11年後のレッドリスト|コモンガンギエイ:深き青の奥で、未来を問う沈黙を続けていた【IUCNレッドリスト比較】

11年後のレッドリスト|コモンガンギエイ:深き青の奥で、未来を問う沈黙を続けていた【IUCNレッドリスト比較】 11年後のレッドリスト
※このページは、[IUCNレッドリスト]世界の絶滅危惧生物図鑑(2014年版)に基づいて制作した個人ブログです。
※画像はすべてAI生成(
DALL·E)によるイメージであり、実際の生物写真ではありません。
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こんにちは、fukumomo3_photo です。

コモンガンギエイ(Dipturus batis)は、

2014年、図鑑に【CR:深刻な危機】として分類されていました。

2024年、IUCNレッドリストで、【CR:深刻な危機】と評価されました。

つまり、2014年から2024年にかけて、コモンガンギエイは

「深き青の奥で、未来を問う沈黙を続けていた」状態なのです。

※2025年時点で、IUCNレッドリストにおけるコモンガンギエイの最新評価は2024年版です。それ以降の更新は行われていません。

この記事は、とても短く5分で読めるので、どうぞ最後まで読んでいただけると嬉しいです。

※本記事は専門家による学術的な評価ではなく、公開された資料に基づく個人の調査・見解を含んでいます。
最新かつ正確な分類や保全状況については、IUCN公式サイトなどをご確認ください。
参考:https://www.iucnredlist.org/species/203364219/256580832

「混獲」と「食用文化」が重なった絶望的バランス

⬇︎コモンガンギエイの生態です。必要に応じてご覧ください。⬇︎

基本情報|コモンガンギエイ(Common Blue Skate)
項目情報
和名コモンガンギエイ
英名Common Skate / Common Blue Skate
学名Dipturus batis
分類軟骨魚類・ガンギエイ科
分布北東大西洋(ノルウェー~ポルトガル)、地中海一部海域
主な生息地大陸棚や沿岸の砂泥底(水深20〜600m)
体長最大約2.5〜3m(ヨーロッパ最大級のエイの一種)
体重最大100kg以上
寿命約20〜100年とされる(長寿の可能性あり)

特徴

  • ヨーロッパ最大級のエイ:翼のような胸びれを広げると3m近くに達する。
  • 名前の由来:「Common Skate」は“よく見られるエイ”という意味だが、現在は乱獲で激減。
  • 体色:背面は暗褐色〜灰色で小さな斑点、腹面は白色。
  • 食性:底生性で、魚類・甲殻類・軟体動物などを捕食する肉食性。

生態と行動

  • 底生生活:大陸棚や深場の砂泥底に生息し、海底でじっとしていることが多い。
  • 繁殖:卵生で、「人魚の財布」と呼ばれる角張った卵鞘を産む。
  • 成長が遅い:成熟までに長い時間がかかるため、乱獲に非常に弱い。
  • 個体群の崩壊:過去数十年にわたり漁業による混獲・乱獲で急減。特に北海やアイルランド海で深刻。
  • 保全状況:IUCNレッドリスト【CR:深刻な危機】。EUや英国で漁獲規制・保護区指定が進められている。

2014年絶滅危惧種:コモンガンギエイ【CR:深刻な危機】

コモンガンギエイの寿命の長さと成長の遅さは、この種が乱獲に耐える能力をほとんど持たないことを示している。

出典:訳者 岩槻邦男,太田英利 / 発行者 池田和博 / タイトル「IUCNレッドリスト世界の絶滅危惧生物図鑑」/発行所 丸善出版株式会社 / 発行 2014/01/31 ©️Kunio Iwatsuki, Hidetoshi Ota, 2014

特徴・要因内容影響
成長の遅さ成熟に10〜20年以上かかる成熟前に漁獲されやすい
長寿最大50年生きる世代交代が極めて遅い
繁殖力の低さ年間産卵数は約40個絶対数が少なく、補充が追いつかない
卵の特徴大型で生存率は高いしかし数が少なく乱獲に弱い
回復力(Resilience)個体数が2倍になるのに14年以上(FishBase)回復不能レベルの脆弱さ
自然死亡率(M)非常に低い漁獲が加わると一気にバランス崩壊
漁獲死亡率(F)混獲やトロール漁によって高まる個体群の維持が不可能に
現状かつては普通種だったが各地で局所的絶滅IUCNレッドリスト【CR:深刻な危機】

