11年後のレッドリスト|オオガンギエイ:冷たいはずの海が、冷たくない【IUCNレッドリスト比較】

11年後のレッドリスト|オオガンギエイ:冷たいはずの海が、冷たくない【IUCNレッドリスト比較】 11年後のレッドリスト
※このページは、[IUCNレッドリスト]世界の絶滅危惧生物図鑑(2014年版)に基づいて制作した個人ブログです。

Hi, I’m 鶏人|Keijin.

Today, I want to talk about the AMOC, taking the Barndoor skate (Dipturus laevis) as a starting point.

Back in the 2014 encyclopedia, it was classified as “EN: Endangered,” with hopes that fishing ban areas like Georges Bank would help it recover.

However, in the latest Red List, it has been reported as a recovered species, and its rank dropped significantly to “LC: Least Concern.”

But that’s exactly why I think the Barndoor skate is still living in a reality where “the sea that should be cold, just isn’t.”

This is a short article, about a 5-minute read. I hope you’ll stick around until the end.

こんにちは、鶏人|Keijin です。

今回は、オオガンギエイ(学名:Dipturus laevis)をきっかけに、「AMOC」について考えてみる話です。

2014年の図鑑では、ジョージバンクをはじめとする漁獲禁止区域があることに期待して、評価は「EN:絶滅危惧」でした。

ところが最新のレッドリストでは、回復済みとして整理された事例も報告されていて、ランクは「LC:低懸念」まで大きく下がっています。

だからこそ、オオガンギエイは今も、「冷たいはずの海が、冷たくない」状態なんじゃないかと思うんです。

この記事は短めで、5分くらいで読めます。
よかったら、最後まで読んでいってください。

※2026年時点で、IUCNレッドリストにおける最新評価は2019評価(2020年公開)です(以降の更新は、現時点では確認できていません)。
※本記事は専門家による学術的な評価ではなく、公開された資料に基づく個人の調査・見解を含みます。
※IUCN評価は「世界全体」と「地域・個体群」で分かれる場合があります。地域によって状況は異なります。
最新かつ正確な分類や保全状況については、IUCN公式サイトなどをご確認ください。
参考:IUCN Red List(学名:Dipturus laevis

LCになっても安心できない理由:海が温まり、保護区がズレる

⬇︎オオガンギエイの生態(基本情報)です。必要なら開いてください。

基本情報|オオガンギエイ(英名:Barndoor Skate)
項目情報
和名オオガンギエイ
英名Barndoor skate
学名Dipturus laevis
分類軟骨魚綱・ガンギエイ目(Rajiformes)・ガンギエイ科(Rajidae)・Dipturus属
分布北西大西洋(カナダのグランドバンク〜セントローレンス湾南部から、アメリカ合衆国ノースカロライナ沖まで)
主な生育地海底で暮らす底生性。沿岸〜大陸棚の砂底・泥底など、さまざまな底質で見られる
大きさ全長:最大163cm程度(報告最大)
体重最大18kg程度(報告最大)
寿命目安として11年程度(海域・推定法で幅が出やすい)

特徴

  • 名前の由来:属名 Dipturus は「2つの(di)+ひれ(pteryx)」に由来すると説明されることが多い。種小名 laevis はラテン語で「滑らかな」の意味。
  • 見た目:ひし形に近い大きな体盤(“翼”のような胸びれ)と、尖った吻が目立つ大型のガンギエイ類。背面は褐色系で細かな斑点が散る、といった特徴として説明されることが多い。
  • 希少性:かつて漁業(主に底びき網など)による影響が強く指摘されたが、近年は資源管理の影響などもあって回復傾向として扱われる情報がある。
  • 保全状況:IUCNではLC(低懸念、2019年評価として扱われる)とされる。CITESは未評価として整理される資料がある。

生態など

  • 生育環境:水深0〜750mの記録があり、一般には浅い海域(0〜150m程度)での記録が多いとされる。季節・海域で利用水深が変わる。
  • ふえ方(繁殖):卵生。硬い卵殻(エイ類の卵嚢)を海底に産み、一定期間の発生を経てふ化する。
  • 食性:二枚貝などの底生無脊椎動物、イカ類、甲殻類、ゴカイ類、魚類などを利用する、と整理されることが多い。
  • 脅威:混獲を含む漁獲圧(特に底びき系)や、生息環境の変化が主要因として挙げられやすい。回復傾向でも、地域差や管理の強弱で影響は変わり得る。

