※このページは、[IUCNレッドリスト]世界の絶滅危惧生物図鑑(2014年版)に基づいて制作した個人ブログです。
Hi there, it’s 鶏人|Keijin.
In the 2014 reference book, the Blue Whale (Balaenoptera musculus) was assessed as “Endangered” (EN). Massive commercial whaling in the past had decimated populations worldwide, and even after they were protected, their numbers remained drastically below pre-whaling levels.
Fast forward to 2026, and their IUCN Red List assessment remains exactly the same as it was in 2014: still “Endangered.”
In recent years, the global population has been showing an upward trend. This is thanks to the international whaling ban in place since 1966, ongoing population surveys, acoustic monitoring, and efforts like rerouting and slowing down ships to reduce collisions. However, the speed of recovery varies wildly depending on the region. The Antarctic subspecies, for example, is still hovering way below its original numbers.
I think the Blue Whale’s current situation can be summed up like this: “The blue giants are returning, but the ocean’s scars haven’t faded yet.”
I’ve tucked the more in-depth details into the drop-down sections below. But honestly, I’d be more than happy if you could just read through this main text right to the end.
こんにちは、鶏人|Keijinです。
シロナガスクジラ(Balaenoptera musculus)は、2014年の図鑑では、過去の大規模な商業捕鯨によって世界各地の個体群が壊滅的に減少し、捕鯨から保護された後も、捕鯨以前の個体数を大きく下回っていたことなどから「EN:絶滅危惧」と評価されていました。
そして、2026年時点で確認できるIUCNレッドリストの評価も、2014年と変わらず、「EN:絶滅危惧」のままでした。
近年は、1966年から続く国際的な捕獲禁止や個体数調査、船舶との衝突を減らすための航路変更・減速、音響監視などが進められ、世界全体の個体群は増加傾向を示しています。しかし、回復速度には大きな地域差があり、南極亜種などは現在も捕鯨以前の水準を大幅に下回っています。
シロナガスクジラは今も、「青い巨体は戻る、海の傷はまだ消えない」という状態なのだと思います。
少し詳しい内容は折りたたみの中にまとめています。
まずは本文だけでも、最後まで読んでもらえたらうれしいです。
※2026年時点で、IUCNレッドリストにおける最新評価は2018年評価(2018年公開)です(以降の更新は、現時点では確認できていません)。
※本記事は専門家による学術的な評価ではなく、公開された資料に基づく個人の調査・見解を含みます。
※IUCN評価は「世界全体」と「地域・個体群」で分かれる場合があります。地域によって状況は異なります。
最新かつ正確な分類や保全状況については、IUCN公式サイトなどをご確認ください。
参考:IUCN Red List(学名:Balaenoptera musculus)
シロナガスクジラはなぜ絶滅危惧種なのか|2014年と2026年のIUCN比較
⬇︎シロナガスクジラの生態(基本情報)です。必要なら開いてください。

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 和名 | シロナガスクジラ |
| 英名 | Blue Whale |
| その他の英名 | Blue Rorqual、Sulphur-bottom Whale |
| 学名 | Balaenoptera musculus |
| 命名者・命名年 | Carl Linnaeus、1758年 |
| 原記載名 | Balaena musculus。現在はナガスクジラ属 Balaenoptera に分類されるため、命名者名を括弧に入れて Balaenoptera musculus (Linnaeus, 1758) と表記される |
| 模式産地 | スコットランド周辺海域 |
| 分類 | 動物界/脊索動物門/哺乳綱/鯨偶蹄目/ヒゲクジラ亜目/ナガスクジラ科/ナガスクジラ属 |
| 基本的な位置づけ | 現生動物だけでなく、これまで地球上に存在したことが確認されているすべての動物の中で最大とされる海生哺乳類 |
| 亜種・地域個体群 | 北半球の基亜種 Balaenoptera musculus musculus、南極海のナンキョクシロナガスクジラ B. m. intermedia、インド洋などのピグミーシロナガスクジラ B. m. brevicauda、北部インド洋の B. m. indica、チリ沖を中心とする未命名の南東太平洋型が認識されている。亜種や個体群の境界には研究途上の部分もある |
