11年後のレッドリスト|キオビカオグロムシクイ:絶望の淵から、ひとすじの光を見つけた【IUCNレッドリスト比較】

キオビカオグロムシクイ(学名:Geothlypis beldingi) 11年後のレッドリスト
※このページは、[IUCNレッドリスト]世界の絶滅危惧生物図鑑(2014年版)に基づいて制作した個人ブログです。

Hi, I’m 鶏人|Keijin.

Back in a 2014 field guide, the Belding’s Yellowthroat (Geothlypis beldingi) was rated as “CR: Critically Endangered” because its range was tiny, and its population was small and heavily fragmented.

But if you check the IUCN Red List as of 2026, you’ll see its status was downgraded to “VU: Vulnerable” in 2021. This change happened mainly because their distribution range turned out to be wider than we originally thought.

Even so, I believe the Belding’s Yellowthroat is still in a situation where “the water has spread, but the life within has just been diluted.”

This is a quick 5-minute read. I hope you’ll stick around to the end.

こんにちは、鶏人|Keijin です。

キオビカオグロムシクイ(学名:Geothlypis beldingi)は、2014年の図鑑では、分布域は小さく、生息数は少数でかつ分断されているなどのことから、「CR:深刻な危機」、と評価されていました。

そして、2026年時点で確認できるIUCNレッドリストの評価は、従来考えられていたよりも分布域が広くなったことなどから、「VU:危急」と評価の変更が2021年にありました。 

キオビカオグロムシクイは今も、水辺は広がり、命は薄まっていた状態なのだと思います。

この記事は短く、5分で読めます。
よかったら最後まで読んでください。

※2026年時点で、IUCNレッドリストにおける最新評価は2021年評価(2021年公開)です(以降の更新は、現時点では確認できていません)。
※本記事は専門家による学術的な評価ではなく、公開された資料に基づく個人の調査・見解を含みます。
※IUCN評価は「世界全体」と「地域・個体群」で分かれる場合があります。地域によって状況は異なります。
最新かつ正確な分類や保全状況については、IUCN公式サイトなどをご確認ください。
参考:IUCN Red List(学名:Geothlypis beldingi

キオビカオグロムシクイ(学名:Geothlypis beldingi)はなぜCRからVUに変わったのか

⬇︎キオビカオグロムシクイの生態(基本情報)です。必要なら開いてください。

基本情報|キオビカオグロムシクイ(英名:
Belding’s Yellowthroat)

主な根拠は、BirdLife/IUCN系の種情報、2024年調査を反映した分布更新論文、保全団体 Pronatura Noroeste、Avibase の分類・和名情報です。キオビカオグロムシクイは、メキシコ・バハカリフォルニア・スル州のオアシス湿地に強く依存する固有鳥です。(Western Birds)

