※このページは、[IUCNレッドリスト]世界の絶滅危惧生物図鑑(2014年版)に基づいて制作した個人ブログです。
Hello, it’s 鶏人|Keijin.
Back in 2014, the Kitti’s hog-nosed bat (Craseonycteris thonglongyai) was classified as “VU: Vulnerable.” It heavily depends on a very limited habitat, and things like human disturbance in caves, guano mining for fertilizer, tourism, the burning of nearby foraging forests, and limestone mining projects were all flagged as major threats.
Fast forward to the IUCN Red List data available in 2026, and you’ll see its status has been changed from VU to “NT: Near Threatened.” This shift happened because of updated data on their distribution and populations, including areas in Myanmar. But don’t let that fool you—their numbers are still dropping. Because they only live in such specific pockets and remain incredibly vulnerable to cave disturbances, the 2018 assessment officially kept them at “NT: Near Threatened.”
I feel like these little guys are still out there, “fluttering their tiny wings, desperately searching for a future.”
It’s a quick 5-minute read. I hope you’ll stick around until the end.
こんにちは、鶏人|Keijinです。
キティブタバナコウモリ(学名:Craseonycteris thonglongyai)は、2014年の図鑑では、洞窟への人為的干渉、肥料目的のグアノ採取、観光利用、採餌域となる周辺林の焼失、石灰岩採掘計画などが、限られた生息地に依存する本種に対する深刻な脅威として指摘されていたことから「VU:危急」と評価されていました。
そして、2026年時点で確認できるIUCNレッドリストの評価では、ミャンマー側を含む分布情報や個体群情報が更新されたことにより、IUCN基準上はVUからNTへ変更されています。ただし、個体数傾向は依然として減少とされ、生息地の局所性や洞窟攪乱への脆弱性は残されていることから、2018年評価では「NT:準絶滅危惧」とされています。
キティブタバナコウモリは今も、「小さな翼で、未来を探していた」状態なのだと思います。
この記事は短く、5分で読めます。
よかったら最後まで読んでください。
※2026年時点で、IUCNレッドリストにおける最新評価は2018年評価(2019年公開)です(以降の更新は、現時点では確認できていません)。
※本記事は専門家による学術的な評価ではなく、公開された資料に基づく個人の調査・見解を含みます。
※IUCN評価は「世界全体」と「地域・個体群」で分かれる場合があります。地域によって状況は異なります。
最新かつ正確な分類や保全状況については、IUCN公式サイトなどをご確認ください。
参考:IUCN Red List(学名:Craseonycteris thonglongyai)
キティブタバナコウモリはなぜVUからNTへ変わったのか
⬇︎キティブタバナコウモリの生態(基本情報)です。必要なら開いてください。