| 世界の分布 | 北極海を除く世界の主要な海洋に広く分布する。北大西洋、北太平洋、南極海、南東太平洋、インド洋、南西太平洋などに複数の個体群が存在する |
| 分布しない、または極めて少ない海域 | 北極海、地中海、オホーツク海、ベーリング海などでは通常ほとんど見られない。世界的な分布域は広いものの、個体群密度は低く、海域による偏りが大きい |
| 日本周辺 | 日本近海を含む北西太平洋にも分布するが、現在の目撃例は多くない。外洋域を中心に回遊し、日本沿岸では漂着やまれな目撃が記録されている |
| 主な生息環境 | 外洋の表層から中層を主な生活場所とする。大陸棚の縁、湧昇域、海氷縁辺、海流の境界など、オキアミが高密度に集まる海域では沿岸近くや比較的浅い海域にも現れる |
| 回遊 | 多くの個体群は季節回遊を行い、夏には高緯度の豊かな採餌海域へ、冬には低緯度から中緯度の繁殖・出産海域へ移動する。ただし、北部インド洋などには長距離の南北回遊を行わない個体群もあり、すべての個体が毎年同じように移動するわけではない |
| 成獣の体長 | 一般に約21~27メートル。北大西洋・北太平洋の個体は最大約27メートル、南極海の個体は30メートルを超えることがある。確実な記録として約33メートルの個体が知られる |
| 成獣の体重 | 一般に約90~150トン。大型の南極個体では150トンを超えることがある。体重は直接計測が難しく、過去の捕鯨記録に基づく推定値には幅がある |
| 雌雄差 | 一般に雌の方が雄より大きい。大型化は妊娠、出産、授乳に必要なエネルギーを蓄えるうえで有利と考えられている |
| 体形 | 体は非常に長く流線形で、最大の動物でありながら比較的細身に見える。頭部は幅広く、上から見るとU字形。背びれは体の後方にある小さな三角形または鎌形で、高さは通常25~35センチメートル程度 |
| 体色 | 背面は青灰色から暗灰青色で、全身に淡いまだら模様がある。海中では光の影響によって鮮やかな青色に見えることが英名の由来となった |
| 腹面の色 | 腹面はやや淡く、冷たい海域では付着した珪藻によって黄褐色に見えることがある。このため、かつての捕鯨者から Sulphur-bottom Whaleと呼ばれた |
| 個体識別 | 体側のまだら模様や尾びれの形、傷跡などは個体ごとに異なる。研究では写真を照合するフォト・アイデンティフィケーションによって、移動、生存、個体数が調べられる |
| 噴気 | 頭頂部に2つの噴気孔がある。呼気による噴気はほぼ垂直に高く上がり、通常6~9メートル、条件によっては10メートル以上に見える |
| ヒゲ板 | 歯を持たず、上顎の左右にそれぞれ約270~400枚の黒いヒゲ板が並ぶ。ヒゲ板はケラチン質で、海水から餌をこし取る巨大な濾過装置として働く |
| 喉のひだ | 下顎から腹部にかけて約55~88本の溝状のひだがある。採餌時には喉と口腔が大きく広がり、自身の体積に匹敵するほど大量の海水を一度に取り込める |
| 食性 | オキアミ類をほぼ専食する。地域によって利用するオキアミの種類は異なり、小型の群泳魚やカイアシ類などを偶発的に食べることもある |
| 採餌方法 | オキアミの群れへ加速しながら口を大きく開け、大量の海水と餌を飲み込むランジ・フィーディングを行う。口を閉じた後、舌で海水をヒゲ板の隙間から押し出し、残ったオキアミをのみ込む |
| 1日の摂餌量 | 大型個体は採餌期に1日数トンのオキアミを食べ、条件が良い場合には最大約6トンに達すると推定される。冬の繁殖期には摂餌量が大きく減る個体もいる |
| 潜水 | 採餌時には数十~数百メートル潜る。潜水時間は通常10~20分程度だが、海域、餌の深さ、行動によって大きく変化する |
| 遊泳速度 | 通常の移動や採餌時は時速約8キロメートル前後。短時間であれば時速30キロメートルを超える速度を出すことができる |
| 社会性 | 単独または2頭で見られることが多く、固定した大きな群れは作らない。母子は離乳まで行動を共にし、餌が集中する海域では多数が緩やかに集まることがある |
| 発声 | 人間の可聴域より低い周波数を中心とした非常に大きな音を発する。海中を数百キロメートル以上伝わることがあり、遠距離の個体間通信、繁殖、個体群の維持などに使われると考えられている |
| 発声の地域差 | 鳴音の構造は海域や個体群によって異なる。特徴的な音の型を利用した音響観測により、目視調査が難しい外洋でも分布、季節移動、長期的な出現変化を調べられる |
| 繁殖 | 主な交尾と出産は冬季の低緯度から中緯度海域で行われると考えられている。ただし、交尾行動や主要な繁殖海域には未解明の部分が多い |
| 妊娠期間 | 約10~12か月 |
| 産子数 | 通常1産1子。双子は極めてまれ |
| 出産間隔 | 一般に2~3年に1回 |
| 出生時の大きさ | 体長約7メートル、体重約2~3トン。出生時点ですでにゾウの成獣に近い体重を持つ |
| 授乳と成長 | 母乳は脂肪分が非常に高い。幼獣は大量の母乳を飲み、条件によっては1日約90キログラムずつ体重を増やす。生後約6~7か月で離乳し、その頃には体長が出生時のおよそ2倍近くになる |
| 性成熟 | 約5~15歳で性成熟すると考えられている。成熟年齢には性別、亜種、個体群による幅がある |
| 寿命 | 平均的な寿命は約80~90年と推定される。死亡個体の耳垢栓に形成された層などを調べて年齢を推定する |
| 天敵 | 健康な成獣を捕食できる動物はほとんどいない。シャチによる攻撃が確認されており、特に幼獣や弱った個体が狙われる |
| 生態系での役割 | オキアミを大量に摂食する一方、排泄物によって鉄や窒素などの栄養塩を海面付近へ戻し、植物プランクトンの生産を支える。死亡後に海底へ沈んだ遺骸は、深海生物へ長期間にわたり餌と生息場所を提供する |
| 捕鯨以前の状態 | かつては世界の各海洋に現在よりはるかに多く生息し、特に南極海には20万~30万頭規模の個体群が存在したと推定されている |