出典

最終評価2019年:オオガンギエイ「LC:低懸念」

オオガンギエイを絶滅危惧種保護法の対象に加える請願が何度もなされてきたが、現在までのところ却下されている。アメリカにおけるこの種の所有の禁止や、ジョージバンクをはじめとする漁獲禁止区域の存在によって、個体数の回復が期待できる。

出典:訳者 岩槻邦男、太田英利 / 発行者 池田和博 / タイトル『IUCNレッドリスト世界の絶滅危惧生物図鑑』/ 発行所 丸善出版株式会社 / 発行 2014/01/31 / © Kunio Iwatsuki, Hidetoshi Ota, 2014

項目2014年の図鑑現在(2026年確認)
和名オオガンギエイオオガンギエイ
英名Barndoor SkateBarndoor Skate
学名Dipturus laevis MitchillDipturus laevis
分類ガンギエイ科ガンギエイ科
IUCNレッドリスト評価絶滅危惧IB類(EN)低懸念(LC)
評価年図鑑掲載時点では、2003年評価に基づく絶滅危惧IB類として扱われている2019年6月20日に再評価され、IUCN Red List 2020で低懸念(LC)として公表
個体数動向1960年代から1990年代にかけて、商業用トロール漁の混獲などにより、漁獲率が99%も減少したとされているIUCNでは個体数動向は増加傾向(Increasing)
個体数回復図鑑では、個体数の再建途上にあり、絶滅危惧種保護法の対象化や漁業禁止区域による回復が期待される段階として記載されている1990年代以降に大きく回復し、2012年時点で1960年代の個体数水準を上回ったとされる
評価変更の流れ絶滅の瀬戸際にある種として警告されていた2003年のENから、2019年再評価でLCへ変更された
主な脅威商業用トロール漁による混獲現在も漁業による混獲・漁獲管理は重要だが、IUCN評価上は絶滅危惧カテゴリーではなくなっている
生息域アメリカ合衆国からカナダにかけての大西洋沿岸北西大西洋。ニューファンドランド周辺からカナダ大西洋岸、アメリカ北東部沿岸、ノースカロライナ沖周辺までの範囲で扱われる
生息環境水深1300メートルまでの比較的冷たい水域IUCNではMarine Neritic、Marine Deep Benthicとして扱われている
米国での保護・管理アメリカでは本種の所有禁止、ジョージズバンクをはじめとする漁業禁止区域の存在により、個体数回復が期待されていると記載2003年にNortheast Skate Complex FMPが実施され、2018年にはFramework 5で directed skate wing fishery における限定的な保持が認められた
漁獲・保持の現状図鑑時点では、商業利用による混獲が大きな脅威であり、保持・所有禁止が回復策として重要視されていた「全面再開」ではなく、2026年時点でも bait fishery では保持・水揚げ禁止。wing fishery では2024年のFramework 12によりオオガンギエイの保持制限が削除された
商業利用トロール漁による混獲が問題とされていたエイヒレ用の wing fishery では管理下で水揚げ対象になり得る。一方、ロブスター漁などの bait fishery では保持・水揚げは禁止されている
米国絶滅危惧種法との関係図鑑では、絶滅危惧種保護法の対象に加える請願が何度もなされていると記載2011年の連邦官報では、NMFSがバイオマス増加や既存管理措置などを踏まえ、ESA掲載に進むだけの十分な情報は示されていないと判断している
回復を示す根拠図鑑では、調査結果に異論もあるものの、体長約60cmの小型個体の増加から、数値が上昇している可能性があると記載2016年時点で資源は再建済みと扱われ、2018年以降は一部保持が認められた。IUCNでも個体数動向は増加傾向とされる
現在の見方絶滅の危機にある大型ガンギエイとして紹介されているかつて深刻に減少したが、漁業管理と個体数回復により、IUCN上は低懸念へ回復した代表的な事例として扱える
注意点図鑑の記述は2014年時点の情報であり、当時はEN評価に基づく内容現在のLC評価は「脅威がなくなった」という意味ではなく、管理下で回復し、現時点の絶滅リスクが低いと評価されているという意味