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 和名 | キティブタバナコウモリ |
| 別名・表記ゆれ | キティブタ鼻コウモリ、ブタバナコウモリ、バンブルビーコウモリ、キッティブタバナコウモリなど |
| 英名 | Kitti’s hog-nosed bat |
| 別英名 | Bumblebee bat、Hog-nosed bat、Kitti’s bat |
| 学名 | Craseonycteris thonglongyai |
| 命名者・命名年 | Hill, 1974 |
| 学名の由来 | タイの動物学者 Kitti Thonglongya に献名された |
| 分類 | 哺乳綱・翼手目・Craseonycteridae 科・Craseonycteris 属 |
| 分類上の特徴 | Craseonycteridae 科、Craseonycteris 属に属する現生唯一の種 |
| 近縁分類 | 分子系統ではキクガシラコウモリ上科 Rhinolophoidea に含まれ、カグラコウモリ科やサバクコウモリ科などに近いとされる |
| IUCNレッドリスト | NT:準絶滅危惧 |
| 個体数傾向 | 減少傾向とされる |
| 分布国 | タイ、ミャンマー |
| タイでの分布 | タイ西部カンチャナブリー県サイヨーク郡周辺。クウェーノイ川流域、Tenasserim Hills / Dawna Hills 周辺の石灰岩洞窟に分布する |
| ミャンマーでの分布 | ミャンマー南東部のカレン州・モン州周辺。Dawna Hills、Karen Hills、Thanlwin川、Ataran川、Gyaing川周辺の石灰岩地帯で確認されている |
| 分布の特徴 | 分布域は非常に狭く、石灰岩洞窟と周辺の森林・河川環境に強く依存する |
| 生息環境 | 乾燥常緑林や落葉林の中、河川沿いの石灰岩洞窟をねぐらにする |
| ねぐら環境 | 石灰岩丘陵の洞窟内、入口から離れた奥の壁面や天井ドーム部にとまる |
| 洞窟の特徴 | ドーム状天井、円錐状天井、通常断面をもつ洞窟などが生息確認と関係すると報告された |
| 群れの大きさ | 洞窟によって10〜15頭程度の小群から、平均約100頭、最大約500頭程度まで幅がある |
| タイ西部調査の記録 | 1983〜1984年の調査では、51洞窟中21洞窟で確認され、合計約2,000頭が記録された |
| 体の大きさ | 頭胴長約29〜33mm |
| 体重 | 約2g前後。資料によっては2g未満とされる |
| 世界最小級の哺乳類としての位置づけ | 体長では世界最小級の哺乳類とされる。体重ではトウキョウトガリネズミ類やエトルリアトガリネズミなどと比較されるため、「世界最小の哺乳類」と断定する場合は注意が必要 |
| 体色 | 赤褐色、灰褐色、褐色系。腹面は背面より淡い |
| 鼻の特徴 | ブタの鼻のようにふくらんだ特徴的な鼻を持つ |
| 耳の特徴 | 体の大きさに対して耳が大きい |
| 目の特徴 | 目は小さく、毛に隠れ気味に見える |
| 翼の特徴 | 体に対して翼は比較的大きく、暗色。ホバリングに適した翼形とされる |
| 尾の特徴 | 外から見える尾はない。尾椎はあるが、目立つ尾は形成されない |
| 飛膜の特徴 | 後肢の間に大きな尾膜を持つ。ただし尾や距が発達していないため、飛行制御への役割には限界があるとされる |
| 活動時間 | 薄明薄暮性に近い夜行性。夕方と夜明け前後に短時間活動する |
| 活動時間の長さ | 夕方に約30分、夜明けに約20分ほど洞窟を出て採食するとされる |
| 天候の影響 | 強い雨や低温では活動が妨げられやすい |
| 採食範囲 | ねぐらからおおむね1km以内の狭い範囲で採食する |
| 採食場所 | 洞窟周辺の森林、竹林、チークの樹冠、カポック、キャッサバ畑周辺などで採食する |
| 食性 | 昆虫食。小型の節足動物を食べる |
| 主な餌 | 小型のハエ類、ハチ目昆虫、チャタテムシ類、甲虫、クモなどが挙げられる |
| 採食方法 | 飛翔中に昆虫を捕らえるほか、葉や枝の表面から獲物を拾い取る可能性もある |