項目内容
和名キオビカオグロムシクイ
英名Belding’s Yellowthroat
学名Geothlypis beldingi
命名者・命名年Ridgway, 1882
分類鳥綱・スズメ目・アメリカムシクイ科・Geothlypis 属
IUCNレッドリストVU:危急種。IUCN/BirdLife では個体数が少なく、分布域が限定的で、湿地環境の劣化が続く種として扱われている
メキシコ国内での扱いメキシコ政府の NOM-059 では endangered、絶滅危惧相当として扱われている
分布メキシコ北西部、バハカリフォルニア半島南部のバハカリフォルニア・スル州に固有。繁殖地は北はサン・イグナシオのオアシス付近、南はカボ・サン・ルーカス近くの Estero Cascada 付近まで確認されている
生息環境乾燥地帯の中に点在する淡水性のオアシス、湿地、沼沢地、ラグーン周辺。ヨシ類、ガマ類、抽水植物がある水辺に強く依存する
生息環境の条件2025年の分布更新論文では、適した生息地には「淡水」と「抽水植物」の存在が必要とされている
移動性基本的に留鳥。長距離渡りをする鳥ではなく、限られた湿地に定着して繁殖する
全長約14cm前後とされる小型のアメリカムシクイ類
体の特徴背面はオリーブ緑色系、下面は黄色系。雄は顔に黒いマスク状の模様を持つ。雌は雄より地味で、黒い顔のマスクを欠く
雄の特徴亜種や地域差があるが、成鳥雄は黄色い喉・下面と黒い顔面マスクが目立つ。南部の基亜種 G. b. beldingi は黄色味が強いとされる
雌の特徴雄に似るが、黒いマスクがなく、頭部や背面はオリーブ色・褐色がかった印象になる
亜種主に北部の G. b. goldmani と南部の G. b. beldingi が知られる。2025年の論文では、中央部の個体群については亜種帰属が未確定とされている
亜種ごとの分布傾向G. b. goldmani はサン・イグナシオからサン・ハビエル周辺の北部、G. b. beldingi はラパスからカボ・サン・ルーカス周辺の南部に分布するとされる
食性主に昆虫や小型無脊椎動物を食べるとされる。湿地の低い植生内で採食するタイプ
採食行動ヨシ、ガマ、湿地周辺の低い植生の中を移動しながら、昆虫類などを探す
繁殖環境淡水湿地やラグーン周辺のガマ類などの抽水植物帯で繁殖する
枯れたガマ類などを使ったカップ状の巣を、低い位置の植物の茎などに取り付けるとされる
卵数2〜4卵、通常3卵程度とされる資料がある
鳴き声近縁のカオグロアメリカムシクイに似た「wichety」系のさえずりとされるが、より低く厚みがあり、ざらついた響きを含むと説明される
近縁種カオグロアメリカムシクイ、Altamira Yellowthroat、Bahama Yellowthroat などと近縁で、かつては同種扱いされたこともある
個体数IUCN/BirdLife系の推定では成熟個体数650〜1,670羽とされる資料があり、Pronatura Noroeste では成鳥1,000〜2,500羽との記述もある。推定値には幅がある
2024年調査の概要2024年6〜7月の調査では、バハカリフォルニア・スル州内の69地点を調査し、42地点で生息環境と本種の存在が確認された
2024年調査での重要点多くの既知生息地は維持されていた一方、一部地点では局所的な消失が確認され、未記録だった新しい生息地点も見つかっている
主な脅威地下水・淡水資源の過剰利用、湿地の縮小、土地利用の変化、汚染、火災、ハリケーン、干ばつ、過放牧、観光・沿岸開発、ヨシ・ガマ類の減少
脆弱な理由バハカリフォルニア・スル州は乾燥地帯で、淡水のあるオアシス湿地そのものが少ない。本種はその限られた湿地に依存するため、生息地の小さな変化が個体群に直結しやすい
保全上の要点オアシス湿地の水量維持、抽水植物帯の保全、火災・過放牧・過剰取水・開発圧の管理が重要
日本語記事での表現メモ「砂漠の中の小さな水辺に残された、黄色い喉の鳥」と表現しやすい種。広い森の鳥ではなく、乾いた半島に点在する水の場所に命をつないでいる鳥

出典

最終評価2021年:キオビカオグロムシクイ「VU:危急」

キオビカオグロムシクイが暮らす水のきれいな生息地は、焼失、アシの伐採、農薬や牛の放牧のための排水といった人間活動によって脅威にさらされている。最近の調査によって、この種は従来考えられていたよりも多くの場所で見られることがわかったが、分布域は小さく、生息数は少数でかつ分断されているため、ハリケーンのような大規模な災害に対して弱い。

出典:訳者 岩槻邦男、太田英利 / 発行者 池田和博 / タイトル『IUCNレッドリスト世界の絶滅危惧生物図鑑』/ 発行所 丸善出版株式会社 / 発行 2014/01/31 / © Kunio Iwatsuki, Hidetoshi Ota, 2014