出典

オオガンギエイは、かつて北西大西洋における商業用トロール漁の混獲などにより急激に減少し、2003年にはIUCNレッドリストで危機(EN)に評価されていた。しかし、その後の漁業管理、保持規制、漁業禁止区域の設定などを背景に個体群は回復傾向を示し、2019年の再評価では低懸念(LC)へ変更された。現在は個体数動向も増加傾向とされるが、漁獲圧そのものが消失したわけではなく、商業利用の一部再開も管理措置のもとで行われている。したがって、本種は絶滅危惧状態からの回復例である一方、継続的な資源評価と漁業管理を前提として保全状況が維持されている種と位置づけられる。

⬇︎オオガンギエイの保護活動の種類です。必要なら開いてください。

保護活動の種類内容の概要
漁獲量の管理(ACL/TAL・枠組み運用)対象を含む「スケート類複合(Northeast Skate Complex)」として、年間の漁獲上限や許容陸揚げ量を設定し、年次レビューで指標(調査・陸揚げ・投棄)を確認して管理措置を調整する。
所持・陸揚げ規制(漁業別の禁止・制限)漁業区分(例:餌用・翼用)に応じて所持・陸揚げの禁止や制限を設け、特定用途での過度な持ち帰りを抑える(規則・運用は改定され得る)。
混獲・投棄死亡の低減(取り扱い・報告)混獲時の生残率を高めるため、可能な限り生体で海へ戻す運用や、記録(ログブック、観察員)を通じて実態把握を進める。
漁具・操業条件の管理(メッシュ・針・漁具量など)一部海域のスケート漁では、網目サイズ・針サイズ・漁具量の上限・クォータなどを組み合わせて努力量をコントロールし、過剰漁獲リスクを下げる。
海底生息地の保護(重要生息域の特定と配慮)産卵・成育・摂餌に必要な海底環境を「重要生息域」として整理し、開発や底生環境への影響評価・回避に活用する(EFHの考え方)。
保護区・空間管理(MPA・漁業規制の重点化)分布が重なる海洋保護区では、生物の攪乱・損傷・採取を禁じるなどの規制で、局所的に生息環境を守る(ただし保護区が分布全体をカバーするとは限らない)。
調査・モニタリング(資源状態・分布・投棄の把握)トロール調査指数、陸揚げ・投棄データの年次更新、必要に応じた基準評価(stock assessment)で資源状態を追跡し、管理の妥当性を点検する。
種同定の徹底(誤同定の低減)種別管理やデータ精度を上げるため、同定ガイド等の整備で現場の同定精度を高め、報告の質を改善する。

出典

最後に

Questioner: Going from EN to LC feels like a massive improvement all at once. But I remember hearing somewhere that as water temperatures rise, marine life moves deeper or further north, and the fixed marine protected areas (no-take zones) end up missing their actual distribution. I wonder how much of a temperature difference there is between shallow and deep waters with recent climate change.

Me: Yeah, they’ve been talking about the “collapse of the AMOC” since late 2025 too. I’ll look into that in detail.

質問者:ENからLCって、かなり一気に良くなった感じがするね。だけど、「水温上昇に伴って深場化・北方化が進むと、保護区(禁漁区)の設計と実際の分布がずれることがある」こんなことを前に聞いた記憶があるんだけどどうなのかな。最近の気候変動で、海水温って浅い場所と深い場所でどれくらい差が出てきてるんだろう。

