11年後のレッドリスト|サラモチコウモリ:風のように変わらず、夜を渡り続けていた【IUCNレッドリスト比較】

11年後のレッドリスト|サラモチコウモリ:風のように変わらず、夜を渡り続けていた【IUCNレッドリスト比較】 11年後のレッドリスト
※このページは、[IUCNレッドリスト]世界の絶滅危惧生物図鑑(2014年版)に基づいて制作した個人ブログです。
※画像はすべてAI生成(
DALL·E)によるイメージであり、実際の生物写真ではありません。
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こんにちは、fukumomo3_photo です。

サラモチコウモリ(Myzopoda aurita)は、

2014年、図鑑に【LC:低懸念】として分類されていました。

2017年、IUCNレッドリストで、【LC:低懸念】と評価されました。

つまり、2014年から2017年にかけて、サラモチコウモリは

「風のように変わらず、夜を渡り続けていた」状態なのです。

※2025年時点で、IUCNレッドリストにおけるサラモチコウモリの最新評価は2017年版です。それ以降の更新は行われていません。

この記事は、とても短く5分で読めるので、どうぞ最後まで読んでいただけると嬉しいです。

※本記事は専門家による学術的な評価ではなく、公開された資料に基づく個人の調査・見解を含んでいます。
最新かつ正確な分類や保全状況については、IUCN公式サイトなどをご確認ください。
参考:https://www.iucnredlist.org/species/14288/22073303

なぜ「低懸念」の種を守るのか?保全の優先順位を考える

⬇︎サラモチコウモリの生態です。必要に応じてご覧ください。⬇︎

基本情報|サラモチコウモリ(Madagascar Sucker-footed Bat)
項目情報
和名サラモチコウモリ(吸盤足コウモリ)
英名Madagascar Sucker-footed Bat
学名Myzopoda aurita
分類哺乳類・コウモリ目・サラモチコウモリ科
分布マダガスカル島の東部および北西部沿岸地域
主な生息地熱帯雨林や湿地帯の近く。ヤシ類の葉の裏側などに生息。
体長約5〜6cm(翼開長:約25〜27cm)
体重約5〜8g
寿命約5年(野生下推定)
IUCN評価(2017年)【LC:軽度懸念(Least Concern)】

特徴

  • 名前の由来:前肢と後肢に「吸盤(サクションパッド)」のような構造があり、ヤシの葉の表面に逆さまに貼りつくことができることから。
  • 吸盤の仕組み:実際には真空吸着ではなく、湿った皮膚と筋肉の動きによる粘着作用で葉面に密着する。
  • 耳が大きい:学名 “aurita” は「耳のある」という意味で、大きく丸い耳が特徴的。
  • 飛行スタイル:比較的ゆっくりとした飛び方で、葉の間を器用にすり抜ける。

生態と行動

  • 生息環境:ヤシやパンダナス(タコノキ科)の葉の裏にぶら下がり、休息する。湿度が高く、風が少ない環境を好む。
  • 食性:主に小型昆虫(蛾や蚊など)を食べる夜行性の昆虫食コウモリ。
  • 繁殖:乾季の終わり(9〜11月ごろ)に出産期を迎える。通常1回に1子を出産。母子は葉の裏側でしばらく過ごす。
  • 捕食者回避:葉の裏側に密着することで、鳥類やヘビなどの捕食者から身を隠す。
  • 特異な適応:吸盤足を持つコウモリは世界でもこの属(Myzopoda)のみで、マダガスカル固有の進化の証とされる。

2014年絶滅危惧種:サラモチコウモリ【LC:低懸念】

この種の生息域の中では、マロジュジー国立公園やタンポロ沿岸林など少数の区域が保護されるにとどまっている。さらなる研究によって地域個体群の密度や生息地に必要な正確な条件の理解が求められている。

出典:訳者 岩槻邦男,太田英利 / 発行者 池田和博 / タイトル「IUCNレッドリスト世界の絶滅危惧生物図鑑」/発行所 丸善出版株式会社 / 発行 2014/01/31 ©️Kunio Iwatsuki, Hidetoshi Ota, 2014

