの厚みを誇っていた「多年氷」がほとんど失われ、今の北極にあるのは、冬の間に薄く張り、夏が来れば簡単に溶けて消えてしまう「一年氷」ばかりになっているようです。
質問者:これよく考えるとすごく深刻なことのような気がしてきた。だって夏の間に地面が熱を吸収してさらに昔からある氷を溶かして、その熱の上に氷がたとえ張ったとしても薄くてズキンアザラシさんが子育てするには、難しい環境になるってことだもんね。
私:そのあたり、今後の北極域サイクル予測などを詳しく調べてみます。
ズキンアザラシと消える北極海の氷|海が青くなるほど、命の足場が失われる
北極海では、何年も夏を越えてきた厚い多年氷が姿を消し、薄く壊れやすい一年氷が広がっています。海が青く開いていくほど、流氷の上で出産し、わずか4日で子を育てるズキンアザラシの足場も失われていきます。
1. 「多年氷」の喪失とサイクルの激変
かつての北極海には、夏の融解期を越えて何年も残る、厚く強い多年氷が広がっていました。なかでも4年以上残った非常に古い海氷は、1985年3月には北極海の海氷面積の33%を占めていましたが、2019年3月にはわずか1.2%まで減少しました。これは多年氷全体の割合ではなく、「4年以上の古い氷」が占める割合です。
2019年3月には、一年氷が海氷全体の約70%を占めるまでになりました。1980年代の約35〜50%から大きく増えており、北極海は古く分厚い氷に覆われた海から、若く薄く壊れやすい氷が中心となる海へ変わっています。一年氷は冬に形成されても、翌年の春から夏に溶けやすく、次の夏を越えて多年氷へ成長することが難しくなっています。
2. 海洋の蓄熱による「秋の結氷遅れ」
海氷が減り、暗い海面が広がると、白い氷に覆われていたときよりも多くの太陽エネルギーが海へ吸収されます。温められた海がさらに海氷を溶かし、露出した海面がまた熱を吸収する。この自己強化する現象は「海氷・アルベドフィードバック」と呼ばれ、科学的には正のフィードバックに分類されます。
夏の間に蓄えられた熱は、秋になってもすぐには失われません。海面水温が高いほど秋の結氷開始が遅れ、海氷が冬の間に成長できる期間も短くなります。その結果、翌春を迎える氷は十分な厚さまで成長できず、夏の熱や嵐、波に対してさらに弱くなるという連鎖が生まれます。
3. 「氷のない北極海」の到来時期
「氷のない北極海」とは、すべての氷が完全に消えることではなく、北極海の海氷面積が100万平方キロメートル以下になる「実質的な無氷状態」を指します。
気候モデルでは、月平均で見た最初の実質的に氷のない9月が、2050年までに訪れる可能性が示されています。2024年の研究では、極端な気象条件が重なれば、最初の「氷のない一日」が2030年より前に現れる可能性もゼロではなく、各排出シナリオの早い予測を比較すると、2023年と同程度の状態から7〜20年後に訪れる可能性が最も高いとされました。
ただし、予測時期には大きな幅があります。排出量を抑えることは、最初の無氷状態を遅らせ、その頻度と継続期間を減らすうえで大きな意味を持ちます。また、夏に初めて無氷状態になっても、ただちに一年中氷が消えるわけではありません。通常の気候モデルでは、暗く冷たい秋から冬に海氷が再び形成される状態が続くと考えられています。
4. ズキンアザラシの繁殖サイクルへの深刻な影響
薄い一年氷は、嵐や波、海流によって割れたり分散したりしやすくなります。ズキンアザラシは、タテゴトアザラシよりも比較的重く、大きな流氷を繁殖場所として選ぶ傾向があり、母親は氷の縁から離れた場所で出産します。
ズキンアザラシの授乳期間は平均約4日と、知られている哺乳類の中で最も短いものです。この極端に短い授乳期間は、春に崩壊していく不安定な流氷上で繁殖するための適応と考えられています。しかし、離乳を終えた幼獣も、泳ぎや採餌を身につけるまで氷を休息場所として利用します。氷が早く崩壊すれば、授乳を終えた後であっても、嵐や波による溺死、飢餓、低体温などの危険にさらされます。
グリーンランド海の個体群は、モデル推定で1946年ごろの約140万頭から、2018年には約7万6,600頭まで減少しました。これは約95%の減少に相当します。この歴史的な激減には過去の大規模な商業捕獲が強く影響していますが、2007年に商業捕獲が停止された後も、個体群は明確に回復していません。海氷の減少、餌環境の変化、幼獣の生存率、捕食などが複合的に関係している可能性があり、急速に変わる氷の環境が回復を妨げる重要な要因の一つと考えられています。
出典
- NOAA Arctic Report Card 2019「4年以上の古い海氷の減少と一年氷への移行」:https://arctic.noaa.gov/report-card/report-card-2019/sea-ice-4/
- NOAA Arctic Report Card 2025「海氷・アルベドフィードバックと秋の結氷遅れ」:https://arctic.noaa.gov/report-card/report-card-2025/sea-surface-temperature-2025/
- Nature Communications「北極海で最初の無氷日が訪れる時期の予測」:https://www.nature.com/articles/s41467-024-54508-3
- NAMMCO「ズキンアザラシの繁殖、授乳、個体数減少と海氷の影響」:https://nammco.no/hooded-seal/
Questioner: It all depends on how much we can cut back on greenhouse gases in our daily lives from here on out. Even if we can’t instantly go back to how things used to be, if we keep making things worse, the Hooded Seals are going to lose their ice completely.