コモンガンギエイは「成長や繁殖による回復能力が、漁獲による減少圧力に全く追いつかない」という、極めて脆弱なバランスの上に成り立っている。

そのため、少しの乱獲でも個体数が回復できず、激減してしまう。

⬇︎コモンガンギエイの主な保護活動の種類です。必要に応じてご覧ください。⬇︎

保護活動の種類内容の概要
漁獲規制EUやイギリス周辺での完全禁漁措置、特に底引き網や延縄漁での捕獲禁止
混獲防止漁具改良や漁業管理区域の設定によって、偶発的な混獲を減少
保護区の設定主要な分布海域(北海・アイルランド海など)で海洋保護区を指定し、人為的圧力を制限
国際的規制OSPAR条約など北東大西洋の国際枠組みによる保護対象種に指定
研究とモニタリング個体数調査、成長・繁殖特性の研究、長期モニタリングで回復状況を追跡
市民・漁業者参加漁業者との協力でデータ収集や報告を促進し、地域主体の保全を実施
教育と啓発絶滅危惧種であることを一般市民に広め、消費回避や保護意識を高める活動

主な取り組み

  • 禁漁措置:EU・英国水域での商業的漁獲を全面禁止
  • 混獲回避:漁具改良や漁場規制で混獲を減らす取り組み
  • 海洋保護区:繁殖地や主要分布域を含む保護区で生息環境を守る
  • 国際枠組み:OSPAR条約やEU指令に基づく保護指定
  • 研究調査:個体数の推定や繁殖生態の科学的研究を継続
  • 漁業者協働:混獲報告やデータ収集を漁業者と共同で実施
  • 市民啓発:希少種であることを伝え、消費・利用を控えるキャンペーンを展開

最後に

これを読んでみて、どのように感じましたか?

「知ることって大切だなって思った」

この種の寿命が平均50年であることを考えたら乱獲はできないよね。

「そもそもこの種のエイって何に加工されてるの?」

そこ気になりますよね。乱獲する理由を調べてみますね。


背景詳細影響
混獲(bycatch)他の魚(タラ・ヒラメ・エビなど)を狙う底引き網漁(トロール漁)で意図せず捕獲される網に入りやすく逃げられないため、大量に捕獲される
専門的漁獲ではない狙って獲られたわけではなく「副産物」として獲れてしまう成熟前の若い個体も多数混獲され、回復不可能に
食用需要(ヨーロッパ中心)翼のような胸ビレが「スケートウィング」として市場で流通古くからフランス・イギリスで利用され需要が存在
代表的な料理フランス料理「エイヒレのムニエル(Raie au beurre noir)」、イギリスのフィッシュ・アンド・チップス代用、唐揚げやスープなど「獲れれば利用できる」という背景が、混獲魚の消費を促進
その他の利用例韓国の発酵食品ホンオフェ(強烈なアンモニア臭の珍味)伝統食文化として根強い需要あり
結果「意図せず獲れてしまう」+「食材として利用できる」回復力を超える漁獲圧 → IUCNでCR:深刻な危機
  • 主な原因は「混獲」: 他の魚を狙った底引き網漁で、意図せず一緒に大量に獲られてしまった。
  • 食用としての需要: 獲れたエイは、特にヨーロッパで「スケートウィング」として古くから食用にされてきたため、市場価値があった。

この「意図せず獲れてしまう」状況と、「獲れれば食材になる」という背景が組み合わさり、コモンガンギエイの回復力をはるかに超える漁獲圧がかかり続けた結果、現在のような危機的な状況を招いた。

現在、EUなど多くの海域では、コモンガンギエイの漁獲や船上保持が法律で禁止されており、保護の取り組みが進められている。
出典:OSPAR Assessment Portal


ここまで読んで、『あなた』は、どのように感じましたか?

コメントで意見を聞かせてくれると、とても嬉しいです。

あなたの貴重な5分間を、本当にありがとうございました。

コモンガンギエイに、あなたの5分が届くことを祈ります。

fukumomo3_photo


インスタでは、コモンガンギエイたちの姿を“図鑑みたいに”並べて見られます。
ビジュアルで伝える命の物語、よかったらのぞいてみてください。

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