項目内容
IUCN評価(最新)2017年版で「LC:低懸念(Least Concern)」と評価。2008年以降この評価を維持。2025年時点でも変更なし。
分布と個体数の再評価当初はマダガスカル東部のみに分布すると考えられていたが、調査の結果、より広範囲に生息することが確認され、個体数も安定。
生息環境への適応原生林だけでなく、二次林や農地周辺、樹木草原(wooded grassland)にも適応。タビビトノキをねぐらとし、森林伐採地でも生息可能。
主要なねぐら植物タビビトノキ(Ravenala madagascariensis)の巻いた若葉を利用。伐採跡地にも生えるため、重要な生息要素となる。
主な採餌環境コーヒー農園、劣化林、草木が点在する草原など、多様な人為的環境を利用。高い環境適応力を示す。
遺伝的多様性・社会構造地域ごとに複数の遺伝系統が存在する可能性。雄個体ばかりが捕獲される事例から、性による社会分離の仮説も提唱。
森林破壊の影響マダガスカル全体で森林伐採が進行中。生息地の質の低下や断片化が長期的リスク。
重要な保護区マロジュジー国立公園、タンポロ沿岸林などが安定個体群の拠点。保護区管理が存続に不可欠。
研究の進展(2024–2025)生態・遺伝学的研究が継続中。生息密度や環境耐性の閾値など、今後の調査での解明が期待される。
今後の課題各地域の個体群構造、生息環境の閾値、生態行動の年間変動を明らかにする長期モニタリングが必要。

2025年現在も、サラモチコウモリは絶滅の危機が低い「低懸念」種とされている。

しかし、そのユニークな生態とマダガスカルの環境変化を考慮すると、決して楽観視はできない。

マロジュジー国立公園などの保護区の重要性は変わらず、今後も個体群の動向や生息地の変化を監視し、科学的知見に基づいた保護策を継続していく必要がある。

⬇︎サラモチコウモリの主な保護活動の種類です。必要に応じてご覧ください。⬇︎

保護活動の種類内容の概要
生息地の保全マダガスカル南西部の湿地林やバオバブ林を保護し、森林伐採や焼畑による生息地破壊を防止
森林再生と保護区設定マダガスカル政府とNGOが連携し、トロリアナロやトリベナ地域に森林保護区を拡大
農業との共存焼畑農業の縮小と持続的農業への転換を促し、森林依存型の生活習慣を改善
外来種対策ネズミやイタチなど、営巣地を脅かす外来捕食者の駆除を進行
研究とモニタリング夜間行動や超音波発声、吸着足の生理構造などの研究を通じて生態を解明
教育・地域参加地元住民への環境教育やエコツーリズムの導入により、保全意識を向上
国際協力マダガスカル生物多様性センターやIUCNの支援を受け、国際的な保護戦略を推進

主な取り組み

  • 森林保護:伐採や焼畑を防止し、湿地林とバオバブ林を保全
  • 保護区拡大:マダガスカル政府とNGOによる森林保護区の指定
  • 持続的農業:焼畑依存を減らし、森林破壊を抑制する農業支援
  • 外来種管理:捕食動物の駆除と営巣地の保護
  • 研究促進:吸着足の構造や行動生態の調査・モニタリング
  • 教育活動:地域住民への保全教育・エコツーリズム導入
  • 国際協力:IUCN・WWFなどとの連携による長期保全プロジェクト

最後に

これを読んでみて、どのように感じましたか?