| エコーロケーション | 超音波を使って獲物や周囲を探知する。Bat Conservation International では、通常70〜80kHz付近、獲物に接近する際に非常に速い発声を行うと説明されている |
| タイ個体群とミャンマー個体群の違い | 形態的にはよく似るが、エコーロケーション音声に違いがあるとされる |
| 移動性 | 長距離渡りをする種ではないが、洞窟間で季節的に移動することがある |
| 繁殖 | 雌は通常、年1回1頭の子を産む |
| 出産時期 | 乾季の3〜5月ごろに出産するとされる |
| 子育て | 洞窟内で小規模な繁殖集団をつくるとされる |
| 生態的役割 | 小型昆虫を食べることで、洞窟周辺の昆虫相や森林・農地周辺の食物網に関わる |
| 主な脅威 | ねぐら洞窟の攪乱、観光、肥料目的のグアノ採取、石灰岩採掘、森林劣化、野焼き、洞窟利用、人間活動による生息地改変 |
| タイ側での重要な脅威 | 繁殖期に重なる森林の年次的な焼失・火入れが長期的な脅威になり得る |
| ミャンマー側での不確実性 | ミャンマー個体群の状態や脅威は十分に分かっていない部分が多い |
| 保護上の注意点 | 洞窟そのものだけでなく、洞窟から1km以内の採食環境、周辺森林、火入れ管理も重要 |
| 記事での注意点 | 「小さいからたくさんいそう」と書くのは不正確。分布域が狭く、洞窟依存性が強いため、局所的な攪乱でも影響を受けやすい |
| 日本語記事での表現メモ | 「小さな翼で、かろうじて未来をつかんでいた」という表現と相性がよい種。世界最小級の体、石灰岩洞窟、短い採食時間、洞窟攪乱を軸にすると伝わりやすい |
出典
- IUCN Red List:Kitti’s Hog-nosed Bat / Craseonycteris thonglongyai
- https://www.iucnredlist.org/species/5481/22072935
- Bat Conservation International:Bumblebee Bat / Craseonycteris thonglongyai
- https://www.batcon.org/bat/craseonycteris-thonglongyai-2/
- Thai National Parks:Kitti’s hog-nosed bat / Craseonycteris thonglongyai
- https://www.thainationalparks.com/species/kittis-hog-nosed-bat
- Thai Science:Search for Kitti’s Hog-Nosed Bat Craseonycteris thonglongyai in Western Thailand
- https://www.thaiscience.info/journals/Article/NHB/10439251.pdf
- Mammal Diversity Database:Craseonycteris thonglongyai
- https://www.mammaldiversity.org/taxon/1004554/
最終評価2018年:キティブタバナコウモリ「NT:準絶滅危惧」
1970年代に発見されて以来、キティブタバナコウモリは人為的干渉、肥料の収集および観光による脅威にさらされている。それ以外にも、重要な採餌域であるコウモリの住み着くつ近郊の林の焼失による破壊は重大な脅威であり、またこの種が生息する洞くつからの石灰石の採掘計画もきわめて有害になりうる。
出典:訳者 岩槻邦男、太田英利 / 発行者 池田和博 / タイトル『IUCNレッドリスト世界の絶滅危惧生物図鑑』/ 発行所 丸善出版株式会社 / 発行 2014/01/31 / © Kunio Iwatsuki, Hidetoshi Ota, 2014
| 項目 | 2014年の図鑑 | 現在(2026年確認) |
|---|---|---|
| 和名 | キティブタバナコウモリ | キティブタバナコウモリ。英名は Kitti’s Hog-nosed Bat、Hog-nosed Bat、Bumblebee Bat など。 |
| 学名 | Craseonycteris thonglongyai | Craseonycteris thonglongyai。分類上はキティブタバナコウモリ科 Craseonycteridae の唯一の現生種とされる。 |