| 激減した原因 | 19世紀末から20世紀に発達した動力船、炸裂銛、船上処理設備、捕鯨母船によって、それまで捕獲が難しかったシロナガスクジラの大規模捕獲が可能になった。南半球だけで30万頭以上、北大西洋と北太平洋を合わせて約2万頭が捕獲された |
| 捕鯨からの保護 | 海域ごとに保護開始時期は異なるが、IWCでは1966年からシロナガスクジラの商業捕鯨が全面的に禁止された。その後、一部の個体群では緩やかな増加が確認されている |
| 推定個体数 | IUCNの2018年評価では、世界全体で成熟個体約5,000~15,000頭、幼獣を含む総個体数約10,000~25,000頭と推定された。海域別の調査時期や推定方法が異なるため、単純な合計には大きな不確実性がある |
| 個体群の動向 | 世界全体では増加傾向と評価されているが、回復速度には大きな地域差がある。北東太平洋など回復が確認される個体群がある一方、南極個体群は増加していても捕鯨以前の水準を大幅に下回る |
| 南極個体群 | 捕鯨以前には約20万~30万頭いたと推定されるが、20世紀には一時400頭未満まで減少した。現在は2,000頭を超えると考えられているものの、依然として捕鯨以前の1%前後にとどまる |
| IUCNレッドリスト | 種全体は Endangered(EN:絶滅危惧)。南極亜種 B. m. intermedia は Critically Endangered(CR:深刻な危機)、ピグミーシロナガスクジラ B. m. brevicauda は Data Deficient(DD:データ不足)と評価されている |
| ワシントン条約 | 附属書I。国際的な商業取引は原則として禁止される |
| 移動性野生動物種条約 | 附属書I。分布国による厳格な保護と、生息地・回遊経路の保全に向けた国際協力の対象となっている |
| 現在の主な脅威 | 大型船との衝突、漁具への絡まり、船舶・資源探査などによる海中騒音、化学物質や海洋ごみによる汚染、生息環境の悪化など |
| 気候変動の影響 | 海水温、海流、海氷、湧昇、海洋生産力が変化すると、主要な餌であるオキアミの量や分布、発生時期が変わる可能性がある。特にオキアミへの依存度が高いシロナガスクジラでは、採餌海域の移動や回遊時期とのずれ、繁殖に必要なエネルギーの不足につながるおそれがある |
| オキアミ漁との関係 | 南極海などでオキアミ漁が拡大すると、場所と時期によってはシロナガスクジラの採餌域と重なる可能性がある。気候変動による餌環境の変化と漁業による採取が重なった場合の影響が懸念されている |
| 調査方法 | 船舶・航空機による目視調査、体表模様を使った写真識別、衛星標識、遺伝子解析、糞や皮膚の分析、水中マイクによる音響観測などが用いられる |
| 保全上の課題 | 広大な海域を移動するため、一国だけの保護では十分ではない。船舶航路と速度の管理、漁具の改善、海中騒音の低減、重要な採餌・繁殖海域の保護、オキアミ資源の生態系に基づく管理、国際的な個体群調査の継続が必要となる |
基本情報:出典
最終評価2018年:シロナガスクジラ「EN:絶滅危惧」
速い漁業ボートや破壊的な銛ができるまでは、シロナガスクジラは持ち前の大きさとスピードで商業的な捕鯨から身を守っていた。しかし、19世紀後半に始まった集中的な捕鯨で、国際的保護下に置かれることになる1960年代までに絶滅のふちへと追いやられた。今日この種にとっての最大の脅威は、気候変動による海水の酸性化や他の要因によって、主要な餌資源であるオキアミが手に入りにくくなっていることだろう。
出典:訳者 岩槻邦男、太田英利 / 発行者 池田和博 / タイトル『IUCNレッドリスト世界の絶滅危惧生物図鑑』/ 発行所 丸善出版株式会社 / 発行 2014/01/31 / © Kunio Iwatsuki, Hidetoshi Ota, 2014

2026年8月時点でも、シロナガスクジラはIUCNレッドリストで絶滅危惧(EN)のままです。ただし、世界全体の個体群傾向は「増加」と評価されています。
一方、2014年の図鑑が「今日この種にとっての最大の脅威」としたオキアミ減少については、現在も重大な将来リスクですが、船舶との衝突などを上回る「現在最大の脅威」とまでは断定できません。また、海洋酸性化がオキアミに及ぼす影響も、成長段階や海域によって異なり、2014年当時より複雑に捉えられています。
| 項目 | 2014年の図鑑 | 現在(2026年確認) |
|---|---|---|
| 和名・学名 | シロナガスクジラ。学名は Balaenoptera musculus | 和名・学名に変更なし。世界の主要な海洋に分布し、少なくとも5亜種が認められている |
| IUCNカテゴリー | 絶滅危惧IB類(EN)として掲載 | 絶滅危惧(EN)。IUCNレッドリスト2026-1で確認できる最新評価は2018年3月16日実施、2019年に訂正版が公表された評価である |
| 評価の変化 | 絶滅危惧(EN) | 2014年からカテゴリー上の改善はなく、現在もEN。ただし個体群傾向は「増加」と評価されている |
| 推定個体数 | 図鑑本文には具体的な個体数の記載なし | 世界全体で成熟個体5,000〜15,000頭、全年齢を含めて約10,000〜25,000頭と推定される。ただし、全世界を同時に数えた最新の一斉調査ではなく、複数海域の推定を統合した幅のある数字である |
| 捕鯨前との比較 | 集中的な捕鯨によって絶滅のふちへ追いやられたと記載 | 捕鯨前には世界で約30万頭いたとする推定があり、現在も歴史的な個体数を大きく下回る。南半球だけで30万頭以上が捕獲されたとされる |
| 商業捕鯨の影響 | 速い捕鯨船や破壊力の大きい銛が登場するまで、大きさと速さによって捕鯨を免れていた。19世紀後半以降の集中的な捕鯨で激減 | 機械式銛、動力船、工船の普及によって20世紀前半に大量捕獲されたことが、現在の希少性を生んだ最大の歴史的原因である。1930〜1931年の1漁期だけで約3万頭が捕獲された |