項目2014年の図鑑現在(2026年確認)
対象種キオビカオグロムシクイキオビカオグロムシクイ
学名Geothlypis beldingiGeothlypis beldingi
英名Belding’s YellowthroatBelding’s Yellowthroat
分類鳥綱・スズメ目・アメリカムシクイ科鳥綱・スズメ目・アメリカムシクイ科
絶滅危惧ランクIUCNレッドリストでCR(Critically Endangered:深刻な危機)とされていたIUCNレッドリストでVU(Vulnerable:危急)とされている
ランク変化絶滅リスクが極めて高い種として扱われていたCRからVUへ変更され、以前の評価より絶滅リスクは低く見直されている
ランク変更の背景図鑑では「最近の調査によって、従来考えられていたよりも多くの場所で見られることがわかった」とされていた2008年の状態見直し研究でも、従来の保全要約は本種の分散能力や湿地再生力を過小評価していた可能性が示されている
個体数「数千個体に満たないと思われる」といった大まかな記述成熟個体数は650〜1,670羽と推定されている
個体数の推移少数で、分断された個体群として扱われていた個体数推移は減少傾向とされている
分布メキシコのバハ・カリフォルニア半島南部の湿地に局地的に分布メキシコ・バハ・カリフォルニア・スル州の淡水湿地を中心に局地的に分布
固有性バハ・カリフォルニア半島周辺に限られる鳥として扱われていたメキシコのバハ・カリフォルニア半島南部に固有の留鳥とされている
主な生息地水のきれいな湿地、淡水湿地、アシなどの水辺植生がある場所内陸湿地、淡水湿地、ラグーン、ガマ類などの抽水植物がある湿地
生息地の状態生息地は小さく、分断されているとされた現在も限られた湿地に点在しており、分布域は狭い
図鑑にある主な脅威焼失、アシの伐採、農薬、牛の放牧のための排水など湿地の消失・劣化、開発、農業利用、水利用、植生改変などが脅威として残っている
農薬・排水の影響農薬や排水により、水のきれいな生息地が脅かされているとされた湿地環境の劣化要因として、現在も水質悪化や水環境の変化は重要な懸念要素と考えられる
放牧・人間活動の影響牛の放牧や排水によって湿地環境が変化するとされた人間活動による湿地の改変は、現在も本種の生息地を圧迫する要因とされる
災害への弱さ生息数が少なく、分布が限られるため、ハリケーンのような大規模災害に弱いとされた局所的な湿地に依存しているため、大規模な自然災害や急激な環境変化への脆弱性は残っている
分断の問題少数の個体群が分断されているとされた現在も複数の湿地個体群に分かれており、個体群間のつながりや遺伝的交流が重要な課題となっている
以前より明るい点従来考えられていたより多くの場所で確認されたCRではなくVUに再評価されており、過去の想定よりも分布・個体数の理解は改善している
依然として深刻な点生息地が狭く、個体数が少ないVUであり、成熟個体数は少なく、個体数は減少傾向にある
まとめ2014年時点では、極めて絶滅リスクが高いCRとして扱われ、湿地破壊や災害への弱さが強調されていた2026年確認時点ではVUに下がっているが、個体数は少なく、減少傾向で、湿地の保全が引き続き重要である

出典

キオビカオグロムシクイは、2014年時点でIUCNレッドリストのCRに分類され、極めて高い絶滅リスクが指摘されていた。その後の調査により、従来想定されていたよりも分布地点が多いことが確認され、現在はVUへ再評価されている。ただし、成熟個体数は650〜1,670羽と推定され、個体群は依然として小規模かつ分断的である。生息地はメキシコ・バハ・カリフォルニア半島南部の淡水湿地に限られ、湿地の開発、排水、農業利用、植生改変などの影響を受けやすい。絶滅危険度は相対的に低下したものの、個体数は減少傾向にあり、生息地保全の重要性は継続している。