| IUCNカテゴリ | 絶滅危惧II類 VU として掲載。 | Near Threatened、準絶滅危惧。IUCNの最新評価は2018年8月31日評価、2019年公表版として確認できる。 |
| カテゴリ変化 | VU、つまり絶滅危惧種として扱われていた。 | VUからNTへ下がっている。ただし「安全になった」というより、分布・個体数情報の更新により、IUCN基準上はNTと判断された状態。 |
| 個体数傾向 | 図鑑本文では、脅威により絶滅への危険がある種として説明。 | IUCN表示では Population trend は Decreasing、つまり減少傾向。カテゴリは下がったが、個体群の方向は良化ではない。 |
| 分布 | タイの西中部からミャンマー南東部に生息と記載。 | 現在も分布は非常に狭く、タイ西部カンチャナブリ県サイヨーク周辺と、ミャンマー南東部のカイン州・モン州周辺の石灰岩カルスト地帯に限られる。 |
| 生息環境 | 洞窟に生息し、その周辺の林が重要な採餌域とされている。 | 石灰岩洞窟をねぐらとし、周辺の森林・竹林・農地縁辺などで小型昆虫やクモ類を採食する。行動圏はねぐらからおよそ1km程度とされ、洞窟周辺環境の劣化に弱い。 |
| 種の特徴 | 世界でもっとも小さい哺乳類の一つで、単型のキティブタバナコウモリ属を構成すると説明。 | 体長約3cm前後、体重約2g前後とされる極小のコウモリ。ブタの鼻のような吻部が特徴で、現在も「世界最小級の哺乳類」として扱われる。 |
| 2014年に強調された脅威 | 人為的干渉、肥料の収集、観光、洞窟近郊の林の焼失、石灰石採掘計画。 | これらの脅威は現在も基本的に継続している。とくに、ねぐら洞窟への攪乱、観光、グアノ採取、石灰岩採掘、採餌環境の劣化が主要な懸念として残る。 |
| 人為的干渉 | 発見以来、人為的干渉にさらされていると記載。 | 現在も洞窟性コウモリとして、人の立ち入り、研究・観光・宗教利用・採掘などの影響を受けやすい。小さな洞窟コロニーが多いため、局所的な攪乱でも影響が大きくなりやすい。 |
| 肥料の収集 | 肥料の収集による脅威と記載。文脈上、洞窟内のコウモリ糞、つまりグアノ採取を指す。 | グアノ採取は現在も洞窟攪乱の一つとして挙げられる。採取そのものだけでなく、人の出入り、照明、騒音、洞窟内環境の変化がねぐら利用に影響しうる。 |
| 観光による影響 | 観光による脅威にさらされていると記載。 | 観光は現在も主要なねぐら攪乱要因の一つ。洞窟内への立ち入り、照明、騒音、写真撮影、頻繁な接近は、休息中・繁殖期のコウモリに負荷を与える可能性がある。 |
| 林の焼失・採餌域破壊 | 重要な採餌域である洞窟近郊の林の焼失が重大な脅威と記載。 | 現在もタイ側個体群では、洞窟周辺の林地焼失や野焼きが長期的な脅威とされる。特に繁殖期と重なる時期の火入れは、採餌環境を失わせる点で深刻。 |
| 石灰石採掘 | 生息洞窟からの石灰石採掘計画がきわめて有害になりうると記載。 | 石灰岩カルスト洞窟に依存するため、石灰岩採掘は現在も大きな潜在的脅威。洞窟そのものが破壊・改変されれば、ねぐらを直接失う。 |
| 保護地域 | タイではサイヨーク国立公園内に生息するため一定の保護を受けると記載。 | タイ側ではサイヨーク国立公園などの保護区域が重要。ただし、すべての個体群が完全に保護区域内にあるとは限らず、洞窟単位・周辺林単位の管理が必要。 |
| ミャンマー側の状況 | 図鑑ではタイ西中部からミャンマー南東部と記載されるが、保護の説明は主にタイ側。 | ミャンマー側でも複数の生息地が知られるようになったが、政治・地域事情もあり、継続的な調査や保全状況の把握はタイ側より不確実性が高い。 |
| 個体数情報 | 図鑑本文では、危機要因中心で、明確な総個体数は強調されていない。 | 近年の資料では、タイとミャンマーを合わせた確認個体数は数千〜1万頭規模とされることがある。ただし洞窟ごとの変動、未調査地、調査年の違いがあり、成熟個体数の確定値としては扱いに注意が必要。 |