| 捕鯨からの保護 | 1960年代までに国際的保護下に置かれたと記載 | IWCによるシロナガスクジラの捕獲禁止は1966年に世界規模へ拡大された。意図的な捕獲は1978年以降記録されていない |
| 世界全体の傾向 | 生息数は徐々に回復の兆しを見せていると記載 | 世界全体では増加傾向。北大西洋や南極海の一部個体群で回復が確認され、一部では年最大約7%の増加が報告されている |
| 地域差 | 地域別の詳しい回復状況は記載されていない | 回復速度には大きな地域差がある。米国カリフォルニア沖の個体群は捕鯨前の約97%まで回復したとの推定がある一方、南極亜種は依然として捕鯨前の1%未満とされ、IUCNでは深刻な絶滅危惧(CR)に分類されている |
| 現在の直接的脅威 | 主に気候変動と餌資源の減少を挙げている | 船舶との衝突が重要な直接的脅威。特にカリフォルニア沖やスリランカ周辺など、採餌海域と主要航路が重なる場所で危険性が高い。漁具への絡まり、海洋騒音、汚染、船舶による攪乱、生息環境の悪化も脅威となる |
| 船舶との衝突 | 記載なし | シロナガスクジラは大型船を十分に回避できないことがあり、衝突による死亡が世界各地で確認されている。死体が沈む場合もあるため、実際の死亡数は記録より多い可能性がある |
| 漁具への絡まり | 記載なし | 他の大型鯨類と比べて致死的な絡まりの報告は少ないが、カナダ東部で確認された個体の約12%に漁具との接触に由来すると考えられる傷痕が報告されている |
| 餌への依存 | 主要な餌資源はオキアミと記載 | 現在も主食はオキアミである。海域によってオキアミの種類は異なるものの、シロナガスクジラは大量のオキアミが高密度に集まる場所への依存度が高く、餌を柔軟に切り替えにくい可能性がある |
| 海水温上昇の影響 | 気候変動などによってオキアミが手に入りにくくなることを懸念 | 海水温上昇は海洋の生産力、植物プランクトン、海流、湧昇、オキアミの成長や分布を変化させる。オキアミの群れが減少・移動すれば、クジラの採餌場所、回遊時期、滞在期間、繁殖に必要なエネルギーの蓄積へ影響する |
| 海氷減少の影響 | 詳細な記載なし | 南極オキアミの幼生は海氷の下を餌場や越冬場所として利用する。海氷の面積や形成期間の減少は、オキアミの加入や分布を変化させ、南極海で採餌するシロナガスクジラへ間接的に影響する可能性がある |
| 海洋熱波の影響 | 記載なし | 海洋熱波によって湧昇や基礎生産が変化し、オキアミが少なくなったり、従来とは異なる場所へ移動したりする可能性がある。シロナガスクジラ側でも、採餌時期や滞在期間を変える行動が確認されているが、長期的に適応できるかは分かっていない |
| 海洋酸性化とオキアミ | 海洋酸性化などによって、オキアミが手に入りにくくなることを最大の脅威として提示 | 海洋酸性化は依然として懸念されるが、影響は一様ではない。高い二酸化炭素濃度では卵や胚の孵化が妨げられる可能性がある一方、成体は将来予測される酸性化条件に46週間さらされても、生存、成長、脂肪蓄積、成熟、呼吸を維持した実験結果がある |
| 酸性化に関する現在の評価 | 酸性化によるオキアミ減少を比較的直接的に説明 | 成体の耐性が確認されたため、「酸性化だけで近い将来にオキアミ全体が急減する」とは言い切れない。ただし、卵・胚・幼生など初期生活段階への影響、温暖化や餌不足と重なった場合の複合影響には不確実性が残る |
| オキアミ資源の現在の状態 | オキアミが手に入りにくくなっていると記載 | 南極オキアミの長期的な増減については、調査方法、調査海域、調査期間によって結果が異なり、科学的な議論が続いている。一方、温暖化と海氷減少によって、将来は生息適地や分布が縮小・南下する可能性が高いと予測されている |
| オキアミ漁業との競合 | 「他の要因」として含まれている可能性はあるが、具体的説明なし | 南極オキアミ漁業は南西大西洋側へ集中しており、捕獲量も増加してきた。南極海全体から見れば漁獲割合は小さくても、クジラやペンギンなどの採餌場所と時期が局地的に重なることが問題となる |
| 気候変動の影響経路 | 主として海洋酸性化と餌不足 | 海水温上昇、海氷減少、海洋酸性化、基礎生産の変化、海流・湧昇の変化、海洋熱波などが複合し、オキアミの量・分布・密度・発生時期を変える。その結果、シロナガスクジラの採餌効率、回遊、栄養状態、繁殖成功率へ影響が及ぶ |
| 気候変動への適応可能性 | 記載なし | 餌の分布に合わせて回遊時期や滞在海域を変える一定の行動的柔軟性はある。ただし、オキアミへの強い食性依存、長距離回遊、繁殖速度の遅さ、個体群の小ささから、環境変化の速度に追いつけない可能性もある |
| 「最大の脅威」という記述の現在位置 | 気候変動、海洋酸性化などによるオキアミ不足を「今日この種にとっての最大の脅威」と表現 | 気候変動と餌資源の変化は、回復を左右する重大な長期的脅威である。しかし、現在確認されている直接的な死亡要因では船舶衝突が重視されており、気候変動だけを世界全体の「現在最大の脅威」と順位づける段階にはない |
| 2014年との総合比較 | 捕鯨から保護され、回復の兆しはあるものの、気候変動による餌不足が新たな最大の脅威とされた | 捕鯨禁止後の回復は続いているが、IUCNカテゴリーはENのままである。捕鯨という単一の巨大な圧力は抑えられた一方、船舶衝突、騒音、漁具、汚染、オキアミ漁業、温暖化、海氷減少、酸性化が重なる複合的な時代へ移っている |
現状まとめ:出典
シロナガスクジラは、2014年から現在までIUCNの絶滅危惧(EN)にとどまっています。捕鯨禁止後は世界全体で増加傾向を示し、現在は成熟個体5,000〜15,000頭、全年齢で約10,000〜25,000頭と推定されています。しかし、南極亜種は捕鯨前の1%未満とされるなど、回復には大きな地域差があります。現在は船舶との衝突、漁具への絡まり、海洋騒音、汚染に加え、温暖化や海氷減少によるオキアミの分布・量の変化が回復を脅かしています。海洋酸性化への耐性はオキアミの成長段階によって異なるため、酸性化だけを最大の脅威とは断定できませんが、複数の環境変化が重なり、餌に強く依存するシロナガスクジラの将来を左右する重大な問題となっています。