私:「AMOC崩壊リスク」についても、近年ますます注目されるようになってきましたからね。そのあたり詳しく調べてみます。


項目内容要点
海洋温暖化の深度差海洋温暖化は水深ごとに均一ではなく、熱の多くは上層海洋に蓄積される。IPCCは、上部700mおよび700〜2000mの海洋で温暖化が進んでおり、2000m以深の深海でも温暖化は確認されるものの、上層ほど急速ではないと評価している。水温上昇は表層・中層でより明瞭に現れ、深海では相対的に変化が緩やかである。
浅場と深場の温度勾配海面付近の水温上昇が大きくなると、浅場と深場の間に温度差が生じやすくなる。底生性魚類や冷水を好む種にとって、この温度勾配は生息場所の選択に影響する。海洋温暖化は、単に「海全体が同じように暖まる」現象ではなく、生物の垂直分布を変える要因となる。
オオガンギエイの生息深度オオガンギエイは北西大西洋の大陸棚に生息する底生性のガンギエイで、浅場から深場まで利用する。NOAAの識別資料では、最も多く見られる深度は35〜80ファゾム、すなわちおよそ64〜146mとされる。一方、カナダ水産海洋省などは、750mを超える深さでも記録される種としている。本種は主に大陸棚の底層を利用するが、一定の深場利用能力も持つ。
深場化の可能性気候変動に伴う海洋生物の分布変化では、種がより高緯度へ移動するだけでなく、より深い水域へ移動する例も報告されている。米国北東部大陸棚では、温暖化に応答して多くの海洋生物が分布域を変化させている。オオガンギエイのような底生性・冷水性の要素を持つ種では、将来的に深場側・北方側への分布変化が起こり得る。
熱的生息環境生物は成長、摂餌、繁殖に適した水温帯を持つ。海底水温が上昇すれば、従来の浅い大陸棚上の一部海域が適温から外れ、より冷たい底層水を持つ海域が相対的に重要になる可能性がある。水温上昇は、生息可能な場所そのものではなく、「最適な場所」の位置を変える。
北方移動の可能性北西大西洋では、米国北東部大陸棚やメイン湾周辺の水温変化が生物群集の分布に影響している。温暖化が進むと、冷水を好む種はより北方、またはより深い海域へ分布を移す可能性がある。分布変化は水平移動と垂直移動の組み合わせとして起こり得る。
固定保護区とのずれジョージズバンク周辺の漁業規制区域や保護措置は、基本的に緯度・経度で区切られた固定的な空間管理である。一方、生物の分布は水温、餌資源、海流、底質などに応じて変化する。気候変動下では、固定された保護区と実際の生息適地がずれる可能性がある。
保護区のミスマッチオオガンギエイがより冷たい海域や深い海域へ移動した場合、従来の禁漁区内にとどまらない可能性がある。その場合、過去に有効だった空間的保護が、将来も同じ効果を持つとは限らない。保護区は「場所」だけでなく、変化する生息環境に合わせた見直しが必要になる。
動的管理の必要性海洋生物の分布が気候変動に応じて変化する場合、固定的な禁漁区だけでなく、資源調査、分布データ、海底水温、漁獲データを反映した順応的管理が重要になる。回復した種であっても、将来の保全には継続的な監視と管理更新が必要である。
AMOCの基本的役割AMOCは、大西洋において暖かく塩分の高い表層水を北へ運び、北大西洋で冷却・高密度化した水を深層へ沈み込ませ、南へ戻す大規模な海洋循環である。熱、塩分、炭素、栄養塩の輸送に関わる、北大西洋の気候・生態系を支える循環である。
AMOC弱化の見通しIPCCは、AMOCが21世紀中に弱化する可能性は非常に高いと評価している。一方で、21世紀中の急激な崩壊については不確実性が大きく、評価には幅がある。近年もAMOCの弱化や崩壊リスクをめぐる研究が続いている。「崩壊が確定している」とは言えないが、「弱化は重要なリスク」として扱う必要がある。
真水流入と沈み込みグリーンランド氷床の融解や北大西洋への淡水流入は、海水の塩分濃度と密度に影響し、深層水形成を弱める要因になり得る。AMOCは水温だけでなく、塩分と密度の変化にも左右される。温暖化は、海水を暖めるだけでなく、淡水流入を通じて大西洋の循環構造にも影響する。
栄養塩循環への影響AMOCの弱化は、熱輸送だけでなく、栄養塩の輸送や海洋の生物生産にも影響し得る。研究では、AMOC弱化により北大西洋への栄養塩供給が減少し、一次生産が低下する可能性が示されている。海流変化は、餌資源の土台である植物プランクトンや底生生物の生産力に波及する可能性がある。
食物網への波及オオガンギエイは底生性の無脊椎動物や魚類などを利用する捕食者である。基礎生産や底生生物群集が変化すれば、直接の水温影響だけでなく、餌資源を通じた間接的影響も受ける可能性がある。気候変動の影響は「水温」だけでなく、「餌の量・分布・季節性」を通じても現れる。
北米東岸の海面水位AMOCの変化は、北米東岸の海面水位にも影響する。大西洋の循環が弱まると、米国北東部沿岸などで相対的な海面上昇が強まる可能性がある。AMOC弱化は、遠い深海の問題ではなく、沿岸環境や大陸棚の物理条件にも関係する。
海流と底層環境の変化AMOCやメキシコ湾流系の変化は、北西大西洋の水温構造、塩分、成層、栄養塩供給、底層環境に影響を与え得る。これらは大陸棚に生息する底生魚類の分布や生産性にも関係する。海流変化は、生息域の「場所」だけでなく、その場所の環境条件そのものを変える。
オオガンギエイへの総合的リスクオオガンギエイはIUCNでは低懸念に回復したが、今後の気候変動、海底水温の変化、AMOC弱化、漁業管理の変化が重なれば、生息域や餌資源、保護区との対応関係が変化する可能性がある。現在の回復は重要な成功例である一方、将来の安定には気候変動を組み込んだ資源管理が必要である。
保全上の位置づけ本種の事例は、漁業規制によって減少個体群が回復し得ることを示す一方で、気候変動下では過去の管理設計だけでは不十分になり得ることも示している。回復した種ほど、次の段階では「気候変動に追随できる管理」が課題となる。