| 遺伝的状況 | 図鑑本文では遺伝的多様性やタイ・ミャンマー個体群差の説明は中心ではない。 | 2026年公開の研究では、タイ個体群について中程度の遺伝的多様性が示され、タイとミャンマー個体群の分化や、洞窟間の遺伝構造把握が保全管理上重要とされている。 |
| 保全活動 | 2001年に保全のためのワークショップが開催され、監視、地元住民への動機づけ、重要洞窟の同定と保全が推奨されたと記載。 | 現在も必要な保全策は大きく変わらない。重要洞窟の保護、洞窟内立ち入り管理、観光管理、グアノ採取の制限、石灰岩採掘の回避、周辺林の火入れ・焼失対策、地域住民との協働が中心。 |
出典
- IUCN Red List|Hog-nosed Bat Craseonycteris thonglongyai: https://www.iucnredlist.org/species/5481/22072935
- Scientific Reports 2026|Development and cross-amplification of novel SSR markers for population genetic analysis of Kitti’s hog-nosed bat: https://www.nature.com/articles/s41598-025-30435-1
- Bat Conservation International|Bumblebee Bat / Craseonycteris thonglongyai: https://www.batcon.org/bat/craseonycteris-thonglongyai-2/
- Endangered Species Research 2009|Population size, distribution, threats and conservation status of two endangered bat species: https://www.int-res.com/articles/esr2009/8/n008p015.pdf
- ThaiScience PDF|Search for Kitti’s Hog-nosed Bat Craseonycteris thonglongyai in Thailand: https://www.thaiscience.info/journals/Article/NHB/10439251.pdf
キティブタバナコウモリは、2014年時点ではIUCNカテゴリーでVUとされ、洞窟環境への人為的干渉、グアノ採取、観光利用、採餌域となる周辺林の焼失、石灰岩採掘計画などが主要な脅威として指摘されていた。2026年確認時点では、IUCN評価はNTへ変更されているが、これは危機の解消を意味するものではない。個体数傾向は依然として減少とされ、分布域もタイ西部からミャンマー南東部の石灰岩カルスト地帯に限られる。特に本種は洞窟をねぐらとし、周辺の林地を採餌環境として利用するため、洞窟単体ではなく、周辺景観を含めた保全管理が不可欠である。カテゴリ上は一段階改善したものの、生息地の局所性と攪乱への脆弱性を考慮すれば、継続的な監視と地域単位の保全対策が必要な種である。
⬇︎キティブタバナコウモリの保護活動の種類です。必要なら開いてください。
最後に
Questioner: So they just changed the rating because they found them somewhere else, even though the numbers are still going down. By the way, it said “guano” is used for fertilizer… is that like, bat poop or something?
Me: Yeah, it’s the same old story. Let’s put a pin in that whole conservation dilemma for a second—you know, the paradox where the numbers look better on paper but the species is actually still dying out—and take a closer look at what “guano” really is.