⬇︎シロナガスクジラの保護活動の種類です。必要なら開いてください。
| 保全活動の種類 | 具体的な内容 | 実施状況・課題 |
|---|---|---|
| 商業捕鯨の禁止 | 国際捕鯨委員会(IWC)は1966年からシロナガスクジラの商業捕鯨を禁止している。各国の国内法による捕獲、殺傷、所持、取引の規制と、違法捕鯨の監視・取締りを継続する。 | 大規模捕鯨は停止したが、多くの個体群は捕鯨以前の水準を大きく下回る。南極の個体群は特に減少が著しく、回復には長期間を要する。 |
| 国際条約・国内法による保護 | IWCの捕獲規制、移動性野生動物種保全条約(CMS)附属書I、ワシントン条約(CITES)附属書I、各国の絶滅危惧種法・海生哺乳類保護法などを通じ、捕獲、国際商取引、生息地を損なう行為を規制する。 | 公海と複数国の排他的経済水域を移動するため、国ごとに異なる制度を国際的に調整する必要がある。 |
| 個体群別の回復計画 | 世界全体を一つの個体群として扱わず、亜種、海域、鳴音型、遺伝的集団などに基づく管理単位を設定する。各単位について個体数、増加率、人為的死亡の許容範囲、脅威低減の達成基準を定める。 | NOAAの回復計画は、全海洋・各亜種に存続可能な個体群を確保することと、重大な人為的脅威の管理・除去を主要目標としている。個体群構造が未解明の海域も残る。 |
| 個体数・分布の継続調査 | 船舶・航空機による目視調査、距離標本法、写真識別、標識再捕獲、遺伝解析などを組み合わせ、個体数、増減傾向、出生、生存率、分布変化を調べる。 | 広大な外洋を低密度で移動するため、調査費用が大きく、海域によって推定精度に差がある。長期的かつ国際的な調査が必要である。 |
| 写真識別・遺伝的モニタリング | 背中や体側の斑紋、背びれの形、傷跡を撮影して個体を識別する。生検試料から性別、血縁、遺伝的多様性、集団間の交流を調べる。 | 同一個体の移動、生存、繁殖を長期間追跡できる。国や研究機関を越えた写真・遺伝情報の共有が重要となる。 |
| 音響モニタリング | 海底録音機、係留ブイ、自律型グライダーなどで低周波の鳴音を記録し、目視調査が困難な季節や海域を含めて分布、季節移動、個体群ごとの鳴音型を把握する。 | 鳴音数をそのまま個体数に換算できないため、目視調査、標識調査、環境データとの統合が必要である。 |
| 衛星標識による移動経路調査 | 衛星発信器や各種記録タグを装着し、回遊経路、潜水行動、採餌海域、船舶航路との重複を調べる。得られた情報を航路変更や重要生息地の選定に利用する。 | 装着期間や標本数に限界があり、標識による影響を最小限にする技術と倫理的な審査が必要である。 |
| 重要生息地の特定・保護 | 高密度の採餌場、繁殖・出産海域、回遊経路、オキアミが集中する湧昇域や海氷縁を特定し、重要生息地、海洋保護区、船舶・漁業管理海域などに指定する。 | 保護区の指定だけでなく、区域内の航行、漁業、海底資源開発、水中騒音を実際に管理することが必要である。気候変動で重要海域が移動する可能性もある。 |
| 船舶航路の変更 | シロナガスクジラの採餌場・回遊経路と大型船の交通が重なる海域では、航路分離帯や港湾進入路をクジラの高密度域から移す。季節的または動的な迂回も導入する。 | カリフォルニア沖やスリランカ周辺など、船舶交通との重複が大きい海域で重要な対策となる。海運、安全、燃料消費との調整が必要である。 |
| 船舶の減速 | クジラが確認される海域や季節に、強制的または自主的な速度制限を設定する。大型船を10ノット程度以下に減速させる措置は、衝突の発生確率と衝突時の致死性を下げるために用いられる。 | 自主的措置では参加率に差が生じる。船舶自動識別装置(AIS)を用いた遵守状況の監視、港湾使用料の優遇、規制化などを組み合わせる必要がある。 |
| リアルタイムのクジラ検知・航行警報 | 目視調査、音響ブイ、グライダー、航空機、衛星情報などでクジラを検知し、船舶へ位置情報や減速・回避警報を配信する。船橋での見張り強化や航海計画にも反映する。 | 検知できる範囲、悪天候時の性能、警報から船舶への伝達速度が課題となる。航路変更・速度規制と組み合わせて効果を高める。 |
| 船舶衝突の報告・原因分析 | 衝突、負傷個体、船首に運ばれた死体を速やかに報告する制度を整備する。死体の解剖、外傷、骨折、血腫、船体付着物などから衝突原因と発生海域を推定する。 | 大型船では衝突に気づかない場合があり、死体が沈むことも多いため、実際の死亡数は確認数を上回る可能性がある。 |
| 漁具への絡まり防止 | 固定漁具の鉛直ロープ削減、弱い接続部や切断可能な部材の導入、ロープレス・オンデマンド漁具の試験、漁具の識別表示、クジラ出現時の季節的・動的な操業制限を行う。 | シロナガスクジラの絡まりは確認例が少ないものの、死亡、重傷、遊泳・採餌能力の低下につながる。漁業者の安全性、費用、漁獲効率を含む実用化検証が必要である。 |
| 絡まり個体の救助 | 専門訓練を受けた救助隊が、浮標や追跡装置を用いて個体を追跡し、安全を確保しながらロープや網を除去する。一般船舶には接近せず、位置・状態を通報するよう周知する。 | シロナガスクジラは大型で遊泳力が強く、救助作業の危険性が高い。救助は被害発生後の対応であり、漁具改良による予防が中心となる。 |
| 遺失漁具・海洋ごみの回収 | 漁具回収事業、紛失漁具の報告、漁具マーキング、港での廃棄物受入れ、プラスチック流出防止によって、絡まりや誤飲の原因を減らす。 | 外洋に流出した漁具の発見・回収は困難であるため、発生源対策と漁業者を含む回収制度の両方が必要である。 |