出典

Questioner: The Barndoor skate would probably move to colder waters if it got too hot, and if there’s no food there, it’d go even deeper. Thinking about the AMOC slowing down even more in the future makes me not even want to imagine what will happen.

Me: If they could just move their whole environment like a tropical fish tank while keeping the “perfect water temperature,” it would be easy… but we’re dealing with the vast ocean. So in the future, we might need a completely new approach—like shifting the protected areas themselves, saying “Today, the protected area is from here to here,” and “Tomorrow, it’s over there.” Kind of like a “protected area forecast.”

But considering that the AMOC is currently slowing down, even if they could somehow move their “perfect temperature tank,” it’s game over if the pump circulating that tank stops working.

質問者:オオガンギエイさんも暑かったら冷たい海に移動するだろうし、そこにご飯がなかったらもっと深いところへ行くからね。それも今後AMOCの動きがこれ以上弱まることを考えたらちょっと想像したくないね。

私:もし熱帯魚の水槽みたいに、「ちょうどいい水温」を保ったまま水槽ごと移動できたら楽なんでしょうけど……相手は広い海です。だから将来的には、「今日はここからここまでが保護区」「明日はここからここまで」みたいに、保護区そのものを動かす発想、いわば「保護区の予報」みたいな考え方が必要になるのかもしれません。

しかし、現在AMOCの動きが弱まりつつあることを考えると、たとえ「ちょうどいい水温」の水槽を移動できたと仮定しても、その水槽を循環させているポンプが止まってしまったら終わりですからね。