⬇︎キオビカオグロムシクイの保護活動の種類です。必要なら開いてください。

以下は、キオビカオグロムシクイ(Geothlypis beldingi)について確認できた保護活動を、実施済み・計画中・必要とされる対策に分けて整理したものです。特に、メキシコ・バハ・カリフォルニア・スル州のオアシス湿地に依存するため、保護活動の中心は「個体そのもの」よりも「淡水湿地・ヨシ原・ガマ類の保全」に置かれています。(Pronatura Noroeste AC)

保護活動の種類内容実施・提案の状況重要度補足
生息地保全オアシス、淡水湿地、ヨシ原、ガマ類の群落を守る実施・提案あり最重要本種はバハ・カリフォルニア・スル州の限られた淡水湿地に強く依存する。水辺のヨシ、ガマ、抽水植物が減ると、繁殖場所・採食場所・隠れ場所が同時に失われる
重要生息地の指定La Poza、Palmar de San Pedro などを重要・危急生息地として指定する申請提案・申請段階最重要UABCS と Pronatura Noroeste が、メキシコ政府の野生生物担当部局に対して、これらのオアシスを本種の重要生息地として指定する方向で動いている
種の保全行動計画キオビカオグロムシクイとその生息地のための行動計画を作る2011年に行動計画、現在 PACE 作成が進行高いPronatura Noroeste による2011年の行動計画があり、さらに PACE、つまり絶滅危惧種保全行動プログラムの統合が進められている。ただし、現地記事では「まだ運用段階に十分達していない」とされる
個体数モニタリング定期的な個体数調査、センサス、繁殖地確認実施中高いLa Poza と Palmar de San Pedro では、2015年6月から12月にかけて12回の調査グループによるモニタリング計画が示された。2024年にも州内の多くのオアシスで分布調査が行われた
分布調査既知の生息地だけでなく、未記録のオアシスも調べる実施中高い2024年調査では69地点が調査され、42地点で適した生息環境と本種が確認された。31のまとまった生息場所のうち、8地点は過去記録のない場所だった
湿地再生・湿地造成失われた、または劣化した湿地を再生・造成する研究者による提案高い2008年の研究では、州の開発計画に湿地造成を組み込むべきと提案されている。本種は湿地が比較的早く再生する能力にも関係しているため、湿地再生は有効な可能性がある
地下水・水資源管理過剰な地下水利用、淡水の枯渇を抑える必要とされる対策最重要本種の生息地は永久的な淡水を持つオアシスであり、地下水の過剰利用は湿地そのものを縮小させる。農業・観光・住宅開発による水利用管理が重要
土地利用規制オアシス周辺の宅地化、観光開発、農地化を抑える必要とされる対策高い人間の集落や開発は淡水域に集中しやすく、土地利用の変化、汚染、湿地の改変が本種の主な脅威になっている
火災対策ヨシ原・ガマ類の群落を焼失させる火災を防ぐ必要とされる対策高い火災はオアシス景観を急激に変化させ、本種の繁殖・採食環境を破壊する。自然火災だけでなく、人為的な焼却や管理不足も問題になりうる
放牧管理持続不能な放牧、家畜による湿地踏み荒らしを抑える必要とされる対策中〜高不適切な放牧は湿地植生を傷め、繁殖環境を悪化させる可能性がある。家畜の立ち入り制限や利用ルール作りが必要
ヨシ・植物採取の管理住宅建材などに使うためのヨシ刈りを制限・管理する必要とされる対策中〜高1999年の研究では、ヨシの伐採、植生の焼却、道の開設などが生息地への脅威として挙げられている
汚染対策淡水域への生活排水、農業排水、ゴミ流入を抑える必要とされる対策高い本種は水辺の植生と湿地環境に依存するため、水質悪化は昆虫相や植物群落を通じて間接的に影響する可能性がある
地域住民への普及啓発学校での講義、地域向け写真展、オアシスの重要性の発信実施あり中〜高Todos Santos の小学校での講義や地域向け写真展が計画されている。地域の理解を高めることで、湿地保全への協力を得やすくする
ガイド育成地元観光会社のガイドにモニタリングや鳥類観察を学んでもらう実施・計画あり中〜高観光ガイドを育成し、調査協力者としても、自然観察ツーリズムの担い手としても機能させる狙いがある
バードウォッチング観光鳥類観察を通じて、オアシス保全に経済的価値を持たせる推進中Pronatura Noroeste、UABCS、Cipactli などが、バードウォッチング観光を促進する活動を行っている。生きた湿地が地域資源になる仕組み作り
研究基盤の整備生態、分布、個体群、遺伝、繁殖、移動能力などの研究必要・一部実施高い情報不足が大きな課題とされている。2008年の研究では、正式な研究を進めること、再導入を急がないことが提案された
遺伝的多様性の調査孤立した個体群間の遺伝的つながりを調べる研究課題中〜高個体群が小さく分断されているため、遺伝的多様性や個体群構造の把握は、将来の保全単位を考えるうえで重要
鳴き声・地域差の研究個体群間の歌の違いを調べ、交流や分断の影響を評価する近年研究あり2026年の研究では、鳴き声の地理的変異が扱われている。歌は繁殖や縄張り形成に関係するため、分断された個体群の理解に役立つ
再導入・移殖個体を別の場所へ放す、または再導入する現時点では慎重・非推奨低〜保留2008年の研究では、過去に提案された再導入は少なくとも当面は行うべきでないとされた。まずは湿地の保全・再生・調査が優先される
飼育下繁殖動物園などで繁殖させる確認できず現時点では主要対策ではない現在確認できる保護活動の中心は、飼育下繁殖ではなく、野生個体群と湿地環境の保全
法的保護メキシコ国内で絶滅危惧種として扱い、保護対象にする実施あり高いPronatura Noroeste は、本種が1994年からメキシコ政府により絶滅危惧種とされていると説明している。法的保護は、生息地指定や開発規制の基盤になる
NGO・大学・行政の連携Pronatura Noroeste、UABCS、政府機関、地域団体などの協力実施中高い本種の保全は、単独団体ではなく、NGO、大学、行政、地域観光事業者を巻き込む形で進められている
オアシス全体の保全本種だけでなく、バハ・カリフォルニア・スルの希少な淡水生態系を守る必要・推進中最重要キオビカオグロムシクイの保全は、結果として乾燥地帯に残された淡水オアシス全体の保全につながる。種の保護と生態系保護がほぼ重なっている