質問者:また減ってるけど、違うところで見つかったから、って評価ですね。ところで、「グアノ」って肥料で使うって書いてあったけど、コウモリの糞とかなんでしょうかね。
私:毎度のことなので、増えているけど減っている事実は変わらないといった保全のジレンマは一旦おいときまして、「グアノ」について詳しく調べてみます。
グアノの正体と、圧倒的な「肥料パワー」
グアノには大きく分けて、洞窟に堆積する「バット・グアノ(コウモリ由来)」と、乾燥した島に堆積する「シーバード・グアノ(海鳥由来)」があります。キティブタバナコウモリの生息地で脅威となっているのは前者です。
なぜこれが肥料として重宝されるのでしょうか。 身近な例で言えば、養鶏から得られる「鶏糞(けいふん)」が、窒素やリン酸、カリウムを豊富に含む非常に優秀な有機肥料として重宝されるのと同じ理屈です。コウモリたちは毎日大量の昆虫を食べて消化し、洞窟の中に排泄します。それが雨風に晒されない洞窟という密閉空間で、微生物によって長い年月をかけて分解・濃縮されるため、究極の天然・高濃度肥料が出来上がるのです。特にバット・グアノはリン酸とカルシウムが豊富で、植物の根の成長や果実の結実を爆発的に促進させます。
グアノが動かした「帝国主義」と「資本主義」の歴史
ただの「糞」と侮るなかれ、グアノは19世紀の人類史と経済を大きく動かした「白い黄金」でした。
19世紀、産業革命と人口爆発を迎えた欧米諸国では、農地の地力が低下し、深刻な食糧危機に直面していました。そこで目をつけられたのが、南米ペルー沖などに山のように堆積していたグアノです。これを農業に投入したところ、農作物の収穫量が劇的に跳ね上がりました。 ここから、世界中で「グアノ争奪戦」が始まります。
- 法律と戦争の火種: アメリカは1856年に「グアノ島法(自国民が発見した無人のグアノ島はアメリカ領にできるという法律)」を制定し、太平洋の島々を次々と領有化しました。また、南米ではグアノの利権を巡ってスペインと南米諸国の間で戦争(チンチャ諸島戦争)まで起きています。
- 資源の枯渇と次なる依存: しかし、何千年という自然のサイクルで蓄積された資源を、人類はわずか数十年で掘り尽くしてしまいます。グアノが枯渇した後は、化石燃料を大量消費して空気中の窒素から化学肥料(アンモニア)を合成する技術(ハーバー・ボッシュ法)へと移行しました。
自然の限界を超えた収穫を求め、限りある資源を掘り尽くし、枯渇すれば別の外部資源(化石燃料など)に依存先を変える。この構図は、終わりなき成長を前提とした現代の資本主義の初期の姿であり、根本的な解決を先送りにして突き進む「現状維持依存」の歴史そのものと言えます。
コウモリの洞窟(生態系)への深刻なダメージ
歴史を動かした巨大な海鳥のグアノ産業とは規模が違いますが、東南アジアなどのローカルな地域では、現在でも洞窟内のバット・グアノの採掘が貴重な収入源や農業資材として続いています。
これがキティブタバナコウモリのような繊細な種にとって、どれほどの脅威になるか。 洞窟の床に積もったグアノは、ただのゴミではありません。そこにはグアノを食べる無数のダニ、昆虫、そしてそれらを食べる別の生物が存在し、独自の「地下生態系」を形成しています。 肥料採集者が頻繁に洞窟へ入り込み、ライトを照らし、足場を荒らし、大きな音を立ててグアノを掻き出せば、体重2グラムほどの極小のコウモリたちにとっては、まさに家を根底から破壊されるのと同じです。強いストレスで繁殖ができなくなったり、ねぐらを放棄してさらに環境の悪い場所へ追いやられたりしてしまいます。
単なる「コウモリの糞」から、人間の果てしない資源への欲求と、それが生み出す生態系破壊の連鎖が見えてきます。
出典
- IUCN Red List|Hog-nosed Bat
https://www.iucnredlist.org/species/5481/22072935 - Endangered Species Research|Population size, distribution, threats and conservation status of Craseonycteris thonglongyai
https://www.int-res.com/articles/esr2009/8/n008p015.pdf - IUCN Library System|Guidelines for Minimizing the Negative Impact to Bats and Other Cave Organisms from Guano Harvesting
https://portals.iucn.org/library/efiles/documents/Rep-2014-002.pdf - PLOS ONE|Bats as ecosystem engineers in iron ore caves
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0267870 - International Journal of Ecology|The Life Hidden Inside Caves: Ecological and Economic Importance of Bat Guano
https://doi.org/10.1155/2020/9872532
Questioner: So guano was basically doing the job of chemical fertilizers until the Haber-Bosch process came along.
Me: Exactly. And what catches my attention here is that chemical fertilizers actually take a massive amount of fossil fuels to produce. I’ve heard that with the ongoing issues in the Strait of Hormuz, making these synthetic fertilizers is becoming a real struggle right now.