項目内容要点
AMOCの基本構造AMOCは、大西洋において暖かい表層水を低緯度から高緯度へ運び、北大西洋で冷却・高密度化した水を深層へ沈み込ませ、深層水として南方へ戻す大規模な海洋循環である。熱、塩分、酸素、炭素、栄養塩を運ぶ、地球規模の海洋循環である。
熱塩循環の原理AMOCの駆動には、水温と塩分によって決まる海水密度が重要である。海水は冷却されると密度が高くなり、塩分濃度が高いほど重くなるため、北大西洋では冷たく塩分の高い水が沈み込みやすい。「冷たく、塩辛く、重い水」が沈むことで、循環の一部が維持される。
沈み込みの役割北大西洋高緯度域では、冷却された高密度水が深層へ沈み込み、深層水形成を通じて大西洋全体の循環に関与する。沈み込みはAMOCの重要な構成要素であり、深海への水塊輸送を支えている。
温暖化による密度低下海面水温が上昇すると、海水が十分に冷えにくくなり、密度が高まりにくくなる。これにより、深層へ沈み込む力が弱まる可能性がある。海水が暖かくなるほど、沈みにくくなる。
淡水流入による塩分低下グリーンランド氷床の融解、北極域の氷の変化、降水・河川流入の変化などにより、北大西洋へ淡水が流入すると、表層海水の塩分濃度が低下する。塩分が低下した水は密度が小さくなり、深層へ沈みにくくなる。淡水化は、AMOCを弱める主要な物理要因の一つである。
成層化の強化表層が暖かく淡水化すると、軽い水が表面にとどまりやすくなり、上下の混合が弱まる。これにより、表層と深層の水の交換が制限される可能性がある。海が層状に分かれやすくなると、深層水形成が弱まりやすい。
AMOC弱化の見通しIPCCは、AMOCが21世紀中に弱化する可能性は非常に高いと評価している。一方、21世紀中の急激な崩壊については不確実性が大きく、IPCCは「非常に起こりにくい」と評価している。「弱化」は高い確度で懸念されるが、「急激な崩壊」は確定事項ではない。
崩壊リスクの扱いAMOC崩壊は不確実性を伴うが、物理的にはあり得る低確率・高影響リスクとして扱われる。近年の研究では、観測・モデル・古気候記録を用いて、弱化や臨界点の可能性が継続的に検討されている。確定した未来ではないが、影響が極めて大きいため、リスク評価の対象となる。
熱輸送の変化AMOCが弱まると、低緯度から北大西洋高緯度域へ運ばれる熱の量が減少する。これにより、北大西洋周辺の気候は、地球平均の温暖化とは異なる変化を示す可能性がある。AMOC弱化は、地球全体を単純に寒冷化させるのではなく、地域ごとの温度分布を大きく変える。
北大西洋周辺の寒冷化AMOCが大幅に弱化または崩壊した場合、北大西洋周辺、とくにヨーロッパや北大西洋高緯度域では、温暖化の進行下でも相対的な寒冷化が生じる可能性がある。温暖化の中でも、北大西洋周辺では局所的・地域的な寒冷化が起こり得る。
南半球への影響AMOCが弱まると、北向きの熱輸送が減少し、南半球側に相対的に熱が残りやすくなる可能性がある。これは南北半球間の熱配分を変化させる。AMOCの変化は、北大西洋だけでなく南半球の気候にも影響する。
熱帯収束帯の移動AMOC弱化は、南北半球間の熱バランスを変化させ、熱帯収束帯の位置を南北に移動させる可能性がある。熱帯収束帯の移動は、降水帯やモンスーンの変化に直結する。海流の変化は、雨の降る場所そのものを変える可能性がある。
モンスーンへの影響AMOC崩壊を想定した研究では、世界のモンスーンシステムが大きく再編される可能性が示されている。南米、西アフリカ、インドなどの降水パターンが変化すれば、農業生産や水資源に深刻な影響が生じ得る。AMOC弱化・崩壊は、食料生産の基盤となる降水パターンにも波及する。
北米東岸の海面水位AMOCが弱まると、大西洋西岸、とくに北米東岸で海面水位が上昇しやすくなる可能性がある。これは海流と海面高度の力学的な関係による。AMOC弱化は、沿岸域の浸水リスクや高潮リスクにも関係する。
海流配置の変化AMOCの弱化は、メキシコ湾流系や北大西洋の海流構造、水温分布、塩分分布に影響する可能性がある。これにより、大陸棚や沿岸域の海洋環境も変化する。海流の変化は、海の「温度地図」と「栄養地図」を書き換える。
深海への酸素供給深層水形成は、表層で大気と接した酸素を深海へ運ぶ過程にも関わる。AMOCが弱まれば、北大西洋深層への酸素供給や換気が低下する可能性がある。AMOCは、深海に酸素を届ける「海の換気」とも関係している。
深海の低酸素化深海への換気が弱まると、深層水中の酸素が補給されにくくなり、低酸素化が進む可能性がある。ただし、影響の大きさや地域差は海盆、深度、時間スケールによって異なる。深海が直ちに全面的な「無酸素の死の海」になるとは限らないが、酸素環境の悪化は重要なリスクである。
栄養塩循環への影響AMOCは、深層に蓄積された栄養塩の分布や、海洋内部の栄養塩輸送に関与する。循環が弱まると、海域によっては表層への栄養塩供給が変化し、一次生産に影響する可能性がある。海流の弱化は、植物プランクトンを支える栄養塩供給にも影響する。
基礎生産への影響栄養塩供給、成層化、光環境、水温が変化すると、植物プランクトンの生産量や分布が変化する。これは食物網全体に波及する。海の食物連鎖の土台が変化する可能性がある。
底生生態系への波及オオガンギエイのような底生性捕食者は、海底付近の魚類や無脊椎動物などの餌資源に依存する。AMOC弱化が水温、酸素、栄養塩、底生生物群集を変化させれば、間接的に生息条件が変わる可能性がある。影響は水温だけでなく、酸素と餌資源を通じても現れる。
オオガンギエイとの関係オオガンギエイはIUCNでは低懸念に回復しているが、北西大西洋の底生環境に依存するため、AMOC弱化による底層水温、酸素、餌資源、分布域の変化は将来的なリスク要因となり得る。現在の回復と、将来の気候・海洋循環リスクは別々に評価する必要がある。
ティッピング・ポイントAMOCは、一定の淡水流入や温暖化を超えると急激に状態が変化する可能性があると考えられている。このような非線形的な変化は、ティッピング・ポイントの一例として議論される。徐々に弱まるだけでなく、臨界点を超えると急変する可能性がある。
ヤンガードリアス期約1万2900年前から約1万1700年前にかけてのヤンガードリアス期は、北半球を中心とした急激な寒冷化を伴う気候変動として知られる。AMOCまたは熱塩循環の弱化・停止が関与した可能性があるとされる。過去にも、北大西洋循環の変化と急激な気候変動が関連した例がある。
急変の時間スケールヤンガードリアス期の開始や終了は、地域によっては数年から数十年規模で急速に進行した可能性が示されている。ただし、気温変化の規模や速度は地域差が大きく、全球一様ではない。AMOCに関係する気候変化は、人間社会の適応速度を超える速さで進む可能性がある。
保全上の意味AMOC弱化は、海洋生物の保全を「漁獲圧」だけで考えることの限界を示す。今後は、水温、酸素、栄養塩、海流、餌資源の変化を含めた生態系ベースの管理が重要となる。回復した種であっても、気候システムの変化を組み込んだ長期的管理が必要である。
総合評価AMOCの弱化・崩壊リスクは、機構的には密度低下と沈み込みの弱化、気候的には熱輸送と降水帯の変化、生態系的には酸素・栄養塩・食物網の変化、時間的には非線形的な急変可能性として整理できる。AMOCは、気候と海洋生態系を同時に変える可能性を持つ重要な地球システムである。