出典

最後に

Questioner: This sounds like that “powdered drink effect” of going from CR to VU, doesn’t it? You know, “if you water down a powdered drink mix way too much, obviously it’s going to taste awful.”

Me: Let me look into it. I want to see if it’s similar to what happened with Kaempfer’s Woodpecker (Celeus obrieni), or if we’re dealing with something entirely different from this powdered drink analogy.

質問者:これって、CRからVUになる「粉ジュース現象」だよね。「粉ジュースに水をたくさん入れて薄めたら、そりゃ不味くなる」ってやつね。

私:オブライエンテンニョゲラ(学名:Celeus obrieniの時と似ているのか、もしかしたら粉ジュースではなく違うものなのかもしれませんので、調べます。


オブライエンテンニョゲラは、1926年に採取された標本1羽のみで長らく知られ、80年間未発見だったため「絶滅(あるいはCR)」と考えられていました。 しかし、2006年の再発見以降、調査が進むと以下のことが分かりました。

  • ブラジル北東部の竹林を中心に、約80万平方キロメートルという広大な範囲に分布している。
  • 個体数も推定6,000羽と、絶滅寸前と考えられていた時期に比べて「予想以上にたくさん生息している」ことが判明した。

これにより、IUCNの評価はCR(絶滅危惧IA類)からEN(IB類)、そして2018年にはVU(II類)へと段階的に引き下げられました。これは、「水(分布域)を広げて探してみたら、それに比例して粉(個体数)も十分に隠れていた」という、比較的ポジティブなランクダウンです。