| 船舶由来の水中騒音低減 | 船速の低下、プロペラや船体の改良、定期的な清掃・保守、静音船の設計、騒音の大きい船舶の航路調整により、低周波騒音を減らす。 | シロナガスクジラは低周波音で長距離通信するため、船舶騒音は鳴音のマスキング、行動変化、重要海域からの回避を引き起こす可能性がある。減速は衝突防止と騒音低減の両方に役立つ。 |
| 地震探査・ソナー・海洋工事の管理 | 音響影響評価、事前のクジラ調査、海生哺乳類観察員・音響監視員の配置、段階的な音源開始、接近時の出力低下・停止、重要な時期と海域を避ける操業計画を導入する。 | 単一事業の影響だけでなく、複数の船舶、探査、建設工事による累積騒音を評価する必要がある。 |
| オキアミ資源の保全 | シロナガスクジラの主要な餌であるオキアミについて、予防的漁獲制限、漁獲量と操業位置の報告、科学オブザーバー、資源量調査を実施する。クジラの採餌場で漁獲が集中しないよう、空間・季節管理を行う。 | 南極海ではCCAMLRが漁獲制限と監視を行っている。一方、漁業が一部海域に集中すると、総漁獲量が制限内でも局所的な餌不足を生じさせる可能性がある。近年は操業の空間集中を抑える追加措置について合意形成が課題となっている。 |
| オキアミと海洋環境の調査 | 音響資源調査、採集調査、海洋観測、衛星観測を組み合わせ、オキアミの量、分布、繁殖、海氷・水温との関係を追跡する。クジラの分布・栄養状態と重ねて餌環境の変化を評価する。 | オキアミは年変動と地域差が大きく、資源評価には長期的で広域的なデータが必要となる。 |
| 気候変動への緩和・適応 | 温室効果ガス排出を削減するとともに、海洋温暖化、海氷減少、海流変化、海洋酸性化によるオキアミ分布・生産量の変化を監視する。重要海域や漁業管理区域を環境変化に応じて見直す。 | 気候変動は餌資源と採餌場所を広域的に変えるため、地域的な保護だけでは十分に抑えられない。柔軟な海域管理と世界規模の排出削減が必要である。 |
| 海洋汚染・油流出対策 | 油流出の防止・緊急対応計画、船舶排水・廃棄物規制、残留性有機汚染物質や重金属の監視、沿岸からの化学物質・プラスチック流出削減を進める。組織試料から汚染物質への曝露も調べる。 | 汚染は単独の死亡原因として判定しにくく、餌資源や健康への慢性的影響を含めた長期監視が必要となる。 |
| ホエールウォッチング・小型船の管理 | 最低接近距離、低速航行、観察時間、同時接近隻数、進路を遮らないことなどを規則または行動規範で定める。操船者教育と違反監視を行う。 | 繰り返し接近すると採餌や休息を妨げ、小型船との衝突リスクも生じる。基準は国・地域によって異なる。 |
| 座礁・死亡個体への対応 | 座礁個体の救護、死亡個体の解剖、病理・毒性・遺伝・年齢試料の保存を行い、船舶衝突、絡まり、疾病、栄養状態、汚染などを調査する。 | 巨大な死体の回収・解剖には専門家、重機、資金が必要である。標準化した調査と国際的なデータ共有が求められる。 |
| 市民・船員・漁業者への普及 | クジラの位置、衝突、絡まり、座礁・死亡個体の通報方法を周知する。船員向けの見張り・回避訓練、漁業者との漁具改良、一般市民による写真・目撃情報の提供を進める。 | 通報の迅速化とデータ量の増加に有効だが、誤認や重複を除く専門的な確認体制が必要である。 |
| 国際的な連携と効果検証 | IWC、CMS、CCAMLR、各国政府、研究機関、海運・漁業団体が、個体数、鳴音、遺伝情報、船舶衝突、絡まり、漁獲努力量を共有する。対策前後の死亡率・遭遇率・遵守率を比較し、管理措置を更新する。 | シロナガスクジラは国境を越えて移動するため、一国だけの対策では保護できない。海域ごとに監視能力や制度が異なることが課題となる。 |
保全活動の種類:出典
- 国際捕鯨委員会(IWC)「Blue Whale」
https://iwc.int/about-whales/whale-species/blue-whale - NOAA Fisheries「Recovery Plan for the Blue Whale」
https://www.fisheries.noaa.gov/resource/document/recovery-plan-blue-whale-balaenoptera-musculus-0 - カナダ政府「Action Plan for the Blue Whale, Northwest Atlantic Population」
https://www.canada.ca/en/environment-climate-change/services/species-risk-public-registry/action-plans/blue-whale-northwest-atlantic-population-2020.html - NOAA Fisheries「Advanced Technologies to Reduce Vessel Strikes」
https://www.fisheries.noaa.gov/national/endangered-species-conservation/advanced-technologies-reduce-vessel-strikes - 南極海洋生物資源保存委員会(CCAMLR)「Fishery Report 2025: Antarctic Krill in Area 48」
https://fishdocs.ccamlr.org/FishRep_48_KRI_2025.html
シロナガスクジラを脅かす気候変動|海氷減少・オキアミ・炭素循環
Questioner: Marine heatwaves are becoming a huge global issue right now. You brought up coral bleaching in that recent post about the smooth cauliflower coral (Stylophora pistillata), so I’m guessing it’s going to affect the krill this time around too, right?