Questioner: Right? If chemical fertilizers get harder to come by, people are definitely going to be like, “Oh, wait, we still have guano!”
Me: It’s been a while since the crisis in the Strait of Hormuz kicked off, so let’s dig into what the current guano situation looks like today.
質問者:ハーバー・ボッシュ法が発明されるまで、このグアノが化学肥料の代わりをしていてくれたんだね。
私:そのようですね。ここで気になったのが、化学肥料は化石燃料を大量に消費して作られているということです。現在、ホルムズ海峡の問題などがあり、化学肥料を生成することが困難になってきてると聞きました。
質問者:そうだよね。化学肥料が手に入りにくくなるとなると、「あ!グアノあるじゃん」ってなりそうだもんね。
私:ホルムズ海峡の問題が起きてからしばらく経ちますが、そのあたり、現在のグアノ事情を調べてみます。
化石燃料に依存した現代農業の脆弱性が露呈
現在、世界的に窒素肥料を中心とした化学肥料の価格高騰と供給不足が深刻化しています。その最大の理由はご指摘の通り、ホルムズ海峡を通るエネルギー輸送の停滞です。窒素肥料の主成分であるアンモニアは、天然ガスを原料として製造されます。製造コストの実に70〜90%を天然ガスが占めているため、中東の情勢悪化による天然ガスの供給制限は、そのまま化学肥料の危機に直結しています。現在、窒素肥料の約30%がこの影響を受けているという指摘もあり、世界的な食糧価格の高騰が予想されています。化石燃料に過度に依存した現代の食料生産システムの脆さが露呈している状態です。
「究極の代替品」としてのグアノへの再評価
化学肥料が手に入りにくくなった現在、環境汚染の観点や食料安全保障の観点から、代替となる有機肥料への関心が世界中で急激に高まっています。 実際に近年の農学研究(2024年の研究など)では、バット・グアノ(コウモリの糞)をトマトなどの栽培に用いた場合、化学肥料や一般的な家畜糞尿よりも土壌の有機炭素や窒素を豊かにし、果実への栄養蓄積において最も優れた結果を出すことが科学的に実証されています。 純粋な「高騰する化学肥料の優秀な代替品」としてグアノの需要は高まりを見せており、チリなどでは現在も年間数千トンのグアノ採掘が継続されています。
待ち受ける限界と「現状維持依存」の罠
では、かつての19世紀の「グアノ戦争」の時代のように、グアノが再び世界の農業を支え切れるのかといえば、それは不可能です。
天然のグアノの供給量は「現在生息しているコウモリの総数やコロニーの規模」と「過去から蓄積された残量」という物理的な限界に完全に縛られています。化石燃料で作る化学肥料の巨大な穴を埋めるために、世界中が再び洞窟のグアノに群がれば、あっという間に資源は枯渇します。それだけでなく、持続不可能な採掘はコウモリをねぐらから追放し、キティブタバナコウモリのような繊細な生き物や、グアノに依存する地下生態系を絶滅の淵へと追いやることになります。
巨大なエネルギーを消費するこれまでの農業の規模を変えずに、ただ依存先を「化石燃料」から「天然のグアノ」へすげ替えようとする動きは、根本的なシステムの転換を避ける「現状維持依存」の典型的な姿と言えます。
これからの「知足」のシステムへ向けて
外部からの資源輸入に頼り切った巨大なシステムは、一度供給網が狂うと容易に行き詰まります。巨大な発電所や送電網に依存せず、身近な太陽光やバッテリーで自立したエネルギーシステムを構築するのと同じように、食料生産や土壌の維持も、地域の身近な循環の中で完結させることが求められています。 例えば、身近な養鶏において、鶏の放牧エリアから得られる鶏糞を良質な肥料としてその土地に還元していくような、小さな閉鎖循環型のシステムです。
出典
- Council on Foreign Relations|Fertilizer, Food, and the Fragility of Global Agriculture
https://www.cfr.org/articles/the-clock-is-ticking-fertilizer-food-and-the-fragility-of-global-agriculture - FAO (Food and Agriculture Organization)|Strait of Hormuz crisis: Fertilizer scarcity will affect next harvests and food supplies
https://www.fao.org/newsroom/detail/strait-of-hormuz-crisis–fertilizer-scarcity-will-affect-next-harvests-and-food-supplies–fao-warns/en - MDPI (Agronomy)|Under a Tropical Climate and in Sandy Soils, Bat Guano Mineralises Very Quickly
https://www.mdpi.com/2073-4395/13/5/1367 - IUCN Library System|Guidelines for Minimizing the Negative Impact to Bats and Other Cave Organisms from Guano Harvesting
https://portals.iucn.org/library/efiles/documents/Rep-2014-002.pdf
Questioner: Yeah, that’s pretty much what you’d expect.