「低懸念の種よりも危機などの種を優先してるのかな?」

たしかに、優先順位などあるのか気になるところです。

少し深掘りして調べてみますね。


生物多様性の保全活動では、限られた資源(資金、人材、時間)を最大限有効に活用するため、どの種や地域を優先的に守るかという戦略的な判断が不可欠である。

その優先順位は、いくつかの重要な基準を組み合わせて決められている。

分類内容補足・例
1. 絶滅のリスク(IUCNレッドリスト)絶滅の危険性の高さを基準に、IUCNが「深刻な危機(CR)」「危機(EN)」「危急(VU)」などのカテゴリーで分類。リスクが高い種ほど緊急性が高く、保護活動の優先度も高い。各国の政策にも反映。
ポイントレッドリストは「科学的な絶滅リスク評価」であり、直接の「保護順位」ではないが、優先判断の基礎となる。
2. 生態系における重要性絶滅リスクだけでなく、その種が生態系で果たす役割を考慮。影響力の大きい種は、リスクが低くても優先的に保護される。
アンブレラ種広大な生息地が必要で、その保護により他の多くの種も守られる。トラ、イヌワシなど
キーストーン種個体数が少なくても、生態系全体のバランスを支える重要な種。ラッコ、ビーバーなど
フラッグシップ種カリスマ性が高く、人々の関心や支援を集めやすい象徴的な種。ジャイアントパンダ、コアラなど
3. 「場所」の重要性生物多様性が高く、破壊の危機にある「地域」そのものを保全対象とする考え方。
生物多様性ホットスポット固有種が多く、生息地の70%以上が失われた地域。世界で36カ所が指定。例:マダガスカル、カリフォルニア・フロリスティック地域など
企業の取り組み(TNFDなど)自然資本への影響や依存度を分析し、重要地域を優先して保全活動を行う流れが強まっている。TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)など
「低懸念(LC)」の種を守る意味「低懸念」は“安心”ではなく、予防的保全や地域固有の多様性維持の観点で重要。
地域レベルでの絶滅リスク世界的に見れば安定でも、地域個体群が絶滅の危機にある場合がある。モリアオガエル(全国では普通種だが、奈良県では絶滅危惧I類)
生態系バランスの維持普通種でも減少すると生態系全体に影響。
予防的な保全問題が顕在化する前に対応する方が効果的でコストも低い。

野生生物の保護における優先順位は、単に「絶滅しそうか、どうか」だけで決まるわけではない。

絶滅リスクを基本としつつ、その種が生態系で果たす役割、社会的な関心の高さ、そしてどの場所を守るべきかといった多様な視点から、総合的に判断される。

しかし、「社会的な関心の高さ」も保護の優先順位を決める一因となっている。

項目内容補足・例
社会的な関心の高さとは一般の人々の認知度・人気・メディアでの注目度を指す。「注目度」や「話題性」とほぼ同義。
フラッグシップ種(象徴種)とは保護活動の“旗印”として、人々の共感や資金を集めやすいカリスマ的な種。ジャイアントパンダ、コアラ、トラなど。
目的保護活動の認知度向上、寄付・協賛の促進、普及啓発の推進。WWFのパンダロゴなどが代表例。
課題・批判点内容具体例・補足
人気投票的な偏り見た目の愛らしさや格好良さで保護対象が選ばれ、地味な生物が後回しにされる傾向。昆虫・両生類・菌類・植物などが軽視されがち。
生態学的重要性とのズレ人気の高さと生態系での重要度が一致しない。微生物や花粉媒介昆虫の方が実は重要な場合も。
保護資金の偏在資金や支援が「スター的動物」に集中し、他の危機的種が見過ごされる。
それでも重視される理由内容補足・例
資金調達のエンジン人気種は寄付・協賛を集めやすく、活動の継続を支える。パンダのロゴによるWWFの認知効果。
環境問題への入り口「かわいい動物を守ろう」という単純なメッセージが人々の関心を呼び起こす。パンダやコアラを通じて生態系保全を知るきっかけに。
アンブレラ効果人気種の生息地保全が、同地域の他の多くの種を守ることにつながる。トラを守ることで、その森の多様な生物が守られる。
結論:理想と現実のバランス内容補足
現実的な戦略としての「関心の高さ」社会的な関心を活かしつつ、科学的データに基づいた保護計画を立てる。広報ではフラッグシップ種、現場ではIUCNや生態学的基準に基づく。
バランス重視の取り組み現代の保護団体は「共感」と「科学」の両立を目指している。

知名度が低い生物にも光を当て、生態系全体の重要性を伝えていく地道な努力と、人々の心を動かすシンボルを戦略的に活用すること。

その両輪があってこそ、野生生物の保護は前に進んでいくと言える。


ここまで読んで、『あなた』は、どのように感じましたか?

コメントで意見を聞かせてくれると、とても嬉しいです。

あなたの貴重な5分間を、本当にありがとうございました。

サラモチコウモリに、あなたの5分が届くことを祈ります。

fukumomo3_photo


インスタでは、サラモチコウモリたちの姿を“図鑑みたいに”並べて見られます。
ビジュアルで伝える命の物語、よかったらのぞいてみてください。

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