Me: The Antarctic and Arctic oceans are supposed to act as the Earth’s “coolers,” so the fact that they’re heating up is being treated as a massive warning sign. It carries the risk of slowing down—or even completely shutting down—the entire global climate system and ocean circulation. With that in mind, it’s easy to assume that krill are facing a pretty severe crisis of their own. Let me dig a bit deeper into that.
質問者:現在世界的にも海洋熱波って問題になっていて、つい最近の記事の、ショウガサンゴ(Stylophora pistillata)さんのときも白化現象を取り上げているけど、今回のオキアミにも影響がありそうだよね。
私:地球の「冷温庫」であるはずの南極や北極の海が熱を帯びることは、地球全体の気候システムや海洋循環の停止・減速を招くリスクもあり、極めて重大なシグナルとして捉えられています。このことからもオキアミも深刻な危機なのではないかと想定されますよね。そのあたり詳しく調べてみます。
海が温まり、オキアミが消えるとき|シロナガスクジラと炭素循環を支える命の危機
シロナガスクジラを支えているのは、わずか数センチのオキアミです。しかし、その小さな命はクジラの餌になるだけでなく、海の食物網をつなぎ、膨大な炭素を深海へ運んでいます。海が温まり、海氷が減り、人間の漁業まで重なったとき、失われるのはオキアミだけではありません。
1. 物理・化学的視点:海洋循環の変化と栄養供給の弱まり
地球の海では、水温や塩分によって生じる海水の密度差と風の働きが、世界規模の海洋循環をつくり出しています。極域では、冷たく塩分濃度の高い海水が沈み込み、深層水の形成と物質の循環を支えています。
しかし、海面付近の温暖化や氷床融解による淡水流入が進むと、表層水は温かく軽くなり、海面付近と深層の密度差が大きくなります。つまり、成層化が強まり、海水の上下の混合が起こりにくくなります。その結果、深層に蓄積された栄養塩が植物プランクトンのいる海面付近まで届きにくくなり、海の基礎生産力が低下する可能性があります。
ただし、沿岸の湧昇流は主に風によって動かされているため、温暖化によって世界中の湧昇流が一様に弱まるわけではありません。海域によっては風が強まり、湧昇が強化される可能性もあり、その変化は地域ごとに異なります。
ニュージーランドのサウス・タラナキ湾では、2016年の海洋熱波の際、通常の湧昇条件と比べてオキアミの群れの密度が大きく低下し、残された群れが沖合へ移動しました。シロナガスクジラも、そのオキアミを追うように沖合へ移動しています。海洋熱波が栄養供給、オキアミ、シロナガスクジラの行動を連鎖的に変える事例は、すでに現実の海で観察されています。
2. 生態学的視点:海氷という「ゆりかご」の縮小
ナンキョクオキアミの幼生にとって、海氷の下面は重要な越冬場所です。海氷に付着して育つ微細な氷藻類は、光と餌の少ない南極の冬を生き延びるための命綱になります。
海氷が減少したり、形成されている期間が短くなったりすれば、幼生が利用できる餌場と隠れ場所も失われます。それは次世代のオキアミが育たず、個体群へ新たに加わる若い個体が減少することにつながります。ただし、海氷減少が起きればすべての幼生が餓死するという単純な関係ではなく、影響の大きさは海域、季節、海流、餌の状態によって変わります。
南極の海氷面積は、2022年に当時の観測史上最小を記録し、2023年にはその記録をさらに更新しました。2024年の最小面積は2022年と並ぶ観測史上2番目の低さで、2022年から2024年までの3年間は、いずれも衛星観測史上で最も低い水準となりました。
過去約90年間の調査データを分析した研究では、ナンキョクオキアミの主要な生息域である南西大西洋海域において、分布の中心が約440キロ南へ移動したことが示されています。北側の海域では密度が大きく低下し、個体群は南極大陸棚に近い海域へ集中するようになりました。
同時に、若いオキアミの加入が減少している兆候も確認されています。一方で、成長したオキアミの生存率が高まっている可能性もあり、個体群全体が一様に崩壊しているわけではありません。それでも、冷たい海を追って南へ退き続けるオキアミに、逃げ場が無限に残されているわけではありません。
3. 生物地球化学的視点:「巨大な炭素ポンプ」が失われる危険
オキアミの減少は、クジラやペンギンの餌不足だけで終わる問題ではありません。ナンキョクオキアミは、植物プランクトンが取り込んだ炭素を食べ、沈降速度の速いフンとして排出することで、炭素を海の深部へ運んでいます。
2024年にNature Communicationsで公表された研究では、ナンキョクオキアミのフンが、南極の春から初秋までの生産期に約2,000万トンの炭素を、少なくとも100年間大気から隔離される深さへ運んでいると推定されました。
この約2,000万トンは、世界の塩性湿地、マングローブ林、海草藻場がそれぞれ年間に隔離する炭素量と同じ規模です。ただし、これら沿岸生態系すべての合計量に匹敵するという意味ではありません。それでも、わずか数センチの動物が群れ全体で動かしている炭素量としては、驚くほど巨大です。
海洋熱波や海氷減少によってオキアミの数、分布、摂食活動が変化すれば、この炭素輸送も弱まる可能性があります。ただし、海洋熱波によるオキアミ減少が、すでに地球規模の炭素ポンプを崩壊させ、温暖化を加速させているところまで確認されたわけではありません。
それでも、オキアミの減少によって深海へ運ばれる炭素が少なくなれば、大気と海面付近に残る炭素が増える方向へ働きます。気候変動がオキアミを減らし、その減少が海の炭素吸収機能を弱め、さらに気候変動を進める。この正のフィードバックは、これから起こり得る深刻な危険の一つです。
4. 食物網への影響:移動する餌と人間活動との衝突
海洋熱波や海流の変化によってオキアミの密度が低下すると、シロナガスクジラは残された高密度の群れを追って採餌場所を変えます。ただし、オキアミとクジラが必ず沿岸へ押し込められるわけではありません。ニュージーランドで観察された2016年の海洋熱波では、オキアミとシロナガスクジラは、そろって沖合へ移動しました。
移動方向は海域によって異なりますが、重要なのは、これまで利用していた採餌場所が変わることです。その先が航路、港湾、漁場と重なれば、船舶との衝突や漁具への絡まりに遭う危険性も変化します。船舶衝突と漁具への絡まりは、現在もシロナガスクジラを直接傷つけ、死亡させる主要な人為的脅威です。ただし、気候変動によってこれらの事故が世界全体で急増しているとまでは確認されていません。
南極海では、人間もオキアミを求めています。オキアミは養殖魚や家畜の飼料、ペットフード、オメガ3を含む健康食品などに利用され、漁業は南極半島周辺へ集中しています。
2024〜2025年漁期には漁獲量が初めて62万トンの上限へ達し、漁期が予定より早く閉鎖されました。南極海全体のオキアミ資源が限界まで減少したことを示す数字ではありませんが、漁業が特定の海域と時期へ集中すれば、そこで採餌するクジラ、ペンギン、アザラシとの局地的な競合が強まります。