キオビカオグロムシクイの場合:「水で薄まっただけで、粉は少ないまま」

一方、キオビカオグロムシクイのCRからVUへのランクダウンは、オブライエンテンニョゲラとは根本的に質が異なります。

かつてCRに分類されていた理由は、「バハ・カリフォルニアのごく一部の小さな湿地にしか生息せず、移動もしない」と考えられていたためです。しかし、2010年代の調査研究によって以下の事実が考慮されるようになりました。

  • これまで知られていなかった複数の小さな湿地(北部に4箇所、南部に8箇所など)でも生息が確認された。
  • 彼らには「意外と長距離を飛んで、別の湿地へ移動する能力がある」ことが分かった。

これにより、IUCNの評価基準において「極度に限定された地域にしかいない(分布域の極端な狭さ)」というCRの条件から外れ、VUへとランクが引き下げられました。

しかし、ここが「粉ジュース現象」の核心です。

分布域(水)が広く見積もられたことで「絶滅のリスク(濃度)」は計算上薄まりましたが、中身である「粉(総個体数)」は650〜1,670羽と非常に少ないままなのです。しかも、オブライエンテンニョゲラとは違い、IUCNのデータでは明確に「Decreasing(減少傾向)」とされています。

なぜ「不味い(危うい)」ままなのか?

見かけ上のランクはVUに下がったものの、実態が依然として危うい理由は以下の通りです。

  • 薄まった分布による弊害: 生息域が広がったといっても、連続した豊かな森があるわけではありません。砂漠地帯に点在するオアシス(湿地)に「薄く広く」散らばっているだけです。個体群が分断されているため、一つの湿地が環境破壊や干ばつで消失すると、そこにいるグループは全滅してしまいます。
  • 環境の悪化(水の汚染): 図鑑の記述にもある通り、彼らの生息地である湿地は、農地開発、牛の放牧、農薬の流入、生活排水によって質が低下し続けています。
  • 脆弱な存続基盤: どんなに遠くへ飛べる能力(水)があっても、辿り着いた先の湿地(粉)が破壊されていれば生きていけません。

結論

オブライエンテンニョゲラのランクダウンが「実態に合わせた適正化(ポジティブな要素を含む)」であるのに対し、キオビカオグロムシクイのランクダウンは、まさに「分布域という水を足して計算した結果、見かけの絶滅リスク(濃度)は薄まったが、絶対的な個体数(粉)は少なく、環境悪化により味(種の存続基盤)は不味く(危うく)なっている」という状態です。

出典

Questioner: So, it’s like discovering a bunch of cups filled with that powdered drink. But the mixture in every single cup is watered down, making them all taste “awful,” right?

Me: I think that’s exactly it. The real message these birds are sending us seems to be that their overall habitat is deteriorating in the first place.

Questioner: Makes sense. If you poured all those cups into one big pot and boiled the water away, you’d still end up with the exact same amount of powder you started with. By the way, any idea why their distribution map expanded like that?

Me: My guess is they were found during surveys for land development, but let me check on that to be sure.

質問者:たくさんの粉ジュースで作ったコップが見つかった。だけど、そのひとつひとつの粉ジュースのコップの中身の濃度は薄く「不味い」ってことなんだね。

私:その通りだと思います。この鳥さんが伝えてくれている問題は、「そもそもキオビカオグロムシクイの生息地の環境が悪くなっている」に見えます。

質問者:そうだよね。全部合わせてまとめて鍋に入れて煮詰めたら、最初の粉の量は同じだったってことだもんね。ところで、この分布図が広がった理由は、なんだろうね。

私:開拓による調査だと思いますけど、調べます。

分布図が拡大した(未知の生息地が発見された)主な理由は「開拓」ではなく、「鳥類学者による地道な保護目的の現地調査」と「この鳥自身の隠された能力の発見」によるものでした。