出典

Questioner: People say a lot of things about this, but if we’re talking about Japan, does it mean we’ll get hit with alternating extreme cold waves in winter and super-scorching heatwaves in summer?

Me: I’ve looked into it a lot, but I’m guessing the scientists’ honest truth is, “We won’t really know what happens until it actually stops.” And if hot places get even hotter, crops won’t grow like they used to. In the ocean, it’s not just about not being able to catch fish—there’s also a chance that the abundance and distribution of plankton, the very food the fish rely on, or even the seasons in which they appear, could completely change.

Questioner: You mean the entire balance of the ecosystem would just collapse all at once.

Me: Plankton absorb carbon dioxide from the atmosphere through photosynthesis, and when they die, they sink to the deep sea, locking that carbon away. If plankton populations plummet, we lose that function, which leads to the worst-case scenario: greenhouse gases in the atmosphere increase even more.

Questioner: What can we actually do right now?

Me: The first thing we can say is that we need to stop digging up fossil fuels and reduce our use of them to the absolute minimum. Even so, the AMOC will stop when it’s going to stop. But if humanity can snap out of clinging to the status quo and actually change our ways right now, I believe that even if the AMOC stops, we can still carve out a path to coexist with the Earth moving forward.


Thank you for taking five minutes out of your day to read this.

I truly hope those five minutes somehow reach the Barndoor skate.

鶏人|Keijin

質問者:これっていろいろ言われているけど、日本でいったら冬の大寒波と夏の超猛暑が交互にやってくるってことなのかな。

私:いろいろ調べたのですが、「なにが起こるか、止まってみないとわからない」というのが、科学者たちの本音なのではないかと推測してます。そして、これ以上暑いところで暑くなれば作物は今まで通り育たなくなりますし、海洋でいえば、魚が取れなくなるだけではなく、魚たちのご飯であるプランクトンの量や分布、発生する季節そのものが変わってしまう可能性もあります。

質問者:生態系のバランスが一気に崩れるってことだよね。

私:プランクトンは光合成によって大気中の二酸化炭素を吸収し、死んだ後は深海へと沈んで炭素を固定します。プランクトンが激減すれば、この機能が失われ、大気中の温室効果ガスがさらに増えるという最悪のことも考えられるんです。

質問者:私たちに、今できることってなんだろう。

私:第一に言えることは、化石燃料を掘ることをやめ、その使用も極限まで減らすことではないでしょうか。それでも、このAMOCは止まる時は止まります。しかし、今すぐ人類が現状にしがみつくのをやめて、自ら変わることができたなら、たとえAMOCが止まったとしても、その先で地球と共栄する道は開かれるのではないかと信じています。


貴重な5分間を、ありがとうございました。

オオガンギエイに、その5分が届くことを祈ります。

鶏人|Keijin


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