気候変動によってオキアミの生息域が変わり、捕鯨から回復しつつあるクジラが戻り、その同じ場所へ大型漁船も集まる。現在の南極海では、食物網の土台をめぐって、野生動物の生存と人間の産業が重なり始めています。
出典
- 海洋成層化・栄養供給・湧昇流の仕組み|NOAA地球物理流体力学研究所:https://www.gfdl.noaa.gov/research_highlight/reconciling-ocean-productivity-and-fisheries-yields/
- 海洋熱波によるオキアミとシロナガスクジラの分布変化|Ecology and Evolution:https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9968652/
- 2022〜2024年の南極海氷最小面積|米国国立雪氷データセンター:https://nsidc.org/sea-ice-today/analyses/antarctic-sea-ice-extent-hits-third-low-row
- ナンキョクオキアミの分布域が約440キロ南へ縮小|Nature Climate Change:https://www.nature.com/articles/s41558-018-0370-z
- ナンキョクオキアミによる年間約2,000万トンの炭素隔離|Nature Communications:https://www.nature.com/articles/s41467-024-52135-6
- 船舶衝突・漁具への絡まりなどシロナガスクジラの現在の脅威|NOAA Fisheries:https://www.fisheries.noaa.gov/species/blue-whale/science
- 2024〜2025年の南極オキアミ漁と62万トン到達による早期閉鎖|Associated Press:https://www.ap.org/news-highlights/spotlights/2025/krill-fishery-in-antarctica-shut-down-after-record-catch-triggers-unprecedented-early-closure/
Questioner: It sounds like the climate change brought on by our global warming is wiping out the krill. And if their decline weakens the ocean’s ability to absorb carbon, that just fuels even more climate change… Are we looking at a vicious cycle here?
Me: Exactly. And it’s not just in the ocean. Right now, on land, pollinators like honeybees are dying off at an alarming rate due to climate change, pesticides, and habitat destruction. Without them, flowering plants and trees can’t pollinate properly. If plants can’t produce seeds and pass the baton to the next generation, we’re looking at a massive decline in biodiversity and biomass across our forests and grasslands.
Questioner: So basically, the global warming we caused is tearing everything apart, from the oceans to the mountains.
Me: Yeah, that’s exactly it. Sea krill and mountain bees—they’re both so tiny that we barely even notice them. But it’s those little lives keeping the Blue Whales alive and ensuring the forests survive for the next generation. We might not be going out of our way to directly destroy whales or forests, but through global warming, pesticides, and human development, we are silently threatening these fragile lives that are completely out of our sight.
The krill disappear before the Blue Whales do. The bees stop coming back before the forests vanish. Extinction doesn’t always start with a massive whale vanishing, or a giant tree crashing down in the woods. I think it begins with the tiny creatures—the ones small enough to fit in the palm of your hand. And it’s already begun.
Thank you so much for taking the time to read this.
I truly hope our thoughts find their way to the blue whales.
鶏人|Keijin
質問者:僕たちが招いた地球温暖化による気候変動がオキアミを減らしているみたいだね。そして、その減少が海の炭素吸収機能を弱めて、またさらに気候変動を進めるって負の連鎖が起こっているのかな。
私:現在、陸上でも気候変動や農薬、生息地の破壊によってミツバチなどのポリネーターが激減しています。このことから、被子植物や樹木の受粉がうまくいかなくなることが考えられ、その結果、植物が種子を作れず世代交代ができなくなり、森林や草原全体の多様性やバイオマスが衰退すると考えられます。
質問者:海も山も僕たちが招いた地球温暖化で大変なことになってるんだよね。
私:そうですね。海のオキアミも、山のミツバチも、あまりに小さいから私たちは見落としてしまいます。でも、その小さな命がシロナガスクジラを生かし、森を次の世代へつないでいるんですよね。私たちはクジラや森を直接滅ぼしているつもりはなくても、温暖化や農薬、開発によって、その目の前にない命を静かに脅かしているのだと思います。
シロナガスクジラが消える前にオキアミが減り、森が消える前にミツバチが戻ってこなくなる。絶滅は、大きなクジラが消え、森林の大木が倒れるところから始まるとは限りません。手のひらに乗るほどの小さな生物から、すでに始まっているのだと思います。
貴重な時間を、ありがとうございました。
シロナガスクジラに、その想いが届くことを祈ります。
鶏人|Keijin
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