集中調査による「未知のオアシス」での発見

キオビカオグロムシクイが生息するメキシコのバハ・カリフォルニア半島は、広大な砂漠のなかに小さなオアシスが点在する過酷な環境です。かつてはアクセスが困難で調査が行き届いていない場所が多くありましたが、絶滅が危惧されたことで1990年代後半から集中的な調査が行われました。その結果、2008年の報告までの約10年間だけで、北部にある繁殖地の半分(12箇所のうち6箇所)と、南部の繁殖地の約3分の1(14箇所のうち5箇所)が新たに発見されました。

定説を覆す「長距離移動能力」の証明

かつて専門家たちは、この鳥はオアシスの水生植物(葦やガマ)の茂みに強く依存しており、「自分が生まれたオアシスから外の砂漠へ飛び出す能力はない」と考えていました。ところが2000年以降、既知の繁殖地から約140km、さらには200km以上も離れた別の場所で個体が確認されるという出来事が起きました。これにより、彼らが過酷な砂漠を越えて別の湿地へ移動できる長距離分散能力を持っていることが証明され、「極めて狭い範囲にしかいない」というそれまでの分布図の前提が大きく書き換えられることになりました。

湿地環境の「急速な回復力」と再定着

ハリケーンなどの大規模な自然災害で生息地の湿地が破壊されても、葦などの水生植物は予想以上に早く再生する能力を持っています。長距離を移動できる個体が、急速に回復した湿地に再び定着可能であることがわかったため、分布の可能性がより広く見積もられるようになりました。

開発(開拓)がもたらしている本当の影響

「開拓(人間の開発活動)」は、分布を広げるきっかけになったわけではなく、むしろ現在進行形で彼らを追い詰めている最大の脅威です。 砂漠地帯において、農業や牛の放牧のためにオアシスの水を引いたり、農薬を流入させたりすることは、彼らにとって「点在する命綱のコップをひっくり返される」ことを意味します。

結論

分布図が広がったのは、開拓が進んだからではなく、「人間が本気で探しに行ったら、鳥たちが人間が思っていたよりもタフに長距離を飛び、辺境のオアシスで生き延びていたから」です。

しかし、いくら飛ぶ能力があっても、辿り着いた先のオアシスが人間の開発によって干上がってしまっていれば生きていくことはできません。図鑑の言葉通り「生息数は少数でかつ分断されている」状態であり、コップの中の粉ジュースの濃度が薄く危うい状況であることに変わりはないと言えます。

出典

Questioner: Oh… so that wasn’t it.

Me: Right. As usual, I was being cynical and figured they were just found during some environmental impact assessment prior to land clearing, but I was wrong.

Questioner: Still, if you take those cups—already watered down by development—and alter the flavor by pouring in water laced with pesticides and chemical fertilizers, it’s going to be a disaster.

Me: Now that they’ve finally been found, it would be great if we could just leave them be and quietly watch over them.

Questioner: Exactly. Because if we do that, I feel like the watered-down juice will eventually regain its purity and go back to being the delicious drink it once was.


Thank you for taking five minutes out of your day to read this.

I hope those five minutes somehow reach the Belding’s Yellowthroat.

鶏人|Keijin

質問者:あ……。違いましたね。

私:はい、開拓や開発に伴う事前の環境調査などのアセスメントで発見されたのではないかと、いつも通り疑いましたけど、違いましたね。

質問者:でも、開発や開拓で薄まったコップの中に、農薬とか化学肥料を大量に含んだ水とかで味変させたら大変なことになるよね。

私:せっかくみつかったのだから、そっとそのままの状態で見守れたらいいですよね。

質問者:そうすれば、薄まったジュースもやがて純度が濃くなってもとの美味しいジュースに戻るような気がするからね。


貴重な5分間を、ありがとうございました。

キオビカオグロムシクイに、その5分が届くことを祈ります。

鶏人|Keijin


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