Me: I think I mentioned this before, but a few years ago, I dabbled in a sort of pseudo-self-sufficient lifestyle. I was working a vegetable patch and keeping some chickens at the same time. I’d sell their eggs under my old poultry shop name, use that money to buy their feed, and then spread their droppings on the garden. That way, I was growing veggies completely free of chemical fertilizers and pesticides.
Questioner: Did they actually grow okay without any chemical fertilizers?
Me: I was pretty anxious about it at first. But knowing I had the backup plan of just “buying veggies at the supermarket if it fails” let me dive in without sweating it too much. But man, the harvest completely blew those low expectations out of the water. I ended up with so much that I wasn’t just selling eggs—I was actually selling my vegetables at local roadside stations with a “No Chemical Fertilizers or Pesticides” sign.
Questioner: That’s amazing. When you think about it, instead of relying on the government or big corporations to support everyone, maybe if each of us just kept a small garden and raised a few chickens, we could actually make these little closed-loop systems work.
Me: Oh, if I started listing all the problems I ran into back then, we’d be here all day. But I really believe it’s doable. So right now, I’m actually thinking about giving it another shot, keeping all those past mistakes in mind.
Questioner: If you do that, the bats get to sleep in peace, and your chickens get to forage for earthworms out in the garden every day. It’s a win-win!
Thank you for sharing five minutes of your day with me.
I hope those five minutes somehow reach the Kitti’s hog-nosed bats.
鶏人|Keijin
質問者:そりゃそうだよね。ってとこですね。
私:以前にもお話しさせてもらったのですが、数年前に自給自足の真似事のようなことをやっていたことがあるんです。そのとき畑をやっていたのですが、同時に鶏を飼育していました。そして、その鶏たちの卵を「鶏人」の屋号で販売をして、鶏たちの飼料を購入してその糞を畑にまいて化学肥料と農薬を使用しないで野菜を育てていました。
質問者:化学肥料なくてもちゃんと育ったのかな。
私:最初は不安だったのですが、「育たなければスーパーで買う」といったバックアップもある状態ですので、気楽にチャレンジできました。しかしそのバックアップを見事に裏切るぐらいの収穫があり、卵販売だけではなく、野菜も道の駅などで、「化学肥料・無農薬」の看板で販売することができたぐらいでした。
質問者:すごいですね。そう考えると、国や企業が国民を支えるんじゃなくて、もしかしたら一人一人が小さな畑や養鶏をやれば、小さな閉鎖循環型のシステムも可能かも知れないってことですね。
私:その時の問題を挙げたらキリがないのです。だけど、きっとやればできると信じて、その時の失敗を思い出しながらもう一度チャレンジしたいと考えているところです。
質問者:そうすれば、コウモリさんの睡眠も妨げないで済むし、鶏さんは毎日畑でミミズが食べれるしで、いいことばかりですね。
貴重な5分間を、ありがとうございました。
キティブタバナコウモリに、その5分が届くことを祈ります。
鶏人|Keijin
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