Me: With the Greenland ice sheet melting, massive amounts of freshwater are pouring into the North Atlantic. There’s real concern that the AMOC (Atlantic Meridional Overturning Circulation) will weaken even further.
Questioner: When you think about it, the dots of deforestation, land reclamation of wetlands, animal agriculture, chemical fertilizers, fossil fuels… all these big and small dots have seamlessly connected into a single circle wrapping around the Earth, throwing our climate completely out of whack.
Me: Exactly. At first, it might have been just a single tree chopped down to survive the day. Or a tiny wetland filled in to build a home. The livestock we bred to feed ourselves, the chemical fertilizers we invented to bring food to more people, the fossil fuels we started burning to make life more convenient and travel farther and faster—every single one of them had a reason behind it. But in our endless desire for more, for easier, for faster, we ended up connecting all those little dots.
Questioner: Each step was just meant to make our lives a little better, but the end result of all those dots connecting is the Arctic ice disappearing. From the Hooded Seals’ perspective, our excuses don’t mean a thing, do they?
Me: You’re right. The Hooded Seals aren’t demanding that we go back to the old ways of living or abandon everything. They just need the ice—just enough to give birth, nurse their pups for a mere four days, and send those new lives out into the ocean. If the ice is fracturing and melting at the end of the dots we connected, then it’s up to us to shrink those dots and change how they connect. Whether or not the Hooded Seals can give birth on the ice next spring isn’t some distant problem in the Arctic. It’s directly tied to the choices we make right here, today.
Thank you so much for taking the time to read this. I truly hope our thoughts reach the Hooded Seals.
鶏人|Keijin
質問者:これから、僕たちが温室効果ガスをどこまで減らして暮らしていけるかにかかっているね。すぐに昔の状態へ戻せないとしても、これ以上悪化させるようなことを続けていたら、ズキンアザラシさんたちの氷がなくなっちゃうもんね。
私:グリーンランド氷床などの融解によって、大量の淡水が北大西洋へ流れ込んでいます。今後、AMOC(大西洋子午面循環)がさらに弱まることも心配されていますからね。
質問者:そう考えると、森林破壊の点、湿地の埋め立ての点、畜産の点、化学肥料の点、化石燃料の点……。たくさんの大きな点と小さな点が見事につながって、地球を取り囲む一つの円になり、気候を狂わせているように見えるね。
私:そうですね。最初は、目の前の暮らしのために切った一本の木だったのかもしれません。家を建てるために埋め立てた小さな湿地だったのかもしれません。食べ物を得るために増やした家畜も、より多くの人へ食料を届けようと生み出した化学肥料も、暮らしを便利にし、遠くへ速く進みたいと使い始めた化石燃料も、それぞれには理由があったのでしょう。
けれど私たちは、もっと多く、もっと便利に、もっと速くと望み続けるうちに、その小さな点をすべてつなげてしまったのかもしれませんね。
質問者:一つひとつは暮らしを良くするためだったのに、全部がつながった先で北極の氷が消えているんだもんね。ズキンアザラシさんたちからすれば、僕たちの事情なんて関係ないよね。
私:そうですね。ズキンアザラシは、私たちに昔の暮らしへ戻れとも、すべてを捨てろとも言いません。ただ、子どもを産み、わずか4日ほど乳を与え、その命を海へ送り出すための氷が必要なだけです。
私たちがつないだ点の先で、その氷が割れて溶け出しているのなら、一つひとつの点を小さくし、つながり方を変えていくのも私たちです。ズキンアザラシが次の春も氷の上で子どもを産めるかどうかは、遠い北極だけの話ではなく、今日ここで私たちが何を選ぶかにつながっています。
貴重な時間を、ありがとうございました。
ズキンアザラシに、その想いが届くことを祈ります。
鶏人|Keijin
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